SPECIALな冒険記   作:冴龍

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狂気の竜

「何?」

「な、何が起こったんだ?」

 

 刹那に起きた出来事に、観客達の殆どは何が起きたのか理解出来なかった。

 

 先程まで挑戦者であるレッドは、ピカチュウの扱いに手を焼き、イワークの攻撃を避けるだけで精一杯のはずだった。それなのに今では、いわへびポケモンはバラバラの状態でリングの上を転がり、ジムリーダーであるタケシさえも何が起きたのかわからず愕然と両膝を付けている。

 レッドの方も、華麗に勝負を一撃で決めて得意気な表情を浮かべているピカチュウの姿に呆然としていた。

 

 観客席から少し離れた入り口付近で、アキラは一見すると冷静な様子でリングを眺めていたが、あまりに非現実的過ぎる光景に内心では唖然としていた。

 

「――デタラメ過ぎる」

 

 全て知っていた通りに事が進んだ証だが、この光景を作るきっかけとなったピカチュウの強さを言葉で表すなら、これ以上に相応しいのは彼には思い付かなかった。

 確かにピカチュウがイワークに放った電撃のパワーは、誰が見ても途轍もなく膨大だった。

 だが、それでも電気技無効の筈であるじめんタイプが混ざっているイワークをダメージを与えるどころか一撃、それも派手に倒したことが信じられなかった。

 やがて審判が放心状態のレッドの手を挙げて勝利を宣言すると、観客達は耳を塞ぎたくなるほどの大歓声でジムリーダーに勝った彼を称えるのだった。

 

 

 

 

 

「良かったなレッド。相性最悪のはずのピカチュウでイワークに勝つなんてすごいよ」

「あ…あぁ……」

 

 ジム内の会場に繋がる通路で、アキラはバッジを手にしているレッドを祝うが、当の本人は未だに勝ったという実感が湧いていないのか反応が鈍い。

 

 あの後レッドは、呆然としたままニビジムに勝った証であるグレーバッジを受け取り、更には手持ちの回復までして貰った。

 しかし、勝ったとはいえあまりにも衝撃的な出来事だったのか、バッジを受け取る時でもスタッフにポケモンを回復装置に入れる時でも意識はここにあらずと言った状態。気が付いたら、様子を窺いに来たアキラと一緒にジム内の通路を歩いている程だった。

 

「…勝ったんだよな。俺」

「そうだよ。勝ったんだよ。――ピカチュウのおかげで」

 

 現実を確認する様に呟くレッドに、アキラは彼が勝ったことを改めて伝える。

 今回の勝利の立役であるのピカチュウは、戦う前の不愉快な表情はしていなかったものの、ツンとした様な雰囲気を漂わせながらボールの中で寛いでいた。

 

「そうだよな。勝ったんだ。俺は、ジムリーダーに!」

 

 そう呟いた途端、レッドの表情は一気に明るくなり両手を挙げて「やったーッ!!」と喜びの声を上げた。

 声が通路内を反響するほどの感情の起伏にアキラは呆気にとられるが、次の言葉を口にする前に彼に肩を何回も強く叩かれた。

 

「お前もタケシと戦うんだろ? 絶対勝てよな!」

「まぁ…できれば」

「できればって相変わらず弱気と言うか慎重だな。やる前は「心配」とか言っておきながら、ここまでしっかり勝ち上がっているじゃんか!」

 

 レッドもアキラと同様にチラ見程度だが、彼の戦いを見ている。

 ミニリュウが出てきたのは最後の五戦目であったが、ゴースを追い詰めたガラガラを苦も無く倒したのと壁を抉った強力な”はかいこうせん”は印象に残っている。

 タケシが繰り出すいわタイプの多くは、じめんタイプとの複合だ。

 そんな彼らと相性の良い”れいとうビーム”までミニリュウは覚えているのだ。負ける要素らしい要素は、殆ど無いと言っても過言では無い。

 しかし――

 

「勝敗は言うことを聞いてくれるかに懸かっているから」

「あっ、確かに」

 

 普通に考えれば確かに負ける要素は無いが、ミニリュウもピカチュウと同じでトレーナーの言うことを聞こうとしない。手持ちに迎えてから数日経っているが、ミニリュウがこちらの指示にまともに従ったことは殆ど無い。それに嫌がらせなのか意地なのか、どうもこちらが技の指示を出すと指示した技とは全く別の技を出す傾向がある。

 どうしたらいいかと悩んでいた時、少し離れた会場にいる観客達から割れんばかりの大歓声が聞こえてきた。

 

「どうやらレッドのライバルも勝ったみたい」

「あ・い・つ~~」

 

 両手を固く握り締め、歯を強く噛み締めたレッドは露骨に悔しそうな表情を露わにする。

 レッドのライバルとは、言うまでも無くグリーンのことである。

 アキラが目を凝らしてリングの上を見てみると、体の一部が欠けて仰向けに転がっているゴローンを前に、ワンリキーが腕を組んで悠然と立っているのが見えた。タケシと言えばイワークのイメージが強いが、ああも派手にやられてしまってはすぐに回復できる筈がないので、別のポケモンで挑むのは仕方ない。

 

 これでイシツブテがゴローンに進化している点を除けば、ゲーム内でタケシが使用する手持ちは全てやられた。そうなると三人目の挑戦者である自分は、どうなるのだろうか。頭を捻って、アキラは憶えている限りの記憶を引っ張り出す。

 

 ゲーム序盤で相手にする時のタケシの手持ちは、イシツブテにイワークの二匹だが、この世界ではツブテ兄弟なるイシツブテ達にカブトプスも使っていた。そこまで思い出したアキラだが、あることに気付いて記憶のサルページを止めた。

 

 イワークにゴローンと軒並み強いのは、レッドとグリーンにやられている。

 ジムリーダーが育てているとはいえ、この二戦の事を考えるとタケシがイシツブテを出してくるとは考えにくい。となると残るのは、今から三年近く後のポケモンリーグか何かの機会に登場したカブトプスくらいだ。もしカブトプスを出されたら、タイプ相性的にミニリュウの対抗手段は”りゅうのいかり”や”でんじは”などに限られる。

 

「…ヤバイかも」

 

 そこまで考えたアキラは、まさかカブトプスを相手にするのではないかと心配になり、どう戦えば勝てるのかどうか真剣に悩み始めた。

 しかし、彼はタケシがカブトプスを入手する細かい過程まで記憶していなかったので、実はこの心配が杞憂なのには気付いていなかった。

 

 

 

 

 

 アキラが勝手に悩んでいたその頃、グリーンとのバトルを終えたタケシは休憩の為に一旦部屋に戻っていたが、少し重い表情で椅子に座っていた。

 

 レッドとの戦いで自慢のイワークが、ピカチュウの電撃で一撃でやられるだけでなくバラバラにされてしまった。ただ倒されるならともかく、相性的には圧倒的で有利な相手、それも最も効かないはずのタイプの技でイワークが倒される出来事に出くわすのは、これまでのトレーナー人生の中で初めてのことだった。

 

 次のグリーンとのバトルでは気にしない様にしていたが、影響は思いのほか大きかった。

 年が近いからなのか、彼の姿がレッドと度々重なって見えてしまってしまって本来の力を十分に出し切れずに敗れてしまった。次の相手も、さっきまでの挑戦者達とほぼ同じ年だ。

 しかも使うポケモンも言うことは聞かないが強いなど、レッドのピカチュウと共通点がある。

 

「だけど、だからと言ってまた負けるわけにはいかない!」

 

 拳を握り締めてタケシは勢いよく立ち上がった。

 その時気が付いたが、何時になく心臓の鼓動が早く感じられる。

 彼は自身の焦りを肯定して、改めて逸る精神を落ち着けようとする。

 

 ジムリーダーの役目はただ挑戦者に勝つのではなく、挑戦者の力量を図ったり、更なる高みにまで引き上げる。或いは、その切っ掛けになることが最も重要な役目だ。

 腕を組んで静かに気持ちを静め、部屋の片隅に置いてある回復装置に歩み寄る。

 回復装置に置かれているボールの中には、先ほど戦ったイワークとゴローンが入っている。

 二匹ともかなり大きなダメージを受けてはいるが、順調に回復している。

 

 回復装置に入っているポケモン達の様子を窺った後、タケシはその隣の棚の上に置いてある四つのボールの内一つを手に取った。

 

 何時もなら予選を突破して挑戦権を得られるのは一人か二人程度だが、一度に三人も自分に挑戦してくるのは久し振りだ。

 イワークやゴローンはお気に入りのポケモンであることは確かだが、何人挑んできても大丈夫な様に、彼は多くのいわポケモンを満遍なく育てている。今手に取ったボールに入っているポケモンも、イワークやゴローンに比べれば出す頻度は低いが、実力は二匹にも引けを取らない。

 

「よし、いくぞ!」

 

 気持ちを新たにした主の後姿を部屋にいたツブテ兄弟達、回復装置に入っていたイワーク達は見送り、タケシは部屋から出た。

 

 

 

 

 

 

 時は少し経ち、会場へと繋がる通路をアキラは慌てた様子で走っていた。

 結局タケシにどうやって対抗すればいいのか思い付かなく、緊張のあまり頻繁にトイレに入ってはまた戻るのを繰り返していたら、何時の間にか試合開始時間寸前になっていたのに直前まで気が付かなかった。

 

 もしカブトプスが出てきた場合の対応は、その時に考えれば良い。まさかいわタイプとは言え、そんな強いポケモンが出てくるとは考えにくい。と都合の良いことをアキラは考えていた。

 会場内に駆け込むと、ジムリーダーであるタケシが腕を組んで待っているのを見て、彼は急いでリングをよじ登る。

 

「遅れてすみません」

「構わない。始めよう」

 

 タケシは気にしていない素振りを見せるとボールを一つ手に取り、アキラもボールの中の様子を窺いながら構える。

 ボールの中に入ってるミニリュウは素知らぬ顔をしており、これからバトルをする表情ではなかったが、もう退くことは出来ない。

 試合の命運を決めるPKを蹴る様な緊張感を抱くが、それ以上にミニリュウがしっかりと戦ってくれるかの不安の方が勝っていた。どちらにしろ、緊張している状態なのには変わり無い。

 

「よし。いけっ! ミニリュウ!」

「いくぞ、サイホーン!!」

 

 前もって考えていた通り、アキラはミニリュウを召喚する。

 対するタケシは、岩の様な固い皮膚に覆われたサイの様なポケモンであるとげとげポケモンのサイホーンを繰り出してきた。

 まだ試合開始のゴングは鳴っていないが、出てきたサイホーンは相手を威嚇するように大きな声で吠える。能力的にもタイプ的にもカブトプスよりは遥かにマシではあるが、サイホーンの放つ威圧感にアキラは嫌な予感がした。

 

 ただ、吠えてくれたおかげなのかミニリュウはだらける様なことはせずに、怪訝な表情でサイホーンを睨み付ける。すると対抗するようにサイホーンは睨み返して気合が入っているのか、右前足でリングを掻いて万全の体勢なのを示す。

 挑戦状を叩き付けられたことを理解したのか、ミニリュウの目付きは何時もの凶暴で好戦的なのに変わり、周りの空気も一変する。

 同時に審判がゴングを鳴り響かせ、試合開始を告げた。

 

「サイホーン、”とっしん”だ!!」

「”たたきつける”!」

 

 タケシの素早い指示に、サイホーンは忠実に従って一気に駆け出す。

 対してアキラは、一見無謀な迎え撃つ指示をミニリュウに出す。狙いはミニリュウが自分の指示する技と違う技を出す傾向を利用して、本命である技を出させようとする作戦だ。

 

 今にも真正面から挑みそうな雰囲気だったが、ドラゴンポケモンは指示とは違う技すら出さずに”とっしん”してきたサイホーンをだるそうに避ける。

 ところがサイホーンは避けられたことに気付くと、前足でリングを強く踏み締めて強引に方向を変えて、すぐ横にいたミニリュウを宙に突き上げた。

 

「ミニリュウ、そこから”りゅうのいかり”だ!」

 

 宙に上がったミニリュウが体勢を立て直したのを見て、アキラは次の指示を命じた。

 流石にサイホーンの力を知ったのか、ミニリュウは指示に従って体内から口元にエネルギーを素早く集めて下のリングへ向けて光線を放つ。

 

 

 ただし標的はサイホーンでなくアキラだった。

 

「ギョエェェ―――ッ!!!」

 

 不意を突く様に放たれた自分への攻撃を受けて、アキラは思わず奇妙な悲鳴を上げる。

 そして”でんじは”の直撃を受けた彼は、そのまま体の至る所を焦がしながら倒れてしまう。

 まさかの事態に審判は駆け寄ろうとするが、タケシは制した。

 

「大丈夫だ。痺れが取れればすぐに起き上がれる」

 

 初戦で彼が戦った相手の様に、完全にトレーナーの意識が無くなったわけではない。ただしばらく動けなくなっただけだ。

 実際アキラは痙攣こそしているが、意識はハッキリしているらしく体が動けないことの不満や何故ミニリュウが攻撃してきたのかをぼやいている。それよりもタケシは、戦っているポケモンでなく自身のトレーナーに対して攻撃したミニリュウに目を向けた。

 

 リングに降りたミニリュウは、アキラが倒れているのを見て清々した様な表情を見せた後、すぐに凶悪な目付きで横にいたサイホーンに対して、不意打ちに近い形で尾を叩き付けてきた。強烈な一撃がサイホーンの頭部に直撃して、鈍い音が会場内に響く。

 

 ところが、頭が少し動いた以外サイホーンに目立ったダメージは与えられなかった。

 そのまま尾をぶつけたまま固まっているミニリュウをサイホーンはリングの隅に弾き飛ばす。

 ミニリュウは激しく体を転がすが、素早く起き上がるとまた口に光を集め始める。

 

「”しっぽをふる”だ!」

 

 特殊技が来ると察知したサイホーンはミニリュウに尻を向けて、短い自身の尾を左右に大きく振り始めた。振られる尻尾の動きに気を取られたからなのか、ミニリュウの首も無意識にそれに合わせて動いてしまう。

 集められたエネルギーは、”はかいこうせん”として放たれたが狙いがズレていた為、ギリギリのところでサイホーンから逸れてしまう。

 

「”みだれづき”!!」

 

 尾を振った勢いから顔を正面に転じてサイホーンは突っ込んでいくと、ミニリュウも正面から迎え撃つべく突っ込む。

 

 すっかり蚊帳の外になってしまっていたアキラは、何とかして体を動かそうとしていたが”でんじは”の影響で痙攣や痺れは無くならず、口を動かす以外まともに動けなかった。今日はボールから出してもすぐに攻撃しなくなっただけに油断していたが、まさかこんな肝心な時に狙ってくるとは夢にも思わなかった。

 

 次から指示できないように攻撃をしてきたのを見る限りでは、自分の的外れな指示の狙いにミニリュウは気付いたのだろう。

 音からしてミニリュウは勝手に戦っていると思われるが、相手が相手なだけにただ単純なゴリ押しでどうにかなるとは思えない。

 

「アキラ起きろ! 早く起きるんだ!」

 

 観客達に混ざって試合を観戦していたレッドは、未だに倒れたままの彼に呼び掛ける。

 何やら慌てている様子だが、腕も足も動けない今のアキラにはきつい要求だ。

 けれども立ち上がれなくても良いから、最低限でも試合の進行状況を見守らなければならないと意識して首だけでも動かそうとした時、ミニリュウが彼の側に転がって来た。

 見ていない間に多くの技を受けたのか、水色と白の体は汚れや痣だらけとボロボロの状態で、今にも倒れそうだ。

 

「大丈夫か?」

 

 転がってきたミニリュウにアキラは心配そうに声を掛けるが、返事として顔を尾で強く打ち付けられた。余計な心配だ、と言わんばかりの返しに、彼は手が動かせない所為で顔を抑えることもできず、呻き声を漏らしながら痛みにもがく。

 

 その間にミニリュウは、再び口にエネルギーを集中させ始めた。

 色からして放とうとしているのは彼が望んでいる技である”れいとうビーム”ではなく”はかいこうせん”だったが、またしてもサイホーンの”しっぽをふる”で惑わされて外してしまった。

 

 何とか痛みを耐えて一連の流れをこの目で見たアキラは、”しっぽをふる”にこんな効果があるとは思ってもみなかったが、今はそれどころではない。

 飛び技が役に立たないと判断したのか、体は傷だらけであるにも関わらず、ミニリュウは”こうそくいどう”で一気に迫ると、”たたきつける”を狂った様に連続で叩き込む。その勢いはサイホーンを圧倒するが、岩の様に固い体皮によってダメージを大きく軽減されて、効果的な攻撃とは言えなかった。

 

「待て待てミニリュウ、その攻撃は相性が悪過ぎる」

 

 見ていられなくなったアキラは、強引に体を起き上がらせて、一旦サイホーンと距離を取ったミニリュウを止めようとする。

 しかしミニリュウは、彼の忠告とは真逆の”たたきつける”を主体にした戦い方を続ける。

 だが後先考えずに全力を出していたからなのか、次第にミニリュウの攻撃は弱まり、その隙を突いた”つのでつく”を受けて遂に体がフラついた。

 

 怒り狂っていると言っても過言では無い猛攻を仕掛けてきたミニリュウに、タケシは言葉では表せない厄介さを感じていた。

 もう倒れていてもおかしくないダメージを受けている筈なのに戦い続けるタフさ、尋常じゃない猛攻、いわタイプで無ければ耐え切るのは難しかっただろう。

 バトルをする前、タケシはアキラのミニリュウをレッドのピカチュウとの共通点に加えて、傍若無人に高い実力を揮うポケモンと考えていた。ところが目の前のポケモンは、そんな生易しいものでは無かった。

 

 人を嫌っているどころか、憎んでいると言っても良い程だ。

 

 一体何があったらここまでになるのか。挑戦者であるアキラが虐待の様な酷いことをするとは思えない。彼もミニリュウの扱いに困っていた。となるとこのドラゴンポケモンは、彼が手にする前からこんな感じだったのかもしれない。

 だけど野生のポケモンが人を嫌うことはあっても、普通ならここまで攻撃的にはならない。

 攻撃を躱す様に指示を出しながら、何故これ程までに人間や従うポケモンに怒りをぶつけられるのかタケシは理由を考えるが、相手の動きが止まったのを機にバトルの終わりに意識を向けた。

 

「もう限界だな」

 

 見た感じではミニリュウはもうフラフラで、勝敗はほぼ決しているも同然だ。

 これ以上戦う意味は無いと判断したタケシは、試合を終わらせるべくサイホーンに止めを刺すのを命じる。主人の命にとげとげポケモンは吠えながら突っ込んでいくが、ミニリュウは突進を避けると口元を光らせた。技を放つ前触れであったが、顔の向きは何故かすぐ横のサイホーンではなくタケシがいる方に向けられていた。

 

「まさか…」

 

 長年ジムリーダーとして磨かれてきた直感が警鐘を鳴らす。

 

 あのポケモンは自分を狙っている。

 

 人に対して憎悪に近いものを抱いていると察していたが、まさかジム戦中に相手ポケモンに狙われるのをタケシは全く予想していなかった。

 反射的に彼の体は身に迫った危険を避けるべく動こうとしたが、その必要は無かった。

 

「それはダメだ!!!」

 

 今に放とうとした瞬間、トレーナーであるアキラがミニリュウに飛び掛かったのだ。




アキラ、ジム戦に挑むもミニリュウの超えてはならない一線を越えるのを阻止する。

次回でニビジム戦は終わります。
ミニリュウの過去については、今後触れる様で触れない様な微妙なところです。
忘れた頃に出てくるかも。

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