「あ~悪い。少し道を聞きたいんだが」
「はい?」
「道を訪ねたいんですが。近くの町か村には、どうやって行けばいいですかね?」
俺は近くに偶々いた女性に話しかけた。だって、このまま迷子は嫌だし、やっぱこの世界の住人に話を聞くのが一番手っ取り早いしさ。
「そうですね…この道をまっすぐ行って、左右に別れてる道がありますので、そこを左に行けば、孫家がおさめてる呉に到着します」
「そうですか。ご丁寧にありがとうございます」
「いえ、道中お気を付けて」
「そちらもお気を付けて」
道を聞いた人と別れ、俺は教えられた道順を歩いていく。そしてようやく町が見えたのだ。
「あれが呉か。何にせよ、転生早々死ななくてよかったよかった」
町を見て安堵の表情を浮かべた俺は悪くない。で、町に入ってみると、中々賑わっていた。
「へ~、昔見た時代劇の世界に来たって感じだな。建物の感じはまるっきり違うけど」
人通りが多く、店も多くあった。すると、いい匂いがしてきた。
「…いい匂いだな~」
匂いを嗅いだ瞬間、俺の腹が悲鳴をあげた。
「そういえば腹減ったな。ここに来てから、まだ何にも食ってなかったな」
とはいうものの、残念ながらこの世界の通貨を持っていない。
「…まずは、仕事探さないとな」
そうボヤきながら歩いてると、1軒の店に人だかりが出来ていた。
「なんだ?」
気になり見に行くと、店内で男が女に剣を向けていた。
「テメェ!もっぺん言ってみろ!!」
「だ~か~ら~、私より弱いあんたに着いていくわけないでしょ」
「この女~!」
ピンクの髪に褐色肌の女が、酔っぱらいながら男にそう言い放つ。
「おいおい、酔っ払っててえらい強気だなあの女」
「全くだ」
野次馬連中がそう言う。しかし…
(…強いなあの女。酔ってても全く隙がない)
俺は、あの女から出てる気を感じる。だが、男の方はそれに気が付いてないな。その時点で、男が女に勝てるはずないのは事実だな。
「もう、めんどくさいわね」
「ふざけんな!!」
男は持ってた剣を抜く。おいおい、流石にそれはマズいぞ。
「投影・開始」
俺は刀を一本作る。これで万が一があっても対処できる。
「あら、自分の言う通りにならなければ、今度は力づくってこと?」
「そんなのはもうどうでもいい!!俺を馬鹿にした事後悔させてやる!!」
男は女に斬りかかる。が、そうは問屋が卸さないってね。
ガキン!!!
『!?』
俺は先程投影した刀で男が振り下ろした剣を受け止める。
「オイタはそこまでだ」
「邪魔すんな!!」
「別に邪魔してなんかいない。ただ、お前が一方的にこの女にちょっかい出してただけだろ」
「ぐぬぬ…」
男は図星を言われ黙る。さて、これ以上相手をするのも面倒だし、さっさと終わらせるか。
「紅葉切り!」
俺は素早く移動し、男の背後に立つ。刀を鞘におさめると、男はそのまま気絶し倒れた。
「へぇ…」
その時、女が俺の事を何か企みながら見てた事に気が付かなかった。
「さて、見た感じ怪我はなさそうだな」
「ええ、おかげさまで」
「なら、俺は行かせておらう」
そう言い残いし店を出て行こうとする。しかし、俺の腕に女が抱き着いて移動できない。
「…離れてくれ」
「ちょっと待ってよ。折角助けてもらったんだし、お礼くらいさせてよ」
「しかしな~」
そう言った瞬間
グゥ~…
俺の腹が豪快に鳴いたのであった。俺はあまりの事に顔を赤くする。
「あら?貴方お腹が空いてるの?だったら、ウチで食べて行って!」
そして女は俺の返事も聞かず、そのまま何処かに連れて行く。で、やって来たのはこの場所を仕切っている王が住んでる館。
「えっと…」
「さ、入って入って」
女は俺をそのまま中へ入れ、ある場所に連れて来た。それは台所だ。
「祭~」
祭と呼ばれる女が台所にいた。
祭「雪蓮殿!!今まで何処におられた!!冥琳が探してましたよ」
雪蓮「やっば…」
雪蓮と呼ばれる女の顔が一気に青くなる。
祭「ところで、後ろにいるのは誰じゃ?」
雪蓮「おっとそうだった。私が町で飲んでた時に助けてくれてね。お腹空いてるみたいだったから連れて来たの」
「ども」
あれだよな。このパターンってもしかして…
「騒がしいと思ったら雪蓮、帰ってたのか」
雪蓮「お母様」
えっ!?お母様!!?って事は、この人はこの国で一番偉い王の妻で、助けた奴はその娘って事!!!?マジかよ!!!
「ん?そいつは?」
祭「町で襲われたところを助けてもらったそうじゃ堅殿」
「そうか」
すると、女は俺の前にやって来る。
「娘が世話になったみたいだな。礼を言う」
「い、いえ」
「俺の性は孫、名は堅、字は文台だ」
孫…堅…もしかして、孫文台!!?女なのかよ!!
「は、初めまして」
ヤバい…色々とありすぎて思考が追い付かん。
「俺…私の性は山田、名は飛翔です」
孫堅「ほう、字がないとは珍しいな。後、話しにくいなら普段通りに話せ。その方が楽だろ」
「…いいのか?悪いが敬語なんか話さないぞ」
孫堅「そっちの方が俺も楽だ」
すると、祭が俺達の会話に割って入る。
祭「堅殿!王がその様な振る舞いをされては困ります!!」
孫堅「別にいいだろ。俺が許可したんだ」
祭「しかし…」
孫堅「いいんだよ!」
次の瞬間、台所が物凄い空気に包まれる。
(なるほど。流石は呉の王だけはある。物凄い殺気だな。ってか、あんたが王だったのね)
祭「も、申し訳ない」
孫堅「気にするな。それより…飛翔」
「ん?」
孫堅「お前かなりの腕前なようだな。軽くだが俺の殺気を喰らっても物怖じしねぇとは」
「そうか?」
すると孫堅は、何か考えだす。なんだろ…碌な事じゃない気がすんのは気のせいか?誰か気のせいだって言ってくれ。
孫堅「おい、俺と勝負しろ」
はい当たりました~!!おめでとうごさいます~!!って、そんな事思ってる場合じゃない!!
「勝負?」
孫堅「そうだ。お前の実力が気になってな。だから、俺と戦え!!」
「…断れば」
孫堅「今すぐこの場でテメェの首が、胴体と分かれるだけだ」
それって最早強制だよな!?やれやれ仕方ない…いっちょ揉んでやるか。
「分かった。その勝負受けよう」
孫堅「そうか!なら、早速…」
「っとその前に!」
『??』
「戦う前に何か食わしてくれないか」
雪蓮「そう言えばお腹減ってたんだったわね」
「ああ。流石に腹減りじゃ力が出ないからな」
孫堅「そうか。なら祭!こいつに何か食わせてやれ」
そして俺は無事に飯にありつけたのであった。