すまない。
もう一つの小説にも多大な時間を掛けているというのに、新たに小説を投稿する私を許してほしい。
本当にすまない。
この小説は横島君が艦これ世界に入り込むお話です。
今回は入り込むまでですけどね!
それではまたあとがきで。
プロローグ
その日、美神除霊事務所にはとんでもなく怪しい二人組みが仕事の依頼に来ていた。
「……ゲームに関する依頼、ですか」
「ええ。風の噂で聞いたのですが、貴女方はあの超名作『キャラバンクエスト』に悪霊が取り付いた際に、ゲームの中へと入り込んで除霊をなさったとか」
美神は相手の言葉に相槌を打ちながら、胃に鋭い痛みが走るのを感じた。それというのも眼前の相手が色々な意味でオカシイのである。
まず美神に依頼内容を説明した男。名前を『
日本人風の名前をしているが、その外見はアジアの生まれではなさそうであり、コーカソイドと推測させる。
彼は神々しいまでの雰囲気を放っていて、神々しいまでに白いTシャツを着ており、そのTシャツには神々しさを感じさせる筆致で『我は
ちなみにあだ名はキーやんなのだそうだ。
「そんでな? ワシの部下がゲームの元になる部分を大量に作ったのはええんやけど、その……死んでもうてな。取り合えずそのまま残しとくのももったいないからってんで、それを使ってゲームを作ったんよ。そしたらもう、ゲームのキャラがまるで生きとるみたいでな? せやからそのゲームがどうなってんのかを調査してもらおうと思ってここに来たんよ。ついでにテストプレイとか、出来ればレポートを提出してもらったりとかもやな」
より詳しく依頼内容を話したのは、家須の共同経営者であり、社長を務める『
彼も家須に負けず劣らず禍々しい雰囲気を纏っていて、禍々しい黒色のTシャツを着ており、そのTシャツには禍々しさを感じる筆使いで『――魔王再臨』と書かれている。
ちなみにだがあだ名はサっちゃんである。
美神はうんうんと頷きながら、激しい胃の痛みに耐えている。目の前の二人はもう明らかにあれだ。正体を隠している――全然隠しきれていないし隠す気があるのかも不明だが――つもりらしいが、もう分かりやす過ぎる程に分かりやすい。
だと言うのに隣に座る横島はその正体に気付いていない。それどころか互いをあだ名で呼び合う程に意気投合している。その能天気な
「それで、どんなゲームなんです? やっぱりRPGとかそっち系っすか?」
横島の質問に家須が答える。
「いえ、違います。ジャンルは育成シミュレーション……ですね。レベルの概念もありますので、そういったところはRPGっぽいといえばぽいですが」
「はあ、育成っすか。犬とか猫とか、動物のそういう系?」
横島の言葉使いに美神は更に胃を痛める。目の前の二人からすれば自分達なぞ風の前の塵に等しい。機嫌を損ねるようなことだけはしないで欲しいのだが……。
「動物ではありませんよ。擬人化させた軍艦を集めて艦隊を作り、奪われた海を取り戻す……。つまりは軍艦を集めて育成するゲームです」
「軍艦かー……それで擬人化ってことは、つまりはおっさんばっか何でしょ? やる気おきねーなー」
「いえいえ、そんな事はありませんよ。昨今の流行は美女美少女化! このゲームに出てくる登場人物は全て女の子なのです!!」
「美神さん。この依頼、俺に任せてください!!」
「……あー、そーねー。それが一番かもねー」
美神は胃の痛みに耐えかね、投げやりな返答する。口の中には血の味も広がっている様な気がするので、もう既に胃に穴が開いているのかも知れない。何だか涙が零れ落ちそうだ。
――ママ、私、頑張ってるよ……。
虚空に向かって語りかける美神は少し不気味だ。横で「チチシリフトモモー!!」と叫んでいる横島も今は気にならない。美神の精神が異様に疲弊してきている。
「それでは依頼料なのですが……とりあえず依頼期間はかなり長期になりそうですね。キャラクター達がまるで生きているかの様な振る舞いをする謎の究明、それからテストプレイにレポートの提出など。……そうですね、依頼が達成されるまで、週に一千万でどうですか?」
「お任せください。どれだけ時間が掛かろうと、我が美神除霊事務所が必ずやこの依頼を達成してみせます」
胃の痛み? いえ、知らない子ですね。美神の目が$マークへと変わる。頭の中ではどうやって横島に調査期間を延ばさせるかを考えている。
「おお、ありがとうございます。あのゲームは一人用でしてね、私達の依頼を達成するのはかなりの時間が掛かるでしょうが、
家須の発言に美神と横島の霊力が跳ね上がる。それを見た家須は何度も頷き、立ち上がる。
「それでは我々はこの辺で。後日機材を持ってきますので、その時にちゃんとした契約を交わしましょう」
「ええ、お待ちしておりますわ」
「では、失礼します」
最後にぺこりと頭を下げ、家須達は帰って行った。美神はとんでもなくボロい依頼に天にも昇らんばかりに煌めいている。横島も横島でピンク色の霊波を放ち、絶好調だ。二人はその後数時間に渡って欲に塗れた雄叫びを上げ続ける。
「ふははははははははは!! 美女ー! 美少女ー!! チチシリフトモモー!!!」
「おほほほほほほほほほ!! お金こそマネー!! ありがとう、神様魔王様!!!」
ちなみにおキヌは学校、シロとタマモは家須と佐多に怯え、屋根裏部屋で仲良く布団に包まり震えていた。
さて、そんなこんなで一週間後。
横島が住むアパートの部屋にはゲームのプレイに必要な機材が持ち込まれていた。何やらヘッドギアを付け、ゲームに意識を同調させてプレイするらしい。
佐多が言うには「ワシの部下の科学力はァァァァァァァアアア三界一ィィィイイイイ!!」ということなので、ゲーム内で霊能力を使うことすら出来るのだという。
それに対する横島の感想は「かがくの ちからって すげー!」くらいの物だった。少しは怪しめと言いたいところだが、今の彼の頭にあるのは美女美少女との交流のみ。そんな状態の彼に疑えというのは無理な話である。
「何々? このヘッドギアでゲームとリンクすれば、こちらの世界での一時間が向こうの世界の一日になる? しかもこっちがゲームを終えて再開するまで、向こうでは時間が経過しない……? こちら? 向こう? ……当たり前だけど現実とゲームの世界のことだな。それにしても科学の力ってすげー……!!」
横島の目がキラキラと輝く。横島も男の子。ゲームだって好きなのだ。今横島は歴史的第一歩を踏み出そうとしている。それを考えれば、ゲーム内の美少女達との交流を抜きにしても心が弾むというものだ。
「さて、そんじゃヘッドギアを着けて……と」
横島はヘッドギアを装着し、ゲームの電源を入れる。まるで眠りの世界に旅立つような、不思議な感覚。横島は意識が途絶える前に布団に寝転び、一言呟いた。
「――リンクスタート」
何故かは分からないが横島はドヤ顔のまま意識を失い、ゲームの世界へと入り込む。
横島の意識が覚醒すると、そこは真っ白い空間だった。目の前には『GAME START』と書かれたウインドウが浮かんでいる。
横島はその異様な光景に驚いたが、それも一瞬。横島は逸る心を抑えて、そのウインドウに触れた。
「……『艦隊これくしょん』、スタート」
横島の頭に、可愛らしい少女の声が響く。
――提督が鎮守府に着任しました。これより、艦隊の指揮に入ります!――
プロローグ
「それは出オチに似た何か」
~了~
お疲れ様でした。
この小説は基本かなり短めの文章で投稿していこうと思います。
短い文章の中で話しを完結させる。私はこれがとても苦手なので、その練習も兼ねて。
それではまた次回。
それにしても家須と佐多。二人は一体何の最高指導者なんだ……。