ある日の昼下がり、担当するアイドルをレッスン、あるいは収録会場に送り届け、その後営業へ回る、と言ういつも通りの業務を終えてから事務所に帰るとソファーに所に銀の髪を見つけた。
貴音はレッスンだった筈だけれど何かあったのかな? と思いつつ、ただいま、と声をかけると、ソファーに座っていた人物はこちらを振り返った。
……貴音ではない。光を浴びて輝く銀の髪は貴音と同じだが、ソファーの人物は貴音とは違う、しかし彼女にも劣らない神秘的な菫色の瞳をしていた。身にまとう雰囲気も「女王」と言われる貴音のような凛としながらもどこかミステリアスなものではなく、優しげな、母性を感じさせるようなものである。年齢を考えるなら「お姉さん」と言うのがしっくりくる。
貴音が「女王」ならば、この子は絵本から飛び出してきた「お姫様」だろうか。そんなことを思ったが、今は事務所に見知らぬ人物が居るという事が問題だろう。
先ほどフレンドリーな挨拶をしてしまったことを取り繕った後、自己紹介をする。こちらの自己紹介を受けて彼女の方も自己紹介をしてきた。
「初めまして。御門千早(みかど ちはや)と言います。本日はこちらの社長にお話が有って参りました」
とのことだ。社長は今は一端部屋に戻っているらしい。社長に話とは何だろうか、もしかしたら新しくアイドルとしてこの事務所に入るのかもしれない、と思っていると社長がちょうどこちらに戻ってきた。
「おお、キミ。ちょうど良いところに。こちらは御門千早君と言ってね、実は……」
そういって社長は事の顛末を話し始める。
社長曰く、現在765プロに所属するアイドルのプロデュースが軌道に乗り、プロデューサーも自分に加えて律子が入ったことで、新しくアイドルを増やそうと募集をかけてみたそうだ。
そこで送られてきた数々の応募。その中に彼女の写真を見つけて、いつものように「ティンと来た」らしい。
どうやら自分の予想も外れてはいなかったようだ。
「書類を見た時、ティンと来たんだが、御門君には少々問題があってね……」
問題とは何だろうか。見たところ、彼女は外見上は間違いなく最上級の美少女であるし、声も若干低い、声変わり前の少年のような声だったがそれはそれで魅力があるだろう。何らかの理由があってダンスができない、と言うようなことでも、千早(ここで気が付いたが、社長は765プロに現在所属しているアイドル「如月千早」との混同を避けるため彼女を「御門君」と呼んでいるようだ)のように歌をメインでやっていけば当面は問題にはならないだろう、後は時間をかけて対処していけば良い。
そのように彼女をプロデュースするプランを練りつつ、社長に問題とは何か、と尋ねる。
「まず、御門君は自分の意志で応募したわけじゃないそうでね」
どうやら今回の話は彼女の友人が彼女の預かり知らぬところでやったものであるらしい。よくある、と言っては言い過ぎだが他人からの推薦というのはあり得る話だ。そこまで行かなくても「友人に言われて応募してみた」という動機は十分あり得るものだろう。
本人の意思が全く無い、と言うのは確かに問題だが世の女性の憧れであるだろうアイドルと言う職業だ、棚ボタとは思うことがあっても真っ向から拒絶するということは少ないだろう。
何より、彼女はかなりの逸材である。その程度の問題で逃してはならない人材だ。そのぐらいなら問題ではない、もし彼女が辞退を申し出ているなら自分が説得してみせる、と社長に伝えると。
「そのぐらいなら私だって躊躇わないよ。しかし、御門君には、なんというか、その、根本的に問題があってね」
と答えが返ってきた。根本的な問題とは何か、という自分の困惑を表情から読み取ったのだろう。社長は自分の疑問の答えを返してくれた。
ドラマの演技の際には役者の感情が理解できるという点では理想的な、自分もにわかに信じられない、という気持ちがが十分に感じられる表情と声の調子で。
「御門君は……男性なんだそうだ……」
……は? what? なんだって?
彼女、御門千早さんが男? 一般の域を遥かに超える、いや、下手をしたら低ランクのアイドルならビジュアルだけで一蹴出来そうな美貌を持つ、「偶像の具象化」と言う意味ではまさにアイドルにふさわしいと思わせる、絵本から出て来たお姫様のような、目の前に居る美少女としか思えない人物が、男?
「…………はあぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁあああ!!??」
この話始まって初の、俺の鍵カッコつきの台詞に対して、社長は頷き共に同意の反応を、彼女……ではないらしい、御門さんはその場に崩れ落ちるという失意の反応を返した。
……崩れ落ちた際、御門さんは女の子座りであった。
と言う導入でしたとさ。メインのはずのちーちゃんが一言しかしゃべってないぜ……orz
そして見切り発車だから今後の構想が一切ない……全10話ぐらいでアイドル+αとの交流を描く、と言う構想はあるんですけどね。
いや、でも本当に「体つきを見ればわかる」とか「父親の目だった」とかで性別見破るおとボクの人物たちは何者なんでしょうかね? 自分はブツを見ない限り見破れない自信がある。
「最良の女性を演じていた」ってのも、ちーちゃんのスペックでは自然とそうなってしまったとしか思えなかったり。