水色デイズ   作:パントマイム

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猫、好きですか?

総武高校入学が決まり登校日に備えるとある休日。

 

学校で使う参考書を揃えるために街の本屋さんに向かう。ざっくりとした目的な為、お目当ての教本とかってのは無いんだよね...

 

なんというか、ちょっと足を伸ばして一人で買い物、そこに心揺れてる。

 

こんな心情誰かに見透かされたら子供みたいなんてかわれちゃうよね...だから敢えて今日は一人でお出掛けなのだ。...敗北無しだよね?

 

 

歩いて駅まで向かうとお休みということもあって人が沢山。

 

 

駅前通り、並木の周りを木のベンチが囲む木陰で紙パックのジュース片手に座ることにした。

 

風が気持ちくて、木漏れ日が降り注ぐベンチでゆっくりとした休日を過ごす。

 

 

足をプラプラさせながら携帯を覗きお目当ての参考書を検索、んー、やっぱり誰かに聞いておくべきだったかなぁ...

 

 

「ん?」

 

 

足元にフワフワした感触。くすぐったい。

 

 

そのフワフワを確かめようと顔を逆さにして足元を覗くと可愛らしい仔猫があくびをしながらすり寄ってきた。

 

 

「かゎぃぃね。」

 

 

綿菓子のような毛並みでまん丸な瞳、人懐っこい子。

 

 

手を差し伸べると小さく鳴き人差し指を舐めてきた。

 

 

「一人なの?」

 

 

にゃーにゃーと合図ちを打ってくれる。

 

 

差し伸べた片手に絡み付いてくる様子に心惹かれそのまま抱き上げ膝の上でその子座ってもらった。

 

 

「ママは?」

 

 

まだ眠いのかな、あくびで答えるとまん丸の瞳がゆっくり閉じていく。

 

 

「いいよ、僕も今日はお休みだからゆっくりしてね。」

 

 

頭を撫で膝の上でお休みさせてあげる。

 

 

赤ちゃん猫とベンチで過ごす。

 

 

 

 

 

 

『その子、迷子かしら?』

 

 

 

 

 

 

目を閉じ暫く柔らかい風に体を預けていると女の子の声が耳に届く。

 

ゆっくりと目を開くとそこには僕の膝元でしゃがみこんだ黒髪の女の子が赤ちゃん猫を見つめこちらを覗いていた。

 

 

「うん、迷子なんだ。僕の足元に近寄ってきたの。」

 

 

『...そう。とても可愛い子ね。』

 

 

長い髪をかきわけとても優しい口調で話してきた。手を伸ばしたそうな指先、抱っこしたいのかな?

 

 

「抱っこ、したい?」

 

 

『......良いかしら?』

 

 

「いいよ、こっち。」

 

 

隣に座ってもらうよう招くと冷静の中に唇の緩みを見せた。

 

 

スラッとした透明感のある綺麗な女の子。

 

 

「お姉ちゃんが抱っこしたいんだって、挨拶しよ?」

 

 

喉元を指で撫でるとゆっくり瞳を開き一鳴きして応える。

 

 

「おはよーって、ほら。」

 

 

『ぉ...おはよ...』

 

 

フワフワでまん丸な瞳に女の子は吸い込まれていく。

 

 

「どうぞ、洋服大丈夫?」

 

 

『ええ、構わないわ。』

 

 

両手で抱き抱え女の子の膝へポフッとお座りしてもらう。

 

 

『......にゃぁ...』

 

 

ゆっくりフワフワした毛並みを撫でながら小さく鳴き真似をすると表情が柔らかくなる。

 

 

「ふふ...にゃぁ...」

 

 

二人で子猫をあやしお互い目を見合うと自然と笑みが溢れた。

 

 

「お姉ちゃんにナデナデしてもらって良かったね。」

 

 

仔猫は白い指に頭を擦り付け気持ち良さそうに応える。

 

 

『可愛いわ...ほんとに。』

 

 

「ママとはぐれちゃったのかな...」

 

 

『そうね、一人で可愛そうだわ...』

 

 

「交番、連れていった方がいい?」

 

 

『愛護センターがあればそこへ連れていくのが一番良いのかもしれないけど...』

 

 

「ちょっと待ってね、探してみる。」

 

 

携帯を覗き市内にある動物愛護センターを探す。

 

 

「あ、ここは?」

 

 

『そうね、ここならケアもしっかりしていそうだし大丈夫じゃないかしら。』

 

 

施設の写真と詳細ページを開き画面を覗き込む二人の頭が少し触れ合う。

 

 

『......ぁ...ごめんなさい...』

 

 

ブラックアウトした画面に二人の顔が映る。

 

 

「う...ううん...大丈夫だょ。」

 

 

少し沈黙が生じお互い下を向くと甘えた鳴き声が二人を和ませてくれた。

 

 

「お姉ちゃんと一緒に行く?」

 

 

僕の問いに白い指にまとわりくつ素振りを魅せる仔猫の反応は女の子をクスッと笑顔にさせた。

 

 

『私も一緒に良いかしら?』

 

 

「うん、一緒に行こ?」

 

 

肩にかかったバッグに手を延ばすと″お願いね″と僕に渡し両手でフワフワを抱き寄せて立ち上がる。

 

 

「猫、好きなんだね。」

 

 

『ええ、とても。』

 

 

木陰に靡かせる黒髪、僕に見せた笑顔、暖かい休日が彼女との出会いの日だった。

 

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