オーバードッグ 名犬ポチ《完結》   作:のぶ八

36 / 49
前回までのあらすじ!



マジでボコられる名犬ポチ!
だがそこに颯爽と現れるは…!


負け犬と化け猫

それは遥か昔。

一匹の小さな猫が最後に見たもの。

 

 

 

 

 

磔にされた状態で周囲を見回す。

 

もう指の一本も動かない。

刻一刻と死に近づいているのが分かる。

 

眼下に広がるのは蹂躙される民達とそれを襲う人間達。

その時、猫は思った。

 

ああ、失敗した、と。

 

理想を掲げ道理を説き夢を掲げた。

だが上手くいくことは無かった。

この世界に来て神だなんだと持て囃されたが元々はただの一般人だ。

国を、ましてや迷える民達を導くなど出来ようはずもない。

一時はその優れた力により上手くいくかと思えたが、突如現れた自分より強大な力の前には成す術も無かった。

 

ただただ無力だった。

何者も守れず、国は滅び、ギルドは崩壊した。

 

やがて人間達によって猫の体に火がつけられる。

火はあっという間に猫を包み込んだ。

あまりの苦しみに思考が飛び叫び声を上げる。

死ぬ直前に猫の脳裏によぎったのは、わずかとはいえ無事に逃げ延びた者達のことだった。

せめて彼等だけは幸せに生きられますように。

そう願い、猫は死んだ。

 

だが猫は絶命した瞬間、一つの選択を迫られることになる。

 

それは彼のスキルが発動した証だった。

この世界に来てから初めてのことだったがそれが種族オーバーキャットのスキルであることは感覚的に理解できた。

死んで発動する彼の特殊スキル。

使用するか否か。

だがもう全てが手遅れだ。

発動する意味も無ければ、取返しもつかない。

 

もう猫にできることは何もない。

ただ悲しみの中、スキルの使用を拒否し灰になった。

 

 

 

 

 

 

ふと、おぞましい感触が全身を撫で上げた。

もはや自己の存在など忘れて無にも等しき次元にいた自分の意識が突如として覚醒する。

深い水面から自分を引き上げようとする誰かの肉球。

しかしそれをカッツェは必至に振り払おうとする。

その手の先にある懐かしくも不穏な存在を感じたからだ。

だができなかった。

思わず叫び声を上げそうになりながらも、すぐにその理由に思い至る。

それは対象者を強制的に蘇生させる魔法。

拒否することはできない。

それと同時に自分とは相いれない種類の魔法だと感じる。

本来ならば自分には効果の及ばない魔法の筈だ。

この魔法ではいくら魂そのものを引っ張ることに成功しようとも肉体の再生が出来ない。

肉体の再生が出来なければ当たり前だが蘇生はできない。

故に魂も元の場所に戻る。

これはそういう類の魔法であり、相いれない存在には効果の無い魔法なのだ。

 

だがカッツェは違う。

 

オーバーキャットのスキルにより死亡後、魂のみで一定時間存在できる。

ユグドラシルでも稀有な存在。

例外中の例外。

故に本来であれば蘇生できない魔法であるにも関わらず、魂のみで存在できるカッツェは再び呼び戻されることになる。

死んだままということは変わりないが。

 

やがてカッツェの視界が白く染まる。

そしてその先の向こうにあった景色は…。

 

 

 

 

 

 

魂が具現化し、猫の形に変わっていく。

形を為し質量を伴いながらもその身体は炎のようにゆらゆらと揺らめいていた。

 

 

 

「どこだ、ここは…?」

 

 

訳も分からず呼び戻されたカッツェはすぐに辺りを見回す。

周囲は緑がほとんどない荒涼たる大地。

加えて薄い霧によって辺り一帯が覆われており視界も悪い。

まるで見たことの無い景色にたじろぐカッツェ。

一体ここはどこなのだ、と。

彼はそこが昔自分の国があった場所だとは気付かない。

長い年月は彼の知る何もかもを変化させていたからだ。

すぐに状況の判断ができない。

分かっているのは一つだけ。

完全な蘇生ではなく、魂だけ呼び戻されたということだけ。

 

ふと目の前にいる巨大なゴーレムが目に入る。

 

 

「なん、だ…、あのゴーレムは…? ユグドラシルのゴーレムか…? だが普通のじゃあないな…」

 

 

そのゴーレム、ガルガンチュアは足元に倒れる小さな生き物目掛けて拳を振り下ろそうとしていた。

 

 

「っ!? あぶねぇっ!」

 

 

考えるより先に体が動く。

どこぞの誰かと違ってカッツェはカルマ値最高の極善。

特にこの世界で精神が肉体に引っ張られている今では目の前で殺されそうな者を見殺しにできるはずなどない。

 

倒れている小さな生き物に素早く駆け寄ると口で体を掴みガルガンチュアの一撃を避ける。

 

 

「グオォォォォ!」

 

 

攻撃を外したガルガンチュアがカッツェの存在に気付き吠える。

カッツェはその小動物を口に咥えたままガルガンチュアの追撃から逃げ回る。

とは言ってもカッツェの体のサイズも加えている小動物と同じくらい小さいのだが。

 

 

(マズイな…。このままこいつを咥えたままじゃ逃げ切れんぞ…。それにどんどん呼吸が弱くなっていってる…。すぐに回復魔法を…)

 

 

そして魔法《グレーター・キャット・ヒール/猫の大治癒》を発動する、が。

 

 

(効かない…!? ま、まさか、こいつ犬か…!?)

 

 

自分が咥えている生き物の種族にそこで気付く。

血だらけな上にボロボロだった為に外見からその種族を見抜くことは不可能だったのだ。

 

 

(別に犬だからって見殺しにする気はないが…これはマズイな…。犬だとすると俺の上位魔法はほとんど効かんぞ…、死なれたら蘇生もできん…。ちっ、位階は落ちるがあれしかないか…)

 

 

カッツェは犬をその場に下ろすと魔法を発動する。

 

 

「《リック・ヒーリング/治癒の舌》! ぺろっ」

 

 

血だらけの犬の怪我が徐々に癒えていくが上位の魔法と違って効果が及びきるまでわずかに時間がかかる。

そのため動けるまで数秒はかかるだろう。

加えて他にも瀕死の者が一匹いることに気付いたカッツェ。

 

 

(向こうで倒れているのも犬か…? やばいな、傷の度合いはこっちの比じゃなさそうだ…。だが《リック・ヒーリング/治癒の舌》を使うには同じように直接舐めないと回復させられん…)

 

 

この間にも距離を詰めてきているガルガンチュア。

覚悟を決め、加えていた犬をその場に置くカッツェ。

だがカッツェは逃げようとせず、ガルガンチュア目掛けて突進する。

 

 

「グゴオオ!!」

 

 

カッツェ目掛けて必殺の拳が繰り出される。

純粋な戦闘能力で言えば名犬ポチと双璧を為すカッツェ。

 

つまりはクソ雑魚である。

ゆえにこの攻撃も即死の一撃。

しかし。

 

 

「ゴオオ!?」

 

 

カッツェの体を真芯で捉えたにも関わらずガルガンチュアの拳には何の感触も伝わらなかった。

肝心のカッツェは何食わぬ顔で周囲を走り回っている。

再びカッツェ目掛けて何度も拳を振り下ろすガルガンチュア。

だがどうしてか止めることはできない。

避けられているわけではない。

ガルガンチュアの攻撃は全てカッツェにヒットしている。

だがガルガンチュアの攻撃が当たったかと思うとカッツェの体がまるで煙のように姿を変える。

そしてすぐに元の体に戻るカッツェ。

 

 

「ふん…! ゴーレム如きが俺を殺せると思うなよ…? 物理攻撃で殺すんなら体のある奴だけにするんだな…!」

 

 

外見上は実体を持っているように見えるカッツェではあるが生身の肉体は存在しない。

今の体は魂そのものである為、純粋な物理攻撃はカッツェには通用しないのだ。

魔法的な力でないと魂に干渉はできない。

つまり、物理特化のゴーレムにとって最悪の相手。

 

 

「ゴオオア!」

 

 

だが攻撃が通用しなくともガルガンチュアはカッツェを追って攻撃を繰り出していく。

対象及び邪魔者を排除せよ、それがガルガンチュアに下された命令だからだ。

通用するかしないかは関係ない。

ただひたすら命令通りに動くだけ。

 

 

「こっちだ、デカブツ」

 

「ゴオオ!」

 

 

足元に潜り込んだカッツェ目掛け拳を振り下ろすガルガンチュアだが、その動きに翻弄され自身の足に攻撃を誤爆してしまう。

さほどダメージがあるわけではないが体勢を崩し倒れるガルガンチュア。

その隙に倒れているもう一匹の犬目掛けてダッシュするカッツェ。

 

 

「げぇっ! 体が半分吹き飛んでんじゃねぇか! 《リック・ヒーリング/治癒の舌》! ぺろっ」

 

 

先程と同じように回復魔法を使うカッツェ。

死体と見まごう程だったその犬であるが徐々に目に光が戻り始める。

どうやらギリギリ間に合ったらしい。

ちょうどそのタイミングで先ほど助けた犬が動きだすのが見えた。

 

 

「おっ! 気が付いたか良かった! すぐに逃げるぞ!」

 

 

そう起き上がった犬に叫ぶカッツェ。

だがカッツェを見た犬が急に吠えだす。

 

 

「わん!(な、なんでてめぇがここにいるんだぁぁ!!!)」

 

 

何を言っているがわからないがやたら叫び散らす犬に驚くカッツェ。

よくよく見てみるとその顔は…。

 

 

「あ、あー! お、お前はポチ!? な、なんで!?」

 

 

驚愕するカッツェ。

だが次の瞬間さらに驚愕することになる。

 

 

「わん(ここで会ったが百年目! 死ねぇええ!《チェイン・ドッグ・ライトニング/連鎖する犬雷》!)」

 

 

両手の肉球から雷の犬を放つ名犬ポチ。

慌てていたカッツェはまともに被弾する。

 

 

「ぎゃああああああ!!!!」

 

 

物理は効かなくとも魔法は通る。

 

 

 

 

 

 

「わ、わんっ…!(ハァッハァッ、やったか…?)」

 

 

プスプスという焦げるような音と共に煙が立ち昇る。

そこでは黒焦げになった猫が倒れていた。

だが次の瞬間、その黒焦げの体が瞬く間に元に戻っていき起き上がろうとする。

 

 

「わん!(こ、こいつっ…! やはり超位魔法じゃなきゃ無理かっ!?)」

 

 

そして超位魔法を放とうと構える名犬ポチに獣王が止めに入る。

 

 

「く、くーん!」

 

「わん!(な、なんだと!? こ、こいつが助けた!? 俺たちを!?)」

 

 

獣王の説得に信じられないというような顔をする名犬ポチ。

その間にフラフラしながらも立ち上がるカッツェ。

 

 

「ポ、ポチよ…、と、とんだご挨拶じゃないか…」

 

「わん(て、てめぇ…、何が狙いだ…?)」

 

「お、おい、ポチ…」

 

「わん(まさか最終日の復讐にでも来たのか…?)」

 

「ちょっと聞けって…」

 

「わん(やらせねぇ…! やらせねぇぞ…!)」

 

「だから聞けやぁ! 何言ってるかわかんねーんだよ!」

 

 

ついに我慢できなくなり名犬ポチに突っ込みを入れるカッツェ。

 

 

「ゴオォォ!」

 

 

そんなことをしている内に起き上がったガルガンチュアが近くまで接近していた。

 

 

「わん(ちっ、邪魔くせーな…)」

 

「ポチ、細かいことは後回しだ。まずこいつやっちまおうぜ」

 

「わん(そうだな)」

 

 

言葉はわからないが名犬ポチが了承したと判断するカッツェ。

伊達に付き合いは長くないのだ、簡単な意思の疎通なら難しくない。

ガルガンチュアの振り下ろす拳を避けつつ会話を続ける。

 

 

「ポチ、お前すぐに超位魔法撃てるか!?」

 

「わん!(そりゃあ撃てるけど…! なんでだ!?)」

 

「なんでって顔してんな…。いや俺とお前が同時に撃ったらもしかするかと思ってな…」

 

「わん!(いやでも…、くっ、この際仕方ねぇか…! まさかお前と協力することになるなんて…!)」

 

「敵は俺が引き付ける、お前はその間に魔法を撃て。俺も発動してタイミングを見計らったら離脱する」

 

「わん!(うっせ! 偉そうにすんなバカ! バーカ! くたばれカス!)」

 

 

そう言って名犬ポチがガルガンチュアから距離を取るように走っていく。

 

 

「あれ絶対悪口言ってんな…。そもそもお前が俺を呼び戻したんじゃねぇのか…? それなのに全く…。いや、でもこの方があいつらしい…」

 

 

フッと静かに笑うカッツェ。

 

 

「まぁいい。せっかくだ、派手に決めさせてもらうとするか…」

 

 

名犬ポチを追おうとするガルガンチュアの前にカッツェが立ちはだかる。

 

 

「俺が相手だ、デカブツ」

 

「ゴアァァ!」

 

 

再びカッツェに攻撃を放つガルガンチュア。

だが先ほどのようにその攻撃が効くことは無い。

 

遠くで名犬ポチが超位魔法を発動するのを感じるカッツェ。

それと同時に自分も超位魔法を発動する。

後はそれが発動するまでここで時間を稼ぐだけだ。

 

発動時に非常に大きな隙ができる為、PVPならば課金アイテム等が無いと運用が難しいが今は関係ない。

ガルガンチュアの攻撃はカッツェに通らないので急ぐ必要などないのだ。

 

やがて超位魔法が発動する。

 

その刹那、スキルで自身の素早さを強化し一気に範囲外へ離脱するカッツェ。

それと同時に超位魔法が放たれる。

 

 

「わん!(《フォールンパッド/失墜する肉球》!)」

 

「《ライジングパッド/昇りゆく肉球》!」

 

 

名犬ポチの超位魔法が天空からガルガンチュアに降り注ぎ、カッツェの超位魔法がガルガンチュアを地の底から押し上げる。

上と下からの肉球に挟まれ、その優しさと柔らかさに巨体が押し潰される。

 

ある意味一発だけでも恐ろしい超位魔法の合わせ技。

初めての共同作業。

それはカンストプレイヤーですら怯える一撃。

 

しかし。

 

 

「グォオオ!」

 

 

何事も無かったかのようにガルガンチュアは動き出す。

 

 

「わん(おい、カッツェ)」

 

「それ以上言うな…」

 

「わん(これもしかして…)」

 

「言うなと言っている…」

 

「わん(全然効いてねぇじゃねぇかゴミカスがぁぁ!)」

 

「うるせぇぇ! 俺もなんとなく意味ないかなーって思ってたよ! でも! でもさ! 同時に撃ったら何か変わると思うじゃん!? ダブル超位魔法だぜ!? 奇跡の一つぐらい期待しちゃってもいいでしょ!」

 

 

便宜的にこの二匹が得意とする一部の魔法を肉球魔法と呼ばせて頂こう。

その肉球魔法達は主にダメージよりも状態異常に重きが置かれているため、ゴーレムのような無機物系モンスターには非常に相性が悪いのだ。

 

 

「わん(うわぁぁ! もう終わりだぁぁ!)」

 

「やはり逃げるしかない…! ポチ! 俺がなんとかするからお前はそっちの犬と一緒に…っておい!」

 

 

カッツェが話してる間にすでに逃げ出している名犬ポチ。

 

 

「あ、あの野郎…! 躊躇なく逃げるどころか話の途中で…」

 

 

小さくなる名犬ポチの背を憎らし気に見つめるカッツェ。

 

 

「グォオオ!」

 

 

振り下ろされたガルガンチュアの攻撃を避けるとその眼前へ向かってジャンプするカッツェ。

 

 

「まっ、いいけどよ!」

 

 

そしてガルガンチュアの前で勢いよく両手の肉球を合わせる。

 

 

「《キャットトリック/猫騙し》!」

 

 

だが何も起きない。

ガルガンチュアが見る世界を除いて。

 

《キャットトリック/猫騙し》は第10位階に属する強力な魔法。

わずか数秒だが対象者の五感を完全に機能させなくさせるというものだ。

どれだけ魔法防御や対策アイテムを所持していても効果時間が短くなるだけで完全に回避するのは難しい。

 

もちろん対策など何も無いガルガンチュアはまともに喰らうことになる。

無機物とはいえ感覚はあるためゴーレムにも有効な魔法だ。

 

結果5秒もの間、完全な闇に飲まれたように感覚を失ったガルガンチュアはその場で立ち尽くすだけだった。

何も見えなければ何も感じない。

故に何もしようがないのだ。

効果時間が過ぎ、再び感覚を取り戻した時にはもう誰も目の前にいなかった。

 

 

 

 

 

 

「はぁっ、はぁっ…。どうやら奴の感知からは逃れられたな…」

 

「わん(や、やるじゃねーか褒めてやる…)」

 

「く、くーん!」

 

 

ガルガンチュアからそう遠くない岩場の影に隠れている三匹。

あくまでガルガンチュアから隠れることに成功しただけで完全に逃げ切ったわけではないがこのままじっとしていればやり過ごすことは十分に可能である。

 

 

「わん(それよりカッツェ…)」

 

「おいポチ」

 

 

名犬ポチの言葉を遮りカッツェがずいと迫る。

 

 

「お前なんで喋れないままにしてるんだ?」

 

「わん?(え?)」

 

「お前もこの世界に来たってことはここがユグドラシルじゃないってことは理解してるだろ? だが俺たちを取り巻く法則はかなりユグドラシルに近い。加えてこの体や能力はその設定に準じるようになっている」

 

「わ、わん(あ、ああ。なんとなくわかる)」

 

「つまり、だ。俺やお前のような特殊な異形種は能力値はともかく設定上はほとんど普通の動物と変わらん。つまりまともには喋れないってことだ」

 

「わん!(だ、だからか! じゃ、じゃあお前はなんで!?)」

 

「不思議そうな顔してんな…。いやなに簡単な話だ。俺たちのスキルや魔法で世界に干渉できるものは多少の変化はあれどゲーム時代と近い効果を発揮できる。だから《ウィッシュ・アポン・ア・スター/星に願いを》を使って会話できるように願えば簡単に話せるようになる」

 

「わ、わん…!(あ、ああああああ!)」

 

 

稲妻が落ちたような衝撃を受ける名犬ポチ。

同時に名犬ポチは思った。

 

そこに気づくとは天才か、と。

 

 

「まあこの世界でレベルダウンはキツいからな、躊躇する気持ちはわかる。だがもし持ってるなら流れ星の指輪(シューテングスター)を使ってでも話せるようにするべきだぞ? 貴重な課金アイテムを消費するのは痛いが、右も左もわからない状況で言葉が喋れないなんて致命的以外の何物でもないからな。何かあってからじゃ遅いぞ? 変な誤解があって追い詰められるようなことになったらどうするんだ? 例えば変な取り巻きが出来て無駄に担がれるみたいな」

 

 

ま、そんなことあるわけないかと続けるカッツェだが名犬ポチは聞こえなかったことにする。

 

 

「わ、わん…(あ、あぁ……)」

 

 

嘆く名犬ポチ。

すでにその轍は踏んでいるし、そもそも躊躇するどころかこんな事に気付かなかったなんて恥ずかしくて言えない。

今までの苦労は何だったのだと悲しくなる。

 

だが悪い事ばかりじゃない。

 

これでやっと自分の意思通りに生きることができるようになるのだから。

いつだって前向きが一番なのだ。

 

 

「わん(ふっふっふ…。まぁ過去のことは忘れよう…。俺は今を生きるぞ…! 明るい未来を手に入れるんだぁーっ! I WISH!)」

 

 

即座にアイテムボックスから流れ星の指輪(シューティングスター)を取り出し指輪に願う名犬ポチ。

 

 

「あっ! バカ! 何やってんだ! 今ここでやったら…」

 

「わん!(俺が言葉を喋れるようにしてくれぇーっ!)」

 

 

名犬ポチの叫びが響き渡る。

同時に指輪から強大な魔力が迸った。

何十にも重なった巨大な魔法陣が展開され、表示された文字は留まることなく変質していく。

輝かしい光を放つ魔法陣が粒子となり名犬ポチの元へと収束する。

そして願いは聞き入れられ、名犬ポチの願いは叶えられた。

 

 

「あー、てすてす…」

 

 

言葉を発したのは名犬ポチ。

聞こえるのはあの犬の鳴き声ではなく本来の彼の声。

 

 

「しゃ、喋れる…! 喋れるぞ…! 声だ…! 俺の声だ…!」

 

 

感動して声を上げる名犬ポチ。

誰もが聞き惚れるような甘さ、女性の子宮に響くような低い声。

超絶ハードボイルドなイケメンボイス。

彼の唯一と言ってもいい長所。

 

あのかっこいい名犬ポチがここに復活したのだ。

 

 

「グオオオ!」

 

 

とそこへガルガンチュアの唸り声が轟く。

名犬ポチ達のほうへ向かって全力で突進してきているのが見える。

 

 

「な、なんでここがバレた!?」

 

「ポチのバカー! 当たり前だろ! 超位魔法なんて使ったら一瞬で居場所がバレるに決まってるだろ! せっかく隠れられたのにー! そんなもん逃げ切ってから使えや!」

 

「くーん!」

 

「うっせ! ていうかお前の仲間はどうしたんだよ! そ、そうだギルド! お前のギルドはないのか! NPC達はどこいったんだ!?」

 

「ギルドは一緒に転移してきたが滅んだ」

 

「えっ」

 

「ギルド武器は破壊されたしNPC達も死んでんだよぉ! もう俺には何も残ってねぇ!」

 

「げっ! ギルド無くなったのか!? お前それじゃもう切り札使えねぇじゃねぇか!」

 

「うぐぅ…! そ、そうだよ! 今や俺は無力なただの猫だよぉ! 笑うなら笑えぇ!」

 

「ぶふっ! 使えねぇな!」

 

「オイィィ! 笑うなぁ! それがギルドを失った奴に言う言葉かぁぁ! 今のとこは慰めるとこだろーが!」

 

「くーん!」

 

 

そう早口で叫びながら再び3匹は逃げだす。

 

 

「て、てかおいカッツェ! さっきの魔法もう一回やれよ!」

 

「《キャットトリック/猫騙し》か!? それはいいけど肝心の隠れられる場所が近くにねーぞ…。さっき隠れたところは今壊されちまったし…。見渡す限りほとんど平野みてーなもんだ」

 

「やっぱり使えねぇ!」

 

「おめーが早まらなきゃこうならなかったんだよぉ! 一応やれるだけはやるけど時間稼ぎにしかなんねーぞ!」

 

 

そして世紀の鬼ごっこが始まる。

ガルガンチュアの移動スピードは決して速くないのだが名犬ポチもカッツェも同様にさほど速くない。

いや、体のサイズ比でいえばまずまずかもしれないが実際の移動距離としてはほとんどガルガンチュアと変わらないのだ。

走って逃げ切るのは普通に厳しい。

しかも疲労という概念があるだけ名犬ポチ達のほうが圧倒的に不利である。

カッツェが可能な限り《キャットトリック/猫騙し》でガルガンチュアの足を止めているが名犬ポチの足ではたかが五秒では大して移動できない。

それに肝心のカッツェは魔法を発動するためガルガンチュアから大幅に距離を取ることは不可能だ。

 

 

(でもあれ? これカッツェだけ置いていけば俺たち逃げられるんじゃね?)

 

 

などという煩悩が沸き上がるが流石の名犬ポチも命の恩人を見殺しにできるほど腐ってはいない。

どうしたものかと頭を悩ませながら全力で疾走する名犬ポチだが正面に小さな人影を発見する。

一体なんだと目を凝らしてみる名犬ポチ。

それはこちらへと向かって来ているように見える。

しかも何か叫んでいるようだ。

 

 

「……ーっ! ……ーっ!」

 

「んんん?」

 

 

次第に大きくなってくる人影。

それが見覚えのある人物であると理解すると同時に名犬ポチの体に冷や汗が流れる。

 

 

「か、神様ーっ! 神様だー! やっぱりあの光は神様のだったんだー!」

 

 

手を振りながらこちらへ全力疾走してくる露出率が高い金髪の女。

クレマンティーヌである。

 

 

「げぇぇ! クレマンティーヌッ!」

 

 

どうやら超位魔法の発動で居場所が割れたらしい。

名犬ポチの脳内で警鐘が鳴る。

クレマンティーヌは確実に自分を連れ戻しに来ているはずだ。

近くにニグンやクアイエッセもいるかもしれない。

後ろにはガルガンチュア。

前にはクレマンティーヌ。

終わった、そう思い絶望する名犬ポチだったがクレマンティーヌからかけられた言葉は予想と反するものだった。

 

 

「今すぐここから逃げよう神様! もう竜王国には戻れないよ! もっとどこか遠くへ、うんと遠くへ行かなきゃ皆殺される…!」

 

 

よく見るとクレマンティーヌは今にも泣きそうな顔をしている。

その顔にいつもの気味の悪い笑顔は貼りついていない。

 

 

「クレ…、マンティーヌ…?」

 

 

名犬ポチに駆け寄りその身体を抱きしめるクレマンティーヌ。

 

 

「むぎゅっ! ど、どうしたんふぁ?」

 

 

その両手と胸に押し潰されながらもなんとか声を上げる名犬ポチ。

 

 

「み、皆、殺されちゃった…」

 

「な…!?」

 

 

そして気づく。

自分の体を抱きしめるクレマンティーヌが震えていることに。

そしてどれだけ周囲を見回してもニグンやクアイエッセ、ブリタに純白の面々が見当たらない。

霧がかかっており遠くまでは見通せないがそれでも周囲に誰かがいる気配もない。

 

 

「お、おい…、どういうことだ…? こ、殺されたって…、だ、誰が…?」

 

「み、皆だよ…、ニグンちゃんも、クソ兄貴も、ブリちゃんも、純白の奴等も全員残さずあの女に殺された…!」

 

「……!」

 

「ねぇ逃げよう神様! あれは無理だよ! 神様が凄いのは私知ってる! で、でもあれは違う! も、もっと異次元の…やばい気配を感じたんだ…! こ、こんな事言ったら神様怒るかもしれないけど…! で、でも神様でもきっと無理! 皆殺される! あの女に勝てる奴なんていないよ! だから逃げよ…? わ、私神様と一緒ならどこにでもついていくよ…、だから…! ね…? そ、それに世界が滅ぼされるとしても神様と一緒なら私…、あっ…」

 

 

クレマンティーヌの手の中から名犬ポチが無理やり抜け出し地面に着地する。

 

 

「女だと…? どこだその女は…?」

 

 

怒りに満ちた名犬ポチからより一層低い声が発せられる。

 

 

「え!? だ、駄目だよ神様、会ったら殺されちゃ…、っていうかあれっ!? こ、言葉喋って…!?」

 

 

テンパりすぎてて気づかなかったクレマンティーヌだがやっと名犬ポチが人の言葉を喋っていることに気付き慌てふためく。

 

 

「あ、ああ…。こ、こうなったら俺の声を封印しておく必要もないからな…」

 

 

必死に強がる名犬ポチ、わずかに声が震えているのは内緒だ。

 

 

「で、どこのどいつだ俺の手駒を殺ったのは…? 許せねぇ…! お、俺の所有物だぞ…! 俺の物だぞっ!? そ、それを勝手に殺った奴がいるだと…!?」

 

 

わなわなと震える名犬ポチ。

自分の保身の為に竜王国から逃げ出す際に置き去りにしていることは完全に棚上げである。

自分は何をしてもいいが、自分がされるのは許せない。

名犬ポチは非常にわがままなのだ。

自分勝手と言ったほうがいいかもしれないが。

 

 

クレマンティーヌとそんなやり取りをしている間にカッツェがこちらへ向かって逃げてきていた。

 

 

「ポチーッ! もう魔力が厳しい! これ以上は時間稼ぎできん!」

 

 

その後ろからガルガンチュアがどすんどすんと地面を揺らしながら追ってきている。

 

だが名犬ポチは正面を見据えたまま逃げようとしない。

 

 

「お、おいポチ何してんだ! さっさと逃げろ!」

 

 

遠くで叫ぶカッツェの言葉には反応せず横にいるクレマンティーヌにたずねる名犬ポチ。

 

 

「クレマンティーヌ、そのニグン達を殺した女ってのはこの近くにいるのか…?」

 

「う、うん、多分そう遠くない所にいると思う…。そ、それにあの女、神様を探してた…! だから多分私と同じく神様の魔法の光を頼りに追って来てると思う…!」

 

「そうか…」

 

 

目を閉じる名犬ポチ。

 

この話を信じるならニグン達をやったのはプレイヤーの可能性が高い。

クレマンティーヌの鑑識眼がどこまでかはわからないが、過去に力を解放した66レベル相当の俺にボコられてるこいつが俺でも勝てないと断言するほど力の差を感じたのならカンストプレイヤーということも十分に考えられる。

 

面白ぇ。

 

俺を知ってて喧嘩を売ってきてるのか、プレイヤーの影を感じたから仕掛けてきてるのかわからねぇが後悔させてやるぞ…!

 

 

「受け取れカッツェ!」

 

 

名犬ポチが叫びカッツェへと一つのアイテムを投げ渡す。

走りながらだったがかろうじてキャッチに成功するカッツェ。

 

 

「な…! ポ、ポチお前これ…!」

 

 

それは因縁のアイテム。

ユグドラシル最終日に名犬ポチが奪っていったアイテムだ。

 

 

「お前に返す」

 

「な、何を考えてやがる!? こ、これはお前が勝った証に持っていったもんだろう!? そ、それに、こ、これの貴重さを分かってんのか!?」

 

 

その価値を知らない者はユグドラシルにはいないと断言できるがそれでも確認してしまうカッツェ。

なぜならそれはユグドラシルにいた者ならば誰でも喉から手が出る程に欲しいアイテムだからだ。

 

世界級(ワールド)アイテム。

 

一つ一つがゲームバランスを崩壊させかねないほどの破格の効果を持つアイテムの総称である。

それはこの世界に転移したからといって価値が下がるわけでない。

 

 

「それがあればもう一度やり直せるだろ? だから頼むよ」

 

「っ!? ま、まさかポチ…! お、お前俺に()()を使わせる気か…!? だ、だが…!」

 

「俺もやる」

 

「なっ、なんだと…!? ば、馬鹿言うな! お前はどうするんだ!? ギルドは!? ナザリックはあんのか!?」

 

「多分ある」

 

「た、多分!? どういうことだっ!」

 

「俺たちを追って来てるあのゴーレム。あれはガルガンチュア。ギルド・アインズ・ウール・ゴウンの戦力の一角だ」

 

「アインズ・ウール・ゴウンのっ!? だからかっ! 普通のゴーレムじゃねぇとは思ってたが…。で、でもならなんでお前を襲ってきてんだっ!?」

 

「わからん。わからんが…、あれはユグドラシル最終日にはまだナザリックの中にいたはず…。サービス終了前に外に出ていたということも考えにくい…。なぁカッツェ、お前と話して思ったんだがこの世界にはギルド拠点も転移してくるんだろ?」

 

「あ、ああ。条件はわからんが拠点ごとの転移は俺も含めいくつか前例がある…」

 

「そうか。ではどこかの拠点内にいたNPC及びモンスターだけが単独で転移してきたというケースはあるのか?」

 

「い、いや俺の知っている限りプレイヤー以外での単独転移はない…。プレイヤーが来るか、拠点と共にプレイヤーが来るかだ…」

 

「なるほど。ならやはり問題はない」

 

「ポ、ポチ…!」

 

「ガルガンチュアがいるということはナザリックも転移してきているということだ。そしてナザリックが来ているなら、()()()()()()

 

 

名犬ポチの元まで走り寄ってきたカッツェが驚愕の表情を浮かべながら問いかける。

 

 

「お前…、本当にやるのか…?」

 

「ああ。だがそれでも俺だけじゃ厳しいからな…」

 

「そうか、だから俺にもやれってか…。ははっ、確実とは言えない手段に世界級(ワールド)アイテムまで手放すっつうのか?」

 

「ああ、やらなきゃならん奴がいるみたいでな…」

 

「ははは! やっぱりお前は馬鹿だよ! 大馬鹿だ! だからあんな異名付けられるんだよ!」

 

「うるせぇ! 別にいいだろ!」

 

 

心外だとばかりに憤慨する名犬ポチ。

ユグドラシル時代に自分に付けられた異名の響きは未だに好きになれない。

 

だがカッツェがそれを笑うのはしょうがない。

かつてエ・ランテルの共同墓地でカジットというくだらない男を絶望に叩き落すという為だけの理由で3回しか使えない流れ星の指輪(シューティングスター)というユグドラシルでも超々希少な指輪をあっさり使うという暴挙に出た男である。

自分の望み、あるいは怒りを晴らす為にはメリットデメリットなど度外視する馬鹿野郎なのだ。

だから世界級(ワールド)アイテムさえ簡単に投げ出せる。

それはユグドラシル時代から変わらない。

 

 

「はは…、で、アレを使うのはいいとして…。あのデカブツはどうすんだ? アインズ・ウール・ゴウンのNPCなんだろ?」

 

「いやNPCじゃねぇ」

 

「ああ、ダンジョンのボスかなんかをチューニングしたやつか?」

 

「そんなとこだ」

 

「で、どうすんだ」

 

「わかんねぇけど今は敵対してるみたいだからな、潰すさ」

 

「大きく出るねぇ、あれ100レベルプレイヤーより強いだろ」

 

「ああ。でも大丈夫だ。やるのはお前だから」

 

「お、俺かよ…」

 

「うるせぇな。お前ならやれるだろ『化け猫』」

 

「あーあー、わかったよ。任しとけ『負け犬』」

 

 

小バカにしたように言う名犬ポチと深いため息と共に了承するカッツェ。

 

そんなやり取りをしている間にガルガンチュアはすぐ側まで迫ってきていた。

 

 

「グオォォ!」

 

 

その唸り声を合図にしたかのように二匹が動いた。

 

それを見たクレマンティーヌと獣王が叫ぶ。

 

 

「神様ぁー! 行っちゃやだー!」

 

「くーん!」

 

 

だがその叫びは届かない。

いつだって戦いに赴く漢に女子供の叫びは届かないのだ。

泣きながら膝から崩れ落ちるクレマンティーヌと獣王。

強大な敵へと向かっていく名犬ポチの背を絶望したようにクレマンティーヌと獣王が見つめる。

 

それを察したかのように名犬ポチが振り向きそのイケボを響かせた。

 

 

「必ず戻る、だから大人しく待っとけ」

 

 

その表情に迷いは無かった。

かつてウルベルト・アレイン・オードルをして邪悪と言わしめた男。

『負け犬』ポチ。

彼もまた悪名に事欠かなかった伝説のギルド、アインズ・ウール・ゴウンの一人。

その悪名は多くのプレイヤーを震え上がらせた。

 

共に行くはその男とライバルとして覇を競い続けた男。

『化け猫』カッツェ。

 

ユグドラシル時代ずっと敵対していた因縁の二匹。

奇しくもサービス終了後に協力することになるとは当時の二人には、いやユグドラシルの誰もが想像もできなかっただろう。

 

混ぜるな危険。

 

 

 

 

 

 

 

 

超位魔法の発動を目にし、目的地へと全力で走るアルベド。

 

 

 

「いきなり超位魔法だと…。ポチめ、思い切ったことをする…」

 

 

流石にガルガンチュアが一発で沈むとは思えないが何が起こるかわからないため早く合流しなければならない。

自分が着く前にガルガンチュアが撃破などされたら目も当てられない。

 

そうしてやっと遠くからガルガンチュアとポチの姿を発見したアルベド。

 

 

「いた! まだ始まったばかりというところか! 間に合ったわね!」

 

 

喜々としてポチ達の元へ疾走するアルベド。

だがポチの横に見知らぬ黒い何かがいる。

 

 

「なんだあれは…? ポチの眷属か…?」

 

 

ポチがその黒い何かと共にガルガンチュアに飛び掛かった瞬間、アルベドの背筋に冷たいものが走る。

 

何かはわからない。

何かはわからないが未だかつて感じたことがない恐怖に身が震えるアルベド。

 

マズイ、とそう直感した。

 

あのままガルガンチュアとポチ達がぶつかれば、間違いなくガルガンチュアはやられる。

そう確信した。

 

まだ失うわけにはいかない。

自分が名犬ポチと相対する前にガルガンチュアを失うわけにはいかないのだ。

言いようのない不安と嫌悪感に苛まれながら反射的にアルベドは叫ぶ。

 

 

「止まっ…、止まりなさいガルガンチュアッ! すぐに止まるのよ!」

 

 

その言葉がガルガンチュアに届くと同時に名犬ポチ達もアルベドの存在に気付く。

 

 

そうして両者の視線が交差した。

 

 




次回『大罪』ついにやらかす。


悲報、ニグンさん解雇のお知らせ。
そしてクレマン、ポチのイケボに恐らく濡れ濡れ。

えー、少し時間が空いてしまいました…。
最低でも週1はキープしたいのですがなかなか…。

とはいえもう終わりまでそう遠くない気もしないこともないので最後まで駆け抜けれるようがんばりまっす!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。