煩悩日和   作:タナボルタ

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第一話だヨ!

今回は秘書艦(初期艦)を決めるヨ!



おかしいなぁ……前回の二倍以上の文字数がある……
ここまで長くする気はなかったんだけどなぁ……

それではまたあとがきで




秘書艦! きみにきめた!

 

 ――提督が鎮守府に着任しました。これより、艦隊の指揮に入ります!――

 

 周囲に広がる白い空間が光を放ち、横島の視界が徐々に光で埋まっていく。横島は腕で光を遮り、何とか目が眩まずに済んだ。周囲を眩く照らしている光もすぐに収まり、横島は軽く溜め息を吐く。

 

「いくらなんでも眩しすぎだろ……これはレポートに書いとかないと――って、まだ真っ白いままかよ」

 

 横島の眼前に広がる光景は変わらず白のまま。何か変化はないのかと辺りをキョロキョロと見回すと、不意に新しいウインドウが空中に現れた。

 

「お、何だ?」

 

 横島がそのウインドウを覗き込む。すると、そこには『秘書艦を選択してください』という表記がある。その右下には『次へ進む』というアイコンも存在した。

 

「秘書艦……んー、つまりは最初のパートナーってことか? ここらへん説明不足で分かり辛いな。こりゃ思ったよりもレポート作りが大変そうだなー……」

 

 横島は安請け合いしてしまったことに今更ながら後悔の念を覚える。しかし横島に燻っている時間は無い。秘書艦、パートナー選び。つまりは美女美少女との出逢い!! 横島の瞳はキラキラと輝きを放ち、既に先程抱いた後悔の念を忘却の彼方へと追いやり、意気揚々と『次へ進む』のアイコンに触れた。

 

「ぅおっ!?」

 

 すると横島の前に一メートル程の大きさのウインドウが新たに開き、五人の少女の姿を映していた。その姿はゲームとは思えない程にリアルである。最近のゲームの進化に戦慄を禁じえない横島であった。

 

「この子達が秘書艦……? いや、選択してくださいだから『秘書艦候補』ってところか。取り合えず一人目は……?」

 

 横島は選択カーソルの初期位置に存在する少女の説明を読んだ。

 

「何々? 吹雪は正義感の強い元気な艦娘(かんむす)……これで『かんむす』って読むのか。真面目すぎて融通が利かないことも……なるほど、秘書艦だって言うならそのくらい真面目な方が良いのかな」

 

 横島はふむふむと頷きながら説明文を読んでいく。所々で独り言が混じっているが、それは横島にしてはまともなものだった。

 ……ところで、実はこの白い空間とはまた別の場所で横島の様子を窺っている者達が存在した。それは今ウインドウに表示されている五人の少女達。つまりは秘書艦候補達だ。

 

「――この人が、私達の司令官になるんだ」

 

 横島を見てそう呟いたのは、セーラー服を着て肩までの髪を首元で一つ結びにした中学生程の少女。駆逐艦『吹雪』である。

 吹雪は横島をじっと見つめ、先程の彼同様に目を輝かせている。

 そんな吹雪を見て唇を嫌らしく歪め、肘で吹雪のわき腹をつつく少女が一人。

 

「なーにー? 吹雪はああいう男の人がタイプなのかナー?」

「ふえぇ!? べ、別にそういうわけじゃないよ(さざなみ)ちゃん!!」

 

 吹雪の慌てっぷりに駆逐艦『漣』は大笑する。真面目な吹雪は漣にとってからかい甲斐がある。この漣という少女も中学生程の年齢に見える外見であり、吹雪と同じくセーラー服を着用し、ピンクの髪を短めのツインテールにした個性的な口調の艦娘だ。

 

「んじゃあ何であんなキラキラした目であの人を見てたんですぅ~? 何か特別な気持ちでもあるんじゃないのぉ~?」

 

 ニヤニヤとした笑みを浮かべながら吹雪をおちょくりだす漣に、吹雪ではなく他の者の怒りが炸裂する。

 

「ああもう、鬱陶しいわね! いつまでも吹雪に絡んでんじゃないわよ漣!!」

「ちょちょちょ、そんなに怒んなくてもいいじゃんか。ちょっとした冗談なのにぃ……」

 

 プリプリと怒り出したのはワンピースの様にアレンジされたセーラー服を着ている少女。腰まである銀の長髪、前髪は一直線に揃えられ、もみあげの部分は赤い紐で結っている。頭部の横には謎の機械が浮遊しており、まるで動物の耳の様な印象を抱かせる。彼女が駆逐艦『叢雲(むらくも)』だ。

 

「まあまあ叢雲さん落ち着いて。そんなに怒ってたらドジっ子しちゃいますよ?」

「そ、そうなのです。ケンカしちゃダメなのです」

 

 叢雲を宥めに入ったのは同じく駆逐艦の『五月雨(さみだれ)』、そして『(いなずま)』だ。

 

 五月雨は吹雪達と同じくらいの外見年齢で、髪は自分の身長以上の長さを持つ。その髪は不思議な透明感を有しており、毛先に行くほど色が変化している。それ程の長さがあるというのに不思議と地面に髪が付くことはなく、まるで髪が揺らめいている様な雰囲気が感じられる。

 服装はノースリーブに改造されたセーラー服であり、二の腕程までを覆う黒い長手袋、黒いニーソックスを着用している。

 

 電はこれまでの秘書艦候補の皆とは違い、小学生程の外見年齢となっている。

 背中まである明るい茶色の髪の片側を髪留めで上げており、どこか背伸びをしている印象を抱かせる。服装は吹雪や漣と同じオーソドックスなセーラー服だ。

 

 漣は叢雲を二人に任せ、吹雪の横で安堵の息を吐いた。

 

「ふひー、秘書艦に選ばれるかどうかだからって、あんなにカリカリしなくてもいいのに……」

「あはは、叢雲ちゃんってちょっと怒りっぽい所があるから……」

「ちょっとじゃないヨー」

 

 口では文句を言いつつも、漣は笑顔を浮かべている。実は姉妹艦の一人が叢雲と良く似た気質をしており、叢雲の様なタイプはそれ程苦手でもないのだ。漣曰く「ツンデレキタコレ」とのこと。

 

「それで、結局何であの男の人を見てキラキラ状態になってたの?」

「……えー、っと」

 

 漣の質問に吹雪は目を逸らす。その事は皆も気になっていた様で、先程まで機嫌が悪かった叢雲も吹雪へと視線を寄せている。やがて皆の視線に追い詰められてきたのか、吹雪のこめかみに一筋の汗が伝う。そして吹雪は大きく溜め息を吐き、「……笑わない?」と恥ずかしそうに聞いた。

 それに対する皆の返答は首肯。それならば、と吹雪は訥々と語りだした。

 

「えっと、その。()()()が言うには、あの人は私達の事も敵の事も、軍関係の事も知らない。そんな人を最初の秘書艦として傍で支えて、いっぱい頑張って仲間を増やしたりして、それで海域を取り戻していけたら……それはすっごく格好良いんじゃないかなーって、思っちゃって。えへへ」

 

 吹雪は最後に照れた様に頬を掻いた。吹雪が語った理由を聞いた皆は暫しポカンとしていたが、やがて同じタイミングで噴き出した。

 

「あーっ!? 皆ひどい!! 笑わないって言ったのにー!!」

「い、いやだって、吹雪って案外妄想力逞しいんだ~、って思っちゃってさ」

 

 吹雪は隣にいた漣を涙目でポカスカと叩く。痛みはまるで無いのだが、漣は頭を庇いつつ吹雪から逃げていった。叢雲もそんな光景に機嫌が直ったのか、くすくすと笑いを零す。電は追いかけっこをする吹雪と漣に慌てているが、五月雨が苦笑いを浮かべつつ眺めるだけなので放っておく事にした。

 

『うーん……』

 

 どたばたと騒がしい艦娘達の空間に、男の悩ましげな唸りが響く。声がしたのは横島を映したウインドウ。一体どうしたのだろう、と吹雪達は一塊となってそのウインドウを覗き込む。すると、彼の口から爆弾が投下された。

 

『――それにしてもこの吹雪って子……けっこう可愛いな』

「――――ふえぇぇええぇっ!!?」

 

 吹雪の顔が一瞬で赤く染まる。いきなりの言葉に皆も驚きを顔に出している。

 

「おぉーっと!? これはもしかして出会う前からカップリング成立なの!?」

「ちょ、カップリングって……」

 

 漣が目を輝かせながら言った言葉に叢雲が反論しようとするが、横島の言葉はまだ終わらない。

 

『ちょっと地味な感じもあるけど、正統派美少女って感じで主人公っぽいな。隣にいてくれたらけっこう落ち着く様な女の子かも知れん』

「び、びび、びびび美少女だなんて、そんな私、困りますぅー!!?」

 

 吹雪は両手で顔を押さえてゴロゴロと転げだす。普段言われ慣れていない事を男に言われ、感情をコントロール出来ないのだろう。皆からはスカートの中の白いパンツが丸見えだ。それに対し、皆は無意識に追い討ちを掛ける。

 

「まあ、確かに吹雪は可愛いわよね」

「正統派っていうのも納得だよね」

「吹雪さん、とっても可愛いと思います」

「何てったって私達艦娘の代表みたいなとこあるもんねー」

 

 吹雪の転がるスピードが三割増しになった。ちなみに皆は心の中で同じ事を考えていた。

 ――()()の方が人気出るだろうけど――と。

 

『それから……ふんふん、この子は叢雲か。この子は可愛いっていうよりも綺麗って感じだな。キリっとした眉毛に切れ長の目。将来かなりの美人さんになるだろうな』

「……!?」

 

 今度の標的は叢雲だった。叢雲は顔を赤くし、画面の中の横島を睨みつける。

 

『クールな一匹狼で、容姿と実力にプライドを持つ……。やっぱり軍艦が擬人化した存在だからそういう傾向が強いのか? 俺は素人だし、こういう色々と厳しく言ってくれそうな子を秘書艦にした方が上手く行きそうかな……?』

 

 横島は真剣に叢雲の説明文を読む。その姿に最初は横島を睨み付けていた叢雲も多少は見直し、照れた様に結ってあるもみあげを指で弄る。

 

「ふーん、中々見所がありそうな奴じゃないの……」

 

 ぼそっと小さな声で呟く。その言葉は誰にも聞こえない様に言ったはずなのだが、皆は今一塊になっているのだ。皆は気付かないふりをし、生暖かい目で叢雲を見やる。

 

『次の子は、連……じゃねえや、漣か。うーん、この子も可愛いな。艦娘ってのは本当に皆美少女ばっかなんだなー。何つーか、凄いブームになりそうだ』

「私にも美少女認定キター!! うひひ、漣ちゃんを選んでくれたら色々とサービスしますぜ、ご主人様~♪」

「ご主人様って……」

 

 横島の美少女認定にテンションが上がった漣は横島をご主人様呼びしてしまう。それに叢雲は少々漣から距離を取り、何か変な生き物を見るような目をしてしまう。

 

『風変わりな言動と行動ねぇ……拙者とかござるとかか?』

「アイエエエ! ニンジャ!? ニンジャナンデ!?」

「さっきから耳元でうるさいわよ!!」

「お侍さんかも知れませんよ、漣さん」

「それはどっちでもいいんじゃないかな」

 

 漣は漣で照れているらしく、それを誤魔化すために大声を出しているようだ。大声も相まって漣の顔は赤い。彼女もこういうことは言われ慣れていないようだ。

 

『ま、一緒に居て退屈はしなさそーな女の子だよな。こういう子が秘書艦でもいいかも……さて、次は――(でん)?』

(いなずま)なのです! (でん)じゃないのです!!」

「あー、流石に電の読み方は初見じゃ厳しいか……」

 

 予想外……ある意味予想通りの展開に電の訂正の咆哮が轟く。艦娘とは旧日本海軍の軍艦が擬人化した存在。漣もそうだが、難解な読み方の者も存在するのだ。

 

『ん? ああ、“でん”じゃなくて『いなずま』って読むのか。最初っからルビを振っといてくれよな……』

 

 どうやら横島が見ているウインドウにルビが振られたようだ。電はその様子を見てほっと息を吐き、ようやく安心することが出来た。仮に自分が秘書艦に選ばれたとして、彼に「これからよろしくな、(でん)!」と言われたら泣いてしまうかも知れない。

 

『……優しくて穏やかな性格……うーん、艦娘とはいえ、そういう子を戦いに出すのは躊躇われるなぁ……。いや、でもそれだと艦娘っていう存在を否定する事になるのか? あー、ジレンマってやつか……』

「司令官さん……」

 

 どうやら電は今の横島の言葉に感じ入る何かがあったようだ。彼を見つめる目に先程までとは別の色が宿り始めている。

 

『素敵な女性を目指して毎朝牛乳を飲んでいる……ははっ、やっぱ可愛いな、この子も。この子が秘書艦なら、毎日頑張れそうだ』

「は、はわわわわっ!!?」

 

 電の顔が真っ赤に染まる。両手をブンブンと振り、身体をよろめかせ、倒れそうになる。そんな電を後ろから支え、ちゃんと立たせてあげたのが五月雨だ。五月雨は密かにドジを踏まずに済んで安堵している。

 

『さて、最後の子は……五月雨か。ほー、何か凄い綺麗な髪の子だな。めちゃくちゃ長いし色も派手な感じなのに、それを感じさせないというか……不思議な透明感のある子だな』

「……髪が綺麗、髪が綺麗か~。えへへ、えへへへへへへ……」

 

 髪を褒められた五月雨は自らの髪を抱きしめ、満面の笑みを浮かべる。これ程までに長い髪を維持してきているのだ。その髪には自信があり、それを褒められたのが嬉しくて堪らないのだろう。他の皆も五月雨の髪の美しさには嫉妬交じりの羨望を抱くくらいだ。

 

『明るく元気……でも微妙にズレていてドジっ娘……。うん、美少女だからこそ許されることだな。頑張ってるみたいだし、秘書艦にしてお互いにフォローし合うのも有りか』

「この提督凄く良い人だね! この人の秘書艦になら自分からなりたいって思っちゃう!!」

「あんた、チョロ過ぎでしょ……」

 

 五月雨のあまりのチョロさに叢雲は頭痛を抑えるかのように頭を抱えている。得意のツッコミもどこかげんなりとした様子だ。皆は胸の内で叢雲に『お前が言うな』と一斉につっこむ。だが、誰も口にしない。何故なら口にした瞬間に『お前も言うな』とつっこまれるからだ。

 

 さて、一先ず横島は秘書艦候補達の説明を読み、また最初の吹雪の所まで戻ってきた。問題はこれからだ。

 

『んー……誰を秘書艦にするか』

 

 横島の小さな呟き。それが聞こえた吹雪達は皆固唾を飲んで食い入るように横島を見る。彼は真剣な瞳で候補達の画像を見直していく。

 そんな時間が数分続き、横島はくわっと目を見開いて宣言する。

 

『決めた。秘書艦に選ぶのは――吹雪だ!!』

「――――!!」

 

 瞬間、皆の視線が吹雪に集中する。吹雪自身はまるで信じられないといった様子で、両手を口に当てている。

 

「ほら、何をそんなボケっとしてるのよ!」

「え……」

 

 驚き固まる吹雪に最初に声を掛けたのは吹雪の姉妹艦、叢雲。彼女は吹雪が自分に自信が無い事を知っている。だからこそ、発破をかけるのは自分達の役目だ。

 

「この私を差し置いて秘書艦に選ばれたんだから、もっと胸を張ってドーンと構えていればいいのよ」

「そうそう、吹雪が優秀なのは皆知ってるからね。何も心配することはないよ!」

「叢雲ちゃん……五月雨ちゃん……」

 

 二人の言葉に胸が暖かくなる。自信を持てない自分を勇気付けてくれようと、悔しい気持ちを押し殺して言葉をかけてくれているのだ。

 

「吹雪さんは凄い人なのです! 司令官さんもそれが分かったから選んでくれたんだと思うのです!」

「吹雪なら大丈夫。何なら、私達が着任する前に鎮守府を二人の愛の巣にしちゃっててもいいのヨ?」

「電ちゃん……!! ――ありがとう、皆!! 私、精一杯頑張るね!!」

「あ、あれれー? おっかしいぞ~? 私は? ねえ吹雪、私は?」

「それじゃあ私、一足先に行ってくるね! 皆、すぐに会えるようにしてみせるから!!」

「ちょっとー!? 吹雪さーん!? 私!! 私の事を忘れてますよー!!?」

 

 吹雪は涙を浮かべた笑顔で光の中へと消えていった。次に会う時は建造かドロップか。とにかく、その時が楽しみで仕方がない。叢雲、電、五月雨はその時の事を夢想し、吹雪と同じく笑顔で光の中へと消えていった。

 

「……助けてください。誰か助けてください!!」

 

 後に残された漣は白い空間の中心で哀を叫び、そのまま光の中へと姿を消した。

 

 

 

 

 

「さて、秘書艦は吹雪を選択っと」

 

 横島はカーソルを吹雪に合わせ、彼女を秘書艦に選択する。するとまたも白い空間が眩い光を放ち、横島を包む。しかも今度は先程よりもずっと強い輝きであり、横島の網膜を焼く。

 

「アーーーーーーッ!!? 目がぁ!! 目がああぁぁぁっ!!?」

 

 横島はドッタンバッタンと転げまわる。しかしこれは致し方ないこと。不純な動機で吹雪を秘書艦にした罰が当たったのだ。

 あの時吹雪の画像を見た横島は、何かが霊感に引っかかるのを感じた。それは、吹雪のスカートの中の不自然な白い部分。それを視認した瞬間、彼の霊感が声を大にして叫んだ。

 

 ――パンツ! パンツです!――と。

 

 こうして、今ここに秘書艦候補の誰もが想像だにしなかった最低な理由で吹雪が秘書艦に選ばれた。しかし、その事に誰も気付くことはないだろう。だって、皆横島の事を『良い人』だと思っているから。

 

 

 

 

 

 

「――うぅぅ、んあ? ようやく目の痛みが治まっ――ってどこだここ!?」

 

 ゴロゴロと転げていた横島が身体を起こすと、そこは見知らぬ土地。目の前にあるのは三階建ての大きな施設。それはどこまでもリアリティがあり、ここがゲームの世界である事を横島に完全に忘れさせた。よく見れば、自分の服装も変わっている。

 その服は海軍士官二種軍衣という白い士官服。キッチリとしたその格好に横島は息苦しさを覚える。

 

「……それで、こっからどうすりゃ良いんだ? この建物に入りゃいいのか?」

 

 目の前の施設に入ろうか迷う横島。すると、その施設の正面出入り口から一人の少女が姿を現した。

 

「ん? あ、君は……」

「はじめまして! 私はこの横須賀鎮守府所属、特型駆逐艦の一番艦、吹雪です!よろしくお願いいたします!」

 

 吹雪は横島の前に立つと、そのまだ幼いとも言える見た目に似合わぬ見事な敬礼をし、元気よく自己紹介をした。

 横島はその吹雪の様子にしばし呆気に取られたが、これはゲームのイベントなのだと自分に言い聞かせ、自らも答礼を返す。

 

「えーっと、俺はこの横須賀鎮守府? に、あー、着任した横島忠夫。あー……よろしく」

「はい、よろしくお願いいたします! 横島司令官!」

 

 横島の下手な挨拶にも吹雪は嫌な顔一つ見せない。むしろその拙さが吹雪にとって心地が良かった。目の前の司令官も自分と同じ。これから立派に成長していくのだ。

 自分はこの司令の秘書艦。ならば、早速最初の仕事を始めよう。

 

「それでは、鎮守府の中を案内しますね! こちらが入り口になっています。早速司令官の部屋に――」

「あー、ちょっと待った」

 

 張り切る吹雪を呼び止め、横島は吹雪に向き直る。その表情は真剣そのものであり、吹雪は何か粗相をしてしまったのかと不安になってしまう。

 横島は吹雪の緊張しきった様子に苦笑を浮かべ、頭をぽりぽりと掻いた。

 

「あー、俺ってさ。軍事関係の知識なんて全然無いし、この……鎮守府? の運営だってどうやるか分かってない。でも、こんな俺でも頑張って仕事覚えていくからさ。吹雪にはしばらく迷惑を掛けると思うけど……頼りない俺だけど、その、俺についてきてほしい」

 

 照れ臭そうに、申し訳無さそうにしながらも横島は吹雪へと右手を差し出す。握手を求めているのだ。そんな横島に吹雪は感動にも近い感情を抱く。この人の下でなら、どんな任務でもこなせそうだ。……そんな気持ちが湧き上がる。

 やがて、吹雪はおずおずと横島が差し出した右手を握った。二人の顔に笑顔が浮かぶ。

 

「これからよろしくな、吹雪」

「はい! よろしくお願いします、司令官!」

 

 

 

 

 

第一話

『秘書艦! きみにきめた!』

~了~

 




お疲れ様でした。

そんな訳で初期艦は吹雪です。
ちなみに私の初期艦は電ちゃんでした。

運営は早く雷電姉妹に改ニを実装するんだ! 間に合わなくなっても知らんぞー!!

それではまた次回。

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