水色デイズ   作:パントマイム

13 / 20
カーくん。

これは総武高校入学前の出来事。

 

 

僕は駅前の木ノ下で迷子の仔猫と猫が好きな黒髪の女の子と出会った。

 

そして今、隣に居る迷子の仔猫を抱えたその女の子と動物愛護センターを目指している。

 

 

「交代する?」

 

 

『大丈夫よ。』

 

 

抱き抱えてそう答えると大事そうにフワフワの毛並みを一撫でして微笑んだ。

 

 

「僕、今日は一人で買い物しに来たんだ、そしたらこの子とばったり。」

 

 

テクテクと歩きながら女の子用のバッグを肩に掛けながら話す。

 

 

『買い物の途中なのに声をかけてしまって申し訳なかったわね...』

 

 

「ううん、さっきは休憩してたの。大丈夫だょ。」

 

 

少し表情が暗くなった口調に目を向け僕もフワフワの毛並みを撫でる。

 

 

「高校用の参考書選び難しくってさ、アハハ...」

 

 

『そう......』

 

 

「うん、予習復習出来るような参考書。」

 

 

『......私、本屋で参考書を買いに行っていたのだけれど...』

 

 

「え?ほんとに?」

 

 

ポツリポツリ話す様子に驚いてしまった。スッゴい偶然だぁ...

 

 

『ええ。もうすぐ新学期が始まるし用意できることをしておきたいと思ったの。』

 

 

「そだよね...あー僕も買わないと...総武受かったけど勉強付いていけなくなったら困るし...」

 

 

『今、なんて?』

 

 

こちらを向き足を止めると一瞬驚いたような表情で聞き直してくる。

 

 

「えっと、僕今年から総武高校に通うんだ。それで勉強に役立ちそうな参考書があったらなって......なんか、変なこと言っちゃったかな...?」

 

 

 

『いいえ...そう。そうゆことね。』

 

 

「うんっ」

 

 

納得した表情の女の子を横目に携帯のGPS情報に照らし合わせていた目的地が見えてくる。

 

 

『ここね。』

 

 

「そーだね、入ろっか。」

 

 

『ええ。』

 

 

胸の中でくるまった仔猫を見つめる女の子。安堵する中に少し寂しげな表情が垣間見えた。

 

 

「寂しい?」

 

 

『そ、そんな事......』

 

 

そばめた顔は少し紅く俯きながら女の子は答えた。

 

 

「お姉ちゃん寂しいって。」

 

 

″にゃぁ″と抱かれた体をくねらし俯いた女の子の顔へフワフワの耳が擦れる。

 

 

『大丈夫よ、ありがとう。』

 

 

擦り寄った頭にそっと手を置くと無邪気な表情の仔猫に応えた。

 

 

 

 

 

 

 

『『すいませーーーん!!!』』

 

 

 

 

 

 

中学生くらいの女の子、僕達の後ろから駆け寄る足音と共に声が向けられた。

 

 

『『カーくんが...はぁ...はぁ...』』

 

 

「かーくん?」

 

 

愛護センターまであと一歩の所で僕達の足は中学生の女の子によって静止された。

 

 

『『はぁ...っ...今日トリミング予約してて...キャリーに入れてたんですけど、ちょっと目を離した隙に...』』

 

 

背に見え隠れしたキャリーケースを抱えだしモジモジとしながら訳を話してくれた。

 

 

「そーだったんだ。この子僕が駅のベンチに座ってたら足元に近寄ってきてね。首輪でもあれば飼い猫かなって思ったんだけど......ごめんね?」

 

 

『『いいえーそんな!謝らないでくださいっ...駅前で人に聞いて回ってたら仔猫を抱えたお二人を見掛けたって人が居て...』』

 

 

『ちゃんと飼い主が見つかって良かったわ。』

 

 

飼い主の女の子の元に歩み寄るとフワッとした体を引き渡した。

 

 

『『カーくんごめんねぇ...うぅ...本当にありがとうございましたっ...』』

 

 

「本当安心したよぉ。ね?」

 

 

『え、えぇ。安心したわ。』

 

 

お行儀良くペコペコとお辞儀をした飼い主の女の子と駅前で別れ、残された僕達は出会ったベンチに腰を下ろす。

 

 

「はい、どーぞ。」

 

 

『ありがとう、なんか悪いわね。』

 

 

2本買ったミルクティの缶を差し出すと思いの丈を走らせる。

 

 

「なんかホントにホッとしちゃった。...迷い猫とかワンちゃんが保健所とか愛護センターに預けられちゃうとさ...その先どうなっちゃうか...」

 

 

話始めていく内に気持ちが暗くなってしまい俯いてしまう自分がそこに居た。

 

 

『優しいのね。』

 

 

「え...?」

 

 

『私も考えていたのよ。その事。』

 

 

先程垣間見せた表情が甦る。

 

 

『貴方に見付けて貰えたあの子も飼い主さんも幸せだと思うわ。』

 

 

曇った気持ちをスッと光を射してくれる言葉が届く。

 

 

「うん......そう思ってもらえてたら良いな...」

 

 

放たれた光の先を向いて笑顔で答える。

 

 

 

 

『まだ、名前を聞いていなかったわね。』

 

 

 

 

ミルクティの缶をベンチにそっと置くとこちらに体を向けた。

 

 

 

 

「そうだったね。僕は○○って言うよ。」

 

 

 

 

 

『私は雪ノ下雪乃、また会えるかしら、学校で。』

 

 

 

 

 

「え?学校で...?」

 

 

 

 

 

雪『フフッ、そうよ。私達の学校で。』

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告