沙『ほら、どうぞ。』
「...ぉ、ぉじゃまします。」
沙『ただいまって、言って?』
「.........ただぃま。」
沙『良くできました。』
「もぅ...」
昨日と同じ。なんだろ...暖かいお家。
川崎さんの後ろ姿、何度も見ている姿。階段でヒラヒラとスカートを靡かせる彼女の後を着いていく。あれ...?
「...着替えないの?」
沙『ん?着替えるよ?』
昨日はリビング?で着替えてたよね...?
今日は制服姿のまま部屋に招く川崎さん。
シュシュで束ねた髪をほどくと耳上でサイドに束ね直しブレザーをハンガーにかける。
身体のラインが浮かび上がるブラウス姿に自然と目が奪われしまった。
沙『上、貸して?』
「...ぅん。」
二人の真新しいブレザーが並ぶとベッド脇に腰を落とす。
沙『どこ、見てるの?』
「...っ...別に...」
沙『私、着替えないと。ちょっと向こう向いてて?』
「え、ここで...?」
枕元に畳まれた部屋着に手を伸ばすとブラウスのボタンを外す音が僕の耳を紅く染め始める。
沙『こっち、見ちゃダメだよ?』
「み、見ないってばっ」
沙『耳真っ赤。』
両耳を塞ぎクスクスと聴こえる筈の声を遮断した。...もう...こうゆうのダメだって...
隣で着替える川崎さんの姿を考えないように目を反らす。
布と肌の擦れる音、塞ぐ耳の隙間から鼓膜に伝わると僕の心音を加速させる。
沙『はい、お待たせ。』
両手を掴み耳から離させると着替え終えた姿を僕に魅せた。
「...昨日下で着替えてたのに。」
沙『昨日はブラウスの糊、直ぐ落としたかったから。普段は部屋だよ?』
何も言い返せず背を向けクッションの上で膝を抱える。
沙『こっち向いて?』
「からかってばっかり...」
沙『ごめんごめん。』
小さく丸まった背中は優しく包み込まれていく。
「...びっくりしたの。」
沙『ドキドキしてくれた?』
「...言わない。」
笑みをこぼし立ち上がると、脱いだブラウスと靴下を手に階段を踏み鳴らし降りて行く川崎さん。
部屋に入ってからずっと耳と顔に熱を帯びた僕はその姿を目で追う事が出来なかった。
暫く気を落ち着かせ天井を眺めていると二つのカップを持った川崎さんが帰ってくる。
沙『ただいま。』
「...ぉかぇり。」
沙『落ち着いた?』
「...落ち着かせた。」
紅茶の入った二人分のカップをローテーブルに置くと自分のカップに口を付ける。薄いリップの跡がそこに残るを目で追うと僕も一口含む。
沙『今日は何しよっか?』
「んー...なにって...」
沙『これ、見てくれない?』
ローテーブルに置いてあるスケッチブックを開くとシュシュのデザインラフに指を指す。
「これ、可愛いね。」
沙『京華に作ってあげるやつ。』
「へぇ、京華ちゃんに似合いそうだね。」
耳下で二つ結びをさせてあげるための川崎さんがデザインした小さめなシュシュ。優しくデザインラフを撫でるような眼差しで言った。
沙『オシャレしたいんだって、女の子だね京華も。』
「...沙希がお手伝いしてあげたら喜ぶと思うよ。」
そっと僕の肩に頭を乗せると″うん″と一言スケッチブックを抱き抱え笑って魅せた。
「お姉ちゃん、だね。」
沙『そうだよ。私はお姉ちゃん。』