クロス・ブレイド~剣爛舞踏~   作:ゲキガンガー

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第二章「シーサイドクロスブレイド」①

第二章『シーサイドクロスブレイド』

 

ピピピピピ!

 機械的な電子音が響く。女子寮の一室。寝ぼけ眼をこすりながら彼女は這うようにしてアラームを止めた。ボタンを押して止めるというよりは、乱雑に叩いて止める。

「あ、後5分だけ……」

 それが悪魔の囁きである事を彼女は知っていた。何とか自らを律し、睡魔と闘い洗面所へと向かう。そして顔を洗う。朝、シャワーを浴びて乱雑になった髪を整え始める。軽く化粧をして、いつも通り制服に着替える。いつも通りのルーチン作業だった。

 しかし、内心は穏やかではない。そう、いつもとは異なっている。心の中は一人の男の事で占領されていた。これは由々しき事態だ。心のキャパシティがあの男の事で埋まっている。考えたくなくても考えてしまう。彼女は言いようのないこの気持ちを説明できずにいる。

 ――もしやこれが恋と呼ぶものなのか。という風に妙に少女漫画めいたような甘酸っぱく、そして青臭い思考に陥りかねなかった。

 そもそもの騒動は先日。あの男に裸を見られたという事だ。『肉親を除けば婚約者以外にその肌を見せてはならない』それが明智家で定められた家訓であり、ルールだ。ルールは守らなければならない。彼女は律儀だった。何より貞操観念に関して潔癖であった。そういう風に育てられたし、そうでありたいとも自分で思っていた。そう、しかしここでもうひとつ根本的な解決がある事を彼女は発見する。発見、というか気付きたくなかったので目を反らしていた事実というものがひとつあった。

『結婚』

 そう。結婚することだ。そうすれば、もうひとつの根本的な解決をすることができる。

 ーーな。何を考えているのだろうか。自分は。

 そんなことを考えているうちに時間はすぎていった。

 はっ。

 そうだ。遅刻する。寮は学校の近くにあるとはいえ、そろそろ出発しないとまずい。

 彼女は慌てて服を着て学校へ行く準備をする。

 ーーとはいえ、ひとつだけ忘れなかった、忘れてはいけないことがあった。それは後述することになる。

 こうして彼女の優雅ーーとはいえないかもしれないがーーな早朝の時間は過ぎ去っていく。

 

 昼休み。この学校ーー剣欄学園に転入したばかりで友人もいない刀哉はひとり食事をとることになる。とはいえ、弁当を作ってくる甲斐性などない。それだけ朝早く起き、支度をしなければならなくなる。当然の用に面倒だ。基本的に怠惰な彼はそんなことできればしたくはないと思っている。そう、だから今日の昼もまた、金にものを言わせて学食で済ませようと思っていた。

 ーーと。

「・・・・・・なんだ?」

 明智姫乃。大和撫子の皮を被った野蛮人が現れる。先日、不幸な事故(専門用語ではラッキースケベというのかもしれないが)があり、それ以降、因縁をつけられている。

「まだ根に持ってるのか」

「ち、違うわよ」

「だったら、何のようだ?」

「そ、その・・・・・・・これなんだけど」

 姫乃はハンカチに包まれた物体を差し出す。恐らくは弁当箱なのだろう。

「そ、その間違って二つ弁当作っちゃって。よかったら」

 弁当を間違って二つ作る。若年性アルツハイマーか何かだろうか。

「・・・・・・・大丈夫か? 脳外科にでもみてもらったらどうだ?」

「な、なんでそうなるのよ。ボケてないわよ。ボケてなんて」

「・・・・・・・だったらなんで」

 皆まで言わずとも本心は普通の人間にはわかりそうなものではあるが、彼にはわからないようだった。

 ーーその時。二人は一人の人物が廊下からその様子を熱心に見ていることに気づいていなかった。

 

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