資源再利用艦隊 フィフス・シエラ   作:オラクルMk-II

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毎度お馴染み、遅れを取り戻すための連投です。


コードネーム・パープルフィアー

 

「なんだお前は......またお前も紛い物か?」

 

「紛い物?どういう意味でしょうカ?」

 

「お前も深海棲艦もどきかと聞いているんだ!!」

 

「もどき......違いますヨ。私は深海棲艦でス。今は......ネ」

 

 言い切ったな......こいつ。自分から艦娘じゃないなんて言うとはな。

 ウツギが気絶した摩耶を背中に抱えて、自分達を助けに来た艦娘......彼女曰く深海棲艦の、今目の前でレ級と喋っている春雨を見ながらそんなことを考える。春雨の返答を聞いたレ級が続ける。

 

「ふん、艦娘の味方をする深海棲艦だと?ふざけたやつめ!」

 

「どうとでも言ってくださイ」

 

「まあいい、後ろの紛い物ごと片付けてやる!!」

 

 そう言うと、レ級が春雨に向かって砲撃を行う。

 普通に考えれば春雨は駆逐艦、戦艦の砲撃などまともに当たれば一発でも致命傷になる。攻撃をかわしながら、一体どんな戦い方をするのだろうか。そう思いながら少しウツギが春雨たちから距離をとって砲撃戦の様子を見守る。

 すると春雨はその場から動かず、ただじっと自分に向けて撃たれた砲弾を眺めていた。一体何をやっているんだ、死にに来たのか!?ウツギが思ったときには春雨の姿は砲弾の爆風の中に消えた。

 

「っ......?なんだこいつは?」

 

 あまりにあっけなく砲撃戦(と呼べるのかはあやしいが)が終わったことに、レ級がそう溢す。この言葉にはウツギも同意見で、こいつはいったい何をしに来たんだ......と思った時だった。爆風が晴れて

 

 

 中から満面の笑みを浮かべた春雨が出てくる。

 

 

 

「うっ......ふっ......あハッ」

 

「あはははハハははハハハ!」

 

「ひャアアアあああッはっハッはっハハハヒヒヒはハハはは♪」

 

 

 

「ッ!?......何がおかしい!!」

 

 煙が晴れてから、いきなり狂ったように春雨が笑いだす。するとそれを見たレ級は、いままでウツギが見たことがないような少し焦った表情を見せると、砲を春雨に向けて何度も発射する。

 

「気でも狂ったのか、この生ゴミめ!!」

 

 連続して三発ほどレ級が春雨に砲撃を当てる。しかし、また煙が晴れたときの春雨は至って元気そうに笑顔を浮かべている。 もっともその笑顔は口角を不自然につり上げた不気味なものだったが。

 なんでだ。なんでこいつはピンピンしているんだ。今まで俺の砲撃を受けて大丈夫だったやつなんて見たことがない。レ級は内心動揺しながら、しかしまた懲りずに春雨に砲弾をお見舞いする。

 

「っこれで!!」

 

「っ!!」

 

 四発目、最初の砲撃から数えれば五発目の砲弾が春雨に当たる。

 

 ごしゃり、と鈍い音が辺りに響く。

 

 砲弾は爆発せずにそのまま春雨の顔面に当たり、そして春雨は砲弾が当たった頭を上に向けて、だらりと両手を後ろに垂らし、胴の部分は簡単にいうとイナバウアーに近い体制で仰け反り、しかも少し水に体が沈み混んでいるようにも見える。まさか......死んだのか?ウツギがそう思っていると、レ級が口を開く。

 

「......ははっ、なんだ、もう死んだか!つまらんや.........」

 

「キひっ......♪」

 

「なっ!?」

 

 バカな、ありえない。こんなに打たれ強い奴が居るわけがない。レ級は困惑していた。

 いままで戦ってきたやつらにここまで体が頑丈なやつがいたか?いや、居ない。そもそも自分の砲撃をまともに受けて大丈夫だなんて深海棲艦の姫級ぐらいしか......「姫級」?まさか......!!

 レ級が動揺していると、春雨が形容しがたい不気味な笑顔を浮かべて喋り始める。既に辺りは日が傾き、少し薄暗く、そんな景色の中で春雨の紫色の瞳が妖しく光る。

 

 

「アァ......痛()ナァ......トッても......♪」

 

 

「痛イ......きヒッ......うットりシチゃウ♪」

 

 

「モット......遊ボう......ヨ......?」

 

 

「っ!!ひっ.........!?」

 

 瞬間、レ級の背筋に悪寒が走る。なんだ......この感覚は......、体の震えが止まらない......?レ級は生まれて初めて感じる「恐怖」という感覚に驚き、震えながら思わず春雨から距離を取ろうと後退りする。春雨は、後ろに仰け反った体をゆっくりと前に持ってきて続ける。

 

 

「......なンデ......逃ゲるノ......?」

 

 

「はぁーっ、はぁーっ、はぁーっ!!ふうぅっ!!」

 

 

「ア......ハッ......♪」

 

 

「焦ッテるノ?......カワ()イ♪」

 

 

「モシ......カしテ.........」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       怖      イ       ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アはッ......♪怖イ......?僕ハ......淋し()......」

 

 

「淋シい淋シイ淋シイ淋シイ淋シイ淋シイ淋しイ淋シイ淋シイ淋シヰ淋シイ淋シイ淋シヰ淋シイ淋シイ淋しヰ淋シい淋シイ淋シい淋シイ淋シイ淋シイ淋シイ淋シイ淋しイ淋シイ淋シイ淋シヰ淋シイ淋シイ淋シヰ淋シイ淋シイ淋しヰ淋シい淋シイ淋シイ淋シイ淋シイ淋シイ淋しイ淋シイ淋シイ淋シヰ淋シイ淋シイ淋シヰ淋シイ淋シイ淋しヰ淋シイ淋シイ淋シイ淋シイ淋しイ淋シイ淋シイ淋シヰ淋シイ淋シイ淋シヰ淋シイ淋シイ淋しヰ淋シイ淋シイ淋シヰ淋シイよウ~♪」

 

 

 

 

「ダカら......モっト......遊ぼウ......?」

 

 

 

 

「うっ......死ねえええええ!!」

 

 春雨の言葉でパニックに陥ったレ級が砲を撃とうとする......が、砲弾が発射されない。ウツギたちと持久戦を行ったことが起因しての弾切れだ。

 

「何......で...弾が出ない!!??」

 

 もう発狂寸前まで精神的に追い詰められたレ級が泣きそうな顔でそう言う。いつものレ級なら、砲弾が切れたら、ここですかさず相手に近づいて得意の肉弾戦に持ち込んだだろう。しかし既に思考回路が「恐怖」と「危険」という単語に満たされた彼女は、それをせず、身を翻してその場からの逃走を敢行した。

 

 

「逃ゲル......ツまんナイ......くヒッ......♪」

 

 

「クソックソックソッ!!殺してやる!!殺してやるからな!!!!」

 

 

 そう捨て台詞を吐いて、レ級は夕闇の水平線に向かって、自分が出せるありったけの全速力で逃げていった。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふうぅ~、やりましタ!......あっ、はじめまして、駆逐棲姫と申しまス!」

 

 レ級が逃げたあと、春雨がウツギとアザミの方に体の向きを変えるとVサインをしながらそう言ってきた。

 

「何だったんだ......今のは......」

 

「エ?」

 

「さっきまでと随分雰囲気が違うじゃないか」

 

 ウツギが......内心びくびくしながら春雨に聞く。正直なところ、ウツギも目の前でレ級を追い払ったこの艦娘が怖いと思っていたのだ。隣にいたアザミも表情にこそ出ていないが顔に汗が浮かんでいるのがウツギから見えた。彼女も怖かったのだろう。

 

「えーと、言ってることがよくわかりませン」

 

「さっきの不気味なしゃべり方について聞いているんだ」

 

「あ~アレですカ。ただのハッタリですヨ」

 

 にんまりと、春雨が先程のまるで何を考えているか知れない不気味な笑顔とは正反対の可愛らしい笑顔でそう返答する。もっともついさっきの様子を見たウツギにはこの笑顔も表情通りには受け取れなかったが。

 あのレ級が恐怖でまともに考え事すらできなくなったアレが演技だと......?ウツギが驚く。はたから見ればどこからどう見ても理性のタガが外れた狂人の言動そのものだったからだ。......そして気になった事がまだあったのでウツギが春雨に質問する。

 

「どうして芝居うってまであいつを追い払ったんだ?そのまま攻撃すれば倒せただろう?」

 

「あぁ、えート......恥ずかしいんですけど、私体が頑丈なだけで、強くはないんでス......だから倒せないんだったら追い払うしかないなぁ~なんテ......」

 

 春雨がにっこり笑ってそう返す。ウツギは、一先ず自分達は助かったな、と溜め息をついた後、他の分隊の旗艦に無線で、帰投する旨を伝えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お帰りッスぅウツギ!あれ、誰それ?」

 

「挨拶は後だ。摩耶が怪我をしてるんだ、ツユクサ、頼む」

 

「え、ちょっ、とと、入渠させてあげればいいんスか?」

 

「そうだ。頼めるか?」

 

「まぁかされたッスぅ!!」

 

 すっかり日が暮れた頃に、摩耶を背負ったウツギ、アザミ、そして春雨......駆逐棲姫が鎮守府に帰艦する。少し疲れすぎたな......自分も入渠させてもらうか、とウツギも入渠ドックに向かおうとしたとき、もともと第三鎮守府に居た駆逐艦の艦娘たちがウツギとアザミのところに群がってくる。

 

「ウツギさんお帰りなさいなのです!!」

 

「アザミさんご飯作ってよ~」

 

「駄目だよ!アザミさんは先に僕がご飯作ってっていったんだから!」

 

「はわわ、喧嘩は駄目なのです!!」

 

「そうよ、先にウツギさんが私にクレープ作ってくれるって言ってたんだから!」

 

「わ、わかった、すぐに食堂に行くから、群がるな」

 

「邪魔......苦しイ......」

 

 飯は作ってやるから食堂で待っててくれ、とウツギが言うと「はーい!」と声をハモらせて、駆逐艦の艦娘たちがぞろぞろと出撃待機所から出ていく。その様子を見ていた天龍が二人を茶化すようにこう言ってきた。

 

「ずいぶん人気者じゃんお前ら。何やったんだよ?」

 

「ここの食堂が得体の知れない肉の缶詰めしかあいつらに飯を与えてなかったから、前にアザミと勝手にキッチンを借りて料理を振る舞ったんだ。そしたらこのザマさ」

 

「ご飯......大事......元気......無くなる......一大事......」

 

 「そいつぁ災難だったなぁ」と言って天龍がにんまり笑う。「笑い事じゃない、今じゃ給仕係もどきだ」と、ウツギが天龍を睨みながら言うが、しかし「へいへいそりゃあ大変でしたね~」と言って天龍はどこかに行ってしまった。

 休めるのはまだまだ先になりそうだな......ウツギは艤装を降ろすと、アザミと一緒に溜め息をつきながら食堂へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 

今までで最高のコンディションだった。

でも、自分は何も......二人の足を引っ張っただけじゃないか。

レ級に完敗したウツギは戦うためのモチベーションを失う。

そんな様子を見かねた摩耶が、ある提案をウツギに持ちかける。

 

 次回「次の準備」 一人じゃない。仲間が居る。




おまけ...チューン工房N ひみつCM

南方棲戦姫(暗闇で眼だけ)「シーッ!......うーんと、そこのアナタ。」
南方「武器の改造を.......えー、したいの?でも、資源も無いしメカニックの知り合いも居ない?」
南方「ならウチに来ない?チューン工房N。」
南方「フルオート連射チューンから、消音、炸裂弾、グレネードオプションまでアナタ次第、しかも早くて安くて、そしてなんといってもヒミツ厳守。」
南方「普通の明石ちゃんがやってくれる改造なんかに満足しないでさぁ~思い出してよ~チューン工房N。」
南方「勿論連絡先は、ヒミツ♪」
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