短編集   作:雨の日

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自然の王・後編

 トルコの首都・アンカラにはヴォパン公爵がいるバルカン半島に接しているトルコ共和国を守護しているカンピオーネがいる。何故首都にいるのかと訊かれたそのカンピオーネ、カルラ・グレンジャー様はこう答えたという。

 

「アンカラは私の生まれ故郷、すぐ近くにいる同胞は民のことなど全く考えていない戦闘狂でありそれに対抗できる可能性があるのはこの国では私しかいない。この状況でこの国を離れることができるだろうか」

 

 この発言からもわかるようにカルラ・グレンジャー様はすぐ隣を支配しているヴォパン公爵と何度も死闘を繰り広げている。ただ、最近の戦闘での周りへの被害は2人のカンピオーネがたたかったにしては軽微と言っていいものであった。

 

「周りの被害をどうしているのか? もちろんたたかったあとになおしている。最初の死闘時はそんな余裕はなかったがね」

 

 カルラ・グレンジャー様の権能に時を巻き戻すや地面を操るといった権能はないことが賢人議会の調査で分かっている。どうやってなおしているのかという質問に彼はこう答えたという。

 

「権能を使用してなおしている。どうやってか? それは秘密だ。ただこれだけは言っておこう。権能の使い道は戦闘だけではない。様々なことに用いることができるのだ」

 

 ちなみに初戦闘の時はトルコの国境線上にて発見された大量の針葉樹の残骸とヴォパン公爵の権能である『死せる従僕の檻』に囚われていたと思われる魔術関係者の死体が散乱し所々に地面が溶解したような跡を残した。

 

「私の権能についてだと? そのくらい把握していると思っていたのだが」

 

 カルラ・グレンジャー様の権能は判明しているだけで4つ。

 1つ目は1番最初に弑逆したまつろわぬアルテミス神から簒奪した権能『黄金の弓』。文字通りすべてが黄金色に染まっている弓を出現させる権能だ。この弓は弦を引けば引くほど威力が強くなる効果があるとされている。

 2つ目は同じくまつろわぬアルテミス神から簒奪した権能『森の守護者』。森に住まう獣たちと意思疎通を図ることができるという権能だ。ただ、同じまつろわぬ神を連続で弑逆するなどという可能性はほとんどないためおそらくこの権能を得る前にどこかの神を弑逆していると考えられている。

 3つ目はまつろわぬハーデス神から簒奪した権能『冥界統治』。すでに死したものにたいして効果のある権能であるということ以外詳細不明の権能である。おそらくこの権能を用いてヴォパン公爵の死せる従僕の檻を破ったのであろうと考えられている。

 4つ目はまつろわぬアポロン神から簒奪した権能『太陽神の矢』。疫病の矢を放ち男を頓死させたという伝承からきたと思われる権能である。

 

 カルラ・グレンジャー様のカンピオーネになってからの主な戦闘方法は単純で黄金の弓に太陽神の矢をつがえ相手を弱体化させ、最後に身に帯びている自身で鍛えたという騎士剣『アークトゥルス(熊の守護者)』でたたかうというものである。

 

「私の権能数は8つだ」

 

 判明している権能の倍の数を答えられて驚いている様子を見ていたカルラ・グレンジャー様は笑みを浮かべながらこうつけ加えたという。

 

「私の権能は全部ギリシャ神話の神だ。そこから予想してみてくれ」

 

 有名どころであるポセイドン神やゼウス神の名前をだしてみたところ、カルラ・グレンジャー様はそれに苦笑を浮かべながら否定したという。

 

 最後にその力を用いてこれからどうするかと訊いてみたところカルラ・グレンジャーはこう答えたという。

 

「私はまず相手に交渉を持ちかけてみたい。ただ力で支配するヴォパン公爵のような所業は私にはできないだろうし交渉で穏便にすむならそれにこしたことはないからな」

 

 

 

 

 

 トルコの首都・アルカラのカルナ・グレンジャーの所有している屋敷にて草薙護堂一行は手元のレポートに目を落としていた。

 

「これがカルラ・グレンジャーについてとある魔術結社に所属していたものがインタビューした時の記録よ」

 

「・・・・・・なるほど。確かに好戦的そうではありませんね」

 

 カルラ・グレンジャーとの会談前にエリカ・ブランデッリが用意していたレポートを見ながら万里谷裕理はそんな感想をこぼした。草薙護堂も万里谷裕理の感想に同意するように頷いた。

 

「カルラ・グレンジャー様はこの時の宣言通り他の出会ったカンピオーネの方たちと話し合いだけですませようとしたらしいわ。ただ、サルバトーレ卿とはたたかう羽目になったそうだけれど・・・・・・」

 

「まあドニだからな」

 

 問答無用で斬りかかられた様子が容易に脳裏に浮かんだ草薙護堂は苦笑を浮かべた。万里谷裕理も草薙護堂の意見を否定することはなかった。

 

「そのたたかい結局どうなったんだ?」

 

「カルラ・グレンジャー様がサルバトーレ卿を気絶させて終了したそうよ。周りへの被害も大したことなかったそうだし」

 

「お強いのですね」

 

「そうね」

 

「失礼いたします。会場の用意が整いましたのでお迎えに参りました」

 

「わかった」

 

 エリカ・ブランデッリと万里谷裕理の会話がちょうど終わった時、会談の用意ができたとカルラ・グレンジャーの従者から連絡を受け、草薙護堂一行は誘導を受けながら会談場所に移動した。

 

「・・・・・・初めまして、日本のカンピオーネ草薙護堂さん。私はここトルコのカンピオーネ、カルラ・グレンジャーです」

 

 会談場所にいたのは金髪碧眼で貴公子という言葉がよく似合いそうな青年だった。立ち振る舞いにも気品があり草薙護堂は思わず息をのんだ。そのままいけばカルラ・グレンジャーの雰囲気に呑まれていただろう。

 

「まずは座ったらどうだい? そして深呼吸を1回してから今回の会談に臨んでほしい」

 

「あっああ」

 

 草薙護堂一行は部屋にあった近くの椅子に座り深呼吸をして意識を切り替えようとした。カルラ・グレンジャーはその様子をただ黙って見ていた。まるで慈母のごとき笑顔を浮かべながら。

 

「それじゃはじめようか」

 

 カルラ・グレンジャーの一言で会談が始まった。




ここまでしか考えていなかった。どうしよう・・・・・・まあいっか短編集だし。違う王についての話もしたいしね。ここから敵対するか? 仲間になるか? このあと何があったか? 自由に想像してみてください。
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