Angel Beats! ~expressionless boy~   作:ヘビガラス

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五話~開戦~

天城と立華が女子寮から出ている頃。

〈戦線〉に加わったばかりの青年、音無結弦は一人与えられた持ち場で考え込んでいた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

はぁ...一体どうなっているんだ?

いきなり此処が死後の世界だと突きつけられたと思えば、

半ば強制的に〈戦線〉とやらに組み込まれ、

今こうして立っている。

 

...コレは本当に現実なのか?

 

今更考えても仕方無いのは百も承知だが、

そう思わずにはいられないのも事実だ。

 

 

...ぅん?

あれは...まさか、〈天使〉...か?

 

な...おいおい、ちょっと待てよ!?

〈天使〉って二人もいるのか?

俺は(多分)戦った事なんて無いんだぞ!?

二人も相手出来るわけないだろ!

一番安全な場所に配置してくれたんじゃなかったのか?

 

...いや、そんな事を今考えている場合ではない!

とにかく、誰か来るまで持ちこたえなければ。

落ち着けよ…時間稼ぎさえ出来れば充分なんだ。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「あの服装は初めて見ます。あれが、〈戦線〉の人間...ですか?」

 

「...ええ、そうね。」

 

天城達は、彼方の敵の存在に気付いた。

制服とは違い、ブレザーを身に纏って

ちょうど建物の手前、開けた場所にいるようだ。

 

どうやら今のところ単独行動らしい。

他の仲間に気付かれる前に接近して...

 

パァァンン...

 

「なっ...警告も無しに!?」

 

「ッ...。」

 

見ると、隣にいる立華が腹部に銃弾を受けている。

傷口からかなり出血しているが、驚くことに、平然としている。

流石の天城も、少々動揺が隠せない。

 

そんな天城の反応に気づいたのか、

 

「...大丈夫。自然治癒力を強化しているわ。」

 

「そう、ですか...。」

 

そんな事も出来るのか...。

恐るべし、〈Angel player〉。

 

「貴方はまだだから、なるべく回避行動をとって。」

 

「あ、はい。」

 

「それと...」

 

「?」

 

「たとえ死ななくても、どんなに強化していても、痛覚はあるわ。気を付けて。」

 

「...は、はい...。」

 

まぁ...そうだよな。

今更気を付けようがない気がしなくも無いが。

 

「手短に説明するわ。

彼等が此処にいるという事は、恐らくライブをしているということよ。」

 

「ライブ...ですか?」

 

「認可されていない時間帯の、ライブよ。

私達の目的は、ライブが終了するまでに彼等を突破して、強制的に終了させる事。」

 

「わかりました。〈skill 〉は、もう使用しても?」

 

「構わないわ。...時間が惜しい。

私が前に出るから、後から来て。」

 

と、言うと同時に既に、立華さんは歩き始めていた。

一歩出遅れた形で天城もついて行く。

 

パァァンン...

 

またも無警告の攻撃だ。

彼女は脚に被弾したようで、少ししゃがみこむ。

それでも再び立ち上がり、進み続ける。

 

くそッ、一方的過ぎる...。

このままでは駄目だ。増援が来るのも時間の問題…。

向こうには銃火器がある。

突貫して、懐に潜り込むしかないか?

 

「すいません、先に行きます!Gird skill、Hand sonic!」

 

〈Skill〉を呼ぶやいなや、天城は走り出した。

 

姿勢を低くし、不規則に動きながら対象に近づいていく。

天城が全く怯む事なく突っ込んで来ることに、相手も動揺しているようだ。

銃弾は誰もいない空間ばかりを飛んでいく。

その間に天城はかなり至近距離までたどり着いた。

 

...よし、この距離ならいける!

もらったッ!

 

低い姿勢を戻す流れに任せ、天城は相手の下から剣を突き上げ...

 

 

ガキッィィィン...

 

「ッッ!?」

 

天城の腕に鈍い衝撃が走る。

どうやら、突き立てた剣を狙撃されたようだ。

その僅かな隙に、距離を離されてしまう。

 

あと少しだったが、仲間に気付かれたか...うぉッ!?

 

突然、目の前に巨大な斧の様な物が降り下ろされる。

完全に不意打ちだったが、天城は咄嗟に横に飛び退く。

 

な...?アレはハルバートか!?

そんな物まで用意していたのか?

いや、そもそも現代人が使う武器では無い...あ。

私も剣を使っている、な。

 

「ん、あれ、誰だお前は?〈天使〉…だよな?」

 

ハルバートを構え直した男が天城に問う。

 

〈天使〉…?何を言っている?

立華さんなら後ろにいるが…。

いや、そんな事は今はどうでも良い。

 

天城は敵と会話するつもりは全く無かった。

そんな事をすれば、致命的な隙を作りかねない。

目の前の男は余裕の態度だが、先の攻撃は非常に正確で強力だった。

恐らく、相当な力を持つ戦士に違いない。

 

くッ...コレは厄介だな。

ハンドガンで中距離から攻撃され、目の前の男に接近を封じられた。

見えないが、恐らくかなり腕の良い狙撃手も居るのだろう。(動いていた天城の腕の剣だけを狙撃出来るのだ)

完全に攻め手を欠いてしまった。

増援らしき集団も集結しつつある。

このまま戦闘を継続する事は非常に難しいだろう。

どうする...?

立華さんも〈Skill〉があるとは言え、集中砲火を浴びて前に進めないようだ。

一か八か、もう一度突っ込むか...。

相討ち覚悟でいれば、一人ぐらいは…。

 

「...ん?コレは...。」

 

突然、紙吹雪の様な物が大量に降ってくる。

…よく見ると、食券のようだが。

何故、こんな物が...?

......

 

しまった、すっかり気をとられていた!

敵を前にして余所見するなど言語道断...ん?

 

見ると、既に彼らは背を向けて走り出していた。

逃げていると言うよりは、喜んでいるようにすら見える。

一体何が...?

 

「...ライブが終わったようね。」

 

「え…?あ、そうですか…。」

 

いつの間にか立華さんは隣に居た。

そうか、終わったのか。道理で…。

そう言えば...

 

「この食券は何なのですか?

何故降ってくるのです?」

 

「彼らはライブと同時に、集まった生徒に強風を当てて、巻き上げてるの。文字通りの、ね。」

 

…資金繰りにでも困ったのか?

随分派手な戦闘をするわりには、一番大事な食料は節制するのか…。

 

「つまり、コレはライブの終了を意味するわ。

今回も間に合わなかった...。」

 

「…すみません、私の力不足です。」

 

「構わないわ。いつもの事よ。

むしろ、強化もしていないのにその身体能力は驚異的だわ。

...失礼だけど、生きている時は何を?」

 

「え…以前お話しませんでしたか?

実は、その…信じて貰えないとは思いますが…

自分が何者なのか、正直よくわからないのです。」

 

「そう…。一時的な記憶の喪失ね。

この世界ではよくあることよ、気にする必要はないわ。」

 

よくあること…なのか?

そんなに簡単に人の記憶は失われる物なのか?

…どちらにせよ、不自由な事に変わりはないが。

 

「ここで過ごす内に思い出すかもしれないわ。

そのために、貴方は此処へ来たのかもしれない。

…その時が来るまでは、これからも頼りにしてるわ。」

 

「あ…有難うございます。」

 

「…帰りましょう。

今日はこれ以上の動きはないと思うわ。

明日も学校はあるから、よく休んでおいて。」

 

「はい。では、失礼します。」

 

天城は短く答え、寮へと帰ることにした。

 

 

ふぅ…今日はまた色々あったな…。

 

流石の天城も、分からない事で頭が一杯になってきていた。

それに気だるさも加わり、吐き気がしてきた。

 

……脚が鉛の様に重い

早く横になりたい気持ちを、疲労感が邪魔して

とてもイライラしてきた。

 

………………

寮、昨日はこんなに遠かっただろうか………

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