資源再利用艦隊 フィフス・シエラ   作:オラクルMk-II

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お待たせしました。戦艦棲鬼のやりたかったこと。それはもう少しお待ちください。


高価な命

 

 

 

 

『戦艦棲鬼が計画している作戦の妨害を依頼したい』

 

『情報によると、戦艦棲鬼は近日中に都市部に対して無差別なテロ行為を行うつもりらしい』

 

『目標地点が被害を受ける前に、戦艦棲鬼が攻撃部隊に先だって送り込んでくる、こちらの目を撹乱する役の深海棲艦を撃破してもらいたい』

 

『我々の力を甘く見ているようだが、やつらの行動はこちらには筒抜けだ。やつらは機密の保持すらできていない。戦艦棲鬼率いる部隊の弱体化は明らかだ』

 

『武力を傘に思い上がっているやつらに、自分たちの力が万能でないことを思い知らせてやってくれ』

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 ウツギ、加賀、雷巡棲鬼が雑談をした日の午後6時。水平線に日が落ち、周囲の景色が薄暗くなっていた海上には、十数名ほどの艦娘が点々と展開されていた。

 軍の上層部が敵の襲撃の情報を奪取し、それをもとに、不意打ちで相手の出鼻をくじくためと集められた部隊だったのだが。どうにも人数が少ないことに、部隊員の中に混じっていたウツギは不満を漏らす。

 

「............集まったのはたった20人か.........」

 

「あぁ。しかもそのうち半分は俺らという......」

 

 改めて周りを見渡し、20人中10名が第五横須賀の艦娘であることを再確認し。ウツギと天龍は溜め息をつく。ウツギの聞いた話によれば、本土防衛のために人員は割くので、此方に余計な数は回せないとのことだったのだが。納得のいっていなかった加古が続けて愚痴をたれる。

 

「ふー。やる気あんのか上のジイさん? 兵隊すらマトモに集めらんないなんて」

 

「加古、周りに聞こえるだろ。それに集まらなかったワケじゃあない。人数制限だ」

 

「だからそれがバカじゃねーのって。アタシらが崩されたら奴さん雪崩(なだ)れ込んでくるしょ」

 

「......元帥を愚弄(ぐろう)するか」

 

「毒吐いてわりぃの。どうせ聞こえてねーんだしいいじゃん」

 

「貴様ッ......!」

 

 ......確かに、上の命令だとはいえ、どうしてこんな時に限って若葉が編制から抜かれているのか。それについてはこちらの戦力的にも不安がある。な。

 堂々と上の階級の人間への暴言を口にした加古に、上層部直属の艦娘が突っ掛かる。隣にいた磯風は形だけの制止でしっかりと止めようとはせず、嵐に至っては知らんぷりをして煙草(たばこ)を吹かしているのを見て、ウツギと天龍は頭を抱えたくなった。また二人は気づいていなかったが、近くに居た漣、球磨、木曾、アザミ、ツユクサは3人に白い目を向けていた。

 が、こんなくだらない事に悩んでいてもしようがない。襲撃の時間も近い、と二人が顔を上げる。その時だった。

 ふと、なんとなく視界に違和感を感じたウツギは、スナイパーライフルのスコープ越しにもう一度目線の先を見てみる。そして、何かを見つけたウツギは、無言で天龍にライフルを渡して、レンズを覗くように身振りをする。

 

「............天龍。見えたか」

 

「おう。怪しさバリバリって奴だナ」

 

 機械越しに見えた物。事前に民間の企業などには情報を流して封鎖した筈の航路を堂々とこちらに向かってくる小型の船舶を確認し、明らかな以上事態と判断した二人は、相談して指揮官へと報告することにする。

 

「なんだろうねあれ」

 

「やっぱり罠か?」

 

「密漁船とかの可能性もある。一応報告しておくか」

 

 すっかり使い慣れたヘッドホン型の機器を操作し、ウツギは視界の中には居たものの、少し離れた場所にいた旗艦の艦娘へ自分の声を届ける。

 

「指揮官様。封鎖した筈の航路から向かってくる謎の船がいますが」

 

『どの方向だ』

 

「自分の向いている方です」

 

『............確認した。部隊全員が確実に視認できる距離で避難勧告を行う』

 

「了解しました」

 

 

「なんて?」

 

「もう少し近づけてから注意喚起すると」

 

「ふーん。......目は離さないほうが良さそうだな」

 

「だね」

 

 言葉通り、船を観測した地点から目線をずらさないようにしつつ、二人は持ってきた火気類の安全装置を切り、ウツギは緊急時にいつも世話になっている手斧が、すぐに腰から外れるようになっているかの確認を済ませる。

 ほどなくして、迎撃部隊全員の視線が一点に集中する時間が来たとき。指揮官を務めていた艦娘は、以前ウツギも使った、艤装のスピーカーを通して船の操縦士へ声をかけた。

 

「「そこの船。ただちに停止しろ」」

 

「「ここは海上封鎖の最中だ。そのまま航行するなら、容赦なく撃沈する」」

 

 事情を知らない者からすれば、いささか過激すぎるような勧告を、指揮官の艦娘が発する。が、相手からの応答が無い。

 

「「......これで最後だ。もう一度だけ警告する、そのまま前進するなら撃沈する」」

 

「________」

 

「............了解した。貴艦を撃沈する。」

 

 淡々と、しかし威圧感のある声でそう艦娘は告げると、手を挙げて味方に相手を撃つように指示する。

 相手はただの個人でも所有している事があるような小型艇だったということもあり。全員の一発ずつの砲弾ですぐに全損し、沈んでいった。

 

ただひとつ、おかしいところがあったとすれば、

 

 

この船が異常な大爆発と共に爆散していったことだろうか。

 

 

 ただ「燃料に引火しただけ」とは説明がつかないような猛烈な爆発と、(まばゆ)い閃光を放って沈んで行く船に。非常に嫌な予感を察知したウツギは、激しい光に顔をしかめながら、咄嗟に周りの艦娘に指示を飛ばす。

 

「みんな構えろ」

 

「なっ、指揮官は私だ!!」

 

「言ってる場合か。早く動くんだよ!!」

 

 勝手な行動を起こしたことに激を飛ばす指揮官へ、緊急事態故仕方がない、と逆に天龍が怒鳴る。その間に、強い光で目が眩んだウツギは、目を瞑ったまま当てずっぽうに前方へと砲弾銃弾を撒いて後退する。

 さて、何が出てくる。レ級か、何故か生きてたらしい重巡棲姫か、はたまた例の.........。

 考え事をしながら、数秒後にやっと目が慣れてきたウツギは、まぶたを開く。すると、艤装からアナウンスと警告アラートが流れてきた。

 

『高熱源反応を感知。識別不能、該当データ、無し』

 

「..............アレは」

 

 なるほど。そう来るか。

 ウツギは爆風から単身抜け出てきた深海棲艦。戦艦棲鬼へ、武器の銃口を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

 さて、ここからが正念場だ。展開している中に加賀は......居ないな。数は予想より少ないとはいえ、弱い俺が、あいつの到着までもつかどうか。

 爆煙を抜け総勢20名の部隊へと突っ込んでいきながら、戦艦棲鬼は、艦娘の物に近い形状の艤装を始動させ、そんな事を考えていた。

 女は、持った武器を適当に乱射しながら艦娘達の壁を一直線に抜けると、その背後を取り、彼女たちの艤装の機関部を狙撃する。

 

「うわっ」

 

「てめぇ.........」

 

 半分ほど減らせれば良かったんだが......それは流石に贅沢か。

 迅速に動いたお陰で、ある程度は効果があった不意打ちの狙い撃ちも。相手がかなり戦い慣れた艦娘の集団ということもあり、大破状態で攻撃に参加できなくさせれた者は少ないと悟った戦艦棲鬼は、早々に弾が切れた幾つかの武装を棄てて身を軽くする。

 次はどうしよう。彼女が砲撃を掻い潜りながら考えていたとき。指揮官の艦娘が叫びながら砲を撃ってきた。

 

「たった一人で何ができる!」

 

「あんまり殺気立つな......棒立ちしてる君は狙い放題だな?」

 

「なにぃっ......!?」

 

「たかだか十数匹の雑兵(ぞうひょう)......俺一人で蹂躙(じゅうりん)できる」

 

 戦艦の艦娘だったということもあり。身軽な自分よりも動きが鈍かった相手を一方的に砲撃して、その艤装を機能停止まで追い込むと、戦艦棲鬼は彼女の胸元まで一気に距離を詰める。

 そして彼女の行動の意味が読めず、その場所で固まっていた戦艦の艦娘の鳩尾に肘を入れて投げ飛ばす。周りの艦娘は、戦艦にあたったらいけないと砲撃の手を緩めてしまうのだった。

 

「卑怯もの!!」

 

「殺し合いの場に卑怯な手なぞ存在せんよ。どれ、もう一度」

 

「ッァ......!?」

 

「ぬるいわ。 この戦艦棲鬼を止める豪の者は居ないのか?」

 

 二度目の艦娘投げ飛ばしを敢行し、順調に女は各個撃破を遂げていく中。三度目をやろうとしたときに、彼女の元へと、両手に鉄板を構えて突っ込んでくる艦娘がある。

 俺の射撃の腕前を見て距離を詰めてきたか。いい判断だ。

 体当たりをしてきた艦娘......ウツギへ、受け身を取りながら戦艦棲鬼はそんな感想を抱く。

 

「ウツギか。なるほど、いい腕だ」

 

「..............................!」

 

 間髪入れずに斧を振り回してくる相手に、女が至近距離で砲弾を見舞おうとすると、今度は周囲から十字砲火が殺到する。撃っていたのはシエラ隊だというのは戦艦棲鬼は知らなかったが、彼女は敵はウツギの仲間だろうと大方の目星をつけ、息のあったその連携を素直に称賛した。

 

「ほう。誤射を気にせず、か。出来たチームワークだ」

 

「誉めても何も出さん。何が目的だ。人殺しか?」

 

「人間などと言う下等な猿どもを、全てこの神聖な地球から一匹残らず絶滅させる事さ」

 

「地球はお前の持ち物じゃないだろう......ッ」

 

「ははははっ。 そうかもな、だが勝ったものが勝者であり選択するのだよ。 所詮それが全てだ」

 

「っ............!?」

 

 ウツギが振りかぶってきた斧の刃を、戦艦棲鬼は自由な手で掴むと、そのまま自分の握力に任せてそれを握り砕く。これは予想外だったようで、目を向いて驚くウツギを蹴り飛ばすと、戦艦棲鬼は彼女を無視して他の艦娘達に狙いを定める。

 

 フリをして、両手で装備の格納から出した煙幕を抱え、それを水面に叩き付けると、彼女は艦娘達には目もくれずに一直線に陸地のある方向へと進軍する。

 

 

「スモーク......!!」

 

「待て、このぉっ......!!」

 

「早く追え! 絶対に逃がすな!!」

 

「前が見えませんぜ。狙い撃ちされても知らねーよ」

 

「う、うるさい!!」

 

 

「......さようなら。先を急ぐ。」

 

 程よく混乱してくれているな。このまま陸へ......。

 そう、前を見て進む戦艦棲鬼の元へ。

 

「何か」が、凄まじい速度で飛来。自然と受け身を取った彼女は、飛んできた物の正体を確認し、眉を潜めた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「邪魔だ。空母棲姫............」

 

「邪魔しに来ましたから」

 

「そうかそうか......なるほど......」

 

 

「俺の前進を阻むのなら、今度こそ殺してやろう」

 

「...............!!!!」

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

「お前が来るのはっ......!? ッ、判っていた」

 

「そう。察しがいいのね......殺してあげるわ」

 

 特別品の艤装の高出力モードが、排熱が追い付かず、それが青い光となって漏れ出ている加賀の、砲撃と機銃との凄まじい猛攻に圧されながら。戦艦棲鬼は、焦るどころか、何かを悟ったような表情で相手と会話をする。

 

「そう怒るな。私は弱い......手加減っ...してくれよ」

 

「...............!!!!」

 

「おっとと......ふふ、少し痛いな......」

 

 ............これだ、私がやりたかった事は。全ては彼女がやってくれる。

 加賀の砲撃、援護で飛んでくる艦娘達からの射撃。それらに自らの血肉を徐々に削り取られ、戦艦棲鬼は既に体の半分を血で濡らし、満身創痍となっていた。

 負けじと彼女もまた加賀へ反撃を行うものの、被弾などお構いなしに突撃を続ける彼女にはそれは効いて居ないようだった。

 

「......そうだ空母棲姫。お前の力を私に見せてくれ」

 

「..................!?」

 

 そんな、最後の抵抗のような戦艦棲鬼の放った砲弾が、加賀の脇腹を抉る。

 また更に加賀がとどめにと砲を戦艦棲鬼へと撃とうとしたとき。周囲の艦娘から援護で放たれた砲弾が、偶然加賀の持っていた砲に掠り、目測がずれたのだが。

 

何を思ったのか。

 

 

加賀が武器の引き金を引く瞬間を見計らって。戦艦棲鬼は、武器の砲身を手で掴み、自分の胸に押し付けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ......俺もまだまだだ......ぐッ......」

 

「どうして......一体何を......!?」

 

「......ふふ......死ぬ前に教えてやる...............」

 

 「わざと」加賀に撃たれた戦艦棲鬼は、腹部に穴が空くほどの致命傷を負い、海上に倒れた。

 最後の行動の意味がわからない、と彼女が言うので、戦艦棲鬼は霞んでいく視界の中で、月の光を反射して青白く光っている女に向かって、血の味の広がる口を使って呟く。

 

「俺は臆病だから......部下を死にに行かせるなんて............出来ない......」

 

「だから......自分が死にに来たのさ......」

 

「そんな......」

 

「沢山.........嘘をついてきた...............これは本当さ.........」

 

「ッ......!!」

 

 自殺しに来た、とのたまった相手を、加賀はその長い髪の毛を掴んで無理矢理立たせると、怒気のこもった低い声で罵倒する。

 

「嘘よ。じゃあ私は、自殺志願者を殺したということなの?」

 

「本当だと......」

 

「嘘だと言いなさい。私を一度殺した貴方は......あのときの貴女はもっと狡猾で心の読めない......」

 

 加賀がそう言ったとき。

 戦艦棲鬼は、血が抜け、疲労や体調の悪化をものともしないような、満面の笑顔を加賀に向ける。

 

「......お前に...ら.........任せ......れる」

 

「........................?」

 

「全.........は......私の死で...わ............こと」

 

 喉に血が詰まっているせいでのくぐもった声と、そもそも女が衰弱しているせいで小さい声量、そしてその内容についての謎に、加賀が顔をしかめる。

 

「余計な.........罰...は......私が...............被れ............ぃ.........」

 

 

「......後は.........任せる...............俺よ......も.........立派な貴女.........ぃ..................」

 

 

「................................___________」

 

 

「...........................」

 

 一体、こいつは何を考え、企てていたんだ。ついにわからず仕舞いだなんて......。

 事切れた戦艦棲鬼の体をゆっくりと水面に寝かせ、そんな事を加賀は思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

__________________________

 

本土への進行作戦。そんな物は最初から予定していない。

全ては私の大切な部下(ともだち)を生かすため。

先立つ不幸をお許し下さい。全てはお前たちのために。

このプランは俺の死で完成する。

 

 次回『手紙』。 一足先に、自由になって待っている。

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