資源再利用艦隊 フィフス・シエラ   作:オラクルMk-II

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なんか文章が捗ったのでいつもより早く投稿です。


小柄な死神

 

 

 

「おーおーやってるやってる」

 

「派手にやってんなぁおい。花火みてぇだ」

 

 ウツギがヘリコプターから狙撃を行っている頃、漣たちは指定された無人島の浅瀬で、遠方で戦う他の艦娘たちを見ながら待機していた。彼女たちの傍らには大量の燃料と修復材と呼ばれる液体が入ったポリタンクと弾薬が入った箱が積んである。

 これらを見てわかる通り、今D地点の島は補給所替わりに使われていた。いまのところ作戦は順調に進んでいるらしく、時折流れてくる無線の情報によれば、あと数十分で敵基地の制圧が完了する予定らしい。

 漣は大規模作戦と言っても、こんな裏方仕事じゃたいしたことないな。等と思っていると横の天龍が自分の肩を叩いて報告してきた。

 

「前線から連絡だ。駆逐が1、軽巡が2匹こっち来るとよ」

 

「ほいさっさ~と。あぁマンドクセ」

 

 今日初めての戦闘に少しだけウキウキしながら漣が砲を構える。数秒後、報告通りにやってきた敵に攻撃するとあっけなく爆沈した。味方から手痛いダメージを受けていたのか、所々から黒い煙が出ているぼろぼろの敵は数発当てただけで沈んでしまう。

 あ~あ、つまんねぇ~の。まるで張り合いがないなと漣が再度、この作戦は楽だ、などとと考えていると今度はツユクサから報告があった。

 

「さっちゃん、今度は味方が三人中破したから補給しに来るみたいッスよ」

 

「うぃ~っす。修復と補給ね」

 

 ツユクサの声を聞いて周りにいた他の鎮守府の艦娘たちもポリタンクを持って味方の到着に備える。アザミだけはそのまま周辺を警戒中だ。

 

「ねぇ天ちゃんちょっと」

 

「なんだ?無駄話なら無視するぞ」

 

 漣が天龍に話しかける。というのも気になったことがひとつあったからだ。

 

「漣たちのご主人様さぁ、ウッチーたちの実戦テスト代わりにこの作戦に駆り出されたかもって言ってたじゃん」

 

「そう言えばそんなこと言ってたな」

 

「全然テストできてなくねぇ?」

 

「確かにせっかく重巡の装備なのに活躍する場がないッス」

 

「そりゃアイツのアテが外れただけだろうよ。あとウツギは一応前で戦ってるんじゃないのか?......っと、味方が来たぞ」

 

 天龍が強引に会話を切り上げる。

 遠くの方から聞こえる砲撃の爆音をバックにこちらへ向かってくる艦娘を視界に捉えると、漣はため息をついて近くのポリタンクを持って味方の補給に備えた。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「.........どこを見ても敵だらけだな」

 

 砲撃音がそこかしこで鳴り響く海上を重巡用の大口径の連装砲を肩に担ぎスナイパーライフルを抱えたウツギが全速力で滑っていく。

 ヘリコプターから降下してから正確な計測などはしていないが、ウツギは無線に付いている時計を確認し、海を漂い初めて約十分ほど経過していることを把握する。

 ウツギはD地点の島に向かうために道中、時折味方の援護をしながら後退していた。名も知らぬ艦娘からまた一言「助かった」と礼を言われるが、そんなことなど気にせずさっさと漣たちと合流するため一直線にウツギは島へと向かう.........ことがなかなかできずにいた。

 というのも単純に敵の数が多いのだ。いくら前で戦う艦娘たちが手練(てだ)れとはいえ数では相手が勝っているのをいいことに、何匹か陽動部隊を突破してきた深海棲艦が邪魔をしてくる。

 

「悪いな。お前たちに構っている暇はないんだ」

 

 ウツギは自身の持つライフルの弾から放たれる謎の大爆発をうまく利用して、怯んだ相手を効率よくなるべく連装砲の弾を使わずに倒す。そしてそんなウツギの元にもたまに援護射撃が飛んでくる。

 

「新人さんにしてはなかなかやりますね」

 

「......先輩にそう言ってもらえるなら光栄ですね」

 

 支援攻撃をしてきた巫女服の艦娘にいきなり話しかけられて、一応ウツギが礼を言う。

 

「お世辞はいいですよ。それにあなたの管轄(かんかつ)はここじゃないんでしょう?早く下がりなさい。ここは私たちが押さえます」

 

「......どうも」

 

 巫女服の艦娘と他数名が敵は自分達に任せろと言ったのでウツギはそのまま島の方向へ反転し海上を滑っていく。

 が、強力な味方の援護があるとはいえ、それでも相変わらず味方の間をすり抜けてくる敵はそこかしこに居るし、手負いの状態とはいえ流石に三十匹以上の敵を倒し、味方の援護と敵の牽制までこなすとなれば砲弾の残弾数が心許(こころもと)なくなってくる。

 

(予備の弾はなるべく使いたくなかったが......仕方がないな)

 

 こんな場所で弾切れはマズいな、とウツギが予備弾倉の砲弾を砲に装填しながら思っていたときに、電源を入れっぱなしにしていた無線機から、あと少しで敵基地の制圧が終わると言う音声が流れてくる。これが本当ならこのとんでもない数の深海棲艦はうまくこちらの陽動に引っ掛かった結果によるものらしい。

 もっともウツギは個人的には成功しすぎて味方が相手をする敵が多すぎるのも問題があると考えていたが。そんなことを考えているとやっと島の補給部隊が見えてくる距離までやってきた。よく見ると漣が自分に向けて手を振っている。

 これが大規模作戦か......ウツギは大規模作戦に参加して戦うというその厳しさと辛さを噛み締めながら、なんとか激戦区から自分の「本当の」持ち場である補給所へ無事に辿り着けたことに安堵(あんど)していた。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「はいよウツギ。お疲れさん」

 

「ありがとう。少し危ないところだったんだ」

 

 天龍から燃料の入ったポリタンクを受け取ったウツギが艤装の給油口を開けて、燃料を補充する。頻繁に敵に遭遇こそしたがほとんどダメージは受けていないので修復材は使わなかった。続けてウツギが弾の補充をやろうとしたときに天龍が言う。

 

「敵の基地の攻略が終わったってよ。あとはこの辺うろついてる奴ら片付けて帰るだけだ」

 

「そうか。......ちょうどあそこに逃げていく敵が居るな」

 

 ウツギの目線の先に黒い煙を噴き出しながらノロノロとこちらから遠ざかっている敵が見えた。その発言にちらりと海を見た他の艦娘たちは、しかし気にせず既に帰り支度を済ませようとしているとき、天龍が問いかけてくる。

 

「追いかけるか?」

 

「いや、あの距離ならここから少し前に出れば狙える。少し浅瀬に出るぞ」

 

「りょーかい」

 

 砲撃の射程に敵を入れるためにシエラ隊が全員砂浜から浅瀬に出る。そしてウツギが砲を担ぎ、撃とうとしたその時だった。

 

 

 

 

 いきなりウツギはいままで体験したことがない浮遊感と衝撃に襲われ、後ろに吹き飛ばされる。

 

 

 

 ぐしゃり、と嫌な音を響かせてウツギが浅瀬から突き出した岩に叩きつけられる。彼女は一体今何が起きたのかわからなかった。

 

「がぁっ...かはっ......なっ!?」

 

 口から血を吐きながら前を見るウツギの目の前にフード付きのレインコートのようなものを着た見たことがない深海棲艦が居た。こいつ一体どこから...!?というウツギの思考は、「そいつ」の続けて繰り出された重い一撃により中断される。

 

「ふぅぉっ......!?」

 

「............」

 

 とっさにウツギが殴りかかってきた「そいつ」の攻撃をいなすために担いでいた連装砲を盾にする。すると「そいつ」の腕があたった砲が粘土で出来ているかのようにぐにゃりとひしゃげる。

 

「ウツギィィぃぃぃ!!」

 

 ツユクサが砲を乱射しながら背中から「そいつ」に殴りかかる。が、まるで後ろに目でもついてるかのように「そいつ」がウツギの方を向いたままツユクサの腕を引っ掴む。

 

「ウツギから離れるッスよ!!」

 

「ツユクサぁ!手ぇ離すなよ!!」

 

 腕を掴まれたツユクサの後ろから、今度は天龍が「そいつ」に刀で突きを放つ......が振り返った「そいつ」が素手で天龍の刀を受け止める。

 

「てっ......てめぇ!」

 

「............」

 

 ギャリギャリと火花を散らしながら刀を掴んだ「そいつ」が、刀ごと天龍を島の方へ投げ飛ばす。「おぉぉぉわあぁぁぁぁ!!?」と叫びながら投げ飛ばされた天龍に唖然としていたツユクサの手を離すと、「そいつ」がツユクサから背中を向けて逃げる。

 

「逃がさないッスよ!」

 

「ゴホッ......ツユクサっ!駄目だ!そいつは普通じゃない!!」

 

 咳き込みながら声を出すウツギの呼び掛けを無視して、ツユクサが「そいつ」を追いかけ......ようとしたときに「そいつ」が凄まじい勢いで後ろにバックする。そしてツユクサの鳩尾に肘を入れると、怯んだツユクサの腕をまた掴んで振り回し、別の岩に叩きつける。

 

「おわぁっ......!?ごはぁっ......!」

 

「............ 」

 

 大きな岩に体がめり込むほどの勢いで、ぐしゃりと生々しい音を響かせ背中から岩に叩きつけられたツユクサが豪快に吐血して海面に倒れる。

 そこへ「そいつ」へ向かって砲撃が来る。撃っているのは漣とアザミだった。

 

「......お前......許さなイ......」

 

「あ、あっち行けぇ!このバケモーン!!」

 

「.........」

 

 アザミの砲撃が当たり、「そいつ」が少しだけニヤリと笑う。ここまでか......ウツギが目眩のする視界のなかそう考えていると「そいつ」は突然反転して水平線へ向かって去っていった。見逃した......?いったい何のためだ?と思ったときにアザミと漣が駆け寄ってくる。

 

「ウツギ......立てル......?」

 

「......少し厳しいな.........」

 

「な、何だったんだろねアレ......いきなり水面から出てくるとか初見殺しっしょ!?」

 

 漣が震えた声で喋りながら、緊急時に入れる無線で船に連絡を入れる。ウツギは血の味が広がっている口の中に不快感を感じながら、ふらふらと立ち上がり自分から少し離れた場所で倒れているツユクサに声をかける。

 

「............」

 

「いつまで......ふぅ...気絶したふりをしてるんだ」

 

「......首の骨が折れたッス............」

 

 ツユクサが海面に寝っころがったままそう言う。派手に血を吐いて倒れた割には元気なヤツだ......アイツが見逃してくれなければ自分達は全滅していたな。ウツギは島の方で自分達のこの有り様をみて腰を抜かしている艦娘たちを見てそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

自身の持つ運のなせる技か。全滅の危機を凌ぎきったシエラ隊。

後味の良くないものとはいえ、結果的には作戦は成功した。

つかの間の安らぎを振りきって、ウツギたちはまた次の戦場へ。

 

 次回「ビター・メモリー」 大規模作戦初勝利は苦いチョコレートの味。

 




毎回書いている次回予告は適当です。
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