Fate/EXTRA 汝、復讐の徒よ   作:キングフロスト

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唐突ですが問題です。

~現在のアーサー・ペンドラゴンPUで、金のサークル演出の後、金のライダーカードが出ました。さて、この英霊は誰だったでしょう?~

答えはあとがきで!
では、本編をどうぞ……。

 


とれじゃーはんたー・はくのん

 

 意を決し、私はアヴェンジャーと共に慎二達の待つアリーナ第二層へとやってきた。

 今から財宝の奪い合いをするからだろうか、昨日までとは違って、アリーナには嫌という程に張り詰めた空気が漂っているように感じる。

 

「……この気配、アリーナに何か変化があったようね」

 

 アヴェンジャーも同じように、アリーナに異変が起きたと察知したらしく、突如現れた異物に顔をしかめるように、鋭い目つきで周囲を睨み付けていた。

 

「あれは…」

 

 いざ、足を前へ進めてみれば、通路のすぐのところにある開けたエリアで、私達を待ち構えるように立つ慎二とライダーの姿が見えた。

 察するに、さっきの言葉の通り、わざわざ私達が来るのを待っていたのだろう。よっぽど自信があるのか、それともライダーが指摘したように小悪党のような真似をしようとでも言うのか。

 どちらにしても、慎二との奪い合いは確定のものであるらしい。

 

「臆していてもしょうがないでしょう。売られた喧嘩はきっちりと買って、何倍──いいえ、何十倍にもして返してやろうじゃない……!!」

 

 うわお。すんごいやる気!

 でも、それくらいがちょうどいいのかもしれない。せっかくの宝探し、それも競争だ。アヴェンジャーくらい張り切ってた方が、勝ち目も上がるというもの。

 それに、私だって昨日の妨害といい今回といい、慎二のやりたい放題に付き合うのには、そろそろウンザリしてきたところだ。

 ここらで一発、ドカンとかましてやろう。そして、あわよくばライダーの強化を妨害してやる。妨害してきたんだから、妨害仕返してもいいじゃない?

 どうせ向こうから仕掛けてきた宝探し合戦な訳だし。

 

「その意気です、マスター。なかなかに復讐者のマスターらしくなってきたじゃない?」

 

 私の心意気がイタく気に入ったようで、アヴェンジャーはそれはもう、とてもイヤらしい邪悪な笑みを浮かべて、獲物をいたぶる狩人のように、舌なめずりをしていました。

 なんだろう……妖艶だけど、すごく怖いです。

 

 

 

 

 

 

「はん、来たか」

 

 私達が目の前までやってくると、わざとらしく待ってやっていたぜ、と言わんばかりの大きな態度で、出迎えてくる慎二。

 いや、そもそもそっちからふっかけてきたんじゃないか。

 

「大丈夫、岸波が強欲だってことは、他の奴には内緒にしといてやるからさ! せっかくだし、僕のサーヴァントと、どちらが早く、多く財宝を集められるか、競争してみないか?」

 

 なるほど。つまりは財宝は()()()()()()()()()()……と。

 一つを奪い合うのではなく、より多くを手に入れた方が勝ちという事か。

 

「その通り! ははっ、手加減してやるから、気軽にやってみればいいよ! じゃあお先に!!」

 

「えっ、ちょっ……!?」

 

 スタートの合図もなしに、慎二とライダーはいきなり走り出した。私は一瞬だけ茫然となるが、すぐに宝探しが既に始まっているのだと気付く。

 まったく、ワカメはこれだから姑息なんだ! 流石ワカメキタナイ、とだけ言われる事はある。

 

「いや、誰が言ってるのよ……?」

 

 アヴェンジャーの渇いたツッコミを受け流し、私も彼らを追ってすぐに走り出す。アヴェンジャーも、溜め息一つ零すと、私に追従するようにスタートした。

 

 

「さあ、楽しい楽しいハントの始まりだ!! そら、死ぬ気で走りなァ!! シンジィ!!」

 

「うるさいんだよ! お前のテンションに付き合ってられるかって話だ!!」

 

 

 遠くから、二人の賑やかなやりとりが聞こえてくる。というか、

 

「ッ! 早い……!!」

 

 そう、思っている以上に、聞こえてきた声からは、その距離が開いていたのだ。いくら私達が出遅れたからといって、この距離の開き方はおかしい。

 

「チィッ! マスター、端末からマップを開きなさい!!」

 

 アヴェンジャーが何かに感づいたらしく、私は言われるままに、走りながら端末を取り出し、揺れる指先でどうにか操作してマップ画面を開いた。

 

「!! これは───」

 

 アヴェンジャーが何に気付いたのか、私もマップを確認してようやく理解する。

 慎二とライダーをすぐそばで視認したおかげで、彼らがマップ上でエネミーと同じく、赤い点として浮かんでいたのだが、その慎二達と思しき赤い点は、マップ上の道無き道を進んでいたのである。

 

「やっぱり…! 奴ら、チートコードを使っているわね。それも、単なる壁抜けだからムーンセルの監視に引っ掛からない程度の改竄……。姑息な上に小癪なやり口とは、トンだ腐海のワカメ野郎ね」

 

 いつの間にか間近で走って、私の端末を覗き込んでいたアヴェンジャーが、遠く離れた慎二に向かって盛大に悪態をつく。

 というか、密着されてると、とんでもなく走り辛いんですけど。

 

「!! アヴェンジャー、エネミーが!!」

 

 走る私達の進路上に、盾型エネミーの姿がある事を確認した私は、すかさずアヴェンジャーに声を掛ける。

 

「クソがッ! エネミーは平常運転ってワケ!? こうなったら無視するわよマスター!! あんなのに構ってたら、奴らの思うがままです!」

 

 アヴェンジャーの意見に大手を振って賛成だ。せめて一撃で倒せるなら話は別なのだが、それが出来ない以上はエネミーはなるべく避けて進むべきだろう。

 戦闘の手間はこの際、一切無しで行く。エネミーが居ても戦わずに避けるようにしよう。

 

「そうと決まったら走るわよ、マスター!!」

 

 私達はエネミーを無視する事に決め込み、まだこちらの接近には気付いていない間に、その背後を颯爽と走り抜ける。

 

「───!!」

 

 が、やはり気付かれずに、というのは不可能であった。エネミーは私達が側を走り抜けたと同時、私達の存在を感知した。

 となると当然、エネミーは排除すべき存在に向かって突進を開始する。

 

「アヴェンジャー、追ってきてる!」

 

 私は振り返り、こっちに向かって猛突進してくるエネミーを一瞥すると、すぐに前を向き直り全力疾走する。

 あのタイプのエネミーは今まで何度も倒してきた。戦えばまず負ける事はないだろう。だけど、それではダメだ。

 こと、エネミーとの戦闘だけはいけない。戦うなら、ライダーとのみにしないと。時間を取られるのは、相手に差を大きく開かれるのと同義なのだから。

 

「そう簡単には逃がさないって? 上等よ。こっちだって、そう簡単には追いつかせないっての!! 先に行ってなさい、マスター!!」

 

 言うや、アヴェンジャーは一人急ブレーキを掛けて、エネミーへと対峙する。当然、私は彼女一人を置いていくなんて……と思ったが、迷いを振り払い、走る。

 

 アヴェンジャー本人が言ったではないか。無視する、と。戦わないにしても、どうにか追っ手を振り切る手段があるのだろう。だからこそ、私に先に行けと言ったに違いないはずだ。

 

「分かった! 先に行くから、アヴェンジャーも早くきてね!!」

 

「言われずとも、そのつもりよ!!」

 

 私は走る。少しでも慎二との距離を詰める為に。ただひたすらに走る事だけが、今の私に出来る唯一の事だから──。

 

 

 

 

 マスターが先に行ったのを確認すると、私はエネミーに対して旗を掲げる。対象は一体、倒す(殺す)必要はなく足止めが出来ればそれでいい。

 故に、出力は最大限抑えてで構わない。

 

「我が憎悪の一端、僅かなれどもその業を見よ!! 邪竜咆哮! 『怨嗟の叫びは呪いとなりて』!!」

 

 この身に宿りし憎悪、この身を灼きし憤怒、この身に渦巻く絶望。それらのほんの一握りを、炎として具象化し、現世へと具現化させる。

 一気に焼き尽くす為の炎柱ではなく、長く燃え盛る炎の壁を生み出した訳だ。言わば、単なる足止めでしかないが、この炎は特別製。

 時間稼ぎや足止めを目的としているので威力こそ弱いが、なかなか消えないという性質を持ち、燃え移れば長らく消せずにダメージが蓄積する───といった効果もある。

 

 ……私らしい粘着質なスキルじゃない? まったく、自分の醜さが全開で出ているみたいで、反吐が出る。

 

「───!、■■□!!」

 

 エネミーは思惑通り、炎の壁によって進路を塞がれ、完全に前進が停止しているらしい。雑魚、それも知能数の低いエネミーなら当然の結果だろうが、それが通じるのは雑魚だけだ。

 ライダーや強いエネミーなら、あの程度の炎では足止めにならないどころか、障害にすらならないだろう。

 

 先に行かせたマスターはどこまで進んだか。守り刀を腰から提げているから、少しくらいなら自衛は可能だろうが、未熟なあのマスターでは、それも長くは保たないはず。

 出来れば敵と遭遇していないと良いが……。

 

「チッ。競争なんてするもんじゃないわね」

 

 でも、今更愚痴を言っても仕方がない。とにかくマスターに追いつく事。それが今は最優先事項だ。

 そうとなれば、ジェット噴射で飛ばすか? ふふ、もちろん、そのままの言葉通りの意味ですが。

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ、ハッ、ハッ、」

 

 アヴェンジャーと離れてからも、私は走り続けていた。とにかく、走って、走って、ひたすら走る。

 幸い、マップでエネミーを予め確認出来るので、ルートを避けるなどして回避していたが、そろそろそれも怪しくなってきた。

 この階層は、進むごとに道が長く伸びて分岐が少なくなる構造をしている。故に、必然的にエネミーと鉢合わせる機会は迫ってきていたのである。

 一応、今朝アヴェンジャーからもらったチェーンベルトと、付随して装備した守り刀を腰に提げているが、忘れるべからず。何度でも言うが私はか弱い普通の女子高生なのだ。

 当然ながら、そんな私がドンパチやチャンバラの真似事など出来るはずもなく、私に出来るのは、エネミーと遭遇する前にアヴェンジャーが合流してくれる事を祈るだけ。

 

 そんな折だった。

 

「!!?」

 

 突如、アリーナ全体に鳴り響くかの如く、盛大な爆発音が私の耳に届いたのだ。音は後方ではなく、前方からのもの。

 …という事はアヴェンジャーではなく、ライダーによるものか。おそらく、あの時見せた艦船で砲撃を行ったのだろうが、相手はエネミーだろうか?

 それにしても、一撃でエネミーを葬れるだけの火力は羨ましいの一言に尽きる。私達も一撃必殺が可能なら、こんな回りくどいやり方をしなくても済むというのに…………、

 

「……ん? という事は……」

 

 今の爆発音がライダーによるものだとすれば、エネミーを倒したという事だろう。それはつまり、私の進路上のエネミーを倒したという事も同義なのでは?

 なら、少しの間は彼女が通った道にはエネミーが居ないという事になる。これはチャンスかもしれない。

 あの隠し通路と沈没船があった先に通じる道と、トリガーがあった道とでひとまず別れ道となる。慎二達がどちらを進むかは分からないが、とにかく彼らとは逆の道を進めばいいだろう。

 どこに宝があるかは不明だが、複数出現しているならば、どっちのルートにも出現していても何ら不思議は無いのだし。

 

 

『まずは一つめ、と。ハッ! 楽勝だね』

 

 

 と、走る私の耳に、校内放送でもしているかのように、慎二の声が響いてくる。いやらしいというか、慎二らしいというか……。わざと私に宝を手に入れたと教えてきているのだ。

 

「くっ……先手を取られた!」

 

 一体、財宝とやらは全部で幾つあるのか。もし3個だけなら、完全にアドバンテージを奪われた形となる。こればかりは天命に賭けるしかない。

 

 

 

 そうこうしているうちに、私は例の分岐点まで到達した。残念ながら、アヴェンジャーとは未だ合流出来ていない。……まさか、私って案外、走るの速かったり?

 ……いや、馬鹿な事を考えている場合か。まずは慎二達がどちらを進んだのかを、手早く端末のマップで確認する。

 

「……右か」

 

 どうやら隠し通路のあるルートを進んだようだ。なら私は反対を進むとしよう。

 それにしても、アヴェンジャーはまだ───

 

 

「アッハハハハハ!!! なにこれ超楽しいんですけどぉ!!」

 

「え!? ちょ、ぬわぁぁぁ!!?」

 

 

 突然の叫び声?に、私は思わず振り向いた。すると、流星の如く黒い物体──もといアヴェンジャーが、両手を後ろに構えながら豪速球ばりの勢いで突っ込んで来ていたのである。

 私は為す術もなく、巨大な火炎球を前にした時のような叫び声を上げながら、アヴェンジャーと正面衝突した。

 

「ガハッ!? うぐ……な、なんか私、こんな目に遭ってばっかりのような……」

 

「この駄マスター! 脇に避けるくらいしなさいよ!! そうすれば、そのまま脇に抱えて行けたのに!!」

 

 痛い! 痛いから、こんな絡み合ったみたいな体勢で暴れないで!? あっ、脚が変な方向にぃ!!?

 

 ──どうにか変な体勢から互いに脱出し、私は息を整えてアヴェンジャーに向き直る。今のは多大なタイムロスだ。早く巻き返さないと……。

 

「分かってるわよ。それで? あいつらはどっちに行ったのかしら」

 

 尋ねられ、私は右の道を指差した。すると、黒き魔女が旗を虚空から現出させると、高らかに呪いの言葉を発した。

 

「走れ邪炎よ、『怨嗟の叫びは呪いとなりて』!!」

 

 旗の一振りと共に生じた炎が、まるで壁のように慎二達が進んだ道を封鎖してしまう。これはすごい! これなら足止めにピッタリだ!

 

「賞賛しているところ悪いけれど、これにそこまでの効力は無いわよ。出来てせいぜい雑魚エネミーが通れないくらい。サーヴァントなんてとてもではないけど、まるで通用しないから。だからこれは、気休め程度に思いなさい?」

 

 本人からお墨付きで否定されてしまった。でも、この炎の壁に警戒させる事くらいは出来るはず。それだけでも足止めとしては十分と言えるだろう。

 

「なら、今のうちに──」

 

 走ろう、そう言おうとしたところで、私は不意にアヴェンジャーに抱きかかえられ、その脇にすっぽりと収まった。

 

「よっこらせっと……」

 

 え? いや、よっこらせっとじゃなくて。何を──?

 抵抗しようにも、私の腰をガッチリと押さえられてしまっており、更にすごい力で抱えられているので、脱出は困難を極める。

 

「じっとしてなさい、マスター? 振り下ろされてぼろ雑巾のようにズタボロになるわよ?」

 

 なにそれこわい。そんな事を言われては、おとなしくしている他ないので、私は素直にアヴェンジャーの指示に従った。手足はダラリと、完全に脱力しきる。これで完璧なお荷物人間の完成だ。

 

「ぐっ…!? 急に重く……ええい!! 知ったことか! 行くわよ、即席スキル『繋がれし魔女は空に焦がれる』!!」

 

 アヴェンジャーが叫んだ次の瞬間、彼女は私を脇に抱えたまま、両手から炎を吹き出し、ジェット噴射の要領で前進を開始した。

 その勢いやかくや、それはもう凄まじいもので、私は走っていたのがバカみたいに思えてくる程のものだ。

 

 というか、こんなスキルがあったなら、もっと早く使ってほしかった!

 

「仕方ないでしょう。それにさっき言った通り、これは即席のスキルなのよ。私だって、これにようやく慣れてきたところなんだから、贅沢言わないでくれる?」

 

 悪びれる様子はなく、むしろ「何言ってんのこの小娘がっ」とでも言いたげに吐き捨てるアヴェンジャー。

 まあ、それなら仕方ないかもしれないが……。

 

 

『これで二つ目。ハッハー! これはもう楽勝なんじゃないか?』

 

 

 その時、またしても唐突に空間へと響く慎二の声。もう二つも取られてしまったのか……!?

 

「またワカメの勝ち誇ったウザイ声ね。いい気になるのも今のうちです」

 

 ああ、やっぱりアヴェンジャーにも聞こえてたんだ、アレ……。

 でも、一向にそれらしきものが見つけられないのは厄介だ。まさか隠されているとか?

 

「! 見えた!!」

 

 なんて、思っていた矢先、前には無かったはずの場所にアイテムフォルダが配置されていた。おそらくアレがそうだ!

 

「アヴェンジャー!!」

 

「ようやくお宝ですか。さあ、頂戴するとしましょう」

 

 私の声に、アヴェンジャーが炎の勢いを弱め、減速する。私はアイテムフォルダが目の前に来ると、抱きかかえられたままの体勢で手を伸ばし、それを開封した。

 

「……出た。財宝だよ、アヴェンジャー!」

 

 思った通り、中から出て来たのは『名だたる海賊の財宝』というアイテムデータだった。これが目当てのもので間違いないだろう。だって、財宝って名前に付いてるし。

 

「さあ、次に行きますよマスター!!」

 

 私を抱え直すと、再度ジェット行進が開始される。この調子で次も頂こう。とは言っても、向こうが現状勝っているのに変わりはない。

 追いつかれていない今のうちに、こっちのルートは全て押さえてしまおう。幸い、アヴェンジャーの即席スキルのおかげで、こちらは機動力に優れている。

 慎二達の最初のチート行為も、あれっきりだったらしく、以降はマップの通りにしか進んでいないところを見るに、一度だけのものなのだろう。

 

「あった! 二つ目!!」

 

 そしてすぐに次のアイテムフォルダを開けたエリアで発見。だが、そこには当然のようにエネミーの姿が。こっちはまだ誰も来ていないのだから、それもそのはずか。

 だが、戦闘は避けたいところだが無理だろう。そうなれば、残された道は二つ。

 

 そのまま戦って倒してから財宝を手に入れるか、それともアヴェンジャーが戦っている間に私が財宝を取得、そのまますぐに逃走するか。

 

 どちらかを選ぶなら、私は───。

 

「アヴェンジャー、敵の注意を引き付けつつ、アイテムフォルダから引き離して!」

 

 もちろん後者だ。今は一分一秒とて惜しい。それなら、効率的に動いた方が良い。

 

「いいわよ、マスター。さっさと取りなさい。そら! こっちよ雑魚エネミー!!」

 

 早速アヴェンジャーが鎌で攻撃を仕掛け、エネミーにマークされに行く。私はその隙に、エネミーからなるべく距離を取りつつ、アイテムフォルダへと駆けた。

 

「取った……!!」

 

 アヴェンジャーが上手く引き付けてくれている事もあり、私は危なげなく財宝を手にすると、そのまま道の先へと走り出す。

 

「アヴェンジャー、こっちはOK!」

 

「了解よ。それでは、これにておさらばです」

 

 私の合図に、アヴェンジャーがエネミーとの戦闘に見切りを付け、炎で撒くと同時に手から炎を噴出させる。今度は直進するアヴェンジャーから横にズレて、私はアヴェンジャーが抱きかかえ易いように両腕を上げて待ち構えた。

 

「お利口ね、少しは学習したって事かしら?」

 

 私を上手くキャッチして、アヴェンジャーはその場から逃走を開始。次の財宝を探して高速のジェット噴射で突き進む。

 

 さあ、これで慎二と数が並んだ。だが、もうこのルートも終わりが近い。帰還ポータルのある部屋までに財宝があればいいが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 勝っていると思っていた。いや、勝ったと思った。

 先に二つの財宝を手に入れて、こっちがリードしているはずだった。

 ──だった、のに。

 

「おや、あちらさんも二つ取っちまったか」

 

 ライダーの呑気な声がまた、僕の苛立ちをより煽る。

 何故、離れた位置にいるはずの岸波が、財宝を手に入れたのか分かるのか。そんなの、簡単な事だ。財宝の入ったアイテムフォルダが開くと、僕の端末の着信音が鳴るように設定してあるからだ。

 当然、僕が二つの財宝を取った時も、僕の端末はそれに反応していた。

 なのに、さっき僕とは無関係に鳴った端末。そんなの、原因は岸波しかいない。

 

「シンジィ、アタシはもっと財宝が欲しいんだけどねぇ?」

 

「うるさい! 昨日もあれだけ財宝漁りをやらせてやっただろうが! まだ欲しいのかよ、この強欲女!!」

 

 あ~、ホントにイライラする! 上手く行かないこの状況も、計画が思い通りに進まない事も、僕以外はバカで雑魚のクセに!!

 なんで、僕の完璧な道筋を邪魔ばかり!?

 

「クソ、クソ、クソォ!!! でも、まだだ! まだ終わっちゃいない!」

 

 そうさ。まだ、勝負は終わっていない。財宝は五つ。残るはあとラスト一つだけど、取られたって構いやしない。

 あいつらが取った分も、襲って奪えばいい。元々は僕がハッキングして出した財宝なんだ。なら、持ち主はこの僕なんだからさ!!

 

「行くぞライダー! 奴らの良いようにさせてやるもんかよ!!」

 

「オウさね。欲しいモンがありゃあ奪う。それが海賊ってもんだからねぇ」

 

 調子に乗るのもここまでさ、岸波。お前よりも、僕の方が格上なんだって事を、存分に思い知らせてやるよ!!

 

 

 




 
前書きの答え!
正解は、ファラオ。
一瞬のロード画面入ったので新しい鯖か礼装が来た事は分かりましたが、金のサークルで、

「あ、これは☆4ですわ」

と思い、金のライダーカードが。

「はて? ☆4のライダー? あ、これはアンメアですわ」

と思い、そしてファラオが出て気付きます。

「あ、男鯖しか出ませんでしたわコレ」

と、なりましたとさ。理性蒸発ピンクは持ってたので、ロードはまず無いでしょうから当然と言えば当然でした。
そして、今回のピックアップガチャで金ライダーが来たら、その二択という訳ですね。

アーサーカッコいいですが、そこまで欲しい訳でもなく、丁度新宿クリアして貯まった石でなんとなく一回引いたらピックアップを無視してオジマンが降臨したという、なんとも嬉しいけど肩透かしな話でした。
これで恒常排出☆5はあと腹ペコ王、交流雷電紳士、淫乱女王、吸血伯父様のみを残す事に。
うちのカルデア限定☆5少なっ。

それはそうと、以前のオリ鯖の件ですが、正解の方が一人いらっしゃいました。嬉しいものですね、けっこう考えてくれるっていうのは。
何か特典でもあればいいのですが……。

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