資源再利用艦隊 フィフス・シエラ   作:オラクルMk-II

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第三章へと突入です。


3 ポクタル・アイランド
楽園までの距離


 

 

 

 

 

「......本当に信用して良いんだな」

 

「くくくク......当たり前だ。逃げるつもりならとっくにそうしているさ......それに、こわ~い見張りが居るからなァ......」

 

「別に......何もなければこちらからは動きませんヨ」

 

 鉛色の空の下、海上を駆ける六つの人影がある。先頭からウツギ、若葉、春雨、漣、ツユクサ、アザミの六人で新しく再編成されたシエラ隊の面々だ。

 回収されたレ級の死体と、また各地から調達された艦娘の死体を使って作られた「四人目の資源再利用艦娘」。それが若葉の正体だった。そして春雨は単純に第五鎮守府の戦力の増強と合わせて、若葉の監視役として派遣されてきたらしい。

 どうしてこいつは既存の艦娘と同じ容姿なのか。それについては建造した研究所ですらわかっていないらしく、しかも解析の結果容姿だけではなく本人の艦娘としての性能も「駆逐艦 若葉」に準ずるものらしい。秋津洲から聞いた説明を思い出しながら、ウツギは自分の後ろでニタニタとなんとも薄気味悪い笑みを浮かべている女を見る。因みに「外見と性能が若葉だから若葉と呼ばれている」だけであって、本当なら書類上は「資源再利用艦 四番艦 サザンカ」と言う予定だったらしい。まぁどうでもいいか。

 考えても仕方がない、それに万一此方を攻撃しようものなら春雨が何とかするだろう。ウツギがそう結論付けたとき、自分の暁の艤装の、破損してからまた取り寄せたCPUからアナウンスが流れる。

 

『熱源反応感知。スキャン......完了。戦艦Ta1、軽巡To2、重巡Ri1、駆逐Ha2』

 

「来たか。元は味方だがやれるのか?」

 

「んふふフ......味方、ねぇ。味方と思ったことはないな。あんな雑魚どもは......」

 

「戦艦相手に雑魚呼ばわりッスか......」

 

 ウツギの問いに顔に薄ら笑いを貼り付けた若葉が答える。はたから見ればビッグマウスとも取れる発言にツユクサが顔をしかめる。

 

「ねぇウッチー、こいつ本当に大丈夫なの?」

 

「面倒を見ろと言われたんだから仕方がない。......来るぞ」

 

 漣が若葉のことをちらちら見ながら聞いてくる。漣の疑問は当然と言えるものだったが、ウツギは上の命令なんだから仕方がない、と切り捨て、六人は自分達に向かってくる敵に向けて二人ずつ散開して戦闘体制に入る。

 

「私が盾になりまス。後ろからどうゾ」

 

「......良いのか?」

 

「平気ですヨ。体だけは丈夫ですかラ!」

 

 春雨はウツギの前に出ると、砲撃してきた相手の攻撃を何も持っていない両手で弾きながら、宣言した通りに盾役になる。まぁ、本人が大丈夫と言うなら問題ないか。そう思ったウツギは言われた通りに大人しく後方から敵の戦艦に向けて砲撃を行う。

 

 

 

「うふふフ......さぁ、楽しい殺し合いの時間だ......♪」

 

 

 

 若葉......レ級のそんな一言は、砲撃の音で掻き消されて、他の艦娘達の耳には届かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「徹底的にやっちまうのね!」

 

 経験積んでレベルアッポしたのはウッチー達だけじゃないのヨン!ウツギたちと離れていた一ヶ月間、多くの実戦をこなした漣はそんな事を考えながら、ウツギから借りたスナイパーライフルを適当に撃って敵の軽巡の動きを鈍らせる。そして......あまり信用していなかったが一応援護してくれていた若葉からの砲撃に魚雷を乗せて発射し、相手にとどめを差す。

 へぇ~こりゃすごく使いやすいや。予想以上に反動や銃身のブレが起きないライフルに感心しながら、相手の撃沈を確認した漣が他の敵に矛先を変える。ツッチーとあっちゃんは......大丈夫そう、ウッチーちょっちキツそうね、手伝うか!漣は春雨の後ろで戦艦タ級を相手にしていたウツギの援護に向かう。

 

「ウッチー手伝うヨン!」

 

「助かる。流石に戦艦相手はキツいからな......」

 

 前で、まるでゴールキーパーのように動き回って砲弾を弾いて、此方に被害が出ないように配慮していた春雨にウツギが呼び掛ける。

 

「春雨、防御はもういい。攻撃に移ってくれ」

 

「了解!」

 

「っしゃア!沈めるゥ!チームワークでぇぇ!!」

 

 突然叫び始める漣に、いったい何事かとウツギと春雨が唖然とする。が、すぐに二人は気を取り直し、三人で戦艦に砲を向ける。狙いが甘い相手の砲撃を掻い潜って漣がライフルで牽制、そこに春雨が左腕をすっぽりと覆う形状の連装砲を撃ち込み、最後にウツギが魚雷を打ち込んでダメージの蓄積した敵戦艦を撃沈する。

 

「っ......。終わったな。残りは......重巡が一つと......ツユクサ達がやりあってる駆逐が一つだな」

 

「んじゃさ、重巡は囲んでボコ殴りにしちゃおうよ」

 

「この若葉にやらせろ」

 

 戦艦を沈めた後に、砲に弾を込め直していた三人に若葉が割って入る。

 

「やらせろって......アンタ駆逐艦ヨ?重巡相手に一人って......」

 

「問題ないな......あんな雑魚一匹、左手だけでも殺せる」

 

 にちゃり、と音がしそうな獰猛な笑みを浮かべて、心配そうに聞いてきた漣に若葉が「なんの問題もない」と返す。確かにレ級時代の能力があれば重巡リ級一匹程度はどうにでもなるかもしれない、だが、今は駆逐艦の若葉に一人だけで倒せるだけの力があるのだろうか。そうウツギが考えていると、春雨が口を開いた。

 

「わかりましタ。どうぞ、行ってくださイ」

 

「ほう?止めないのか?」

 

「ええ、任されたのは貴女の監視だけですかラ」

 

「んっんっン......♪。そうか。じゃあ行ってくる」

 

 満足そうな顔で若葉は左手に持っていた砲を背中に仕舞うと、全速力で少し離れた場所に居た重巡目掛けて一直線に海を駆けていく。ほどなくして若葉に気付いたリ級が、ターゲットをツユクサからより近くまで接近してきた若葉に変更して砲撃を開始する。

 狙いが甘いなぁ、まるでシャボン玉だ。そんな感想を抱きながら、若葉は踊るように砲弾を避けてリ級に接近する。近づくにつれて、何か喋っているリ級の目と鼻の先まで近づいた若葉が砲を持っていた右手で相手を殴り付けようとする。が......

 

「<¥>[¥'>[ーーーーーッ!!」

 

「......うん?」

 

 相手に拳をかわされた若葉は

 

 そのまま何かを叫ぶ目の前のリ級が持っていた艤装の生物の口のような部分で腕を噛まれる。

 

「ぐっ......ぅっ!!」

 

 激痛に顔を歪める若葉に、すかさずリ級が砲を向けて至近距離で目の前の艦娘を沈めようとする。しかし

 

「くっ......ふふふフ......」

 

 

 

 

  

 

 

 

             死  ね(よ わ い)

 

 

 

 

 

 

 

 

 思い切り振りかぶって放たれた若葉の左手のパンチが

 

 リ級の胴をぶち抜く。

 

「ふん、脆い体だ......この程度で手がめちゃめちゃじゃないかぁ......」

 

 自分の力に耐えきれず、あり得ない方向に骨が折れた自分の手を見て、若葉が他人事のようにそう言ったあと、さらに続ける。

 

「だが......悪くない。良いね、この感触......レ級の時には味わえなかった......「自分の手が折れる痛み」なんて......んふふフ......♪」

 

 リ級の体から左腕を引き抜いて、激痛に顔を歪めるどころか笑顔を濃くしながら、若葉は初めて骨折した感想を言う。そして今度は目の前で沈んでいくリ級に向けて若葉が話しかける。

 

「楽しかったよ。リハビリにはちょうど良かった」

 

「だがなぁ」

 

 

 

 

「蟻が恐竜に勝てると思ったか?」

 

 

 

 

 若葉の言葉は、既に絶命したリ級の耳には届かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

「な、何やったんですかこの腕!?粉砕骨折ですよ!?」

 

「敵をぶん殴っただけだ......自分の体を自分の意思で傷つけて何が悪い?」

 

「大アリです!!入渠で治るとはいえ自分の体ぐらい大事にしてください!」

 

 帰還して早々に、港で出迎えた明石に、若葉が骨がぐちゃぐちゃに折れて所々皮膚を突き破っている状態のとても直視できないような左腕を見せたところ、「無茶するんじゃない」と説教を食らう。明石が若葉を叱っている後ろで、漣がウツギに話しかける。

 

「すごかったね......アイツ。前はもっとヤバかったってこと?」

 

「......かなり心強い味方が出来たかもしれないな」

 

 若葉の戦いを後ろから見ていた漣とウツギが......特にウツギは前と何ら変わらない彼女の戦いぶりに驚いていた。駆逐艦の拳一発で重巡を倒せる......か。敵じゃなくて良かったな。そうウツギが思っていると、がちゃり、とドアを開けて誰かが部屋に入ってくる。球磨だ。

 

「うっちゃんお疲れさまだクマ......うぉっ!?何その手!!?」

 

「あ、球磨さんこんにちは。聞いてくださいよ、この子敵を殴ったら腕の骨が折れたって言うんですよ!?」

 

「それ一体どんな馬鹿力で殴り付けたんだクマ......」

 

 ウツギに労いの言葉をかけようとした球磨が、若葉の「リ級に噛みつかれて血だらけの右手」と「粉砕骨折でぐにゃぐにゃの左手」を見て驚くが、明石から話を聞いてすぐに落ち着く。そして落ち着いた球磨は、手に持っていた何かのチケットをヒラヒラさせる。なんの真似だ?とウツギが思っていると、ツユクサが球磨に質問する。

 

「なんスかそれ?商品券?」

 

「ふっふっふ~......ツユちゃんお目が高いクマ~。これは......」

 

 実はお疲れさまを言いに来たんじゃなくて、これを皆に渡しに来たクマ~。と言って一呼吸置いてから......

 

 

 

 

 

「上層部から褒賞として届けられたリゾートホテルの宿泊券だクマアアァァァ!!!!」

 

 

 

 

 

 目をキラキラさせながら、球磨はそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 

その昔、ある大企業が島から造り上げた超大型リゾート「ポクタル・アイランド」。

レ級撃破と第三鎮守府の天龍を処罰した褒賞として、

第五横須賀鎮守府に所属する全員がそこでの休暇を言い渡される。

しかし彼女たちを待っていたのは......

 

 次回「休息」 真面目と、狂気の、ヘブン。

 




二章は結構重かったので三章は軽くしてぇなぁ~(遠い目
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