『サインズ、配置に着いた』
『クローバーナイト展開完了』
『了解、アーマイゼ01現在待機中......』
『02チェック中......クリアー。装備に異常無し』
「壮観だな......」
「ッスね。すげー数......前の大規模より多いッス」
早朝三時、早朝とは言ったもののほぼ深夜である時間のため、真っ暗な景色が広がる海上。それを艦娘のサーチライトの白色が埋め尽くしていく光景を見てウツギとツユクサが圧倒される。
元帥直轄の超がつく精鋭部隊が五つ......他、十は下らない他の鎮守府や泊地から来たそれぞれの第一、第二、第三と連なる者をかき集めて3000......。
今回集められた自分達の味方の数を、ウツギが心の中で復唱していると、ツユクサがゴーグルを額から目元に降ろしながら口を開く。
「でもクソッタレどもより少ないッス。勝つけど。」
「............。しょうがない。上は発言を鵜呑みにすれば危険だと他にも全国に戦力を分散させていると聞いた。これだけ集まっただけでも御の字だ」
数日前から戦艦棲姫への敵意が体中から滲み出ている、淀んだ空気を纏ったツユクサの発言にウツギが返答する。
......とは言え不安に感じるのも事実か。......相手が全て駆逐艦なら楽だが。
ツユクサとの会話から数十分ほどしてから、「二万」という、なんとも実感が湧かない程の物量で攻めてくる予定の相手へのカウンターとして集められた味方に対してのコメントを、ウツギが考え事をしながら口にする。
「......相手は七倍近い物量差。どうも想像つかんな」
「一人七匹叩けばすむ話よ」
「私と神風さんが先行します。後ろから適当に撃ってください」
ウツギの発言に、アザミとはまた違った無表情で神風とネ級の高雄が、それぞれの得物である刀二本と太刀を手に、淡々とそう口にする。
「頼もしいな。貴女らは」
「別に。......事前に言った通りよ。私と墨流で道を開く。そこに貴女たちと分隊が合流して中央突破。あのニヤケ面を見つけ次第沈める。それだけ」
「時間との勝負です。迅速に動かなければ全方向から相手の増援が殺到するでしょう。それをお忘れなく」
「解ってる。フレンドリーファイアの危険は?」
「そんなもん気にせず撃ちまくりなさい。当たるやつが悪いのよ」
「んふふ......では遠慮なくやるか......」。避けれない奴が悪い発言にそう返す若葉を尻目に、ウツギは無線で離れた場所にいた......数日前に漣、天龍、球磨、木曾、春雨、時雨の六人で組まれた自分達の第二艦隊、「ガーベラ隊」の漣たちと連絡を取る。
「聞こえるか。体調は?」
『大丈夫だぜ』
『おうよ』
『僕は何ともないかな』
『問題ないク』
『問題ナッシン!これからのドンパチに
『遮んなクマァ!!』
『ははハ......』
「......ちゃんと話せ。遊びじゃないんだ」
ピンピンしているのは確かか。......もう少し緊張感を持って欲しいが、まぁ春雨も居る。そこは安心か。
球磨の応答の邪魔をして妙な単語を並べた返事をぶつけてきた漣に、心の中で苦言を呈しながら、ウツギが今回の作戦の為にと取り寄せた駆逐艦用の対艦ロケットランチャーを担いだとき。
ウツギには声だけしか今のところは知らない、海軍元帥。その低く威厳のある声とその補佐の艦娘の声が無線越しに聞こえてきた。
『熱源反応多数、来ます!』
『各艦散開!!一匹たりとも逃すな!!』
時間か。薄く明るんでいる空に視線を向け、ウツギはこの日のために用意したディスクをCPUに挿入し、機械の電源を入れる。
上手く作動すると良いんだが。
テスト無しのぶっつけ本番で使う品物に不安を感じながら、ディスクを変更したことで連動して変化した聞きなれたものとは違う機械的なアナウンスをウツギが聞き流す。
『セントウシステム......キドウ......』
「............
無理はするなよ。ツユクサ。ウツギたちシエラ隊と、予定通りに突撃する艦隊が一斉に前進する。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『......どうも。よろしくお願いします』
『なんで今さら敬語なの?普通に喋りなさい』
『......解った。神風に高雄......頼りにしている』
時間は三日前の昼に遡る。
作戦に参加し、尚且つ本人二人自身の要望で第五の部隊に入りたいと上に打診、はるばるやって来たと言う神風と高雄にウツギが挨拶をする。
わざわざここに来たのは、戦艦棲姫を倒すための助言でもしに来たのだろうか。
ウツギが久しぶりに会った、目の前で光の無い眼をした着物姿の剣豪に話をしてみる。
『どうしてここに来たんだ?』
『夕霧を取りに来た。あとツユクサって子。ここに居るんでしょう?言っておきたい事があって』
壁に寄りかかりながら携帯をいじって何かをやっていたツユクサが反応する。
『アタシッスか』
『田中の事だけど。普通の攻撃は効かないわ。それは知ってる?』
『効かない?前にウツギが取り付いた時はうまくいったが?』
効かない......?じゃあ自分がやったときのあれは何だ?。ウツギは、自分が相手の艤装に潜り込みながら火気類の一斉発射を行った時を思い出す。
すると神風の発言に、それは違うと若葉が入り、神風は無表情を崩さずに切り返した。曰く、「条件が揃ったときにだけ攻撃が通る」らしい。
『中からの攻撃でしょう?あなたが随分無茶やったって言うのは聞いたわ。でもそうじゃない。あいつは普通の距離から撃った砲弾を無力化するの。得体の知れないバリアを貼ってね』
『......それで近接攻撃という訳か』
発言をしながら、「ヤツを砲撃でツユクサにやらせるにはどうすべきか」をウツギが考える。
『砲撃で殺りたいなら、まずは......そうね、あいつを油断させることよ』
『油断......』
『あいつの艤装は......原理は知らないけど、気を抜いているときは肉質が変化するの。そして障壁も展開されない』
『そして、油断しきったあいつの』。そう言って、一呼吸を置いてから神風が口を開く。
『あいつの艤装には前に私が付けた古傷がある。そこを狙いなさい。それ以外に方法は無いわ』
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「.........右も左も敵だな。後ろ、頼む」
「応......」
百人ほどの艦娘達の中で、ウツギが、速度を出すためにと駆逐艦「
「ジャマ......するナ.........!」
「受けとれ」
「>">\#0+*13~^!!」
っ......いい武器だが弾が少ないな。これは。
早くも撃ちきったロケット砲を投げ捨て、また別の同じものを担いだウツギが、攻撃を行いながら周囲を眺める。視線の先にはツユクサが居た。
「>¥>|¥|--_|)+&&%:@!?」
「......うるせぇなァ......ぶっ殺されてェか!!」
......ツユクサが先に進みすぎか。追わなければ。
人間の言葉ではない何かを発しながら突っ込んできた相手に、滅茶苦茶に摩耶改二の砲を撃ちまくるツユクサをウツギとアザミが援護する。
恐ろしいほどの数で殺到してきた砲弾に弄ばれ、原型をとどめずに弾け飛んだ相手に、ツユクサが瞳から炎のような光を発しながら呟く。
「]_-:^:,]@,:<:!!」
「ちっ......慰めにもなんねぇ......」
「足を止めるなよ。その瞬間フクロだ」
「わかってるッスよ」
景気よく大量の砲弾やロケットを垂れ流しながら、ウツギが砲撃音に掻き消されないように声を張り上げてツユクサにそう言った時。切羽詰まった声の無線がウツギの耳に届く。
『突撃班に通達!すぐ近くに大型の熱源反応を確認!気を付けて下さい!』
「......早いな。まだ五分かそこらだぞ」
「...............。」
「やってやろうじゃねぇか......」
敵の大将が直々にお出迎え......アイツならやりかねないか。
最新鋭の高威力な武器が効いているのか、目に見えて数が減って行く敵の大群を見ながらウツギが呟く。
すると数秒後。どういうわけか自分達の近くに群がっていた深海棲艦達が後退していく。「何だ?」と、咄嗟に自分の口から出そうになった発言をウツギが呑み込む。何が起こるかは大体予想が付いたからだ。
予想通り。後退していった深海棲艦の軍勢の下の海面から、豪快に水飛沫を挙げて、巨大な艤装に乗った、以前とは違って深海棲艦らしい見た目をした「ヤツ」が出てきた。
「
「.........人間ではないんだがな」
「んふふ......面白くなってきた......」
水中から浮上してきた戦艦棲姫の第一声にウツギが皮肉を飛ばし、何処からか合流した若葉が、これまた今回のためにと刀に代わって持ち込んだ十文字槍に近い形状の
若葉は置いておくとして......流石は手練れの味方。いきなりコイツが出てきて呼吸一つ乱れていない......。
戦艦棲姫の妙な発言を右から左へ流し、ウツギ他、その場に居た艦娘全員が相手の動きを待たずに砲撃を行う。
「みんなげん」
「撃てえええぇぇぇ!!!!」
敵の言葉に上書きする、怒号に近い一人の艦娘に呼応して、他の艦娘達が砲撃を行う......
「酷いじゃないのぉ~♪人の話は最後まで聞かないと。ね?ツユクサちゃん?」
「.........」
呼び掛けられたツユクサは何も答えない。変化があったと言えば眼から発される光が強くなったぐらいだろうか。
「あれれ?無視?無視とかひどぃぃ~」
「.........」
「それにたぁぁっくさん部下の子置いといたのにやられちゃったし」
「.........だ」
「......ん?何か言った?」
ツユクサの声を聞き取れなかった戦艦棲姫が、わざとらしく右耳に手を当てて耳を澄ます動作をする。
ツユクサは口を開いてこう言った
ツ ギ ハ オ マ エ ダ
言うが早いか。全身から赤い光を発しながら、ツユクサは女の元へと突っ込んだ。
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肉片一つ残らず磨り潰す。
「二人がかり」で機械的に「作業」を行うツユクサをウツギとアザミ、そして若葉が支援する。
が、しかし。ウツギはこの戦いにある違和感を感じ取る。
それは一体何を示すことになるのか。ウツギ達はまだ知らない。
次回「烈火のごとく」 この炎、燃やし尽くすまで止まらない。
戦艦棲姫との第二ラウンド開幕。