煩悩日和   作:タナボルタ

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へぇ~、デートかよ(挨拶)

煩悩日和も三十話を突破しました。
これから色々と設定を明かしていくことになりますね……いやあ、不安です。

さて、一体誰と誰がデートの約束をするのでしょうか……?

それではまたあとがきで。


デートの約束

 

 ――――デーエムエム社長室。

 そこは暗闇が支配している。夜、というわけではない。カーテンを閉め切り、電気もつけていないからこその暗闇だ。

 そこに足音が響く。その音の重さから、足音の主は男性であると推察出来る。その足音の主は真っ直ぐにとある場所を目指す。それは、その部屋の主が普段使用しているであろうデスク。その上に鎮座するパソコンが目当てのようだ。

 

「……」

 

 足音の主は静かにパソコンを起動させ、とあるフォルダを開く。それは、デーエムエムの社長が直々に調査を依頼した案件――――『艦隊これくしょん』に関するフォルダだ。

 パソコンを操作すること数十秒。足音の主は目当ての物をようやく発見する。それは美神除霊事務所の職員、横島忠夫が担当している鎮守府の映像だ。

 

「……フッ」

 

 流れる映像を見て、ニヤリと笑いが零れる。映像の中の少年少女は随分と楽しそうに日々を過ごしている。

 自分が満足するまで堪能したのか、まだ随分と残っているのに映像を切る。今度は別のフォルダを漁ろうとした、その瞬間――――。

 

「おっと、そこまでや」

「……っ!!」

 

 突如部屋の電気がつき、関西弁の男の声が響く。急に明るくなったことで焼かれた目を庇いつつ、足音の主は声の発信者へと向き直る。

 

「スパイごっこも終了や……充分楽しんだやろ?」

「……くっ」

 

 まるで遊びは終わりだと言わんばかりの男の言葉に、足音の主は苦しげな声を出す。――――ゲームオーバーだ。

 

「ほれ、分かったなら――――さっさと仕事終わらしや、キーやん」

「いいじゃないですか、ちょっとくらい……せっかくの休憩時間に水を差さないでほしいものですね、サっちゃん」

 

 足音の主……家須ことキーやんが唇を尖らせ、佐多ことサっちゃんに文句を言う。どうやら本当にスパイごっこをしていたようだ。

 

「仕事はもう終わりましたよ。終わったから遊んでたんです」

「終わったからて意味分からん遊びしなや……」

 

 拗ねるキーやんにサっちゃんが呆れたように溜め息を吐く。休憩時間に何をしようと自由ではあるが、何も社長室でバカな遊びをすることもないだろう。これでは部下達に示しがつかない。

 

「そんなことよりもほら、よこっちの鎮守府の映像を見ましょうよ。何か色々と進展があったみたいですよ?」

「しゃーないなぁ……おっちゃんにも見せてみ」

 

 悪びれもしないキーやんの様子に苦笑を浮かべつつ、サっちゃんはキーやんの言う通りに鎮守府の映像を見ることにする。彼等は既にテストプレイヤー達が運営する鎮守府の映像を見るのが趣味と化していた。ぶっちゃけた話盗撮みたいなものなのだが、彼等に罪の意識は無い。だって神様は遍く全てのものを見ている存在だからネ!

 

「まずはこれです」

「んん~? ……おお! 天龍達以外もちゃんと霊力を扱えるようになっとる! っちゅーことは、近代化改修を行ったんやな」

 

 映し出されるのは龍田率いる艦隊が軽巡ト級eliteと戦闘をしている場面。二人に特に好評だったのはイナズマ・D・U・ホームランのシーンと、曙によるとどめのシーン。ちなみに前者がキーやん、後者がサっちゃんのお気に入りである。

 それから次々と流される色々な場面。横島が天龍達に霊力の指導をしているところや、艦娘達に霊力について話しているところ、更に不知火が明石にお仕置きをするところ、横島が叢雲に必殺技(フェイバリット)を決められているシーンなどが映される。特に最後は二人ともが思い切り笑ってしまうほどに面白かったようだ。

 

「……ふう。笑いすぎて死ぬかと思いました……」

「何や知らんが不知火といい叢雲といい、よこっちんとこの艦娘はえらいアクティブやな。これもよこっちの人徳やろか……?」

 

 他のテストプレイヤーのところにいる不知火や叢雲は、横島鎮守府の二人ほどはっちゃけてはいないようだ。確かにお仕置きと称して十二時間耐久でロデオマシーンかオイルマッサージをしようとする不知火は他にいないだろう。同じく司令官に向かって超人プロレスの技を仕掛ける叢雲もいない。以前のように何か理由があるのかと勘繰ってしまうが、全ては偶然の産物であり、何かしらの干渉があったわけではないのだ。

 

 その後も社長室では様々な映像を見て、あれやこれやと楽しそうに笑い合うキーやんとサっちゃんの姿があった。仕事が終わっているからまだマシだが、これでまったく仕事をしていなかったら二人はリコールされていたことだろう。神魔の最高指導部はこの二人だけではなく、意外と層が厚かったりするのだ。

 

「……さて、よこっちの鎮守府もちゃんと霊力を扱えるようになりましたし、そろそろ演習の方を調整しますか」

「ああ、せやな。土偶羅(ドグラ)の協力で技術的な問題も解決したことやし、ちゃっちゃと他の宇宙のタマゴと繋げられるようにせなあかんな」

「それと、()()の実装もですね」

「よこっちの驚く顔が目に浮かぶでぇ……」

 

 顔を見合わせ、笑い合う二人。二人の周囲には黒いオーラが纏わり付き、誰かを喜ばせようとしているというよりは、誰かを陥れようとしている風にしか見えない。

 

「何か私達悪役みたいじゃないですか?」

「……まあ、ワシらは()()()()()()()()()()わけやし、悪役で合っとるんとちゃうか?」

「……そうですか」

 

 サっちゃんの言葉にキーやんは肩を落として落ち込んでしまう。相方の落ち込む姿に笑みが浮かぶサっちゃんだが、何も意地悪をしているわけではない。ただ相方が落ち込んでいるのが純粋に面白いだけなのだ。何て悪魔的なのだろう。

 

「そんじゃお仕事しましょかー」

「これからは()()()にも頑張ってもらいませんとね」

 

 キーやんは気持ちを切り替え、これからのことについて思考を巡らせる。演習にしろ()()()()にしろ、何かとシビアな調整が必要になってくる。土偶羅を始めとした技術班にはまた負担を強いてしまうかもしれないが、我慢してもらうしかない。専門技術持ちは大変なのだ。

 

 

 

 

 

 

 ――――横島鎮守府執務室。今日も今日とて横島は書類と格闘していた。

 

「何度でも言うが、何でゲーム内で書類仕事しなくちゃなんねーんだよ……」

「私達も手伝ってあげてるんだから、いい加減それ言うの止めなさいよ」

 

 いつまでも同じ文句を言い続ける横島を、霞がピシャリと叱りつける。横島の言い分も確かに分かるのだが、それでも何度も何度も同じ愚痴を聞かされては堪らない。霞の他には吹雪と大淀が居り、基本的にはこの三人がローテーションで横島の書類仕事を手伝っているのだ。

 横島の愚痴に吹雪と大淀は苦笑を浮かべる。毎日聞かされているのでもう怒り出してもよいはずなのだが、そうはせずに苦笑で済ませるのは二人の性格ゆえか。横島が愚痴を言うのは霞に対してがほとんどであり、吹雪達に愚痴を零すのは最近はとんと減ってきた。お互いにずけずけと物を言い合える関係となってきているらしく、大淀には意見を聞くために相談を、吹雪とは仕事で荒んだ気持ちを和らげるために雑談をよくしている。

 このことに気付いた吹雪が「私って、秘書艦である必要があるのかな……」と落ち込んだりもしたが、横島に「吹雪は傍にいてくれると気分が安らぐ」と、とっても爽やかな笑顔(笑)とダンディーな声(笑)で言われたため、すぐに上機嫌となり、今でも横島の筆頭秘書艦として活躍している。

 実際、横島の心を癒している吹雪は彼にとって、なくてはならない存在だ。吹雪がいるからこそ、横島は日々提督として過ごすことが出来ているのである。

 

「ん~……っ!! やっと終わった……」

「お疲れ様です、司令官。お茶をどうぞ」

「さんきゅー……」

 

 書類仕事も終わり、凝った身体を解して横島はデスクにぐったりと突っ伏す。まるで身体が溶けているようにも見えるその姿は霞の琴線に触れる何かがあったらしく、少し視線が強くなった。

 柔らかな笑みを浮かべる吹雪からお茶を受け取った横島はそれを飲んで一息吐き、大淀にこれからのスケジュールを確認する。

 

「書類仕事も終わりましたし、次は開発と建造ですね。今回は大井さんが付いてくれます」

「大井か……北上が建造出来るように気合入れないとな」

 

 大井と建造をすると聞き、横島は頑張るぞいっと気合を入れる。大井や他の艦娘もそうだが、やはり姉妹艦がまだ鎮守府に着任していない艦娘は姉妹艦を求めるのだ。大井は特にその傾向が強く、姉である球磨や多摩からは「ぶっちゃけメンドいから大井のことは任せたクマ」と、ありがたいお言葉を頂いている。なお、その際に大井が球磨型と知った横島が「大井って“北上型”とか“大井型”じゃなかったのか!?」と、うろたえてしまう一幕があった。やはり語尾も何も無い普通の女の子なのが誤解を生んでいたらしい。……制服? 叢雲だって他の吹雪型とは違うでしょう?

 

「遠征の方はどうだ?」

「遠征なら、雷ちゃんと曙ちゃんが頑張ってくれてますよ。それぞれ旗艦としてみんなを引っ張ってくれてます」

 

 遠征に関する質問に吹雪が答える。

 先日、ケンカから和解を果たした二人は、より仲を深め合っていた。雷は曙の随伴として出撃することも増え、曙は雷の手伝いとして家事をすることが増えている。

 曙は雷の戦闘の師匠として、雷は曙の家事の先生として、何よりも友人として互いに教えあい、高めあっている。二人ともまだまだ技術では拙い所があるが、それを教え導く者もまた、この鎮守府には存在しているのだ。

 ちなみにであるが、曙はあの日から横島の事を“クソ提督”とは呼ばなくなった。横島がセクハラ発言などをした場合にはそう呼ぶこともあるが、それ以外ではちゃんと“提督”と呼んでいる。彼女の中で折り合いが付いたのだろう。

 

「海域の攻略に関してはまだまだ練度不足……しばらくはレベル上げだな。……あ、今の話とは全然関係ないんだけど、確か間宮の補佐をする艦娘が来るって言ってなかったっけ?」

「はい。そのことに関してですが、大本営からの通達によると、今度アップデートがあり、その時に人員を派遣してくれるようですね。その子の名前は“伊良子”。ポニーテールが良く似合う、可愛い女の子ですよ」

「マジか!! うっはー!! 早くアップデートをしろっ!! 間にあわなくなってもしらんぞーーーっ!!!」

「大本営に言いなさいよ」

 

 いつもの病気を発症する横島に対し、冷静に対処する霞。こちらもこちらで慣れたものである。大淀もにこやかな笑みを浮かべ、自らの提督を見つめるが、吹雪はやや不満そうに唇を尖らせている。不知火や磯波、皐月に夕立など、横島を慕う駆逐艦娘もそれなりにいる。叢雲は否定するだろうが……横島はもう少し駆逐艦娘にも意識を割くべきだ。

 

「ほら、そろそろ建造に行ってきなさい。大井さんを待たせるんじゃないわよ?」

「分かってる分かってる。そんじゃ、三人は遠征の計画と編成、それから次の出撃のメンバーの選出を頼むな」

「了解です」

「頑張ってくださいね、司令官!」

 

 吹雪の激励に、横島は後ろ手に手を振って執務室を後にする。それを見送った三人はホワイトボードにいくつかの項目を書き、それぞれに適した艦娘の名前を書き加えていく。効率を重視した霞、気持ちや気合など、精神的なものを重視する吹雪。それらを上手く纏め、最終的に判断する大淀。この三人、意外と相性が良いのである。

 

「……と、あら? これは……」

 

 三人で会議をしている最中、大淀の眼前に光が生まれ、それが手紙となって手の中に舞い降りた。大本営からの通達である。

 

「大本営から?」

「何かあったのかな? アップデートの延期とか……?」

「うーん……まあ、提督が帰って来るまで待ってましょうか。緊急を要するようなものではなさそうですし」

 

 とりあえず開封はせずに横島の帰りを待つことにしたようだ。丁度いいので休憩を挟むことにする。本日のおやつはどら焼きだ。

 

「いっただっきまーす!」

 

 執務室の午後は、和やかに過ぎていく。

 

 

 

 

「さあ……行くぞ、大井!!」

「はい、提督!!」

 

 ここは工廠。鉄と火薬と(オイル)の匂いが充満した、ある種の戦場だ。今日もまた、己の願いを胸に二人の戦士が訪れる。

 

「うおおおおおおおおおお!!」

「北上さん北上さん北上さん北上さん北上さん北上さん北上さん北上さん木曾北上さん北上さん木曾北上さん木曾北上さん木曾木曾北上さん北上さん木曾木曾木曾北上さん!!!」

 

 今、二人の戦士が機材を操作し、戦いの雄叫びを上げる――――!! はたして、二人の願いの行く末は――――!!?

 

 

 

 艦娘カード<やあ!

 艦娘カード<よろしく!

 

「ぬもんちゅがーーーーーー!!」

「ちゅがーーーーーー!!」

 

 願いは……届かず……!!

 横島と大井は床に膝をつき、悲嘆に暮れる。艦娘カードは以前までと違い、誰もがその儚さ、尊さを胸に抱いている。横島はもちろん、大井もそうだ。でもそれはそれとして悔しいものは悔しいからこの二人は叫んでいるのだ!!

 

「ふふ……っ、北上さんったら、照れ屋なんだから……」

「まだ北上が働く時ではないのか……ところで木曾って誰?」

「妹ですよ。眼帯を付けた俺っ子なんです」

「ほほう……天龍と被るな。妖怪キャラかぶりに注意しないと」

「何ですかそれ……」

 

 戦いは終わった。二人は作戦についてちょっとした雑談を交わし、工廠を後にする。今回は全て艦娘カードという結果であったが、実は初めて近代化改修を施した日から、また何人か艦娘が増えている。駆逐艦と軽空母なのだが、その紹介はまた後に譲ろう。

 

「レア艦レシピも試さないとなー」

「重巡も建造出来ますし、やっぱりそれですかねぇ……」

 

 横島はいつかの失敗以来、資材を使うのを躊躇っている節がある。慎重なのはいいが、臆病過ぎるなのは考え物だ。普段のナンパのように……その百分の一でいいから、大胆さを発揮せねばならない。

 

「んじゃ、俺は執務室に戻るから」

「はい。お疲れ様でした、提督」

 

 こうして二人の戦士は別々の道を歩む。だが悲しむことはない。またいずれ……そう、近い未来に二人の道はまた交わることになる。その時にも、きっと響くだろう。二人の魂からの叫び――――“ぬもんちゅが”という叫びが。

 

「ふっふふー、俺の求める鎮守府はまだ遠いー」

 

 横島は謎の鼻歌を歌いながら執務室への道を戻る。今彼の頭の中ではムッチムチでバインバイーンな艦娘達が跋扈する鎮守府の映像が浮かんでいる。更に横島はその艦娘達にもみくちゃにされながら歌を歌っている自分を想像している。人の夢は儚い……だが、それを追い続け、求め続けるからこそ夢は尊いのだ。

 横島は(もうそう)を胸に抱き、執務室の扉を開ける。北上や戦艦は来なかったが、それでも気分はルンルンだ。

 

「ただいまー」

「お帰りなさい、司令官!」

「先におやつ頂いたわよー」

 

 扉を開けると、吹雪が満面の笑みで横島を出迎える。その姿はまるで新妻のようにも見える。

 横島は建造した艦娘カードを吹雪に渡す。吹雪はそのカードを大切そうに胸に抱くと、ファイルへと収納する。

 

「提督、大本営からお手紙が届いてますよ」

「手紙? 何だろ、アップデートの延期の通達か……?」

 

 横島は大淀から手紙を預かり、封を開けて内容を確認する。吹雪は横島の呟きを聞き、自分と同じことを言っていたのが何故か嬉しくなった。少々にやついた笑みを浮かべてしまうが、吹雪はそれに気付かないまま横島の顔を見つめる。と、横島の表情が随分と真剣なものに変わっていることに気が付いた。

 

「あの、司令官? 何かあったんですか?」

「ん、あー、いや……ちょっと、読んでみろ」

「え? はい……」

 

 吹雪は横島から手紙を預かり、先程の横島よろしく内容を確認する。その際に霞と大淀も手紙を覗き見る。その内容は以下の通りだった。

 

「えっと……アップデートの日付けを延期……予定されていたものに加え、演習の実装……!! ついに演習が出来るようになるんですね、司令官!!」

「ちょっとちょっと、吹雪。まだ続きがあるわよ?」

「え? ……あ、本当だ。更には海だけでなく陸――――()()()()()()!?」

 

 そう、演習に加え、“街”が実装されるというのだ。

 今まで横島鎮守府の周囲には見えない壁があり、そこから先へは進めなくなっていた。しかし今度行われるアップデートではその壁がなくなり、その先に進めるようになるのだという。壁の先……そこにあるのが街だ。

 

「……」

 

 これは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。無論まだまだ決定的ではないが、それでも一応の説得力を有していると言える。

 

「……あの、どうかしました?」

 

 黙りこんで何事かを真剣に考え込む横島に、吹雪が心配そうに顔を覗き込む。自然と上目遣いになっているそれは、中々に破壊力抜群だ。

 

「ん、いや……街が実装されるってんなら、吹雪とデートに出掛けることも出来るのかなー、とか考えてて……」

「え、ええ!? で、でででデート、ですか……!?」

 

 横島が誤魔化すように“吹雪とデート”と口走る。吹雪はそれを本気にし、瞬時に顔どころか耳や首筋まで真っ赤になってしまう。頭からは蒸気が噴き出し、お目々はぐるぐると回っている。見事なテンパリぶりに、霞と大淀は苦笑をにじませつつも呆れてしまう。

 

「し、しし司令官さえよろしければ、わっ、私もっ、で、デート……デート……してみたい……です

「ん? ……あー……おう、そうだな!」

 

 吹雪は勇気を振り絞り、横島に“デートしたい”と伝える。しかし残念ながら横島には吹雪の声が聞こえていなかった。それも仕方がないだろう。吹雪の声はそれほどまでに小さかったのだ。横島はとりあえず頷いておけばいいだろうと思い、とりあえず了承。吹雪は横島の答えに、表情をパァッと明るくさせる。

 

「約束ですよ! 絶対の約束ですからね、司令官っ!!」

「……分かってるって!! 約束だな!!」

「この二人は……」

「ある意味似たもの同士……と言えば、似たもの同士なのでしょうけど……」

 

 喜びを露にして約束を取り付ける吹雪と、何が何だか良く分かっていないが、とりあえず頷いておく横島。お互いがお互いに微妙にずれているところが、とてもよく似ている。これには霞だけでなく、大淀も呆れ気味だ。

 

「ごめんね、叢雲ちゃんに磯波ちゃん。お姉ちゃん、頑張るからね!!」

「え、叢雲……磯波?」

「あと天龍さんに加賀さんに那珂ちゃんさんに扶桑さんに不知火ちゃんに夕立ちゃんに雷ちゃん!! 早い者勝ちだよね!!」

「おーい、吹雪ー? さっきから何の話だー?」

 

 やがて来るデートの日を想像し、何故か特定の艦娘の名前を呼ぶ吹雪。横島は当然何のことかまるで分かっていない。そもそもデート云々が特に意識もせず出てきた言葉なので、それ自体既に忘却の彼方である。

 

 はたして、吹雪は無事に横島とデートにこぎつけることが出来るのか……? きっと何かしらの邪魔が入ってしまうのだろう。しかし、夢は追い続け、求め続けるからこそ尊いのだ。待て、しかして希望せよ――――。

 

 

 

 

第三十一話

『デートの約束』

~了~

 

 




お疲れ様でした。

さて、次回はデート(?)にしましょうか。それとも演習にしましょうか。

デート回になったとしても、まともなデートになるのでしょうか。
おかしいな、まともにデートをしてるビジョンがまったく見えない……(涙)

それはそうと吹雪は可愛い。

それではまた次回。

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