清々しいまでに晴れた空の下で、アキラは朝早くからニビ科学博物館を飛び出していた。
彼が目指す目的地は、このニビシティにあるポケモンセンターだ。
理由は当然、レッドがどうしているかの確認だ。
昨日は口酸っぱくまではいかないまでも、彼にポケモンセンターに行く様に促したが、結局向かわせることが出来ないまま別れてしまった。
もしこの世界が今のところアキラの知っている通りに進んでいるなら、今頃ニビシティにあるポケモンセンターはロケット団の仕業で破壊されている。その為、彼がポケモンセンターを訪れて回復不能だと知っても尚、ニビジムに挑戦することを選ぶか気になったのだ。
しばらく歩いていると、少し離れた場所から人だかりと青空を濁らせる数本の黒煙らしきものが見えて、彼は足を速めた。
「そんな~~~」
人だかりを掻き分けて進んでいくと、丁度訪れたであろうレッドが瓦礫の山と化しているポケモンセンターと思われる建物に営業休止を知らせる提示版を見て途方に暮れていた。
予め何が起きるか知っていたとはいえ、実際の破壊行為を目の当たりにしたアキラは、表情を険しくしつつも彼に歩み寄る。
「何か嫌な予感がすると思ったけど、これは予想外だな」
「どこのどいつだ! こんな肝心な時にポケモンセンターをぶっ壊した奴はーー!!」
未だ判明していない下手人に対して、レッドは怒りの声を上げる。
万全の状態でジム戦を迎えたいのに、これでは疲労したピカチュウを除いたポケモン達を回復させることができないのだ。
しかし、ここで喚いても事態は良くなるどころか瓦礫の撤去及び復旧作業の邪魔になるので、アキラに引き摺られる形で彼はその場を後にした。
「この後どうするレッド?」
「決まってるだろ。こいつらをポケモンセンターで回復させてからと思ったけど、ニビジムに行くんだよ」
一応アキラはレッドにどうするか尋ねたが、原作通り彼はジムに挑戦する気なのを確認できて少しホッとした。
もしここで諦められたら、彼がピカチュウと仲良くなる機会はしばらく無いだろう。
尤もレッドの性格を考えるとジム戦に出なかったら、後でグリーンにバカにされることを見越しているのだろうけど。
「あっ、そうだ。ついでにお前もジム戦に挑戦しないか?」
「え? 俺が?」
昨日、保護者であるヒラタ博士と同じ提案をレッドからもされて、アキラは戸惑う。
確かに図鑑を経由して見せて貰った時に確認したレベルと技構成なら、恐らく良い線まで戦えるだろう。だが、自分はまだポケモンを手にして一週間も経っていない初心者だ。
加えてまともに言うことを聞いてくれるのは、昨日手持ちに加えたばかりのサンドだけだ。
未だにミニリュウはボールから出せば暴れるし、ゴースに至ってはまだ受け取るかどうか決めていないので正式な手持ちでは無い。
「いやレッド、俺のポケモンはまだ言うことを聞いてくれないから――」
「俺のピカチュウだって言うことを聞いてくれないんだから問題は無いよ」
「いやその理屈はおかしい」
レッドの勢いに飲まれ掛けるが、アキラは踏み止まる。
彼が頑なにジム戦に挑もうとしないのは、手持ちが言うことを聞かない以上に外野にまで被害を出すことを危惧しているからだ。
サンドは素直なのでその心配は無い。
ゴースはそこまで大きな力は持っていない。
だけどミニリュウだけは違う。
パワーがあるだけでなく覚えている技も強力、しかも周りの被害にお構いなく暴れる為、ただ戦うだけでも周囲に与える影響は大きいのだ。
常に全力と言うべきかわからないが、抑えるつもりが無いことはハッキリしている。
少なくとも、大丈夫と言う確信が持てるまでは控えておくべきとアキラは考えている。
「アキラ、心配になるのはわかるけど慎重になり過ぎだと思うぞ」
しかし、そんな安全面を懸念しているアキラの考えが、レッドはあまり理解出来なかった。
今の段階でもまだ楽観視しているところがあると考えているのだが、彼から見ると自分は慎重になり過ぎているらしい。
この辺りは彼の考えや性格と言うよりは、アキラが元居た世界とこの世界とでは考え方が異なっているのだろうか。
「でも万が一ってこともあるし…」
「”万が一”って、なんつうか自分のポケモンを信用してないのか?」
レッドが口にしたある意味直球の言葉に、アキラは黙り込んでしまう。
情けないことだが、こうして言われるまで不安や恐れなどの尤もらしい言葉で誤魔化していただけで、本当はあまり手持ちを信用していないことに気付いたのだ。
早く仲良くなりたい、信頼されたい、こちらから信用していることを示さなければならないなどと考えておきながら、結局のところ何一つ信じていない。正直言って、痛い目に遭った経験が体に刻まれているのか、中々更に踏み込んだ交流を図れていない。
もしかしたらミニリュウが一向に歩み寄ろうとしないのは、こういう無意識の対応を敏感に感じ取っているからなのかもしれない。
「――困ったな本当に」
「おいおいしっかりしろよ」
か細い声でアキラが呟くと、レッドは彼が思いの外気にし過ぎているのに慌てる。
何やら完全に思考のドツボに嵌まってしまった様で、アキラは悩んでいるのか現実逃避をしているのかわからない遠い目をしていた。こういう時は「そんなはずない!」と強気で否定してくると思っていたのだが、どうやら彼と自分とでは考えが色々と違うらしい。
「お前が連れて行くって決めた仲間だろ。トレーナーのお前がそんな――」
「レッドは…ピカチュウが自分の手に負えなくなったらどうする?」
話を聞いていないのか、唐突にアキラはレッドに質問をぶつけてきた。
このままでは、吹っ切れるか答えを見つけるまでこの調子だろう。だけど今の話からレッドは、彼が何故手持ちを完全に信用し切れていないかの原因を何となくだが理解した。
恐らくアキラは、手持ちのポケモンが自分が対処出来る範囲を超えて行動してしまうことを怖がっているのだ。
ポケモンが人に牙を剥いたら、人の手だけで止めるのは困難を極める。
意思疎通で超えてはならない一線を教えることは出来るが、それでもポケモンは生き物だ。
トラブルを抑えたいのはトレーナーの都合であって、どれだけ抑えたり言うことを聞かせても予想だにしていない行動を取ることはある。思い通りにいかない方が普通だ。
彼もそれはわかっていると思うが、物事を複雑に考え過ぎている。
もうちょっと単純に考えれば良いのにと思いながら、レッドは不機嫌な表情を浮かべているピカチュウが入ったボールを突き出す。
「俺はピカチュウを仲間として信じている。仮にもしお前が恐れているようなことになったら、体を張ってでも止める。それがトレーナーとして、仲間としての役目だと思うぜ」
レッドはありのままに、自分なりの答えをアキラに伝える。
彼もピカチュウが機嫌を損ねて本気になったら、他のポケモン達が力を貸してくれなければ止めようがないことは自覚している。だけど、仮に周りが力を貸してくれなくても止めるのが、仲間であり、彼らを連れているトレーナーの役目でもあると彼は考えている。
と、ここまでは良かったのだが、自信を持って答えたと言うのにアキラは何も反応らしい挙動を見せなかった。
更に二人の間に妙な静寂が続いた事や彼の怪訝そうな視線を向けられたことも重なり、レッドは自分が口にしたことが急に恥ずかしくなってきた。
「とっ、とにかく! もしお前が止め切れなくなったら、俺が手助けしてやるから!」
そう伝えるとさっきまで堂々と答えたことを誤魔化すかの様に、今度はレッドがアキラを引き摺りながらニビジムへと足を進め始めた。
ほぼ強引にジムへと引っ張られているにも関わらず、アキラは抵抗も反論もせず、ぼんやりと意識を思考に向けて彼が自信を持って答えたことについて考えていた。
確かに、いざとなったらポケモンの保護者であるトレーナーが体を張ってでも止めるべきだ。
だけど実際にそんなことをすれば、簡単に返り討ちに遭う。
人とポケモンの力の差はそれだけあるのだ。
レッドが答えた内容は、恐れ知らず過ぎて納得出来る出来ないで済む様なレベルでは無い。
けれども、こういうことを自然と口に出来るからこそ、彼は将来数多くの巨悪を打ち負かし、ポケモンリーグの頂点に登り詰められたのだろう。
この世界の主人公の一人だからと言う単純な理由ではなく。
ポケモンと一緒にいた時期の長さもあるだろうけど、この年で彼が言っていることを悩むことなくすぐに答えられる人は何人いるか。
簡単な様で難しい自分なりのポケモンとの関わり方。
意識しているかはともかく、レッドは既に自分なりの関わり方を見つけている。
アキラはと言うと、ミニリュウの態度が軟化することを願いながら根気強く接しているが、信念でも方針でも無くただのその場凌ぎの様なものだ。
ジム戦をしたからと言って、最中や終えた後にすぐに自分なりのポケモンとの関わり方や関係の築き方を見つけたり、関係が劇的に変わるとは思っていない。
だけど、この後のレッドとピカチュウのことを考えると、何か切っ掛けや先のことを考えるヒントは得られるかもしれない。
「………やってみるか」
答えはすぐに決まった。
グダグダ悩み続けたり、このまま出口の見えない今の方針を闇雲に続けるくらいなら、リスクを負ってでも時には冒険することも必要だろう。いざとなったらレッドも手助けをしてくれるそうだし、何より手持ちに抱いている潜在的な恐怖心を克服したい。
それから彼は、引き摺られる形から自発的に足を動かし始めると、気合が入っているレッドの様子を見ながら、今この世界が自分が知っている通り事が進んでくれているかについて考え始める。
もしピカチュウと仲良くなれたとしてもジムリーダーであるタケシに勝たなければ、今後この世界が辿る未来も若干変わってしまう。そうなったらアキラが知っている情報の幾つかが、役に立たなくなる恐れがある。こればかりはレッド自身の力でどうにかしなくてはならない為、彼が勝つのを祈るしかない自分にできることは無い。
そう考えている内に二人は目的地であるニビジムに辿り着き、勢いのまま彼らは建物の中に入って行く。
入ってみると既に一部の試合が始まっているのか、奥の会場からは見物客の大歓声にバトルの激しい攻防の音が聞こえてくる。
「もうやっているみたいだな」
「当日でも受付OKだったんだよね? 受付はどこ………って置いてかれた」
受付を探そうとしたが、会場の熱気や盛り上がりに待ち切れなくなったのか、レッドはバトルが繰り広げられているであろう会場へさっさと行ってしまう。
一人になってしまったが、ここからは別行動でも大丈夫だろう。踏み止まるなら今という迷いを掻き消して、アキラは受付を探し始める。
その途中で、彼はミニリュウ達が入っているボールを手に取り、彼らの状態を確認した。
昨日と変わらずゴースとミニリュウは元気で、サンドは二匹のノリ(?)にどう反応すればいいのか困っているが取り敢えず元気そうだ。
素直に言うことを聞いて貰えるのが一番だが、許容範囲を超えない限りはある程度勝手に動かれても構わない。ただし、締める時は全力で締めるつもりなのを彼は決める。
何時もの感覚――それこそ覚えている技や手持ちのレベルをゲームに当て嵌めて考えれば、勝つ要素以前に負ける要素は見当たらない。だが、ゴースとミニリュウの二匹がどう動くかが問題だ。
この世界はポケットモンスターSPECIALと言う漫画の世界だが、今の自分にとっては現実だ。
ゲームの基準はあくまで目安や指標の一つに過ぎないので、仮に言うことを聞いてくれたとしても何が起きるのかわからない。
今の自分は、正真正銘の新米トレーナーなのだ。
ジムリーダーどころか、何年か経験を積んだトレーナーに負けてしまう可能性の方が高い。
考えれば考えるほど不安要素は尽きないが、とにかく初めてのトレーナー戦を無事に終えることができるかどうかに専念することにアキラは意識を切り替えた。
「――あっ、ヒラタ博士に事情を話さないといけないから電話を探さなきゃ」
ある意味最も重要なことを思い出し、この世界での自分の保護者であるヒラタ博士がいるニビ博物館に連絡をするべく、アキラは受付よりも電話の方を先に探し始めるのだった。
ジム内に置かれていた公衆電話を使ってヒラタ博士にジム戦を受ける事情を伝えた後、何とか受付を見つけて参加を申し込んだアキラは、流れる様にそのまますぐに予選に出ることになった。
ルールは勝ち抜き戦、ジムトレーナーを連続で五人倒せばリーダーであるタケシに挑戦できること、相手は一匹しか使わないが、こちらは交代でポケモンを複数の使用してもOK。
ただし一匹でも戦闘不能になった時点で、挑戦は終わるというものだ。
ちなみにこの時彼は、受付に今まで気になっていた賞金システムの事を尋ねた。
色々と長かったり複雑ではあったが要約すると、一般的なトレーナー戦での賞金は基本的にどちらかが一方的にバトルを申し込み、申し込んだ方が負けた場合やお互いが賞金を賭けることを了承した場合にのみ発生。ジム戦等の一部のバトルだと、挑戦者は敗北しても賞金を渡す必要は無くジム側は、負けたら無条件で相手に賞金を払わなければならない。
何故ジム戦などの一部のバトルで挑戦者側が優遇される様な賞金システムになっているのかは、基本的にジム側の実力は挑戦者側の実力を上回っている前提なので、この様に設定しないと中々挑戦しに来ない事情があるらしい。なので、今回アキラは負けても賞金を払う必要は一切無いということだ。
格闘技に用いられるリングを彷彿させるステージをアキラは急いで駆け上がると、既にイシツブテを連れたプロレスラーの様な強面の大男が腕を組んで向かい側に立っていた。
「今回は若いトレーナーの挑戦が多いな。良いことだ。どれだけやれるか見せてもらおう」
腕組みしながら笑みを浮かべた大男は、連れているイシツブテを前に出す。
一緒にファイティングポーズの構えを取るのを見ながら、アキラはボールの一つを手に取った途端、あることに気付いた。
チラリとリングの周りの観客席に目線を向けたら皆、自分に期待しているような眼差しを向けているのだ。
その視線に、冷や汗にも似た嫌な汗をアキラは掻き始める。
逆の観客席にも目線を向けたが、その席からも似た様な視線を向けられていて彼は急に緊張してきた。
期待の眼差しを向けられることは、前の世界に居た頃のサッカーの試合中でもあったことだが、距離やチームメイトの存在もあってそれほど気にしてはいなかった。
しかし、この場に居る観客達は、その気になれば手の届く距離に周りを埋め尽くす程いる。
そして殆どが、自分がどの様なバトルをするのか期待している。
加えてサッカーとは違って、彼一人で対峙していることも重なって緊張感は急速に高まって来て彼は焦る。
「どうした? 何か不都合でもあるのか?」
「あっ、すみません。でっ…出番だサンド!」
慌ててアキラはモンスターボールを投擲して、ボールからサンドが飛び出す。
手持ちの中では最もレベルが低く、決め技になる様な技は覚えていない。けれど今の手持ちの中で、言うことを聞いてくれるのはこのポケモンだけだ。まずは様子見を兼ねて、これから始まる初めてのトレーナー戦がどんな感じなのかを彼は確かめるつもりだった。
互いに向き合ったのを見計らい、プロレスみたいに試合開始のゴングが鳴り響いた。
「よしいけイッシー! ”すてみタックル”!!!」
「いきなり!?」
予想していなかった大技に、アキラは動揺する。
命を受けたイシツブテは重そうな岩の体にも関わらず跳び上がり、弾丸の様なスピードでサンドに突っ込む。あまりの勢いに、サンドは反射的に大慌てで横に跳んで躱す。
攻撃は外れはしたが、イシツブテがぶつかったリングを中心に重々しい音が響く。
幸い斜めに落ちる形での攻撃だったが、これが真っ直ぐに突っ込んでいたらサンドの後ろにいた自分は巻き添えを受けていたかもしれない。
あんなのを人がまともに受ければひとたまりもない。
アキラとサンドは揃って”すてみタックル”の直撃を受けた場合を想像してしまい、恐怖で冷や汗に加えて顔面が蒼白になる。一方、攻撃を外してしまったイシツブテだが、彼らが怯えている間に何事も無く起き上がる。
「もう一度”すてみタックル”!!」
「すっ、”すなかけ”!!!」
相手トレーナーの指示と同時に、アキラは反射的に叫ぶ。
怯んでいた所為でサンドの反応は遅れたが、また突っ込んできたイシツブテの攻撃を避けながら、命じられた通りに乾いた砂を顔に投げ付ける。
顔に砂を浴びせられたことで、イシツブテの攻撃軌道が微妙にズレる。
今度はリングでは無く囲っているロープに突っ込んできた為、サンドの後ろにいたアキラはビビリまくりながら、緊張で固まっていた体を死に物狂いで横に跳ばして避ける。
イシツブテが突っ込んだリングのロープは、勢いに応じてこれでもかと言うほど伸びていく。そしてロープの伸びが限界にまで達した途端、パチンコ玉の様に勢いよく弾き飛ばされた。
飛ばされたイシツブテは、そのまま腕を組んで立っていた自身のトレーナーの顔面に直撃。トレーナーの首は直角に後ろに曲がった。
「「「あっ」」」
予想だにしていなかった突然の出来事に、リングの上に立っていたアキラと審判、見ていた観客達も間抜けな声を出すと同時に呆気に取られた。
しかし、これだけで終わらなかった。
イシツブテは勢いを落としているにも関わらず、首が後ろに直角に曲がったせいでほとんど軌道が変わらないまま、またしてもリングのロープに突っ込んで弾かれて今度は自身のトレーナーの背中にぶつかったのだ。首が折れたと思えるほどに後ろに曲がってしまった相手トレーナーだったが、追い打ちを掛ける様な衝撃に、体をくの字に曲げてリングの真ん中まで体を飛ばす。
ぶつかったイシツブテは、その後もリングを跳ねたり転がったりとするもあまり痛そうにはしていなかった。だが二回もぶつかった主人である大男のトレーナーは、リングの真ん中で盛大にうつ伏せの大の字状態で倒れたまま動かなくなった。
「――大丈夫で…」
「動かないで!」
呆然としていたアキラだが、心配になって駆け寄ろうとするが審判に制される。代わりに審判が駆け寄り、倒れたトレーナーの容体を確認し始めた。
近付くことが出来ないアキラは、遠目で恐る恐る相手トレーナーの顔を窺う。どうやら完全に伸びているのか白目を剥いているだけでなく、鼻血が出ているのと歯が数本欠けているのが見えた。
しばらくすると審判は片手を挙げて「担架ッ!」と声を荒げた。
すぐさまスタッフが駆け付け、相手トレーナーは用意された担架に担がれる。
イシツブテも彼に付き添い、彼らは慌ただしくリングから去って行った。
「大丈夫……でしょうか?」
アキラは審判に相手トレーナーの容体を尋ねるが、彼の疑問を審判は無視してジム側のトレーナーのバトル続行不能ということで彼の勝利を宣言した。
滅多に無い裁定だったのか観客達はざわめき始め、アキラとサンドはしばらく呆気に取られた後、お互い困惑した様な表情を向け合う。
ゲームではこんな判定は存在しなかったが、今さっきの出来事と何らかの事故が原因でトレーナーがバトルを続行できなくなったら棄権となる。それがルール上存在しているのを考えると、トレーナー同士のバトルでも必ずしもトレーナーの身は安全では無いのだろう。
人生初のトレーナー戦兼ジム戦はポケモンの戦闘不能による勝利では無く、トレーナーの続行不能による勝利。その結果にアキラは、この世界での自分の先行きに不吉なものを感じるのだった。
アキラ、初のジム戦兼トレーナー戦に挑むが、相手トレーナーが気絶したことにより不戦勝。
初のジム戦。序盤はこういう形で終わらせると決めていました。
後作中で描いた様に、ポケモンってコラッタくらいの大きさでも本気になったら人間だけで止めるのはかなり怖いと思います。(でもポケモン世界の住民は案外恐れていないから慣れているのもあるかも)