数日後 本郷宅
「よし、これで体の機能は正常に戻った。」
本郷は部屋に置いてある機器を見ながらベッドで寝かされている簪に言う。
「それじゃ・・・・私の体はもう大丈夫なんですか?」
「ああ、手術前にあった証拠隠滅用の自爆装置も取り外したし、自己修復機能及び生命維持機能も今回の手術で正常に機能している。でも数日は車椅子での移動だな。」
「よかった・・・・。」
簪はそう言いながらも自分の両手を見る。すると本郷は簪に合わせてか手袋を渡した。
「これは?」
「絶縁体で作った手袋だ。これをはめていれば人に触れても感電死させる心配もないし、普段通りの生活ができるようになる。色はとりあえず君に合わせたつもりだったんだが・・・・・・気に入らなかったかい?」
「い、いえ!ありがとございます!」
簪は頭を下げながらお礼を言う。それを見た後本郷は少し安心する。
「そう言えば私と一緒にここに来た・・・・」
「一夏君か。彼なら今一文字に稽古をつけてもらっているよ。」
「稽古?」
本郷宅 地下
「エレクトロファイヤー!」
ストロンガーは床に向かって拳を打ち込む。するとそこから稲妻が走り、少し離れた場所にいるライダー2号に向かって行く。2号ライダーは一瞬怯むがすぐにジャンプをして距離をとる。
「このまま距離を保って・・・・・・ん!?」
2号ライダーに追撃を仕掛けようとしていたストロンガーは急に跪いた。
「隙あり!とう!」
当然2号ライダーはそのすきを逃さない。
「ライダーキック!!」
2号ライダーのキックはストロンガーに直撃し、壁に激突する。その瞬間に変身が解け、一夏の姿へと戻る。
「うう・・・・・一体どうして・・・・」
「ったく、やること全部全力投球でできるわけねえだろ。」
2号ライダーも変身を解き、一文字隼人の姿へと戻る。
「いいか、一夏。お前は俺と本郷とは違って電気人間である分エネルギー消費が俺たちと比べて半端ねえんだ。」
「エネルギー消費?」
「確かに俺と本郷はお前と簪ちゃんと比べちまうと性能は下だ。だが、それに比例して力を発揮するためにはエネルギーが必要になる。特にお前の場合は体に必要な電気エネルギーを技を使うたびに消費する。つまり一言で言えば戦闘をするためには俺と本郷の倍以上のエネルギーを必要になるんだ。」
「・・・・ってことは俺は二人よりもエネルギー消費の効率が悪いんですか?」
「そうとは言っていない。あの技だって連続で使わず状況に応じてエネルギーの消費を調節すればあんなエネルギー切れを起こさずに済むんだ。要はコツを掴めってわけだ。」
「なるほどな・・・・・・。」
一夏は腕を組みながら言う。そこへ本郷がやってくる。
「二人ともやっているようだな。」
「本郷さん!」
「本郷、簪のお嬢ちゃんの方はもう大丈夫なのか?」
「ここ数日様子を見ているが体の機能も安定して日常生活にも問題ないぐらいに回復している。」
「よかった・・・・」
一夏は安心した様に言う。
「でも、どうする?見放されたとはいえ彼女は更識家のご令嬢、さらに言えば元とはいえ日本代表候補生だ。このままここに置いとくのは問題だろう?」
「ああ、俺の考えではできれば彼女を元いた家に戻してあげたいところだが・・・・・」
「私は帰らなくていいです。」
本郷が考えようとした直後、簪が車椅子で部屋に入ってきた。簪は複雑な表情になっていた。
「でも君のお姉さんたち家族も・・・・・・」
「私・・・・・正直言ってあの家に居場所がないって思っていたんです。」
「家に居場所がないだって?」
一文字が意外そうな顔をして言う。
「昔から姉と比べられていっつもいつもダメな妹としてしか見られていなかったんです。私だって努力しているんですよ。小中共に学力もトップでしたし、運動だって毎日にジョギングや筋トレを欠かさなかったし・・・・・・スタイルは微妙だったけど・・・・・・」
簪はいつの間にか姉に対してのコンプレックスを話していた。本郷たち三人は思わず黙って聞く。簪の話は段々エスカレートしていく。
「それで学校ではいつの間にか『ぼっち』になって・・・・・」
「あの・・・・簪ちゃん。君の気持ちは理解したからそれ以上言わなくてもいいよ。」
「・・・・・・あっ。」
一文字の一言に簪は我に返り思わず顔を赤くした。そんな彼女に一夏は慰めるように言う。
「心配するなよ、俺だって周りから千冬姉と比べられて諦めがついちまったんだから。要は目の前の壁のせいで周りが見えなかったんだよな?」
「う、うん・・・・・」
「んなわけで俺と一緒にここにいてもいいですよね?本郷さん。」
「別に俺は構わない。君たちの心の整理が整うまでここにいればいい。」
「よかったな、二人とも。」
「ありがとうございます!」
一夏は頭を下げて本郷に礼を言う。
「よし、一夏。休憩もこのくらいにしてもう一回組手と行くか!」
一文字は構えをとる。すると腹部にベルトが現れる。
「変・・・・・・・・身!!」
すると一文字の姿はたちまち二号ライダーへと変わる。一夏もストロンガーに変身するが一瞬困ったような動作をする。
「ん?どうした?」
「いや・・・・俺も決めポーズ考えようかなって・・・・・」
ちょうど同じ頃
滝は車である場所へと向かっていた。場所は更識家からかなり離れており、すぐ近くに海がある。
「随分田舎の方なんですね。」
楯無は助手席の方から外の景色を見る。
「住所を調べてみたんだが昔『少年仮面ライダー隊本部』があった場所がなくなっていたからな。んで、さらに調べてみたら住所も転々としていて見つかったのかこの辺だったわけだ。」
ちなみに車に乗っているのは滝と楯無だけではない。後ろの席では虚と乗ってからずっとブツブツと言っている彼女の妹である本音がいる。虚の話ではたまには外の空気を吸わせるべきだと判断してでのことだ。
「それにしても滝さん、立花さんとはどんな方なんですか?」
「そうだな・・・・一言で言えば俺や本郷の『もう一人の父親』って感じかな?だから俺たちもそういう意味で『おやっさん』って呼んでいるし。」
滝は懐かしそうに言う。そう話をしている間に車は目的地に到着する。車の右側には『立花レーシングクラブ』と書かれた看板の店があった。
「ここで間違いないはずだ。」
「今はバイクショップなんですね。」
「本音、降りるわよ。」
「降りたくないよ・・・・」
滝たちは早速店の中へと入ってみる(本音は無理やり)。中では作業着を着た女性がバイクの整備をしていた。
「あのすみません。」
「はい。」
女性が振り向くと滝たちは思わず驚いた表情をする。無理もない、そっくりとかそういう冗談ごとではなくそこにはブリュンヒルデこと織斑千冬が作業着を着て仕事をしているのだから。
「あんたまさか織斑千冬か!」
滝は思わず大声で言う。それを聞いた瞬間千冬は悲しそうな顔で答える。
「い、いえ人違いです・・・・・」
「いや、どう見ても・・・・・」
「千冬ちゃん、ここいらで一旦休憩・・・・・」
そこへ珈琲を持ってきた藤兵衛が来る。藤兵衛は滝を見るなり驚いた顔をして持っていたお盆を落としてしまう。
「た・・・・・・滝か?」
滝は藤兵衛の方を見ると懐かしさのあまりに藤兵衛の方へと向かった。
「おやっさん!久しぶり・・・・・」
「バッカモンが!」
「イデ!?」
藤兵衛はいきなり滝を殴った。これには楯無は愚か千冬さえも唖然とした。
「連絡一本もよこさないで!これだから若い奴は!」
「いや、久しぶりにこっちに来たもんだからつい・・・・・」
藤兵衛はそんなことを言いながらも懐かしいのか自然とうれし涙が出ていた。
「・・・ったく、元気だったか?この野郎!」
「おやっさん・・・・・」
数分後・・・・・・
「ほれ、珈琲を淹れてきたぞ。」
藤兵衛はさっき落として割ってしまったマグカップをさっさと片付け、滝たちの分も追加で珈琲を淹れなおしてきた。
「いや~懐かしいな!おやっさんの珈琲飲むなんて!」
滝は嬉しそうに珈琲を飲む。楯無と虚は少し戸惑っていた。
「やっぱり、お嬢ちゃんたちには紅茶の方がよかったかな?」
「い、いえ!珈琲を飲む機会があまりなかったものですから・・・・・」
二人の隣では本音が黙って珈琲を飲んでいる。それを見た虚も飲み始めるが楯無は飲みながら作業をしている千冬の方を見る。
「ところで滝、今回はどうしたんだ?またFBIでの仕事か?」
「いいえ、今回は本郷たちにも協力してもらおうと思って・・・・・」
「猛たちに?」
「実は・・・・・」
滝は事の経緯を説明する。藤兵衛はそれを聞きながら楯無を見る。
「・・・・・つまり、そこの嬢ちゃんの妹を探しているという事か。」
「ええ、ところでおやっさん。どうして織斑千冬がここにいるんだ?確か俺が知っている情報でも日本に帰国後、動向がわからなくなったって聞いてたけど・・・・・」
「ああ、こっちにもいろいろ事情があるんだよ。千冬ちゃんにもな。」
半年前・・・・・・
「『ブリュンヒルデ織斑千冬、蒸発!?』か。」
藤兵衛は店の中でバイクの整備をしながら新聞を読んでいた。ここ数年、世界は表上では平和に見えるが藤兵衛にとっては複雑なものだった。今の世界を見て裏で組織と戦って来た彼らはどう思うのだろう?彼はそう思いながら季節外れのどしゃ降りの雨を眺めていた。
「儂らが守ろうとした世界は・・・・こんなものだったのかのう・・・・」
彼はそう言いながら珈琲を淹れようと台所に入るが豆を切らしていたことに気づく。
「買いに行かんとな・・・・・」
彼は傘を持って買い付けの店へと行く。
帰りの道中・・・・・
「全く、最近の若い娘は教育がしっかりしとらんな!儂みたいな年寄りに道を開けろだとか男のくせにだとか・・・・・いやな世の中になったもんだ!」
藤兵衛はご立腹な状態で買い物袋を持ちながら帰り道を歩いていた。そんな中道路の端っこで人影があったことに気が付く。よく見ると髪の長い女性で雨なのにもかかわらず傘を持っていなかった。おかげで彼女はすっかりずぶ濡れの状態になっていた。だが藤兵衛が気になったのは彼女の目だった。彼女はまるで死にたいというかのように冷たい目をしていた。
「ん~~~~~あの娘どっかで見たことがあるような・・・・・・」
藤兵衛は首をかしげながら通り過ぎようとすると彼女のいる方角から一台の車が走ってきた。
(まさか自殺とかしないだろうな・・・・・)
藤兵衛は心配そうに女性を見ると予想が的中したのか女性は車の方へと身を投じようとした。
「危ない!」
藤兵衛は思わず買い物袋と傘を放り出して女性を後ろから引っ張り上げる。女性は車に衝突寸前だったが藤兵衛のおかげで事無きを得た。
「ふう、危なかった・・・・。」
車が通り過ぎると藤兵衛は安心したかのようにホッと息をする。
「・・・・・・何で助けたんだ・・・・・これで気が楽になると思ったのに・・・・・・」
女性は跪きながら藤兵衛に対して言う。
「何を言っとるんだ!たった一つの命を粗末にしようとするんじゃない。」
「私は消えてしまった方がいいんだ!みんな私のせいで・・・・・・私のせいで・・・・・」
女性は泣きながら叫んだ。その顔を見たとき藤兵衛は新聞に写っていた千冬のことを思い出す。
「あんた・・・・まさか織斑千冬か?」
「それから儂は彼女を家まで連れてきて話をすべて聞いたんだ。儂もはっきり言って彼女がどれほど自分で苦しんだのかも十分通じた。両親に姉弟揃って捨てられたり、友人のために協力したとはいえあの白騎士事件は彼女が関わっていたものとはな・・・・・」
「あれは仕組まれたものだったのかよ・・・・・」
藤兵衛の話を聞き滝は思わず拳を握り締めた。
「儂も彼女に全て話したよ。あの事件は公式では死者はゼロと言っているが情報操作をした綺麗ごとに過ぎん。実際は迎撃を逃れたミサイルがあった。当然、その地域にいた人たちは家族を失っておる。」
「それで彼女は?」
「自分は本当の人殺しだと言って台所から包丁を持ってきて自殺しようとしたよ。あの時は止めるのが大変だったわい。」
「でも、どうやって止めたんです?」
楯無が気になるように聞いてくる。
「儂はそのとき思わず彼女を打ってしまってな、こう言ってやったんだよ。『お前が死んだところで死んだ弟君が喜ぶか!死なせてしまった人たちは浮かばれるのか?』ってな。」
藤兵衛は千冬の様子を見ながら言葉を続ける。
「彼女は当然首を横に振った。儂はさらに言ってやったよ。『だったらそいつらの分まで生きて行こうとするのがお前に与えられた義務じゃないのか?』って。そしたら、どうすればいいのかわからないと言ったんだ。だから儂はその答えが見つかるまでここで暮らすといいって言ってやったんだ。」
藤兵衛はそこまで言うと煙草を口に咥えライターで火をつけて一服する。
「でも、そこまで言うなんて流石おやっさんだな。普通なら世界最強相手にそんなこと言えないぜ。」
「確かに周りから見れば世界最強かもしれん。でも、実際は最強以前に彼女は儂らと同じ一人の人間に過ぎないんだ。傷つきもするし、悲しんだりもする。そういう時は誰かが支えてやらなきゃいけないってもんだ。」
「立花さんって強い方なんですね。」
楯無は思わず拍手を送ろうとするが虚が横から制する。おそらく大人げないと思ったからだろう。虚は一呼吸を置いて藤兵衛に言う。
「話は大体わかりました。ところで立花さん私たちに協力していただけるでしょうか?」
「儂は別に構わんよ。ただ猛たちも動いてくれるかどうかまではわからんな~。ニ、三日前にこのマシンの制作を依頼されて作ってはいるが・・・・」
「えっ?今組み立てているマシン、本郷が頼んだのか?」
「ああ、何よりまた増えちまったらしい・・・・・・アイツらと同じ・・・」
「そうか・・・・」
そんな会話をしているとき外からバイクの音がしてきた。
「ん?またバイクの修理か?」
藤兵衛は店の外に出てみる。そこには依頼した本人である本郷が来ていた。
「おやっさん。」
「猛!今日は本当に懐かしいもんが来るもんだな!」
「懐かしい?おやっさん、俺とはついこの間会ったばかりじゃないですか。」
「それがな、今日特に懐かしい奴が帰って来たんだよ!」
「ん?」
「本郷!」
滝が嬉しそうに店から出てくる。
「滝!いつこっちに戻ってきたんだ?」
「ちょっとしたお嬢さんからの依頼でな。」
「お嬢さん?」
本郷は店の方に目をやると思わず驚いた顔をする。
「彼女は?」
「俺の依頼人の更識楯無さんだ。」
「更識楯無と申します。今後お見知りおきを。」
楯無は本郷に頭を下げながら言う。
(彼女が簪くんの姉か・・・・・)
「ん?私の顔に何かついていますか?」
「いや、あの更識家の当主がこうも若い子だとは・・・・・」
「よく言われます。」
「おやっさん、滝、ちょっとこっちに・・・・・・」
「ん?どうしたんだ?」
「実は二人に大事なお話が・・・・・・・」
「その話なら私からするよ!」
「「「「「え!?」」」」」
突然の聞き覚えの無い声に一同は驚いた声を上げる。ただ千冬一人はまさかという顔で店の外に出てくる。
「だっ、誰だ今の声は!?」
「見ろ!あんなところに!」
藤兵衛が店の上に指を指す。そこにはこの辺では違和感がありすぎる独特のファッションにウサミミのカチューシャを頭に着けた女性が立っていた。
「とう!」
女性は二メートル以上の高さのある店の上から飛び降りてくる。
「まさか新しい組織の改造人間か!?」
藤兵衛は思わず身構える。ところが・・・・
「アイタタタ・・・・・・・カッコつけすぎた・・・・」
女性は着地した衝撃で足を抑えていた。本郷たちは思わず唖然としていたが千冬は何とも言えない顔で彼女を見ていた。
「痛・・・・・・・久しぶり!ちーちゃん!」
「何が久しぶりだ、束。」
「束?んじゃ・・・・この娘が千冬ちゃんが言っていた『篠ノ之束』か?」
「そうそう、私が大天才の篠ノ之束さんだよ~!」
束はそう言い終えると立ち上がり、本郷の方へと歩いてくる。
「本ちゃん、ちーちゃんたちに隠し事しようとするなんてひどいんじゃないの?」
「何?」
「どういうことだ猛?」
全員気になるように本郷を見る。
「それは・・・・・・いっくんとそこのお嬢さんの妹さんが本ちゃんの家にいるという事で~す!」
「「「「「・・・・・・・・・何!?」」」」」
「・・・・・・・・・」
全員驚いた顔で本郷を見るのであった。
なんかタイトルとあっていないような気がしますが気にしないでください。
この時点の設定では千冬はドイツから帰国後に藤兵衛と出会っています(ちなみに一夏の行方不明は知っており、ドイツ軍の協力を得て捜索したが結局発見できなかった)。これはラウラが後の登場する予定も考えての設定です。