太平洋のど真ん中、そこに今ではほとんど見かけないガレオン船が浮かんでいた。そのガレオン船の両舷には今ではほとんど作られていないカルバリン砲がたくさん並んでおり、船首には金色のドラゴンの首を模したものが取りつけられていた。帆も大きなものが2本取りつけられており、見張り台も設置されている。そして、その頂上に海賊旗が風ではためいていた。
「は~暇だな」
そんな船の船首で1人の男が寝ころんでいた。黒い軍服のような服を着て茶色いブーツを履き、紅色のマントを羽織り頭に海賊帽をかぶっている30代くらいの男性だ。顎髭をしっかりと整えており鋭いつり眼だが何か引き込まれる瞳をしている。街中を歩けば10人中10人は振り返るイケメンであった。
不思議なことにこの船には彼以外の人影は見当たらない。ガレオン船は動かすために舵を取る人や櫂をこぐ人など人手がたくさんいるというのに。ただ、彼はそのことをまったく気にしていないように見える。
「あん?」
船首で寝ころんでいた彼は突然みなぎってきた力に驚き周囲を見渡す。この現象はとあることを意味するからだ。
「あれか?」
彼が見ている先には少女のような姿をした何かが梟の翼を生やして飛んでいた。彼と同様に何か感じたのか周囲を見渡している。
「初撃はいただく・・・・・・・いや、やめとくか」
彼は少女を見て腕を振り上げて何かしようとしたようだが、すぐにやる気をなくしたようにまた船首に寝転がった。
「我らの仇敵よ。何故攻撃を中止した?」
そんな彼のもとに空を飛んでいる少女が近づいてきた。少女は彼が何をしようとしていたのか彼が何者であるのかを看破していた。彼が己に攻撃を加えようとしていたことを。そして自分が感じた仇敵の気配は目の前の男から感じられるものであると。
それと同時に疑問も感じていた。何故攻撃を中止したのだろうと。情けをかけられたか? いや、目の前の男にこちらを下に見ているような感じはしないし海賊旗を掲げているのだからただ女性に優しいわけではないだろう。疑問に答えがでずつい直接聞いてしまっていた。
「決まっている。俺は太陽か海に関する神しか弑逆しないと決めているからだ」
「ほう。よく私がその2つに属さないと見抜いたな」
少女は男に1つ問いを投げかける。確かに己はどちらにも属さないものであるがどうしてわかったのかと。
「あんたからは冥府と蛇、知恵と戦、芸術。そんなものしか感じないからな」
男は笑いながら少女の質問に答える。そのある程度的を射ている答えに少女は感心しながらも少し苛立った。自分は目の前の男に相手もされないような存在なのかと。神殺しとまつろわぬ神は普通出くわしたら殺しあう関係であるというのに男から戦意をほとんど感じない。神殺しとして一応臨戦態勢を整えているがこちらを本気で殺そうとしていないのが丸わかりだった。
「そうか。私の属性を感じたのならばこの先どうなるのかわかるであろう? と言いたいところだが私は今急ぎの用がある」
「そのようだな。三位一体の1つが欠けているように見える。多分蛇だな」
「正解だ、仇敵よ」
「そうか」
男は頭を巡らせる。さっき感じたものから少女の正体を推測しようと。ただ、彼の頭には軍事と航海技術以外ほとんど入っていない。その他も処世術や酒の飲み方など神に関する知識など皆無にも等しい。そのため、彼がどんなに考えても少女の正体にはたどりつけない。
「それではな、仇敵よ。私が万全の状態になったらその首刎ねに向かってやろう」
「その時は逆にその美しい顔に風穴開けて退散させてやるよ。それでも引かないんならお前の命いただこう」
両者は獰猛に笑いながら宣戦布告を告げる。少女の手には黒い鎌がいつの間にかあり、それを男に向けていた。男も腰のガンベルトに入れていたのだろうと思われる黒い鈍い輝きを放つリボルバーを2丁いつの間にか取りだして少女に向けていた。
少しの間にらみ合った後、少女は梟の翼を生やしてどこかに飛んでいき男はその様を何もせず見送った。
「あっちは日本だったか? 確か新しい同胞が生まれた国だよな?」
少女の行く先について考察しながら男は船室に向かいハンモックに横たわる。これから先に起こることは己には関係ないと本格的に寝ようとしていた。
このやる気なさげな男が太平洋に拠点を構えるカンピオーネ、歴史では沈まぬ太陽を落とした男と記され、海の王と他のカンピオーネや魔術関係者に呼ばれる者、フランシス・ドレイクである。彼は気まぐれであり浪費家であり海賊であり冒険家であった。
アテナのキャラってこんな感じだっけ?