言葉と共に突き出される旗の、槍の先端がアーチャーの右肩を貫通した。
更に、穿った穴から漏れ出すように炎が見え隠れする。アーチャーの傷口を通して、肉体の内側から彼を焼き尽くすために。
「ガアァァァァァ!!!!」
それは苦痛から来る絶叫。内臓を焼かれ、肉を焼かれ、骨さえも焼かれ───まるで毒が蝕むように、彼の全身は内から焼き尽くされた。
あまりの凄惨さに、私は目を反らしたくさえなるが、それは許されない。私はアヴェンジャーのマスターだ。復讐者のマスターだ。サーヴァントのやり方がどんなものであれ、マスターとして見届ける責任と義務がある。
それに、一人の戦士が、戦いの果てに命の終わりを迎えようとしているのだ。たとえ、それが仮初めの命であったとしても、そこから目を反らすのは、それこそ無礼であると言えよう。
やがて、アーチャーは力無く膝をつき、その場に倒れ伏す。その拍子にアヴェンジャーは彼の肩に刺さっていた旗の先端を抜き取ると、静かにアーチャーを見下ろした。
「これで終わりです。絶望と憎悪、そして憤怒の具現である我が炎に灼かれて、安らかに死ねるとは思えませんが……、一応、言っておきましょう。どうか安らかに、天に召されますように」
「…………ハハッ。……まるで、心が籠もっちゃ、いねぇぜ…………まったくよ……」
アヴェンジャーの皮肉に、渇き切った声で笑って返すアーチャー。内から体を焼かれたというのに、まだ彼は生きている。サーヴァントの───いや、英霊の生命力というのは凄まじいものだ。
だが、それでもアーチャーの命は、もう風前の灯火程にしか残されてはいなかった。
ゆっくりと、アヴェンジャーが横たわるアーチャーから離れ、私の隣へと戻ってきた刹那。運命が決した事をセラフは無慈悲にも伝えてくる。
私達と彼らとを阻む絶対の境界線。内と外とを、生と死で克明に切り分けるファイアウォール。
慎二の時と同じだ。向こう側の空間は赤く変化し、確実なる死へとダンとアーチャーを誘っていた。
「──────、」
死滅へと向かう世界の中で、ダン・ブラックモアはただただ驚いていた。彼は何か、天啓を見たような面持ちで、自らを倒したアヴェンジャーを見つめている。
「まさか、負ける……とはな。すまねぇ旦那。地力も決意も、旦那の方が上…だっていうのに」
力無く、アーチャーは謝罪の言葉をマスターへと告げる。そして、ダンもまた地へと膝をついた。
彼の体が、ノイズに侵蝕され始めているのが、ファイアウォール越しに私の目からも見て取れる。徐々に体を分解されていく中で、ダンは倒れるアーチャーへと顔を向けた。
「……いや。そうではない。わしもまだまだ未熟だったようだ。最後の最後で、自分の心を見誤った。聖杯戦争において、意志の強さは二の次らしい。……ここでは意志の質が、前に進む力になる」
意志の……質。意志の力ではなく、何を思い、何を胸に抱いて戦うか。
私は……。
「わしは軍人である事に疑問はなかったが……後悔は、あったようだ。聖杯を求めるのは、本当のところ、騎士として英国女王の命令に応じたから、ではない。亡くした妻を、もう一度だけで良い、この手に取り戻すために───」
妻が居た──確か、彼はそう言っていた。もう何年も前に他界し、軍人として生きた自分はもはやその顔すらもはっきりとは覚えていない……と。
だが、それは本当だったのだろうか。彼は、本当は妻の事をずっと想い続けているのではないか?
「……なんと愚かな勘違いをしたものか。わしは生涯を軍に捧げ、軍人として生きるため、冷徹な無個人性を良しとした。そんな男が……軍人である事を捨て、
本心だった。この独白に、言葉を飾るものなんて存在しない。心からの言葉を、彼は口にしていた。
体が崩れていっているのに、慌てる事もなく。怯える事もなく。静かな独白は、まるで自動再生する遺言であるかのように。
「……本当に愚かだ。わしは最後に、亡くしたものを取り戻したかった。だが───わしが願ったものは、一体どちらだったのか。妻か……それとも、軍人になる前、一人の人間としての───」
独白を続けるにつれて、黒衣の老騎士の姿が薄れていく。ジワジワと、黒いノイズの侵蝕はなおも続く。
彼と、そのサーヴァントであるアーチャーも、運命に殉じるように足下から霧散していく。
「……しかし、意外だ。最後の瞬間……君の一撃に迷いはなかった。平凡な少女であっただろうに、だがやはり、譲れぬものがあったのだろう」
独白から、語りかけへと変わり、その言葉は私へと向けられている。
「わしには───
いや、そんな事はないはずだ。愛した人にもう一度会いたい……その願いだって立派な願いだ。他人に語っても、決して劣りはしない夢と言えるはずだ。
「あなたの願い、そして夢。私のなんかよりも崇高で尊いですよ。私は……ただ、アヴェンジャーと一緒に戦い抜きたいだけ。今はまだ、それしかこの胸に宿っていない。そんな私が、あなたが自身の夢を否定する事は見逃せない。あなたの夢は、死人の夢なんかじゃない」
私の反論を聞き、少し驚いたように唖然とするダンだったが、それもすぐに終わる。
「そうか。そう、言ってくれるか。……ありがとう。……年寄りからのつまらない餞別だ。迷いながらも生きるがいい、若者よ。その迷いは、いずれ敵を穿つための意志になる。努々忘れぬことだ」
穏やかな笑みを浮かべて、大樹の如き老騎士は、静かに息を吐いた。もう、限界が来たとでも言わんばかりに。
既に──その体の七割以上がノイズに覆われていた。
「……さて。最後に無様を晒したが───悪くないな、敗北というのも。実に意義のある戦いだったよ。はは、未来ある若者の礎になるのは、これが初めてだ」
末期の笑いは晴れやかだった。
サー・ダン・ブラックモアにかつての苛烈さは見られない。
老騎士の顔は、自らの孫を見守るような穏やかさに満ちている。
「……旦那。そうかい、満足したのか、アンタは」
自身もまたノイズに蝕まれ、体の内すらも焼かれたというのに、アーチャーはその場でふらつきながらも立ち上がり、彼のマスターへと向き合う。
「重ねて言うが、すまねぇな、旦那。やっぱオレには正攻法、向いてなかったわ。無名の英雄じゃあ、アンタの器には応えられなかった。……情けねぇ。他のサーヴァントなら、旦那にこんなオチをつけなかったってのに」
死に体で、立っているのもやっとだろう。それでも、アーチャーは正面からダンと向き合い、謝罪の言葉を述べる。
自分はダンに相応しいサーヴァントではなかったと、自虐を含むその謝罪。しかし、ダンはそれには頷かなかった。
「いや、謝罪するのはわしの方だアーチャー。わしの我が儘ゆえに戦い方を縛り付け、お前の矜恃を汚してしまった」
「……まったく、いまさら遅ぇですよ。苦労掛けられたどころの話じゃねぇんだよ、こっちは。つうか、なに? 謝ってんじゃねぇよ。それじゃ、オレがバカみたいじゃねぇか」
───バカで合ってるわよ、バカ。
隣から、そんな小さな声が聞こえた。アヴェンジャーにふと視線を送ると、彼女は黙って、何とも言えない顔をして、じっとアーチャー達を見守っていた。
倒した相手に、彼女は一体何を思っているのだろう。それは、私には計り知れない。
アーチャーはこちらに気付いた様子もなく、言葉を続ける。
「オレの事はどうでもいいんだよ。どうせ勝っても負けても、最後には消えるんだし。そりゃ願いらしきものはあったけど、楽しけりゃオッケーなんですよオレは。ま、旦那との共闘は、つまんなかったんですけどね」
「はは、ますます済まんな。騎士の誇りなど、お前には無価値だったろうに」
笑って返すダンに、アーチャーはふいと視線を反らし、背を向ける。
「んー……いや、なんだ。たまにだったら、やり馴れない事も悪くないんじゃない? 旦那との共闘はつまんなかったけどさ。くだらない騎士の真似事は、いい経験になった。……ああ。生前、縁はなかったがね。一度ぐらいは格好つけたかったんだよ、オレも」
ダンに背を向けたまま、照れたように顔を伏せるアーチャー。聞こえないような、おそらくは聞かせるつもりもないのだろう小声で、呟く。
「……だから、謝る必要なんかねぇんだ。十分、いい戦いだった。恥じるところなんかどこにもねぇ。……いやぁ、そもそも戦いなんて上等なもん、オレに出来るとは思わなかった。思えば、生前のオレゃぁ、富も、名声も、友情も、平和も、たいていのものは手に入れたけどさ。それだけは手に入れる事が出来なかった。───だから、いいんだ」
アーチャー───いや、ロビン・フッド。彼は森に潜み、暴君の軍隊を相手に、闇から敵を討っていた。そこに、騎士のような誇りはなく、清廉な戦いもなく、有るのは侵入者を殺すという事だけ。
故に、彼は死ぬまで手にする事はなかったものを、この戦いで、この聖杯戦争でダンのサーヴァントとなった事で、手にしたのだろう。
憧れて、しかし手の届かなかった夢を。
彼が生きたイギリスに伝わるアーサー王や円卓の騎士ように、誇りを持って戦う名誉を───。
「……最期に、どうしても手に入らなかったものを、掴ませてもらったさ───」
彼が口にした通り、それが最期。その姿は、存在は、この世界から完全に消失した。
消えゆく横顔に悔いはなく。かつて村を守るために英雄の衣を被り、ただ勝つためだけに森の茂みに隠れ続けた青年。
村を守るために戦いながら、だがしかし一度たりとも村人達に讃えられなかった彼は───微かに、満足げに微笑んでいた。
「……すまない。ありがとう、アーチャー」
消え去ったアーチャーへと、謝罪と感謝の言葉を短く口にして、老騎士は再び私へと向き直る。
「岸波君。最後に、年寄りの戯れ言を聞いてほしい。これから先……誰を敵に迎えようとも、誰を敵として討つ事になろうとも……。必ず、その結果を受け入れてほしい。迷いも悔いも、消えないのなら消さずともいい。ただ、結果を拒む事だけはしてはならない。これから待ち受け、そして起こる全てを糧に進め。覚悟とは、そういう事だ」
「……はい」
「良い返事だ。……それを見失ったまま進めば、君は必ず未練を残すだろう。……そして可能であるのなら、戦いに意味を見出してほしい。何のために戦うのか、何のために負けられないのか、自分なりの答えを模索し───最後まで、勝ち続けた責任を、果たすのだ」
「……………は、い」
何故かは分からない。だけど、涙が溢れて止まらない。訳も分からず、自らの涙に戸惑う私に、ダンは変わらぬ微笑みを浮かべて、私を見つめていた。
「ハハ……我が死を悼んでくれる者がいるというのは、嬉しいものだ。……本当に、わしに孫が居たならば、君のような子であったら───。いや、妄想はもうするまい。涙を止めろとは言わん。いいかな、未来ある若者よ。どうか、今伝えた事だけは……それだけは……。忘れるな……」
私に記憶はなく、故に祖父がいるとこんな感じなのかとか、そんな存在をこの手で倒してしまった事に、今更ながら辛い気持ちが込み上げてくる。
でも、全てはもう終わった。
ダン・ブラックモアの死は確定した。もう、この現実は変えられない。
「さて……ようやく会えそうだ。長かったな……アン……ヌ…………」
そうして、ダン・ブラックモアという一人の老騎士は、完全に世界から消滅していった。
消え去る間際に呟いたのは女性の名前……。それを口にした時のダンの顔は未練も後悔もなく。
彼は静かな答えを胸に抱いたまま、ゆっくりと消えていった。
「マスター」
未だ悲しいという感情は胸の内でくすぶり、私は校舎へと帰還を果たす。
さっきまでの事が、こうしてここに帰ってきた事で、夢だったかのようにさえ思える。
だが、悲しみが、あれは夢幻ではなかったのだと物語っていた。
彼に託された想いを、夢なんかで済ませる訳にはいかない。
ぼんやりと、エレベーターから降りてしばらく立っていた私に、アヴェンジャーから声が掛けられた。
「アーチャーへの最後の攻撃ですが、タイミングが少し遅すぎたように思えました。私がどうにか調整したから良いものの、もっと戦況を見極めるよう努めなさい。でもまあ……機を逃さずに的確に見抜いたのは褒めてあげましょう。それに、少し闘士の顔つきにもなりました」
戻った途端にダメ出しをするアヴェンジャーだが、最後に一つだけ、褒めてくれた。闘士の顔、と言われても正直分からないが、もし変化があるのだとすれば、それは──
「ダン・ブラックモア……あの老騎士との戦いに、思うところがあったのですか?」
「……うん」
はっきりとは分からない。戦いとは何か。覚悟とは何か。
彼の言葉は、確かに私の心へと響いた。それを受けて、私はこれから先、どうあるべきなのか。どう変わっていくべきなのか。
まだ、私には道の先が見通せていない。
「そうですか。貴方がそう思うのであれば、それも良いでしょう。あの戦いで得た物、得なかった物。それは後の戦いで見せてもらうとしましょう」
──後の戦い。
そう、この後には三回戦があり、その先も。
迷いは消えた訳ではない。
しかし戦うしかないのなら。せめて戦った過去に、命を奪った相手に恥じない戦いを。
そんな考え方もあるのかもしれない。
それが正しいのか、間違っているのかすらも、今の自分には分からないけれど───
闇の中で、彼は自らの鼓動で目を覚ます。
視界は黒一色で、何も映るものはない。いや、むしろその暗黒のみが見えていると言っても過言ではない。
「…………?」
何も見えない中、手足を動かしてみる。動作に異常はなく、爪先までしっかりと感覚は行き届いている。
今のところ、五感で全く機能していないのは視覚に味覚のみ。自らの体に触れれば感覚があり、臭いも、自分の声も聞こえている。
異常があるのは、体ではなく、この空間だ。
何も無ければ、何も見えず、何も聞こえず、何の臭いもしない。
まるで、“無”の世界に全身を浸しているかのようですらある。
「何だ、ここは? つうか、オレ死んだんだけど」
彼──緑衣のアーチャーは、現状への率直な感想を口にした。
彼はさっきの戦い……岸波白野とアヴェンジャーに敗れ、もはや悔いなく消滅したはずだった。
だが、意識も自我も失われておらず、心臓も脈打っている。一体、何がどうなっているのか。
「そう。あなたは死んだ」
不意に聞こえた声。少女のものと思しき声がした方向に目を向けるも、やはり何も見えず。
しかし、少女の声ははっきりとアーチャーへと向けられていた。まるで、向こうにはこちらの姿が見えているとでも言うかのように。
「あなたは岸波白野とアヴェンジャーに倒され、死んだ……けど、完全に消滅する前に、私が拾ったの」
少女の声は、感情が籠もっていないようでありながら、その奥には酷く醜い悪意を隠しているような、おぞましくも不思議で不気味な、奇妙な声音をしていた。
「誰だか知らんけどさ、そのままスッと死なせてくれなかったってコトね。いやぁ、マジでいい迷惑なんですがねぇ? あんな風に旦那に語った手前、キレイに死んどきたいんだけども」
「あなたの都合なんて、私には関係ない。必要だったから、あなたをここに引き寄せた。ただそれだけ」
アーチャーの事情など興味ないと断言してのけた少女の声に、流石のアーチャーもしかめ面になる。
今のやりとりだけで、話の通じる相手ではないと判断したのだ。ともすれば、彼のマスターであったダンよりも頭の堅い厄介な相手かもしれない。
「んで? 何でオレを生かしたんだ? てかさ、旦那も連れてきたワケ?」
「あなただけ。ダン・ブラックモアは要らない。私が欲しいのは、あなた」
「ヒュー。言ってくれるじゃん。女にそんな事を言われちゃあ、オレも黙ってる訳にはいかない……んだけどなぁ、いつもなら。でも、アンタは別だ。声からして、まだガキンチョだろ?」
「…………」
少女はその問いかけに答えない。必要以上の会話を拒むように、彼女にとっての無意味な問いには口を開かないのだろう。
「ま、ガキだろうと別にそこは問題じゃない。問題なのは、アンタが何の目的でオレだけを攫ったのかって事だ。で、どうなの? この質問には答えてくれんのかねぇ?」
アーチャーは言いつつ、弓に手を掛ける。返答次第では文字通り少女に弓引く為だ。
アヴェンジャーに抉られたはずの右肩は、不思議と痛みもなく動いた。
それどころか、全身を炎で焼き尽くされたはずなのに、その痛みすらも消えている。
その事に、彼はもっと早く疑問を持つべきだった。
「無駄だよ、ロビン・フッド。私には届かない」
「!! テメェ、何でオレの真名を……!?」
何故、自らの真名を少女は知っているのだろうか。知っているのは、マスターであるダンと、情報から突き止めたであろう岸波白野のみのはず。
ますます、姿の見えない少女に警戒するアーチャー。
見えないのなら、と彼は先手に打って出る。
「適当に撃ってりゃあそのうち当たるだろ!!」
方向を一定に定めるのではなく、乱雑にそこら中に矢を射るという、少々雑な手に出たのだ。
けれど。
「足掻くな、虫が」
突如、少女とは別の声が暗闇へと響いた。
その声もまた、女性のものと思われる、若々しい女の声。
そして、
「まだ居やがった、か───、」
アーチャーは声のした方へと弓を向けた。だが、次の瞬間には、弓を装着していた腕の感覚が丸ごと消失していた。
「グウゥゥアアアア!!??」
激痛、そして喪失感がアーチャーを襲う。
腕は消失したのではなく、何か鋭いもので切断されたのだ。そう、例えば剣のような───。
「フッ。これで貴様も、アヴェンジャーとお揃いだな? もっとも、左右の違いはあるのだが」
激痛に悶えるアーチャーを嘲笑うかのような、冷たい笑いを零すもう一人の女の声。
先程の少女と違い、その女の声にはあからさまな侮蔑の色が滲み出ていた。
「弓の無い貴様に、もはや抗う術などない。どちらにせよ、ここでは我々以外に自由など赦されるはずもないが……。フフフ……光栄に思うがいい。貴様が最も忌み嫌うもの──暴君たる余の刃を、その血で汚す事が適った事を」
「うぐ、暴君、だぁ!? テメェ、何者だ……!!」
「む? やはり姿が見えねば、我が威光も判らぬか。良かろう、我が名は───」
女が名を口にしようとしたその時、制止する声があった。無論、もう一人の少女によるものだ。
「そこまで。もう終わりにしよう、アーチャー。どうあれ、あなたに未来はない。大人しく、私に食べられてね……?」
声が、先程よりも近くで聞こえた。もう目と鼻の先であるかのようでさえある。
少女の言葉に、アーチャーは本能的に後ずさる。小動物が逃げられないと分かっていても、捕食者から逃げようとするかの如く。
「───待て。その声、どこかで……」
声は、そこで途切れた。
今まであったはずの彼の気配は、ぷつりと暗闇からさえも消え失せた。
アーチャー、ロビン・フッドは、もうそこには存在していなかった。
「ああ、感じる。体の内で
これにて、第二章は終結です。
Fate/zeroでもセイバーが一時期片腕での戦闘を強いられていましたが、流石は最優のセイバーだけあって、ハンデをものともしていませんでした。
さて、アヴェンジャーの腕は治るのか? それともそのままで戦う事になるのか?
どうかお楽しみに!!