SPECIALな冒険記   作:冴龍

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第三の転機

 その日、タマムシ大学内にある会議室の一つで、大学に在籍している教授に専門家などの有識者、エリカなどの地元の有力者も交えた会議が進んでいた。

 議題に取り上げられているのは、約半年前に起こった巨大サイドン襲撃事件に関することだ。

 

 野生のポケモンが、何らかの理由で人が住んでいる町に被害を出すことは時たまにある。

 しかし、それでも半年前にあったサイドンによる被害はあまりにも大きかった。

 

 更に暴れていたサイドンの身に起きていた謎の現象も自然に起きたとは考えにくい未知のもので、人為的に引き起こされたとしても誰が何の目的があるのかなど、治安の面も絡むと言った学術的な面を超えたものになっていた。

 

「ポケモンのタイプが変化することは、ポケモンが進化する時に変わることを考えると珍しい事では無い。しかし――」

 

 参加者達に語り掛けながら、グレンジムジムリーダーであり、一流の科学者でもあるカツラは発言をする。

 

 実はポケモンのタイプの変化が起こる現象については、彼がロケット団に所属していた頃から噂程度では存在していた。当時はミュウツー計画や他の計画が優先されていた為、未だ解明されていないポケモンの神秘として扱われていたが、本格的に研究されなくて良かったとカツラは安心していた。

 

 以前の自分なら、最強のポケモンを生み出すミュウツー計画同様、その力を利用するべくメカニズムを解明することに躍起になっていたのが容易に想像出来たからだ。

 

「オツキミ山や当大学に保管されている隕石が発しているエネルギーと酷似していることは確認しています。問題は、影響を与えたエネルギーの元がどこなのかです」

 

 続けてこの分野における研究の第一人者であり、タマムシ大学で教鞭を取っているヒラタ博士が問題を提起する。

 

 エリカなどの有力者の支援のおかげで、確かに研究は大幅に進んだ。だが、それでも隕石が落下した訳でも無いのに何故隕石が持つエネルギーと酷似したものをサイドンが帯びていたのかなどの謎は、未だに明らかになっていない。

 

 そもそも隕石に含まれているエネルギーが原因であるのなら、オツキミ山付近はタイプが変化したポケモンの住処になっていても不思議では無い。

 隕石が関わっているとしても、エネルギーの正体や何が影響しているかまでも解明しなければならない。

 

「確かオーキド博士から、他地方で似た様な現象があるという話が」

「いや、それよりもあれはどうだろうか」

 

 彼以外にも様々な意見が出てくるが、新しい可能性は見出せても誰もが納得出来る答えにはどうしても至らない。

 

 オーキド博士が発表した正式にその存在が認められたポケモンの種類が世間に広まるにつれて、カントー地方以外のあらゆる地方から様々なポケモンに関する情報が集まる様になっていた。

 専門レベルなので一般に広まるのはまだ先になるが、その多くがオーキド博士が纏めた150種に当て嵌まらない新種と扱っても良いポケモンだった。

 

 そういった150種以外のポケモンの中でも、同種の筈なのに色や姿が異なるポケモン、限られた条件下でその姿を大きく変化させる現象。そして今話に挙がった同種でありながらタイプが違ったり、通常の個体よりも大型化するポケモンが多くいる地方についても、集まった情報の中にあった話だ。

 今回の事件やヒラタ博士が今まで纏めてきた研究と比べて見ると、多少の類似点があると言っても良い。

 

 今まで調査範囲はカントー圏内に絞られていたが、いずれはシロガネ山を越えた先にあるジョウト地方を始めとした他地方にも広げていく必要があるだろう。

 次も同じ様な被害が出るのは、何としてでも防がなければならない。

 それが会議に参加している彼ら共通の想いだ。

 

 しかし、どれだけ意見を交わしても、それ以上有益な説や情報が挙がることは無かった。

 結局、他地方へ調査に向かう可能性があることを示唆する形で、今回の会議はお開きになる。

 参加者は荷物を纏めて退出していくが、ヒラタ博士とエリカ、カツラなどの三人は互いに話したいことがあるからなのか、部屋を出てからも議論を続けていた。

 

「隕石に含まれるエネルギーがどう関わっているのかわかれば…」

「うむ…」

 

 ただポケモンにエネルギーを与えても、何かしらの変化が起きるとは限らない。

 膨大なエネルギーで能力が高まることはあっても、生来有しているタイプと言った体質が変わるなどの大きな変化が生じるのはかなり特殊だ。

 

 だが、以前から「外的要因によるポケモンのタイプ変化」と呼ぶべき研究に携わって来たヒラタ博士は、謎を解き明かすには叡智を結集させることのみならず、理不尽な力に対抗する手段も必要であることも知っていた。

 

 隕石が発するのと類似したエネルギーの影響でタイプが変化したポケモンは、総じて気性が荒く凶暴だ。増してや半年前のサイドンレベルになると、生半可な者では調べるどころか近付くことさえ生死に関わるレベルで危険だ。

 この研究を進めていくには、他の研究以上にポケモンバトルに長けた腕利きのトレーナーの助けが必要不可欠だ。

 

「そういえばアキラ君は…」

「彼なら別室で待っていた筈です」

 

 今この場には居ない、サイドン騒動を終息させた当事者の一人であるアキラを探すカツラに、エリカは彼の居場所を教える。

 基本的にアキラが会議に参加することは無い為、彼視点からの意見や疑問は保護者であるヒラタ博士が代弁している。ヒラタ博士はエリカとカツラと共に会議室から出ると、会議が終わるのを待っているアキラがいる別室へと向かう。

 

 

 

 

 

「いや待て…これだと怪我しそうだ……う~ん…」

 

 三人が訪れた部屋の中では、ノートに何かを書き込んではブツブツと呟きながら線を引いて消すことをアキラは繰り返していた。

 後ろ姿から見てもわかるが、何やら思い詰めてしまう程に悩んでいる様子で、やって来た三人は思わず口を閉じてしまう。

 

 そんな彼とは対照的に、彼が連れているポケモン達は何時も通り、各々が自身にとって楽な姿勢で寛いでいた。中には器用にトランプのババ抜きに興じている者さえおり、一見普段と変わらず自由奔放に過ごしている様に見えなくもなかった。

 しかし、下手に彼の集中を乱したら悪いと思っているのか、部屋の中はアキラの呟きやノートに書き込まれる音しか聞こえないまでに静かだった。

 

「彼は…どうしたのですか?」

「最近伸び悩んでいるらしい」

「伸び悩んでいると言う事は、スランプでしょうか?」

 

 カツラの問いに保護者であるヒラタ博士は、これまでの彼の動向を思い出しながら訳を話すが、エリカの答えに少しだけ不思議そうな顔をする。ヒラタ博士は、あまりポケモンバトルが得意と言う訳では無いが、スランプと言われるとイメージは出来る。

 トキワの森で彼を保護して二年、困ったり悩む姿は度々見てきたが、最近は何時になく順風満帆に見えていただけに意外だった。

 

「ただのスランプと言うよりは…連れているポケモン達は全員進化を終えただけでなく、四天王と言う強敵を倒したことで燃え尽き症候群に似た感じになっているのかもしれません」

「燃え尽き? あの戦いが終わった後でも、アキラ君は何時もの様に鍛錬を続けておったが」

「無理に鍛えても逆効果です。場合によっては悪循環にも繋がります」

 

 エリカの考察に、ヒラタ博士は納得する。

 スランプに陥ったからと言って、練習量を増やしたり休めば抜け出せるものでは無い。何が切っ掛けで抜け出せるかわからないからこそ、スランプに陥るものだ。

 そして今のアキラは、保護者として今まで面倒を見てきたヒラタ博士でも一番悩んでいる様に見えた。中にいる彼のポケモン達と彼自身の様子に注意しながら、博士は部屋の中に入るとアキラに声を掛ける。

 

「アキラ君、何を悩んでいるのかね?」

 

 調査していたトキワの森で偶然アキラと出会った時の事は、今でも昨日の事の様に憶えている。

 記憶喪失気味なことや警察の捜索でも身元が判明しなかったこともあって、彼の面倒をヒラタ博士は今日まで見てきた。

 不思議な一面を度々見せることはあるが、彼がポケモントレーナーとしての才に恵まれていたおかげで、今では多くの人達がその力の恩恵を受けてきた。だけど、そんな事とは関係無く、純粋に保護者として博士はアキラの事を心配していた。

 顔に疲れの色が浮かんでいる彼の姿を見て、何か力になってあげたかった。

 

「ちょっと色々ありまして…」

「スランプかね?」

「――そうかもしれません」

 

 素直にアキラは、今自分が置かれている現状を認める。

 手持ちは現段階では完成の状態、自身もバトルに活用すれば大きな力を発揮できる能力を扱う事が出来る。後は可能な限り技を覚えたり地力を上げるだけで良い筈なのだが、何故かそれらの試みは上手くいかない。

 

 寧ろ、大き過ぎる力に振り回されて以前よりも大雑把且つ力任せになっている。

 これをスランプと言わず、他に何と言う。あの手この手で思い付く限りのことをノートに書いて解消手段を発展させようとしているが、すぐに問題点に気付いては消すことを繰り返していて本格的に悩んでいた。

 

「そう深刻に悩んでいたら、解決するものも解決しませんわ」

 

 続けて部屋の中に入って来たエリカもアキラを励ます。

 若くしてポケモンリーグの頂点に立ったレッドと互角と言っても良い実力を持ち、一か月前の四天王との戦いではレッドの救助にイエローの手助け、そしてクチバシティでは四天王の軍勢を一手に引き受けての時間稼ぎなど大きな役割を果たした。

 

 世間ではあまり取り上げられなかったが、彼は正に陰の功労者であり必要不可欠な存在だった。

 心配を掛けさせているだけでなく励まされていると気付いたのか、アキラは手に持っていた筆記用具を手放して失礼の無い様に彼らと向き合う。カツラも話に加わろうとしていたが、同室で寛いでいた彼の手持ちの何匹かの鋭い視線を感じて部屋の外に留まることにした。

 そんな時、交互にエリカと彼に視線を向けたヒラタ博士はある解決策を閃いた。

 

「そうだ。ポケモンバトルでスランプに陥っているのなら、ジムリーダーを務めているエリカ君に定期的に指導をお願いしたらどうかね?」

「え?」

 

 博士の提案に、寝耳に水と言わんばかりにアキラは目を見開く。

 彼がこの二年間にやって来たポケモントレーナーとしての鍛錬や勉強法は、読み込んできた膨大な書物を参考にしながら、レッドの協力や目の前にいるエリカなどの知り合いであるジムリーダーからの助言。果てには野良試合で負かされた相手トレーナーからも、可能であるのなら情報交換名目で尋ねたりもしてきたが、ほぼ独学な側面が強い。

 確かに本格的な形で、経験豊富な彼女からポケモントレーナーとしての指導を受ければ、今抱いてる悩みの幾つかを解決出来るだろう。

 

「あの…ヒラタ博士…確かに良い提案だとは思いますが……」

 

 忘れがちではあるが、トキワの森に置き去りにされる以前の記憶が無い身元不明の少年であるのを装っているアキラは、ヒラタ博士の家でお世話になっている身だ。

 

 家事の手伝いや博士の研究の手伝いや護衛と言う名目での同行など、思い付く限りの恩返しをしているつもりだが、手持ち関係で援助もして貰っているので十分とは言えない。

 その為、これ以上保護者であるヒラタ博士に負担が掛かる様なことは気が引けるので、自然と誰かから本格的にポケモンバトルを教えて貰う選択肢を消していた。

 

「構わん。儂としてはアキラ君がより強くなってくれた方が、嬉しくもあるし助かるからの」

 

 戸惑うアキラを余所に、エリカからポケモンバトルの指導を受けさせることにヒラタ博士は好意的であった。

 アキラはあまり意識していないが、既に彼の存在はヒラタ博士などを始めとしたポケモンバトルの腕に恵まれなかった研究者にとって欠かすことの出来ない大きなものになっている。近年タマムシ大学でポケモンの生息域などの調査や研究が捗る様になったのは、アキラが強力なポケモンを率いて護衛をしてくれることで、難しい危険地帯への探索が可能になったおかげでもあるからだ。

 研究者はオーキド博士の様な例外を除くと、どうしてもポケモンバトルに強いとは言い難い人材ばかりだ。

 

 博士自身、最近物騒な出来事が続いているので、新しい手持ちを加えて少しでも戦力強化を図ってはいる。しかし、それでも彼の力が無いと行うのは厳しいと言わざるを得ない調査や研究は多い。

 アキラが更に強くなるのは、単純にメリットしかない以外にも、何が起きるのかわからない今後を考えると必要であると言っても良い。

 

「――どう思う?」

 

 視線を移しながら、アキラは手持ちのポケモン達にヒラタ博士の提案の是非を問いた。

 しかし、博士の提案を聞いていた彼の手持ち達は総じて難色を示していた。

 

 エリカに教わると言う事は、即ち彼女方式での指導を仰ぐと言う事だろう。

 彼女はタマムシジムのジムリーダーであると同時に、タマムシ自警団のトレーナー達にも度々指導を行っている。アキラ自身もバトル以外のポケモン関係も含めて、わからない時や困った時に彼女から助言を貰ったりしてきたので、指導者として優れていることは知っている。

 

 彼のポケモン達もエリカの実力は認めているし、何かとお世話にはなっているので恩が無いと言う訳では無い。

 しかし、彼女のポケモン達の戦い方を知っているからなのか、それでも何とも言えない空気が六匹の間では漂っていた。

 

「アキラとしては、誰が浮かびますか?」

 

 遠回しに拒否されていると言っても過言では無い反応であるのを気にせず、エリカは自分以外に師事を仰ぎたい人物をアキラに尋ねた。

 

 アキラのポケモン達が自分好みの戦いをするタイプなのは、彼の友人でありライバルのレッドや保護者であるヒラタ博士らに次いで彼女は良く知っている。下手にこちらが決めると言う形で束縛させるよりは、彼らが納得する指導者を見つける方が彼らの為だ。

 普通ならそう簡単に師事を仰ぐ相手は浮かばないものだが、アキラの頭の中に鍛え抜かれた体を持つ屈強な男の後ろ姿がすぐに浮かんだ。

 

「……シバさん」

 

 少しだけ間を置いてからアキラは素直に、二人に頭の中に浮かんだ人物の名を挙げた。

 恐らく、今自分が最も知りたいことや学びたいと考えていること全てを知っている。

 或いは理解してくれるとしたら、今まで会ったトレーナーの中では彼しか浮かばない。

 しかし、その人選は問題だらけでもあった。

 何故ならシバは一か月前まで、カントー地方の命運を賭けて敵対していたカントー四天王の一人だからだ。

 

「シバですか。何故彼の名を挙げたのですか?」

「それは――」

 

 二年前、オツキミ山で手合わせをした後に意気投合したことやお互いトレーナーとしての方針が似ていること。それ故に今自分が求め、必要としていることを知っているだけでなく理解している可能性が高いこと。四天王との戦いの時に伝えたことも含めて、アキラはエリカとヒラタ博士に全て正直に話した。

 

「そうですか。彼については、レッドからも同様の話を窺っていますので大丈夫だと思いますが、行方は知っているのでしょうか?」

「知らないです…」

 

 スオウ島での戦いの後、シバは他の四天王と同様に姿を消している。

 もう既に薄れている漫画を読んでいた頃の記憶を頼りに彼の行方を思い出す。

 今頃シバは、スオウ島を去る途中で助けたキョウと意気投合。一緒にレッド達との再戦を目指して、どこかで特訓しているだろう。

 無事ではあるが、詳細な居場所が不明であることには変わりない。

 

「シバか…そういえばアキラ君は体を鍛えたいと言っておったな」

「それでしたら……タケシはどうでしょうか? 彼もジムトレーナーや地元警察へのポケモンバトル指導は勿論、日々ポケモンだけでなく自らも鍛えています」

「タケシさんですか」

 

 エリカが挙げた人物の名に、アキラもぼんやりとだがニビジムジムリーダーを務めている彼の姿を思い出す。

 タケシもシバ程では無いが、その身をジムトレーナー達と一緒に()()()()()()()を主軸に据えて日々鍛えている。何故アキラがそんなことを知っているのかと言うと、丁度一年くらい前にタケシに再戦をしに向かった事があるのだ。

 

 その時、彼らのイシツブテ合戦を見学していたら、流れ玉ならぬ流れイシツブテが顔面を直撃するアクシデントに見舞われた。おかげで乳歯の何本かが折れ、しばらく鼻血を出して気絶していたのは今では笑い話だ。

 

 タケシ案にはカイリューやゲンガー、サンドパンなどの初期に挑んだ経験のある三匹を中心にポケモン達は、それなりに良い反応を見せる。

 だが、それでも何かアキラが求めているものからズレている気がしなくも無かった。

 

 アキラが知りたいものと求めているものは、自らの目を使いこなせる様に純粋にトレーナーとしての技量を上げる事と、手持ち達と共に戦いの渦中に飛び込めるだけ自らの体を鍛える事だ。最終的な目標は、カイリューと一心同体になった様な感覚を突発的では無く自らの意思で自由に発揮出来る様にすることだ。

 詳細な発動条件は未だに良くわかっていないが、何もあの感覚は自分とカイリューだけのものではないはずだ。

 

 シバの様に自らの体を絶えず鍛え、その彼か自分と同じ考えか近い方針を持ち、トレーナーとして優れた実力を有するだけでなく指導者としての技量もある。

 

 改めて自分が師事を仰ぐ人物に求める条件を頭の中で纏めるが、随分と贅沢な要求であるのにアキラは我ながら呆れる。大体シバの様に、自らの体もポケモンと同じくらいハードに鍛えるポケモントレーナー自体かなり稀有だ。

 今まで道中で手合わせをしたことがあるトレーナーの中でも、自らも鍛えていると感じられたトレーナーは少なかった。()()()()()()の様な実力者で求めている条件を照らし合わせても、本当に――

 

「――ん?」

 

 そこまで考えて、アキラはあることが引っ掛かった。

 トレーナーもポケモンと一緒に鍛えるという、自分が最も求めているのに近い考えを持つ、名が知られている人物がシバ以外にもいた気がするのだ。疲れた頭をフルに働かせて、アキラはその人物が何者なのかを思い出そうとする。

 しかし、憶えているのとあやふやなのがごちゃ混ぜになって、上手く目的の記憶だけを明確に引き出せない。

 

 こういう時の為に、この世界がどの様な流れを辿るのかを憶えている限り落書きや暗号めいた形で記したノートはある。だけど、そのノートは自室に振り分けられた屋根裏部屋に置かれているので今手元には無い。第一、いざとなったら燃やして証拠隠滅も辞さない代物なので、他者の視線があるところで確認するものでも無い。

 

 仕方なく、頭に浮かんだキーワードを連想ゲームの様に、アキラは次々とノートに書いて行く。

 指を動かしながら考えていく内に、彼は少しずつ頭に引っ掛かったものを思い出す。

 そして、連想した末に至った記憶をハッキリとした形で思い出すと同時にアキラはハッとした。

 

「そうだ。あの人なら」

 

 さっきまでアキラが抱えていた悩みと憂鬱な気分は、跡形も無く吹き飛んだ

 トレーナーがポケモンと変わらず体を鍛えるのは、何も単純に彼らに付いて行けるだけの身体能力と体力を養うだけでは無い。

 

 それよりももっと大事なことだ。

 

 腕の立つトレーナーには自らの体を鍛える者は多いが、それを目的にした上で鍛えているのはもっと少ないだろう。恐らくシバも特注のヌンチャクを使いこなす以外にその狙いがあったからこそ、ポケモンと共に自分自身も極限状態に置きながら体を鍛えていたのだ。

 

 方針は決まった。

 だけどその前に、記憶が正しいのかや本当に求めているのがそこにあるのかなど、色々確認しなければならない。その為の第一歩として、振り返ったアキラは保護者であるヒラタ博士とお世話になっているエリカに尋ねた。

 

「すみません。グリーンは、今どこにいるのかご存知でしょうか?」




アキラ、悩みに悩んだ末、遂に解決への活路を見出す。

ようやく第一話からさり気なく描いていた要素に辿り着く寸前まで書けて、安心した様な喜びたい様な、とにかくそういう気持ちです。

アキラのタマムシ大学での立場は、ちょっとした野生のポケモンでも手こずるのが多い研究者や学生達にとって、研究への理解があるだけでなく確実に護衛をこなしてくれるありがたい存在です。
若い頃のオーキド博士や最近登場するククイ博士などの若い博士も強いのですけど、知識が豊富でも体力などの身体能力も要求されるポケモンバトルの分野でも強い研究者は貴重だと思います。
ただ、オーキド博士の方は年の影響なのか相手が強いのか良く負けちゃっていますが。

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