煩悩日和   作:タナボルタ

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お待たせしました。

なんというか、ここしばらく何もやる気がおきませんでした。
これが無気力症候群というやつなのか……。

サブタイは、アレです。何て言えばいいのか、本当何て言えばいいのか……

それはそうとクリスマス仕様の球磨可愛いよ球磨ああああああああああああああああああ!!!
球磨!! 球磨!! 球磨あああああああ!!! ああっあああ、あああああああああああああああああ!!
ホああああああああああああああああああ!! 球磨クマあああああああああああああ!!
はああああああああああああ球磨ああああああああああああああああ!!
那珂ちゃあああああああああああああああああん!!!


日本海軍対深海棲艦万能人型駆逐艦娘・暁型4番艦

 

 海上に爆煙が広がる。

 胸に走る鈍痛に顔を歪めながら、白雪は思う。

 

 ――何故、()()()()()()()()()()()()

 

 目を開けてみれば、広がる景色は爆煙が立ち上る海の姿。そう、砲撃を受けたはずの自分ではなく、自分の眼前で煙が上がっているのだ。

 弾かれたように辺りを見回せば、周囲に叢雲の姿はない。そこから導き出される結論は1つだ。

 自分を庇い、叢雲が敵の砲撃を受けたのだ、と。

 

「――叢雲ちゃ……!!?」

 

 白雪が目に涙を浮かべながら爆煙の中に入ろうとする。彼女の頭の中には既に敵艦のことなど残っておらず、ただ自分の妹のことだけで占められていた。

 あの砲撃だ。白雪の脳裏に最悪の展開が過ぎる。自分が余計なことに囚われたせいで、妹が沈んでしまった。

 しかし、白雪の予想は外れることとなる。

 

「いいいいぃっっっっっったいわねコンチクショーーーーーー!!!」

 

 当の叢雲本人が雄叫びを上げつつ、爆煙を払って姿を現したのだ。

 

「叢雲ちゃん!?」

「白雪っ! あんた、大丈夫だった!?」

 

 互いが互いの姿を視認し、今がどういう状況にあるかも忘れて安否を確認する。そんなことをしている間に払われた爆煙の隙間から、ホ級が再び主砲を叢雲達へと向ける。

 二人の実戦経験の無さが如実に表れる結果だ。本来なら二人はここで撃沈となってしまうのだろうが、2人には頼れる存在がついている。

 

『――叢雲、白雪!! 弾幕張りつつ後退っ!!』

「っ!!」

 

 叢雲と白雪は突如として響いた声に反射的に従う。自分達の前方に咄嗟に弾幕を張る。すると敵ホ級の周囲に砲弾が着弾し、バランスを崩したホ級が放った砲弾は明後日の方向へと飛んでいった。

 

「あっぶなー……」

 

 叢雲の頬を冷や汗が伝う。現在の叢雲の姿は少々……とは言えないほどに痛々しい。

 頭部の謎のユニットは損傷し、顔も体も煤に塗れ。セーラー服の腹部には大穴が空き、お腹が露出している。いわゆる“中破状態”だ。

 先程は何とか耐え切れたが、またも食らってしまえばどうなってしまうか分かったものではない。叢雲は暴れる心臓を落ち着けようと、大きく深呼吸を繰り返す。

 

『……おーい、聞こえるか2人とも』

 

 敵の射線に入らないように移動している叢雲達に、横島の声が聞こえてくる。

 

「し、司令官……」

 

 2人は顔を歪ませる。叢雲は良い所を見せようとして今の姿であるし、白雪は叢雲に対抗しようとして彼女を危機に陥れた。

 今の2人には鎮守府に居た頃の覇気が完全に喪失している。今も砲撃を続ける眼前の敵が難攻不落の巨大な壁にしか見えない。

 

「ごめん、司令官。やっぱり今の私達の練度(レベル)じゃ、クリアは無理かも……」

「それどころか、私の軽率な行動のせいで叢雲ちゃんが負傷して……!! もしかしたら、このまま……ごめんね、ごめんね叢雲ちゃん……!!」

 

 白雪が涙を流しながら叢雲に謝る。叢雲としては気にしていないのだが、今の白雪にそれを言ってもどうにもならないだろう。

 敵の攻撃から逃れ続ける2人に、横島の落ち着いた声が響く。

 

『……いいか、2人とも。今のお前らでも、あの敵艦達を沈めることは充分に可能だぜ』

 

 その言葉は、2人に対して絶大なインパクトを与えることに成功した。

 

「ちょっと、それ本当なの!?」

 

 真っ先に食いついたのは叢雲だ。白雪は絶望的な未来の展望しか見えていなかったのか、横島の言葉を聞いて若干放心している。

 

『ああ、本当だ。さっきの相手の対応を見て分かったんだが、相手の練度も相当に低いみたいだな。叢雲を仕留めたかどうかも分かっていないのに移動しないし、2人の弾幕に過剰にビビったり、何より今も砲撃続けてっけど、一発も命中どころか近くに着弾もしてねーだろ?』

「……そう、いえば」

 

 叢雲は横島の説明に冷静になり、相手をじっくりと観察してみる。言われてみれば、確かに相手の練度も低いのが見て取れた。砲撃を避け続けている自分達にイライラが募っているのか、狙いがどんどんと甘くなっている。イ級にいたってはホ級の砲撃に巻き込まれないように攻撃することもなくただ移動しているだけだ。

 

「……私、こんなの相手にビビッてたのね」

 

 叢雲は先程までの自分の姿を思い出し、顔を羞恥と怒りで赤く染める。彼女の意気は回復し、もう()る気満々である。

 

『おーい、白雪。そろそろ落ち着いたか?』

「え……。……あっ、は、はい!!も、もう大丈夫です!!」

 

 白雪も横島に声を掛けられ、ようやく正気を取り戻す。それでも相手の動きは見ていたようで、幾分かは希望を取り戻していたようだが。

 

『さって、ここからだけど。白雪には叢雲と交代して攻撃を担当してもらう』

「え……っ!?」

 

 そして、白雪はまたも正気を失いかける。

 

「ちょ、ちょっと待ってくださいっ! わた、私には無理です!! さっきだって司令官のお言葉を無視して前に出過ぎましたし、それにそのせいで叢雲ちゃんが……!!」

『そりゃそーだけど仕方ないだろ? 中破してる叢雲をまた突っ込ませるわけにはいかねーし、他に戦えるのは白雪しかいねーんだから』

 

 白雪は横島に反論するが、それもすぐさま封殺される。横島が言っていることは正しいのだ。今の叢雲に先程までのように無茶をさせるわけにはいかない。戦える者が前に行くしかない。そうしなければ、今度こそ叢雲が沈んでしまうだろう。

 白雪もそれは理解している。理解しているが、白雪の心の中には恐怖が宿っていた。自らのミスが招いた妹の負傷。自分のせいで彼女が沈んでしまうのではないか、という恐怖が。

 体の芯から来る震えに、白雪の航行速度が減じていく。叢雲もそれに気付いているが、現状ではどうしようもなかった。ただ、白雪の手を引き、必死に攻撃から逃れるのみである。

 

『……白雪、お前にいい言葉を教えてやるよ。これさえ心に刻めば、お前は勇気を振り絞れるはずだ』

「……?」

 

 ふいにとても優しげな横島の声が聞こえてくる。そんな都合のいい言葉があるのなら、是非とも聞いてみたいものだ。白雪は縋るように、叢雲は不審がるように横島の次の言葉を待つ。

 

 緊張が支配する戦場に、横島の流麗な言葉が吹き抜ける。

 

『――“それはそれ、これはこれ”』

「――は?」

 

 戦場の空気が、凍ったような気がした。横島の言葉を聞いた2人の目が点になっている。

 

『まずは心にでっかい棚を作り、そこに罪悪感だの責任感だのそーいったメンドクサイ感情を一旦置いておくんだ。そしてありとあらゆる悪いこと全てを敵のせいにして、心に湧き上がって来る理不尽な怒りを相手にしこたまぶつけてやるんだ!!』

 

 それは超理論であった。控えめに言って最低の行為である。しかし横島はそれを真剣に、堂々と言い放った。その姿は紛うことない立派な卑劣漢である。これには叢雲もお冠だ。

 

「ちょっとアンタ!! ふざけたこと言ってんじゃ――」

「“それはそれ、これはこれ”――司令官っ! 私、やってみます!!」

「――って感化されちゃってるぅぅぅうううううっ!!?」

 

 普段から真面目でお淑やかな姉の予想外すぎる返答に、叢雲は“ガビーン”という擬音を背負った。その様は何と言うか、とても良く似合っていた。本人は微塵も嬉しくないだろうが。

 

『分かってくれたか! よし、んじゃさっそく敵艦に攻撃だ! まずはイ級、次いでホ級だ! ただし無理はするなよ。駆逐艦の能力を最大に活かせる時まで機会を待つんだ』

「お任せください!!」

「……白雪、アンタ……」

 

 叢雲を置いてきぼりに、横島と白雪のボルテージは上がっていった。

 

「狙いよし。撃ち方はじめ……!!」

 

 白雪が叢雲と位置をスイッチし、攻撃を開始する。突然の反撃にイ級は砲撃を避けきれず、まともに命中。まずは中破させることが出来た。

 

「……やっぱり、私だけだと弾幕が薄いですね」

 

 白雪は砲撃を続けつつ、そう呟いた。叢雲の主砲は損壊しており、まだ使えそうではあるがそう何度も使用は出来ないだろう。それに横島から聞かされた作戦もある。叢雲には攻撃に参加してもらうより、今は機会を窺ってもらった方が良い。

 

 何度目かの攻撃。イ級の砲撃が至近に着弾するが、白雪はそれでも果敢に撃ち返す。結果、見事イ級を撃沈させることに成功する。

 

「私にも、出来た……!!」

「やったじゃない、白雪!!」

 

 白雪に喜びの感情が宿る。隣では叢雲も喜んでくれており、白雪の目尻に涙が溜まってゆく。しかし、喜んでいる時間はない。横島が手に持つ端末には、とある表示が浮かんでいた。

 

 これで、条件は整った。

 

『白雪、叢雲! いけるか?』

 

 横島の問い掛けに、返ってきたのは2人の肯定。

 

『……よし。夜戦に突入だ!!』

 

 横島が画面上の“夜戦突入”を選択する。

 

 

 ――我、夜戦に突入す。

 

 

 何らかの結界によって形作られていた領域が、黒く、暗い色に染まっていく。

 それは夜だ。夜戦に突入したことにより、領域内が夜と同じ空間に変化したのである。この夜戦空間内では空母などの一部の艦種は一切の攻撃行動が出来なくなるが、それとは正反対に最高の夜戦適正を持つ艦種も存在する。

 

 ――それが、駆逐艦だ。

 

「特型駆逐艦の力、ご覧下さいませ……」

 

 白雪はこれまでとはまるで別人かのように苛烈な攻撃を食らわせる。敵ホ級はその攻撃を前に恥も外聞もなく、全力で逃走。何とかかわすことに成功した。

 ……それが、誘いであるとも気付かずに。

 

「沈みなさいっ!」

 

 視界を爆煙と水煙が支配する中、突如として聞こえたその怜悧さを感じさせる、涼しげな声。驚愕に支配される心のままに声がした方を見れば、そこにいたのは自分が中破へと追いやった艦娘。

 既に、彼女の攻撃準備は完了している。対して自分は動けない。敵の砲撃の衝撃と全力で逃げたことによる体勢の歪み、そして避けきったという安堵の感情が自らを逃れ得ない死地へと追いやってしまったのだ。

 

「海の底に――消えろぉっ!!」

 

 叢雲の艤装に装着されている“12.7cm連装砲”、そして吹雪から借り受けた“61cm三連装魚雷”が続け様に発射された。

 ホ級は加速された意識のせいでスローに映るその光景に何も出来ず、ただ叢雲の攻撃に身を委ねるのだった。

 

 

 

 

『――お疲れさん、2人とも』

 

 沈み行く敵艦を前に、横島が叢雲達に声を掛けるが、2人はそれには応えなかった。2人が見据えているのは敵ホ級である。

 恨み言も無しに沈んでいくホ級は、最後の力を振り絞ると、叢雲達へとゆっくりと、柔らかに手を振った。それは、まるでまた会おうと語っているかのようにも見えた。

 

「……今度生まれてくる時は、艦娘(こっち)側に生まれてきなさいよ」

 

 叢雲はぽつりと呟いた。

 叢雲も白雪も、この世界がゲームの世界であり、自分達がゲームの登場人物だということは理解している。彼女達艦娘は例え沈んだとしても、また同じ艦娘へと転生することが出来る。そういう風に()()()()()()()からだ。

 しかし、だからと言って海に沈むことが怖くないわけがない。彼女達艦娘は、海の恐怖、そして(げきちん)の恐怖をその魂に刻み込まれている。

 何故自分達ゲームのキャラに魂が宿ったのか、それは未だ誰にも分かっていない。何も知らないまま、自分達は艦娘として()()()()()しかないのだ。魂を宿す、人間の様に。

 

『……よくやってくれたな。一先ず鎮守府正面海域はクリアだ。格好良かったぜ、2人とも』

「やめてよ。完全にかっこ悪かったわ、私達は」

「……そうですね。司令官には見苦しい所ばかりお見せしてしまって……」

 

 横島の賛辞に2人は首を振る。2人はこの初陣がとてもではないが格好良いとは言えない物だと感じている。だからこそ、こう思うのだ。

 

「次……」

『ん?』

「次の戦場(いくさば)こそ、本当に格好良い所を見せてやるわ! もう二度と、こんな醜態は晒さない!!」

「私もです。次こそは、司令官に恥じない戦いをお見せします」

『……あいよ。楽しみにしてるぜ』

 

 それを機に、3人の間には沈黙が訪れた。しかし、それは決して居心地の悪いものではない。互いに対する信頼によって齎されるその空気は、言いようのない安心感に満ちていた。

 

 しかし、この海域での騒動はまだ終わらない。

 

「――これは!?」

『な、何だ!?』

 

 始めに気付いたのは叢雲。次いで横島だ。2人は突然の変化に驚きの声を上げる。一体、どのような変化が起こったのか。

 

「……BGMが、変わった……?」

 

 白雪が呟く。そう、BGMが急に変化したのだ。

 普段流れているBGMから、重厚にして勇壮、軽快にして緊迫感が溢れるBGMへ。

 

 あえて文字に起こすならば、“デンドンデンドンデンドンデンドンデンドンデンドンデンドンデッデデーデデデデーデデデデー デッデデーデーデーデデデデーデー”といった感じだろうか。

 叢雲達の正面、数メートル程離れた場所に、巨大な渦が姿を現し、更には大波、強風も発生する。だがそれは叢雲達には一切の影響を与えず、不思議な、あるいは不気味な印象のみを与えてくる。

 

『おいおいおい、まさかラスボス出現か!? 強制敗北イベントか!?』

 

 横島はこういったゲームにありがちな予想を立てる。これが普通のゲームだった場合、それも有りえたのだろうが、生憎とこれは普通のゲームではなかった。

 このゲームは、今の所物凄く演出が派手なゲームなのだ。

 

「……人影?」

 

 大渦の中心、そこに小柄な人影が見える。それは白雪達と同じようなセーラー服を纏った、小さな女の子と思しき影。その影は腕を組み、仁王立ちをしながら渦から海上へとせり上がってくる。

 

「まさか……いや、まさか……」

 

 叢雲が信じられない風に呟く。無理もないだろう。まさか、こんな演出過多な表現が()()()()()()()だとは思いたくはない。

 

 やがて、大渦から完全に海上へと姿を現したその艦娘は、何故か背後で起こった特大の水しぶきを背景に、仁王立ちで腕を組みつつ口を開いた。

 

「――(いなづま)です。どうか、よろしくお願いいたします」

 

 皆、なんかもう、開いた口が塞がらずにぽかんとした表情をしてしまった。「はわわ」とうろたえる電は可愛かったが。

 

『……これも、絶対変えさせよう』

 

 横島は使命感に燃えた。

 

 

 

 

第五話

『日本海軍対深海棲艦万能人型駆逐艦娘・暁型4番艦』

~了~

 

 

 

 

 

 

 一方その頃吹雪は!!

 白雪達が砲撃を受けた段階で真っ白になって失神しており、横島の膝枕で苦しげに魘されていた!!

 かわいそう!!

 寝相の関係でスカートが捲くれ上がり、パンツも見えているよ!!

 やったね!!

 




お疲れ様でした。

横島君がわりと冷静だった理由とかはまた次回に。まあ大した理由ではないんですが。

最初は電じゃなくて文月の予定だったんです。
仁王立ちで腕組しながら「あたし、文月っていうの。よろしくぅ~」なんて甘ったるい声で登場した方がインパクトあるかなーと思ってたんですが、でもやっぱりネタを知ってそうで弄りやすいキャラの方がいいかな? となって今度は漣になり、最終的には電に「お姉様、あれをやるわ」とか「スーパー(イナヅマ)キック」とかをやらせたくて電になりました。(長い)

サブタイの元ネタはガンバスターの正式名称です。出番は最後にしかないのにね。

次に戦闘シーンが出てくるのは……沖ノ島海域かな……

それではまた次回

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