資源再利用艦隊 フィフス・シエラ   作:オラクルMk-II

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兄貴いいいいい!(鉄血のオルフェンズを見た感想


妄執の行き先

 

 

 

「良いことを教えてやる」

 

「自分はお前の部下を、二人やった」

 

 ウツギの発言に、装甲空母姫が一瞬目を丸くしたかと思うと、次には体を震わせ怒りを露にしていた。

 

 季節の変わり目。ここ最近から肌寒くなり始めた今日この頃、月明かりがぼんやりとウツギと装甲空母姫を照らす。ウツギは今、気温が一段と低くなったこの時間帯でも、ぐっしょりと汗に濡れていた。

 相手からの殺意、相手からの気迫、夜の闇、自ら放ったハッタリ、自分が相手と一対一。全てが悪い方向に向かっている。ウツギのそんな考えと連動して引き起こされる冷や汗が、激しく動き回ってかいた汗に上乗せされる。

 ウツギの発言に、静かに怒る装甲空母姫が返す。

 

「そうか」

 

「.........」

 

「なら」

 

躊躇(ちゅうちょ)なく殺せるッ!!」

 

 そう言うと、装甲空母姫は猛然と、眼の赤い光で残像を描きながら突進してきた。

 第一段階は成功か。さて、どこまで時間を稼げるか。

 装甲空母姫がウツギの挑発に乗ったことにより、突然嗚咽(おえつ)を漏らしてその場に倒れた若葉が立ち直るための時間稼ぎの策が、とりあえずはうまくいったことにウツギが内心ニヤリと笑う。が、同時に彼女には余裕は無かった。

 魚雷は弾切れ......背面砲は壊れた。ハープーンもこれだけ動き回る相手に当てる自信は無い。......ナイフと三点バーストだけか......。

 相手の剣の必中の間合いを避けて、機関部の出力を最大にして後退するウツギが考え事をしながら左手を右手に添えて砲撃を行う。

 

「逃げるなぁッッ!!我に貴様を殺させるォォ!!」

 

「っ......どういう日本語だ......」

 

 完全に錯乱した状態で言葉遣いが怪しくなりながら、鬼のような剣幕で斬りかかってくる相手から必死でウツギが逃げる。

 こう、遮蔽物の何もない場所じゃあ不利か......追い付かれてバラバラにでもされたら笑い話にもならない......!

 ウツギはスリープ状態に入った艤装のCPUの音声入力をオンにすると、ヘッドセットのマイクを通して機械に喋る。

 

『音声入力、開始』

 

「......近くの障害物」

 

『サーチ......近くの障害物、を、ピックアップしました』

 

『距離.2000、解析......完了。タンカーの残骸を確認しました』

 

(2000か......よし)

 

「どうした装甲空母姫!お前は逃げ回るだけの女一人殺せないのか!!」

 

「調子にのりやがってええェェェ!!」

 

 いい子だ。しっかりついてきてくれよ......!

 

 ウツギの決死の「作戦」が始まった。

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

「チィッ、何処に行った......!生白い艦娘......!」

 

 挑発だというのは薄々気づいていたが......。口ばかりの雑魚めが、どこに隠れた......!!

 浅瀬に乗り上げて朽ち果てた船の残骸付近で、散々煽っておきながら暗闇に姿を消したウツギを装甲空母姫が探す。

 ふん、信条に反するが仕方がない。どうせそこに居るんだ。これで(あぶ)り出してやる。 装甲空母姫が腰から小型の単装砲を取り出して、当てずっぽうに船の残骸を撃ち抜き始める。

 

「そこに居るのは解っているぞ!!隠れたつもりか!!」

 

 三十回ほど引き金を引いて、ひとまず砲撃をやめて彼女はそう言った。しかし船の崩れる音以外は物音はせず、辺りは静まり返ったままだ。

 ......いいだろう、誘いにのってやろうじゃないか!!!!

 

 

 # # #

 

 

 

 落ち着け。集中しろ。機会は一度きり。これを逃せば自分は死ぬだけだ。

 先程の装甲空母姫の砲撃で頬から血を流し、肩すれすれを砲弾が掠めたウツギが、ひたすらじっと敵の到着を船の残骸の中で待つ。

 

 どこから入ってくる。右か、左か。

 

 座礁船の、浸水した貨物室と思われる場所でウツギが左腕に残されたハープーンガンを構える。

 

『出てこないのならこちらから殺しに行ってやる!!』

 

 しめた。そうだ、来い。

 ウツギが外から聞こえてきた女の声に、より一層感覚を研ぎ澄ませてその時を待つ。そして、装甲空母姫は、

 

 

ウツギの予想に反し、船の天井を突き破って彼女の目の前に降りて入ってきた。

 

 

「そこっ!」

 

「何だっ!?」

 

 

 ウツギが、背中を向けていた装甲空母姫目掛けて、ハープーンを射出する。

 

 (もり)状の弾頭は女の頬を掠めて、錆びて朽ち果てた船の壁に穴を空けて飛んでいった。

 

 

 終わった。

 

 

「しまっ......!?」

 

「ふふっ、ふふはははは」

 

 

 

「死んでしまえよおおおお!!」

 

 

 

 起死回生の一撃が不発に終わり、呆然としていたウツギが装甲空母姫の回し蹴りをまともに受けてしまい、船の壁に強かに背中を打ち付ける。

 

「うぐぅぅ......!?」

 

「あはははは!!それで終わりかぁ!?小娘えぇぇ!!」

 

 まだだ......まだ負けた訳じゃないっ!!

 装甲空母姫はウツギの腰に股がり、真っ直ぐに彼女の首もとに剣を降り下ろす。が、寸での所で、ウツギは取り出したナイフの溝で剣を受け、自分の首が()ね飛ばされるのを防ぐ。

 

「ぐっ......ぎぎ......ッ!!」

 

「 無 駄 な あ が き は よ せ よ♪さっさとくたばれ!!」

 

 まるで遊んでいるかのような楽しそうな笑顔で、女はウツギの首を貫こうと剣に込める力を段々と強めていく。

 何か、何か出来ることは......!

 段々と強まる、眼前で基地外染みた笑みを浮かべる装甲空母姫の力を押さえきれず、剣が首の皮膚を破り、肉に食い込み、ウツギの首から一筋の血が流れる。

 

「はああぁぁぁぁ?いつまで粘る気だ?」

 

「んん......ん......ぐ......!」

 

「なんだしゃべる余裕も無いか!?なら......」

 

 

 

「一思いに串刺しにしてやる!!」

 

 

 

 装甲空母姫は、ナイフに挟まった剣を引っこ抜くと、そのまま今度はウツギの額へとそれを降り下ろす。

 そして、

 

「死」

 

「うおおおおお!!!!」

 

 一瞬の隙を見逃さず、ウツギは無我夢中で右手の砲の引き金を引いた。

 

「ッ......豆鉄」

 

 豆鉄砲ごときでこの私は死なんよ!!

 そう言おうとした装甲空母姫の言葉は欠き消された。

 

 

 砲から六発放たれた砲弾は、座礁船の燃料に引火し、大爆発を起こす。

 

 

「なんだと...!?」

 

 爆発と共に飛んできた鉄製コンテナの破片が、左腕に深々と突き刺さり、同時に爆風に吹き飛ばされた装甲空母姫が苦悶の表情を浮かべる。しかし、尚も目の前の仇を抹殺しようと、彼女はまだ使える右手で剣を振り上げて、ウツギと相対する。

 

「腕は二本あるんだぁぁ!!」

 

「はぁ......はぁ......!」

 

 相手と同じく爆風で船の入り口近くまで吹き飛ばされたウツギが、焼けただれた左手を押さえながらふらふらと外に出ていく。

 

「待てよ......まっ!?」

 

 追い掛けようとした装甲空母姫は、連鎖的な爆発を起こす燃料タンクの爆煙と、それによって崩落してきた瓦礫に行く手を阻まれる。

 ......何故だ。

 何故だ何故だ何故だ何故だ何故なにもかもがこの私の邪魔をするんだぁぁぁぁ!!

 

「くそっ、くそっ、くそっ......あああぁぁぁぁ!!」

 

 執念だけで動く女は、燃え盛る瓦礫を次々に切り飛ばし、蹴り飛ばし、出口へと向かう。

 そこには、もう、部下の仇の姿は無かった。

 

「......くしょう」

 

 

 

 

 

 

「ちくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 一匹の深海棲艦の叫び声が、夜の闇に虚しく響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

装甲空母姫の猛攻を切り抜け、

ウツギは部隊員と鎮守府へ帰投する。

しかし、休む間もなく。

大本営からの緊急の依頼が舞い込む。

 

 次回「開始の合図」 無駄だ。ここは最初から楽しい地獄だ。

 




あと少しで四章終わりです。予定と大分違うなぁ(白目
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