??「あの……傷つけてしまったら、ごめんなさい」
はくのん「また桜……じゃない。というかなにそれデカ過ぎ分けて下さいお願いします」
邪ンヌ「うわ、私のマスターが土下座してるんですけど。みっともないし恥ずかしいから止めなさいホント!」
それから間もなくして、アヴェンジャーの魂の改竄が終了した。
光の帯から解放されたアヴェンジャーは、いつものように手を何度か開閉させると、ニヤリと笑みを零す。
「着実に力を取り戻しています。本調子にはまだ程遠いけど、この分だと四回戦に行くまでには、本来の
そう言う割りに、彼女はとても満足そうに見える。思っていた以上に、良い成果だったのかもしれない。
私もアヴェンジャーの様子から、どれほどステータスが上昇したのか気になったので、早速端末から確認してみる。
「……おぉ、すごい! 結構上がってる!」
筋力がDからC。敏捷、魔力、幸運のそれぞれがEからDに。
軒並みステータスの向上が見られた。なるほど、確かにアヴェンジャーの機嫌も良くなるはずだ。
私だって、こうして戦闘経験の成果がはっきりと形となって表れるのは嬉しく思うし。
「フフン。さてと、それじゃあアリーナへ行きましょう、マスター? もっとリソースを奪って、完全なる私を取り戻すのです」
テンション高く、アヴェンジャーはアリーナ探索への催促の言葉を残して、教会から姿を消した。
もう夕方。のんびりしていて、アリーナに行けませんでした……なんて事にならないためにも、早足でアリーナに向かうとしよう。
そうしてアリーナの入り口にまでやってきた私なのだが、ちょうどその入り口に気配を感じて、思わず身を潜める。
あれは……昼間に出会った老人───ダンと、その横に居るのは彼のサーヴァントだろうか。
緑衣のマントに、背格好や声からして男性のようだ。ただ、彼だけは背を向けた形となっているため、後ろ姿しか確認出来ない。
「二回戦の相手を確認した。……まだ若く、未熟なマスターだが、一回戦を勝ち残った相手だ。油断はするな。予断も独断も、感心はせんぞ」
私への評価はそれほどだが、一回戦を勝っただけあり、慎重に慎重を重ねている事は明らか。
流石は騎士なだけはある、という事か。
対して、彼のサーヴァントたる緑衣の英霊は、ダンとは対照的に、気の抜けた返事を返している。
「へいへい、分かってますって。どんな相手だろうと手加減なし、かつシンプルにぶっ殺しますよ。ま、ともあれ、あっちも既に一人殺してるワケですし? 一回戦で戦った連中より、幾分マシなんじゃないすかね。いや、精神的に」
「それを油断というのだがな。……ともあれ、この戦いは連携が肝要だ。私の指示に従え。一回戦のような独断はするな。この戦場は、ただ勝つだけでは許されない戦いだ」
あの緑衣のサーヴァントが何をしたのかは分からないが、マスターであるダンの意に反する手段を取ったのだろう事が伺える。
そして、ダンは一段と険しい目つきで、彼のサーヴァントへと律するかの如く告げる。
「よいか。あのような真似は二度とするな」
「あー、はいはい、分かりましたよ。ったく、口うるさい爺さんだぜ」
気怠げに、緑衣のサーヴァントは了解の返事したが、あの様子だと反省したのかは少々、いや、かなり疑わしい。
「……へえ。まさかアイツが二回戦の相手とはね。さてさて、手応えはあるのかしら?」
現界したアヴェンジャーが、私に倣うようにこっそりと陰から彼らの方を覗き込む。
言い方からして、またしても対戦相手のサーヴァントの事を知っているようだが……?
「でも、一回戦を勝ち抜いている以上、あの
自分だけ訳知り顔をするのは止めてほしいが、どうせ一回戦の時のように、たとえ彼の事を知っていても、何も教えてくれないんだろうな。
「……動くわよ、マスター」
と、アヴェンジャーの言葉に、私は彼らの方に意識を戻す。
彼女の言う通り、ダンとそのサーヴァントはアリーナへと入っていったようだ。
「今入れば、まず間違いなく鉢合わせる可能性が高いでしょうけど、どうしますか、マスター?」
……問いかけてくる割に、獰猛な笑みが隠しきれていないよ、アヴェンジャー。
それに、私がどうするかなんて、とっくに分かってるくせに聞いてくるんだから、タチが悪いというか何というか。
もちろん、私の返答は決まっている。
「行こう。私にはまだ、聖杯戦争で戦っていく目的も理由もないけれど、立ち止まる事だけはしちゃダメなんだ。たとえ中身が無い空っぽの願いなのだとしても、私は進まないといけない。進むしか、ない」
───それが、曲がりなりにも友人の、
「そう。まあ、
彼女の意見には賛成だ。
聞いていた限り、ダンと緑衣のサーヴァントは性格も在り方も、戦い方すら真逆のような感じがしてならなかった。
警戒と注意を怠らないように、アリーナを進まないといけないだろう。
『二の月 想海』。
一回戦の時は一の月だった事を考えると、回が進むにつれて、~の月と繰り上がっていくようだ。
第一層は、一回戦時のアリーナと同様に、海という割に無機質な光景がどこまでも続いている。
もしかしたら、第一層はこういう風に設計されているのかもしれない。そして、第二層も同じように、一転して背景が鮮やかになるように作られているのだろう。
「……!」
呑気に感想を述べてはいたが、実際はそんな余裕は無かった。
アリーナに入った瞬間、まとわり付くような空気が脳に危険を告げる。
立ち止まるな──。
瞬間。
目に映る世界の色が反転したかのような、気持ちの悪い
立ち止まるな──。
それは頭では理解している。だが、両の足はアリーナの床に縫い付けられたように動かす事が出来ない。
本能が恐怖という
「マスター! この程度の死の香りで怯むな! ここで、この程度で足を止めては、これから先の全ての戦いで生き残るなんて、それこそ泡沫の夢と同じです!!」
立ち止まる時間が過ぎる程に自分の命の刻限を縮めるのだ、と。
「チッ……! このエリア一帯に毒が仕掛けられたようね。姿も見せず、隠れてこの私を殺そうなんて───ナメられたもんだわ。流石は
不快感を隠そうともしないアヴェンジャーの声に、麻痺していた思考が戻る。
大丈夫、──足も、手も動く。
「考えるまでもない。これはあのサーヴァントの宝具でしょう。入り口にまで、鬱陶しいコトこの上ない殺気が伝わってきています。この手の宝具なら、基点となるものが近くにある筈。それを壊せばこの毒も消える筈よ」
毒……。という事は、私の視界が狂ったような、色の反転した世界を映していたのは、錯覚でも何でも無かったのか。
これは毒による、一種の精神汚染に近い現象だ。実際に目がおかしくなれば、この程度で済む筈がない。というか、目を殺しに掛かってくるだろう。
故に、この毒の本質はそこではない。視界の異常は、あくまで副産物に過ぎない。
「さあ、そうなれば成すべき事は唯一つ。この小賢しい
アヴェンジャーが声高らかに旗を掲げる。
復讐の魔女。竜の魔女。
自らをそう呼称する彼女が、このような策に屈する訳もなく、また、見逃す筈もない。
でも、確かに早くなんとかしないと。
「───ッ!」
こうしている間にも、毒は着実に私達の身体を蝕んでいる。
手足は動く。だけど、指先には微かな痺れ、関節の節々にじんわりと広がる痛み、そしてこの胸を締め付けるような苦しみ。
体が、頭が、身を以て理解している。この毒は単なる毒ではない、
アヴェンジャーはスキルで魔力を回復出来るからいいが、私は回復の手段が無い。
それに、聞いた話では、人間は体から魔力が完全に尽きてしまった状態で、それでも無理に魔術を使おうとすると死ぬらしい。
人間は体内に誰しもが微弱であっても魔力を有している。それを扱えるかどうかが、その身に魔術回路が備わっているかで決まるのだ。
魔術回路の無い人間は、どうあっても魔術師にはなれない。出来て精々、道具に頼った魔術使いの真似事、いや、その真似事にすらならない、単なる偽物。
だけど、ヒトは誰しもが肉体に神秘を宿している。生命、魂、心……その他にも様々な神秘が、体の内には眠っており、その神秘こそが微弱であっても魔力を生み出す源となっているのだ。
───と、話が逸れてしまったが、とにかくこの毒は生命力を削るだけではなく、魔力すらも削る猛毒。
ダメージが蓄積すれば、コードキャストによる回復やサポートも出来ないし、最悪の場合、そのまま毒により死に至るだろう。
そうなる前に、なんとしてもこの毒の発生源を除去しなくては……!!
私達は走り出した。歩いて探す暇も余裕も有りはしない。
アリーナ内を浮遊する、ボックス型のエネミーを鎌で切り裂き、炎で焼き払いながらも、アヴェンジャーは走る足を止めず、先行して私の行く手の脅威を排除する。
移動しながらの戦闘をこなす彼女の器用さが伺いしれるというものだ。
だけど、感心している場合ではない。私は彼女のソレを、当然の事だと受け止めて、彼女の背中を追いかける。
止まる事なく、アヴェンジャーが道を阻む
「マスター! アレを見なさい!!」
少しして、アヴェンジャーが足を止めて、透明な壁の向こうを指差す。
私も彼女に追いついた先で、息を整える間もなく、片膝をつきながら、その方向へと目を向けた。
「……こんなところに、どうして木が?」
そこにあったのは、一本の大きな樹。無機質なアリーナには、正確にはこの第一層には不似合いにも程がある。
壁と壁で阻まれた向こう側で、異様な存在感を放ちながら佇むソレは、不気味な輝きを脈動させるかのように放っていた。
「マスター、あの樹から
言われなくとも、視界の狂った私の目から見ても、如何にあの樹が毒々しいのかが見て取れる。単なる樹とは違った、如何にも毒素をばらまいているという雰囲気を醸し出していたのだから。
「あれを壊せばこの毒も晴れるはずです。行くわよ!!」
そう言って、アヴェンジャーは再び走り出す。私もまた、その背を追いかけ始めた。
位置からして、遠回りしなければ行けないのは明らかだ。遠目で見ても、今回の第一層が入り組んだ迷路になっているのが分かる程に、ややこしい構造をしている。
マップも随時確認しながら、道に迷わないように気を付けなければ……。
何度か行き止まりやループに当たるも、マップを確認しながらどうにか正解の道を見つける。
しばらく道なりに走って、ようやく樹に近付いて来たと思った頃、唐突に事態は急変した。
「マスター、息を潜めて」
先に辿り着いていたアヴェンジャーが、声を小さく、ジェスチャーで静かにしろと伝えてくる。
私は息切れの音をどうにか抑えるため、口元に手を当てて、息を潜める。
この状態で息切れを抑えるのは結構辛いものがあるが、これは必要な事。
何故なら、通路の先から、話し声が聞こえていたのだから。
声の主は、二人しかいる筈がない。
──ダンと、彼のサーヴァントだろう。
「向こうはまだこちらに気付いてないみたいね……。ちょうどいいわ、このまま奴らの会話を盗み聴くわよ」
アヴェンジャーはなるべくバレないように、姿を屈めて気配を断つ。私もそれに倣い、同じようにしゃがみ込んで息を殺して、彼らの様子を伺う。
しゃがみ込んだおかげで、幾分か呼吸も楽になった。とは言っても、毒の影響がまだ続いているのだが。
「これはどういうことだ?」
ダンがサーヴァントへと向けて、静かな怒りを滲ませながら問い質す。
それに対し、さして
「へ? どうもこうも、旦那を勝たせるために、結界を張ったんですが。決戦まで待ってるとか正気じゃねーし? 奴らが勝手におっちぬんなら、オレらも楽できて万々歳でしょ」
「……誰が、そのような真似をしろと命じた。死肉を漁る禿鷹にも、一握りの矜持はあるのだぞ」
作戦の方針で意見が合わないのか、揉めている様な声が聞こえる。
やはり、これはあのサーヴァントの独断で行われた事なのか……?
「イチイの毒はこの戦いには不要だ。決して使うなと命じた筈だが……。どうにも、お前には、誇りと言うものが欠落している」
「誇り、ねぇ。俺にそんなもん求められても、困るんすよね。っていうか、それで勝てるんならいいですけど? ほーんと、誇りで敵が倒れてくれるなら、そりゃ最強だ!」
反省の色などまるで見られない。緑衣のサーヴァントは、ダンの説教も軽く笑い飛ばし、即座に冷静に戻る。
「だが悪いね、オレゃあその域の達人じゃねえワケで。きちんと毒を盛って殺すリアリストなんすよ」
「……ふむ、なるほどな。条約違反。奇襲。裏切り。そういった策に頼るのがお前の戦いか」
半ば呆れたように、半ば諦めたように。ダンは小さくため息を漏らす。
結界を張ったサーヴァント。彼がこの結界を張った事に対して、意見の違いがあるようだ。
騎士であるダンにしてみれば、このような邪道な戦法は受け入れ難いものなのだろう。
「それにしても、不仲な主従もあったものね。あの老騎士の言わんとする事は、腹立たしい事ですが、まあ
アヴェンジャーがこそこそと、彼らに対して抱いた感想を述べてくる。
騎士としての誇りを掲げるダン、勝つ為ならどんな汚い手段でも平気で使う緑衣のサーヴァント。
そのどちらの在り方も、アヴェンジャーには気に入らないのだろう。
魔女に誇りなど要らない。
勝ちへの意欲ではなく、人への復讐を果たす事こそが活力。
故に───気に入らないのだ。どちらも、己の信念を元に行動している。その信念こそが、アヴェンジャーとは相容れないから。
「今更結界を解け、とは言わぬ。だが次に信義にもとる事があった時は──」
ダンの声のトーンが一段、低くなる。
それは侮蔑か、落胆か。
その真偽の程は分からない。
はいよ、と渋々返事をする声を最後に、二人の気配は消えてしまっから。
おそらく、リターンクリスタルで校舎へと転移したのだろう。
重苦しい空気から解放され、私はほっと息を撫で下ろす。
マスターとサーヴァントの不仲。マスター同士の実力差は如何ともし難いが、これが自分達にとって二回戦のカギかもしれない。
「一息つく前に、結界を破壊しに行くのを忘れないようになさい」
アヴェンジャーが立ち上がり、顎でもうすぐそこに見えている樹を指し示す。
そうだ、まだ終わりじゃない。体のダルさはまだ続いている。
私も立ち上がり、毒の基点であろう樹を目指して歩を進める。
途中、虫型エネミーと遭遇したが、力を取り戻しつつあるアヴェンジャーと、観察に磨きが掛かり始めた私の敵には最早ならない。
色が少し違う程度で、特徴的な動きには変化があまり見られなかった。多分、一回戦の時のとは違った、強化タイプなのだろうが。
そして、今のエネミーを最後に、私達は毒に侵されながらも、ようやく辿り着く。
「これですね。結界の基点、イチイの樹ですか」
アリーナの床に
覚悟も無しに近付いた者があれば、その毒気に溺れてしまう程に。
「こんな邪魔臭いもの、さっさと焼き払うに限るわね」
言うや、アヴェンジャーは穢らわしいものでも払うかのように、手の素振り一つで樹の根元から炎を発生させた。
轟々と燃え盛る紅蓮の炎に包まれて、毒をエリア一帯へと吐き出していた樹が、焼かれ燃えゆく。
やがて、全体を炎で覆われた樹は、葉の代わりに炎を生やし、花の代わりに火の粉を散らしながら、その存在をも焼却されていき、そして完全に燃え尽きた。
焼却された樹は、初めからそんな物は無かったかのように、炎と共に霧消する。
結界の基点が消えた途端に、身体を支配していた重圧と蝕む痛みから解放される。
視界も徐々に、その色彩を取り戻していった。
「……ふう」
私はようやく毒から解放された事に、たまらず息を吐き出した。これにより、緊張感からも解き放たれる。
それにしても結界とは……。
どうやら今回の相手は、常に警戒を怠ってはいけない危険なサーヴァントのようだ。
危険だからこそ、もっと情報を集めなくては。その正体が不明(私だけ)のままでは、対策も何もあったものではない。
「でも、おかげでヒントは得られたわね、マスター?」
自分は知ってるからって、超絶上から目線で言ってくるアヴェンジャー。いや、確かにその通りなんだけど。
ヒント───確か、ダンはあの毒を『イチイの毒』と言っていた。
となると、今焼却した樹は、“イチイ”という名の樹である、という事なのだろうか。
残念な事に、その名に心当たりは無いし、調べようにも、図書館でもない限りは無理だ。だからといってここで早々に帰るには、まだ余力もあるので勿体ない。
今はひとまず、この第一層を出来る限り攻略するべきだろう。
早めにトリガーを手に入れられれば、その分、心に余裕も持てるというものだし。
「先に進もう、アヴェンジャー。まだ日数に余裕はあるもの。彼の正体を探るのは、明日以降。今はとりあえずアリーナに専念しよう」
「……ま、それもそうね。アイツらは帰ったみたいだし、まさかまたアリーナに入って来る事も無いでしょう。今なら、敵サーヴァントを気にせずに進みたい放題ってところかしら?」
アヴェンジャーは私の意図を汲んでくれたようで、来た道を引き返し始める。
基点の破壊を優先に進んでいたので、後回しにしていたが、実はもう進むべき道なら分かっていた。
道中、と言ってもすぐそこなのだが、例のフェンスゲートと、脇にあるスイッチが見えていた。どう見てもあからさまですありがとうございます。
まあ、その分、その先が険しい道のりである事を暗示しているのかもしれないのだが……。
私は一抹の不安を胸に、アヴェンジャーの後を追うのであった。
前書きという名の茶番でお気づきでしょうが、前々回くらいに爆死してやるといったアレですが……
しませんでした。
初日にきっちりメルトとリップ引いてクエスト飛ばしまくりでサクラチップウハウハでしたとも。
いや、その二人に限らずウチに居るEXTRA勢(ギルとブライドは除く)は全員が戦力でしたから、常時サクラチップ増加の状態で難無くフリクエも回せたので、イベント始まって4日くらいでめぼしい景品が品切れ状態でしたww
まあ、その分、乙女スパイラルコースターでは初見殺しに遭ったのですが。
感想)リップの即死怖い。
CCCのBGMはプレイしていた頃から大好きでしたので、早くサウンドトラックに追加してほしいですね。
………スズカさん? 知らない子ですね。
どこの狐耳巨乳JKですか?(血涙)