資源再利用艦隊 フィフス・シエラ   作:オラクルMk-II

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第二章完結!


事後処理

 

 

 

 

「う~ん美味しい~♪で、これはどういう状況なのかしら?」

 

「謝罪パーティーだ」

 

「ふ~ん。まあ私は美味しいご飯さえ食べられればそれで良いんだけど」

 

 南方棲戦姫......陸奥が、自分がここに所属していた頃ですら使ったところを見たことがないという第三鎮守府の宴会場。そこのテーブルに置かれた特大の皿にこれでもかと盛られたサラダを食べながらウツギに質問する。

 

 脱走した天龍の一味は全員身柄を拘束。主犯の天龍は隠し持っていたと思われる「深海棲艦化手術実験」のサンプルデータを組み込んだ自身の艤装と運命を共にして爆死。鎮守府に残されていた資料以外は全て灰になってしまった。

 そして彼女が根城にしていた執務室から見つかった資料によって事態は急変する。なんと元々この鎮守府の指揮をとっていた「萩本(はぎもと) 秀介(しゅうすけ)」提督は既に他界、彼が入院していた事になっていた軍病院と第三鎮守府は共同で実験を行っていたという。

 これを知った緒方提督はただちに大本営から部隊を派遣させ、鎮守府......天龍との癒着が明るみになった病院を仕切っていた関係者一同を拘束、今はどのような処罰を下すかの調停中だという。

 そして今。緒方提督が自ら自腹を切って開催した、今回の騒動......病院の地下に巧妙に隠された実験施設から救助された、不当な理由により実験に巻き込まれた被験者たちへの謝罪の意を込めた宴会の最中だった。ウツギは自分が座っていた席から、広い宴会場を眺める。よくよく目を凝らしてみると、部屋の隅には泣きながら用意された料理に手をつけている深海棲艦......被験者の艦娘たちが集まっている。

 

「こんなに居たんだな......被験者は......」

 

「うん。まだ少ない方だけどね......私が居たときは、戦災孤児まで引っ張り出してたから」

 

 陸奥が特に何も考えていないような至って普通の表情でウツギに教える。

 

「あいつに昔何があったのかは知らないけど、とにかく人間嫌いだったからね~。そのお陰で私もこのザマだし?」

 

 そう言った後に陸奥は、自分が着ていた胸元に「betrayer(裏切り者)」と刺繍されたスタジャンを弄りながら、ウツギに微笑んでくる。ウツギは相変わらず悲壮感漂うことを言うわりにはいつも楽しそうに喋るやつだ、等という感想を抱きながら、ちょうどいい機会だ、と陸奥に聞きたいことがあったのと、重い話題をそらすために質問する。

 

「春雨のこと、知ってるよな」

 

「うん?そりゃもちろん知ってるけど」

 

「あいつのハッタリ術は......アレは自分からやりはじめたことなのか?」

 

 初めて彼女の演技を見たとき、かなり手慣れているようなものを感じてどこか引っ掛かっていたウツギが陸奥に聞く。すると......

 

「なんのことかな?ちょっとお姉さんわかんないかなぁ~......」

 

 話題を振ったところ明らかに不自然に陸奥が視線を逸らす。これは絶対何かあるな。そう確信したウツギが目を細くしながら陸奥に問い詰める。

 

「そんなにあからさまな反応されるとますます気になる」

 

「いやぁ......その......」

 

 いつも飄々としている陸奥が珍しくどもりながら答える。

 

「春雨ちゃんがね、「こんな体にされてどうしたらいいの」って言ってきたことがあったの。その時に「じゃあその見た目をフル活用できる何かをやろうよ」って、ちょっとピンチの時に相手を怖がらせるような演技をおふざけで教えたんだけど」

 

 貧乏ゆすりをしながら、落ち着かない様子で目をキョロキョロ動かして陸奥が続ける。

 

「まぁ......結果から言うとね、あの子それにハマっちゃって......。実用できるどころか、ちょっと私も腰抜かしそうなぐらい演技が上手になっちゃって......」

 

「お前が原因か......」

 

 呆れた、と陸奥の答えを聞いたウツギが溢す。

 ......特にこのまま宴会に参加していてもやることがないな。そう思ったウツギは席を立ち上がり、宴会場を出ようとする。

 

「どこ行くの、ウツギちゃん?」

 

「海でも眺めてくる。それだけだ」

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

「......すぅ~はぁ~」

 

「なにやってるんだ?」

 

「ひゃいっ!?なんだウツギッスか」

 

 外に出たウツギが、いつかに自分が座った堤防のある場所に行くと、ツユクサが先にその場所で海を眺めていた。ウツギはツユクサの隣に座ると、夜の海を見ながら横のツユクサに話し掛ける。

 

「お前がすぐに宴会を抜けてきたから追いかけてきた。気分は晴れたか?「アイツ」をやったのはお前なんだろ」

 

「でも、結局やる前に自爆されちまったッス」

 

「......そうか」

 

 友人を殺された怒り......か。自分も同じような状況に立たされれば怒るのだろうか、と出撃前は自分もあまり見たことがない無表情になっていたツユクサを思い出しながら、ウツギがそんな事を考える。

 

「あれ、先客ですカ」

 

「ウツギちゃんにツユクサちゃんかも、何してるの?」

 

「......どんどん人が増えてくな」

 

 春雨と秋津洲というあまり接点の無さそうな組み合わせの二人組がやって来たのを見てウツギが言う。

 

「私は日課で来ただけですヨ。ここの夜景が綺麗なのデ」

 

「秋津洲は仕事が終わったから遊んでたかも。そしたらさっきそこで春雨ちゃんに会って」

 

 春雨は相変わらずの優しげな笑顔で、秋津洲は若干目の下に隈ができているがあまり問題なさそうな様子でそう言いう。

 四人横並びで海の方向を向いてから数分。誰も喋ろうとしない中で、ウツギが口を開く。

 

「春雨」

 

「はい、なんでしょウ?」

 

「どうしてお前はいつも笑顔なんだ。戦場でニコニコしてる奴なんて少数派だろう?」

 

 ウツギの質問を聞いて、ほんの少しだけ口角を下げた春雨が答える。

 

「笑顔の理由、ですカ」

 

「簡単な話ですヨ」

 

 

「死んだ姉さんに言われたんでス。「笑顔を絶やさないで。楽しくても辛くても、笑っていれば良いことがある」っテ。」

 

 

「そしてこうも言われたんでス。「たとえ僕が死んでも笑い続けて。今を精一杯楽しんでいるのを見せて。落ち込んでたりしたら呪っちゃうぞ」、ト。」

 

 

「......教えてくれてありがとう」

 

 話を聞き終えたウツギが、視線を同じく話を聞いていたであろうツユクサに移す。目線の先の彼女は

 

 

今出来る限りの最高の笑顔で、涙を流していた。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

 この約一ヶ月間。色々な事があった。

 

 私は忘れない。満足そうに逝ったレ級の事を。

 

 自分は忘れない。錯乱しながら凶器を振り回し、追いかけ回してきたあいつらを。

 

 アタシは忘れない。死に際まで呪詛を吐き続けた「アイツ」を。

 

 「アイツ」は大勢の人間を巻き込んで、それにも関わらず逃げ切ってしまった。それは許されることではないのだろう。

 

 しかしこの鎮守府を直して......治していくのは自分達の仕事ではない。

 

 帰るか。自分達の居場所へ。

 

 

 

 

 

 

 

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 数日後。一ヶ月ぶりに ツユクサと天龍は半月ぶりほどだが 第五鎮守府に帰ってきた四人は、皆それぞれの生活に戻っていた。定期的な近海警備、民間の輸送船の護衛、四人の遠征前と何ら変わらない任務をこなす日々だ。強いて言えば「レ級を撃破した功績」のおかげで少し待遇が良くなった程度だろうか。

 

「提督、終わった書類は置いておくぞ」

 

「おう、いつも早くて助かる」

 

 執務室。すっかり定期秘書などというシステムが廃止されて、固定秘書にされたウツギがデスクワークを終えて読書に移る。するとその時、ウツギたちがいない間に深尾が勝手に執務室に取り付けた固定電話が鳴る。

 電話を終えた深尾によると、あと少しでここに前から打診していた新しく配属される艦娘が来るらしい。今の戦力情況を考えるに、多分戦艦か空母かな。そんな予想をしながら、ウツギは身支度を整えて深尾と執務室を出る。

 

 

「いやぁ~どんな子が来るんだろね?キャラ被りは勘弁してほしいな!」

 

「お前みたいな変人と被るなんてよっぽどだな」

 

「木曾っちヒドス」

 

 配属される艦娘の顔を一目見ようと、鎮守府の外に所属していた艦娘一同と提督である深尾が集まる。ほどなくして1台のセダン車が敷地内に入ってきて停車すると、運転席から出てきたのは......秋津洲だった。便利屋か何かとして使われているんじゃないだろうか。ウツギが失礼な事を考えていると、深尾と秋津洲は敬礼したあとにお互いに話始める。

 

「責任者の深尾です」

 

「第一横須賀鎮守府所属、庶務課主任の秋津洲かも!」

 

 そんな役職だったのか。と言うよりもそんな役職があるのか、とウツギが思っていると、話を終えたのか秋津洲が乗ってきた車のドアを開ける。出てきた艦娘は......

 

「「元」白露型駆逐艦五番艦の春雨です、はイ。雑用はお任せください……でス!」

 

 お前だったのか......。と、後ろに居た球磨と木曾が呆けている中でウツギが思っていると、もう一人の艦娘が車から降りて挨拶をしてくる。

 

「駆逐艦、若葉だ」

 

 若葉、と名乗った艦娘はつかつかとウツギのところに歩いてくる。何だ?とウツギが思っていると、若葉が口を開く。

 

「久しぶりだな。ウツギ」

 

「......何だと?」

 

 全く面識のない相手から久しぶり、と言われて動揺するウツギを見て、けらけらと笑いながら「若葉」が続ける。

 

「んふふフ......そうだな。わかるわけがないか。じゃあ、教えよう」

 

 

 

 

「俺だよ。戦艦レ級だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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新たな仲間を二人加えて再編成されるフィフス・シエラ。

自らをレ級と名乗る若葉の正体とは......

そして第五鎮守府の艦娘たちは上層部から褒賞として、

リゾート施設「ポクタル・アイランド」へと招待されるが......

 

 次回「楽園までの距離」 次の戦いが、自分を待っている。




第3章へ続きます。ちなみに2章は予定より長くなってしまいました。
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