……来年は運気が上昇しますように!!(切実)
それではまたあとがきで。
「えー……っと。それじゃあ、2―4攻略に向けての会議を始めようと思う」
鎮守府内の会議室。そこには横島と秘書艦娘三人、そして複数人の艦娘が集っていた。
今までの海域とは比べ物にならないと言われている海域の対策会議だ。そのためか、会議室にはピンと張りつめた空気が漂っている。
「あー……まず初めにだな……その……」
「へー、思ったよりも広い胸だなー。こ-いうのも着やせっていうのかな?」
じり……と、数人の艦娘が横島の方へとにじり寄る。横島の額から冷汗が零れて落ちる。
「情報の共有と……えっと……今後の方針とか……」
「くんくん……やっぱり香水とかはつけてないんだ。んー、でもこれはこれで……」
艦娘達の身体から霊力の光が揺らめく。横島の身体は震えが止まらない。
「えっと……あの――――主砲と機銃をこっちに向けてにじり寄って来んといてーーーーーー!!?」
「あー……小刻みな振動が……イイとこに、当たって……」
遂に限界に達した横島が涙をブシャっと噴出させ、皆に懇願する。いつもの光景と言えばいつもの光景だが、今回は少し様子が違った。何せ皆が艤装を展開して横島ともう一人を包囲している形なのだから。
そんな艦娘達を代表し、叢雲がにっこりと笑みを浮かべて一歩踏み出す。
「司令官――――それが遺言ってことでイイのよね……?」
「イ゛ヤ゛ー゛ー゛ー゛ー゛ー゛ー゛!゛!゛?゛」
横島の懇願を、絶対零度の笑みを浮かべた叢雲が、怒りの霊力でそれはもう凶悪なまでに光り輝く主砲を向けて一言で切って捨てる。
ここで一つ間違いを訂正しよう。会議室の空気はピンと張り詰めていたのではなく、今にも空間が歪んでしまいそうなほどの怒り――主に嫉妬の――によって、今にも爆ぜてしまいそうだったのだ。
なぜこんなことになっているのかと言えば、それは横島……ではなく、横島の膝に座っているとある艦娘のせいである。
彼女は川内。横島の膝の上に座り、彼の胸板に頬ずりしたり、首元に顔を埋めて匂いを堪能したり、耳を甘噛みしたり、恐怖で震える横島の身体で気持ちよくなっていたりしているのだ。
そんな川内の羨ましい状態に一部の艦娘が激怒し、かの邪知暴虐の川内を除かねばならぬと決意したのであった。ちなみに横島が攻撃されようとしているのは単なる八つ当たりである。理不尽極まりないがこれはいつものことなので仕方がない。横島だから仕方がないとはいえ、川内を膝から下ろせば解決するのにそれをしなかったのだから。
――――なるほど。やはりこれは川内のせいではなく、徹頭徹尾横島のせいだったのだ。
「何やその理不尽な結論はー!? 弁護士を呼んでくれー!!」
「安心しなさい。裁判官も検察官も弁護士も私達が担当してあげる」
「安心できるかー!? そんなん宗教裁判みたいなもんやんけー!!」
「はいはーい! それじゃこの川内さんが提督の弁護人やったげるねー!」
「ぎりぃっ!(歯ぎしり) 川内ぃっ!!」
「話がややこしくなるからお前は黙っとれー!!」
――――間――――。
「………………疲れた」
「あはは……。お疲れ様です、司令官」
横島は会議室の机に突っ伏し、吹雪が疲労困憊の横島を労う。
信じがたいことにそれには時雨が一枚噛んでいるらしく、一体どのような話し合いが行われたのかは不明であるが、川内は時雨に弟子入りし、時雨の気配遮断術を学んでいるようなのである。時雨の指導力もさることながら、どうも元々相性が良かったらしく、川内はメキメキと実力をつけ、遂には時雨にも迫る技術を手に入れた。
これには川内も大はしゃぎし、「私ってその内忍者になれるかもー!?」と、たいそう喜んでいた。しかし平時は良いがまだまだ戦闘で扱うには鍛錬が足りず、そこは時雨にも注意されている。
素晴らしい技術なのだが、もっぱら使用されるのは己の欲求……煩悩のままに。そういう点で横島との相性は良いかもしれない。
ちなみにだが川内はそのやりたい放題っぷりを見かねた神通が引き取っていった。こうして嵐は去ったわけではあるが、まだまだ災害の火種は残っている。
「何か、その内提督を巡ってガチの殺し合いが始まるんじゃないかって気がしてきました」
「そうね……。もういっそのことあいつら全員司令官に面倒見てもらえばいいんじゃないの?」
「うーん、それは流石に……。いや、でもどうなんでしょうね」
霞と大淀が考えられる最悪の未来を幻視し、投げやりな気持ちを抱く。あの霞がハーレムでも作ったらどうなのか、と考えるくらいなのだから、どれだけ横島と一部の艦娘達の関係に頭を痛めているかが窺えよう。
大淀も最初は否定的であったが、それで事態が収まるのならそれもいいかと思い始めている。横島は
「……会議、始めていいかな?」
「……そうデスネー。さっきので色々と疲れちゃいマシタし、気持ちを切り替えて行きマショー! ……というわけで提督の膝の上をGET――――」
「待てコラ金剛! 少しくらい俺にも良い目見させろ!! マジでそういう機会に恵まれてねーんだよぉ!!」
「随分と必死ね。……それなら私の方がそうする権利があるのでは?」
「忠夫さんの膝の上……。男性よりは小柄とは言え私のような大女が乗っても邪魔になるだけでしょうし……いっそのこと、私が忠夫さんを膝の上に……!?」
今度は金剛の言葉を皮切りに激論が交わされる。大淀も霞も「また始まった」と額に手を当て、天井を仰ぐ。もうこれ以上余計なことに時間を割きたくないというのに、いつになったら会議を始められるのか。キリがなさそうなので、二人は最終手段に訴えることとする。
「はいはい、そこまでにしてください」
「それ以上騒いで会議の邪魔をするなら、全員電にホームランさせるわよ」
「一振一殺なのです」
「すいまっせんでしたぁっ!!」
皆は綺麗に声をそろえて頭を下げたという。
「……せんぱーい」
誰にも聞こえぬような小さな声で、吹雪は呟く。明るく前向きで、積極的な性格もこっちの方面ではあまり作用していないようだ。だが、吹雪は少し俯いた後、よしと頷く。他の皆に負けないくらい……というのは無理かもしれないが、それでもなるべく横島とスキンシップを取っていこうと決意したのである。
そうと決めた吹雪は強い。まずはこの会議をちゃんと進めなくてはいけないと、ふんすふんすと気合を入れ、進行に入るのであった。
「それでは、こちらの海域図を見てください」
吹雪がプロジェクターを用い、壁に映し出したのは沖ノ島海域の
これらは猿神艦隊等他の鎮守府から得られた情報である。端末によって他鎮守府との通信が出来るようになり、情報の共有が可能となったのだ。
「これは……素晴らしい情報ですね」
扶桑が心から感心したように呟いた。他の皆もそれに同意する。情報があるとなしとではあらゆる物ごとにおいて雲泥の差が付く。これらの情報があれば、海域の攻略もいくらかスムーズに行われるだろう。
「次に敵艦隊についてなのですが……全ての艦隊にeliteが存在し、flagshipも出てくるようです」
「うえー、面倒だなー」
本当に面倒そうに加古が言った。深海棲艦の上位個体達は皆霊力持ち。その力に大小の差はあれど、全てが厄介な存在であるのは言うまでもない。そして、この情報にはまだ続きがあった。
「それで、ですね。……どうやら場所によっては、それらの上位個体が複数で艦隊を組んでいる場合もあるようなんです。flagshipが四体とかもあるみたいで」
「……マジで?」
「マジです」
思わぬ情報に頬が引きつる加古の確認に、吹雪は頷いて返す。この情報には流石の艦娘達も怯んだのか、会議室にざわめきが起こる。
「んー……そらちょっと厳しいなぁ。最悪の場合は天龍達に頼り切りになってまうかもしれんな……」
天井を仰いで龍驤が唸る。天龍、加賀、そして金剛。この三人は横島鎮守府の柱である。強大な敵が現れた場合、強大な力を持つ彼女達の力に頼るのは当然と言えた。だが、それに待ったをかける者が居る。
「それについてなんだけど、ちょっといいかしら?」
「どうした、叢雲?」
そう、叢雲だ。叢雲は自分に集まる視線をものともせず、先程発言した龍驤、司令官である横島、そして天龍達三人を見やる。
「確かにeliteやflagship達は強力よ。強い奴らに対して、天龍達っていうもっと強い人達に頼るのは間違ってないと思う。……でも、それだけじゃいけないとも思うの」
「……と言うと?」
叢雲の言葉に、横島は静かに問い返す。他の誰も言葉を発しない。ただ静かに叢雲の言葉に耳を傾ける。
「天龍も加賀も金剛も、それこそ私達が束になっても勝てないくらいには強いでしょうね。そんな人達だもの、頼ってしまうのは仕方がないと思う。……でも、それだけじゃダメ。他でもない、
「……」
横島は無言で続きを促す。その眼は何かを思案するように閉じられている。
「ただ頼って、任せて、それだけじゃなくて……。頼られて、任されて――――隣で戦えるようにならないとダメなんじゃないかって……私はそう思う」
「……」
「司令官……アンタはどう思ってるの?」
叢雲の真剣な問いが横島を貫く。しばし沈黙を保っていた横島は大きく深呼吸をした後、ゆっくりと眼を開き、叢雲と視線を交わし――――そして、微笑んだ。
「――――俺は強い奴が無双して敵を片付けていってくれる方が楽で好きだな!」
「ええーーーーーーっ!!?」
「今の流れでそーゆーこと言うの!!?」
横島は屈託のない笑顔でそう宣ってくれました。これには艦娘達からもブーイングの嵐である。叢雲はズシャアアアァッ! っとずっこけており、残念ながら横島にツッコミを入れることが出来なかった。
「……まあ、今のは一割方冗談だ」
「つまり九割方本気なんやな」
龍驤の呆れたようなツッコミが入る。しかし横島はそれを気にしない。先程とはまた違った思いがこもった目で叢雲を見やる。
「……
「む……」
図星を突かれ、叢雲は言葉に詰まる。叢雲はこの会議に出る前に、他の艦娘達と話し合った。その結果が先の言葉なのだ。戦闘が得意な者、そうでない者関係なく。全員が強くあらねばならないと決意を秘めていたのだ。
「俺の意見はさっき言った通りだけど……
横島はにやりと笑みを浮かべ、こけた後床に座り込んでいた叢雲に手を差し伸べる。
「強くなりたいってんなら、戦闘でも遠征でもこき使ってやるから……覚悟しとけよ?」
「――――ふんっ、上等よ!!」
望ましい命令と共に差し出された手を取り、叢雲は快活に笑って立ち上がる。艦娘のこと、そして自分のことを深く理解してくれている横島に、知らず叢雲の心臓が高鳴る。それを悟られたくなく、叢雲はすぐに手を離し、元の場所に戻る。横島の温もりが残った手を見つめ、柔らかく微笑んだ後、叢雲は横島にさっさと会議を再開するようにと悪態をつくのであった。
会議室に充ちる空気は温かいものだ。先の叢雲の言葉は、当然この場の艦娘全員の言葉でもある。龍驤の言葉も仕込みであり、自分達の意見を通しやすくするための布石だったのだ。目論見通りに話は進み、龍驤は満足気に頷いてる。
「それでは次に、練度についてです。皆さんも既に気付いていると思いますが、どうも練度が上がりやすくなってるみたいなんです」
次なる議題は練度について。これはまず大淀が気付き、そこから明石も交えて検証が行われた。ひとまずとある艦娘の
これまでの知識では、練度がある程度の高さに達するとそれからの向上には数週間から数ヶ月掛かることもざらであったはずなのだが、横島鎮守府の艦娘にその傾向はない。更に情報を求めて他の鎮守府に問い合わせたところ、各鎮守府も同様に練度向上が速いことが分かった。
「これにはちゃんとした理由があってな。みんなが霊力を扱えるようになったことがその理由だ」
「……えっと、どういうことです?」
古鷹は戸惑うように声を上げる。彼女はまだ霊力に目覚めたばかりであり、練度向上の速度に関しての自覚は未だにない。
「ああ。これまでに何度か言ってるけど、霊力ってのは魂の力だ。それに目覚めると普段から強い霊力を纏って行動することになる」
横島の言葉に皆は頷く。
「んで、霊力を纏っての行動ってのは、
「影響……?」
「そう。繰り返しになるが霊力は魂の力。それを纏っての行動は、魂に刻まれやすい。……そこでみんなに問題だ」
皆の顔をぐるっと見回し、横島は一つの簡単な問いを投げかける。
「みんな……艦娘は、
「何って、それは戦闘訓練……もしかして?」
問いに答えた古鷹が、気付いたように横島を見つめる。それに頷きを返し、横島は口を開く。
「魂に刻まれるってことは、それだけ物覚えが良くなったり、技術が身に付きやすくなったりするんだ。……そして、それだけじゃない」
柔らかな笑みを浮かべ、一人一人、ゆっくりと顔を見つめる。その真剣で温かな視線に、知らず皆の顔は赤くなっていく。
「霊力は魂の力。そして、それを引き出すのは感情の……思いの力だ。みんなの練度向上が速いってんなら、それはそれだけみんなが平和を取り戻そうと本気で頑張ってるってこった。――――これはきっと、凄いことだと思う」
いたずら小僧の様に、大きな笑みを浮かべる横島が、何故かその場の皆には眩しく映った。
横島の言葉、それに込められた思い。これも一種の言霊だというのだろうか、皆は
――――誇っても良いのだ、と。自らの行いを、思いを、胸を張って誇ってよいのだと。
「……艦娘として、当然のことです」
「そう言えること自体凄いことじゃないっすか。俺なんか痛いのも苦しいのもヤダし、他の奴に丸投げできるなら丸投げしてーし」
溢れる感情を抑えつつ、照れ隠しに何でもないことだと言った加賀に横島はそう返す。その言葉を、皆は心の中で否定する。
艦娘達は、自分達が傷つくたびに横島が心を痛めていることを知っている。何せ胃に穴が空き、血を吐くところも見ているのだ。……そのような精神的苦痛を受けても、横島は戦いを止めず、送り出してくれ、そして司令官でい続けてくれる。
そう。艦娘達の練度向上が速いのは平和を取り戻したいという思いもあるが、何よりも。
仲間のため、自分のため、世界のため……理由は様々あれど、それらの他に、皆が共有する思いが一つ。
――――おバカでスケベな、私達の司令官のために。それが皆の思いである。
そして横島の思いも同じと言える。ハーレムを目指して、というのもあるが、艦娘達のために共に戦っているのである。だからこそ、横島の言葉は皆の心に響いたのだ。金剛など目をハートマークにし、今にも飛び掛からんばかりに――――。
「テーーートクゥーーー!!」
「おあーーーーーーっ!!? ここじゃいやーーーーーー!!?」
「こ、金剛さんが司令官を押し倒した――――!?」
訂正しよう。既に飛び掛かっていた。
「……まったく。油断も隙もないですね、あなたは」
「ソーリーデース……」
横島へと飛び掛かった金剛は、天龍と加賀の二人がかりにより横島から引き離され、げんこつの後に正座の刑に処された。
押し倒された横島はと言うと、金剛によって頬に無数につけられたキスマークを残念そうに拭き落としている最中である。周囲の色々な情念のこもった視線に耐えかね、渋々ながら顔を拭う。何となくではあるが、弟子の顔を思い出した横島だった。
「話を戻すと、練度の上昇が速いのは霊力が関係してたってとこだったな。特に問題ないようだったら次の議題に進みたいけど、大丈夫か?」
「え……っと」
「あー、霊力関係をいきなり話されても考えをまとめ辛いか。……んー、質問なんかは会議が終わった後とか後日でも構わねーし、とりあえず今は会議を進めようか。次は資材関係についてだな」
咄嗟に質問が浮かばない艦娘達に配慮し、横島は会議を進めることにする。次なる議題は資材について。
大淀達や他の司令官達が言うには、2―4……沖ノ島海域は難関であるという。ワルキューレ鎮守府やカオス鎮守府は数十回以上の出撃を重ねてようやく突破することが出来、パピリオ鎮守府でさえ攻略には十数回の出撃が必要になったほどであった。
「……まあ、猿神鎮守府は一発クリア、ヒャクメ鎮守府も数回であっさりと攻略出来たらしいけどな」
「何とも極端ですね」
ヒャクメが挑んだ際には様子見で送った艦隊があれよあれよと言う間に海域を進んでいき、気付いた時にはボス艦隊の旗艦を沈めていたのだそうだ。猿神鎮守府の艦隊はアレである。羅針盤がちゃんと機能していたのもあるが……圧倒的な暴力が全てを解決してくれたのだ。
「ウチがどうなるかはまだ分からん。あっさりと攻略出来ればそれでいい。でも何回も何十回も出撃をしなければならないとなると、いまの状態じゃちょっと不安なんだよな」
「戦艦や空母の出撃が増えれば、それだけ資材を費やすということですからね」
横島の言葉に大淀が相槌を打つ。加賀や赤城、金剛がばつが悪そうに視線を泳がせる。彼女達が一回の出撃で消費する資材の量は中々に多いのだ。
「そこで、第四艦隊の解放を狙いたい」
現在横島鎮守府が運用できる艦隊は三つまで。鎮守府では四つまで艦隊を運用することが出来、横島は未だ全てを解放するに至っていない。しかしながら、これには当然条件があるのだ。
「第四艦隊の解放は妙高型重巡を揃えて、その後に金剛型戦艦を揃えるんだっけ?」
「そうよ。今ウチに着任してるのは那智さんと足柄さん。それに金剛の三人ね」
「妙高型重巡は建造やドロップで比較的出やすいみたいですが、金剛型戦艦はみんなレア艦ですからね。ちょっと大変ですよ」
明石のレア艦と言う言葉に金剛が照れる。天龍に「照れるとこじゃねーから」とチョップをもらったが、金剛の顔はまだにやけたままだった。
「なので……明石、以前設けた制限は取っ払って今後は積極的に建造していこうか。あの時以来問題は何もなかったし、今は第四艦隊開放を優先ってことで」
「ん~……提督がそう言うのならそうしますか。妖精さんも問題ないって言ってましたし。建造の方針はどうします?」
「重巡も出るレア艦レシピを主軸に、時々戦艦レシピかなー。パピリオとかの話によると2―2や2―3のボスドロップで金剛型が出るらしいし、そっちで狙うのもまあ、ありっちゃありだな」
第四艦隊開放の道のりは長く険しい。数十人の中から特定の艦娘をピンポイントで引き当てるなど、よほどの運がなければ上手くはいかない。扶桑が自らの言霊の力を知っていれば真っ先に名乗り出たのだろうが、彼女はその力の強大さを知らされていない。
元々横島が懇親会にて扶桑の力をヒャクメに相談した折にいっそ封印してしまおうかと考えたのだが、斉天大聖に止められたのだ。曰く、「これも修行じゃ。お主が力のコントロール法を教えてやれ」とのこと。
横島もかつてよりは霊能力者としての知識を増やしているが、それでもまだまだ二流三流レベル。高度な技術である言霊を教えるのは荷が重い。それを含めて修行と言うことなのだろうが、横島はこれに苦戦している。
ひとまず横島は扶桑に言霊について自分も知識を深めるから使用は制限するようにと言い含めている。扶桑も横島を困らせるのは本意ではない。何より自分の為に頑張ってくれるという横島の言葉が嬉しすぎて、逆らうという選択肢を最初から放棄してしまっているのだ。
今のところ、扶桑が以前の様に爆発したりマグロにスーパー頭突きされたりなどのしっぺ返しを受けたりはしていない。このまま穏便に済むことを横島は望むばかりである。
「……いざとなったらヒャクメかカオスのじーさんにシステムを弄ってもらえば……」
「そういうのはダメですぅ!!」
「こんのクズ!! 不正は許さないわよ!!」
ぼそっと冗談とも本気とも取りづらい言葉を零す横島であった。
「まあ、それはともかく。あれから新たに建造されたりドロップした艦娘も多いからな。……駆逐だけで十人以上だっけ? それに比べて重巡はほとんど増えてないんだよなー」
「古鷹さんと加古さんを含めても全部で五人ですからねぇ……」
「戦艦と空母も増やしたいし……やっぱ資材がなー」
戦力を増やすにも資材を増やすにも、やはり第四艦隊の解放は必須である。これから遠征も増やし、より慌ただしくなっていくことだろう。
「んじゃ、これからの遠征計画についてだけど――――」
こうして沖ノ島対策・第四艦隊開放についての会議は数時間にわたって行われた。夕陽が差し込む廊下を歩く横島は、凝った背中を伸ばしつつ、軽く体を動かしに艦娘の訓練場(運動場)へと向かう。きっと今の時間でもブルマをはいた艦娘達が訓練をしているはずだ。期待を胸に、鼻歌交じりに外へと一歩踏み出した横島の耳に、綺麗な旋律がゆったりと流れ込んできた。
「この歌は……那珂ちゃん?」
辺りを見回すが、見える範囲にはいない。歌の聞こえる角度からして、恐らくは鎮守府の屋上などで歌っているのだろう。
横島は暫し那珂の歌に耳を傾けるが、普段とは違う響きに首を傾げる。
「……何か迷ってるような……悩んでんのかな?」
今も聞こえる旋律は淀みなく流れ続けるが、そこに込められた感情は以前の物とは違っていた。
鎮守府の屋上、夕陽を背に歌う那珂の姿は儚げな美しさがある。今の那珂は横島の推察通り迷い、悩んでいた。
――――私の初心。どうして私はアイドルになりたいんだっけ……。どうして、私は歌ってるんだっけ……?
その疑問を胸に、那珂は歌い続けている。答えは歌の中にある、そう信じて旋律を奏で続けるが答えは未だに出ない。
不意に、横島の顔が浮かぶ。声はやがて小さくなり、歌はそこで終わりを告げる。
「……何でだったっけ。提督なら分かるのかなぁ?」
自分以外、到底知りえるはずのないその答えを。何故か那珂は横島が知っているのではないかと思ってしまう。
その答えが見つかった時、それは那珂が新たな成長を見せる時なのだ。
第四十七話
『沖ノ島対策会議』
~了~
加古「ぐぅぐぅ」
古鷹「もう、またこんなところで昼寝して」
横島「何かいつも寝てるな、加古」
加古「いやー昼寝って気持ちいいし」
古鷹「あ、起きた。ほら、起きたなら今日の出撃を――――」
加古「ぐぅぐぅ」
古鷹「こらー!」
加古「ちょっとぐらい良ーじゃんかー。ほら、提督も一緒に寝よー?」
横島「お前なー、女の子がそーゆー無防備なカッコでそーゆーことを言うもんじゃねーぞ?」脱衣
古鷹「……とか言いつつ服を脱ぎながら加古に覆いかぶさろうとしないでください!!」信管&爆薬抜き魚雷投げ
横島「へぶぅっ!!? ……いや、本編ではけっこう真面目に仕事してたからこういうとこでガス抜きしとこうかと」
加古「そんな理由で迫られる私の身にもなってくれよ」
横島「でも加古なら何だかんだ許されそうな雰囲気があるから……」
古鷹「……っ!!」
加古「古鷹も“確かに……!”みたいな顔すんのやめて?」
お疲れ様でした。
夜戦禁止週間から川内が肉食女子と化し、その煽りを受けて横島鎮守府がえらいことになりそうです。
その内、何かが実装されるに違いない。何かが……!!
この艦これ世界では現実とは違い、駆逐艦娘は全ての海域のほとんどのマス(資材マスや渦潮マス等を除く)で入手できる設定です。
つまり粘れば1―1でも卯月とか浜風とか江風とか浜波とかがドロップするわけです。
なんて羨ましいんだ……!
沖ノ島では那珂ちゃんが主人公です。
それではまた次回。