資源再利用艦隊 フィフス・シエラ   作:オラクルMk-II

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お待たせしました。昨日は寝落ちして更新詐欺になりました......スンマセン(小声


コールド・ウォー

 

 半日ほどかけてやってきた北海道の泊地での朝。窓から差し込んでくる日の光......ではなく、じんわりと体に染み込んでくるような寒さでウツギは目を覚ます。隣を見れば自分と正反対と言った様子で気持ち良さそうにツユクサが寝ている。

 

(暖房でも点けておいてやるか。寝て起きてこの寒さならこいつなら駄々をこねそうだし......)

 

 そう思ったウツギが部屋の入り口近くに設置されてあったエアコンのスイッチを入れ、いつもの作業着姿に着替える。

 

「窓が二重......本当なんだな」

 

 漣が道民と言うのは嘘じゃなかったらしい。

 「寒い空気を入れないように、また暖かい空気が逃げないように北海道の建物は窓が二重になっている」、という漣の道民豆知識なるどうでもいいようなそうでもないような事をウツギが思い出しながら、外の雪景色をぼんやりと眺める。

 

(.........暇だ。ツユクサの分の荷物も(まと)めておくか)

 

 隣で口を半開きにしながら寝ている女のベッドの近くに散乱している荷物を、ウツギが部屋にあった机の上にまとめて置き始める。

 

(まだ時間があるな......テレビでも観るか)

 

 腕時計を見て朝食の時間までまだ一時間近くあることを確認したウツギがニュース番組を観ながら適当に時間を潰す。

 ............。映る場所がどこも一面真っ白だ。流石北海道。

 天気予報の合間に流れる北の大地では一般的な景色に少し面食らうウツギだった。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「すっげー.........」

 

「バイキング形式......また豪勢だな」

 

 ツユクサが起きてから、すぐに朝食の時間に間に合わせる為に部屋を出て会場についた二人は、自分達の鎮守府の倍は軽く超す大きさの食堂の奥に並んでいる、料理が置いてあるワゴン数台を見て軽い溜め息を吐く。

 部屋の隅に固まっていた艦娘たちの中に天龍とアザミ、漣に若葉の四人を見つけたウツギが、ツユクサを連れて四人が座っていた机に向かって歩く。

 

「おはよう。みんな早いな」

 

「ウッチーおっはよ!」

 

「おはよう。ツユクサが起きなかったのか?」

 

「そんなところ」

 

「みんなが早すぎるだけッス......」

 

 ......装甲空母姫はどこに居るんだ?

 姿が見当たらない一人についてウツギが仲間に聞いてみる。

 

「RDは?」

 

「ここの提督と挨拶だとさ。他の艦娘に誤射でも食らったら一大事だから、だとさ」

 

「なるほど」

 

 とは言ったものの......例の作戦で戦った後に広がった噂で知ってるやつのほうが多いんじゃあなかろうか。

 昨日、(みなと)で奇異の目で見られこそしたもののそれだけで終わった事、戦艦水鬼との戦い以来、すっかり有名人になってしまった自分達と装甲空母姫についてウツギが考える。

 まぁどうでもいいか。このあとはすぐに演習。さっさと飯を済まそう。ウツギが、天龍たちが予め取り置きしていたという皿に盛られた刺身に手をつけようとしたとき。知らない女に声をかけられた。

 

 

「あら、貴女方が。噂の「英雄」さんですの?」

 

「.........どなた?」

 

「失礼、私、熊野と申しますわ」

 

「どーも」

 

 「英雄」か。ただ死にたくないから頑張っていただけだが......。そう思いながら話しかけてきた艦娘にウツギが素っ気なく返事を返す。これで会話は終わり、と思いきや熊野と名乗った艦娘が続けて質問をしてきた。

 

「貴女達の艦種、教えてくださらない?演習相手の一番でしたの」

 

「はあ......そうですか」

 

 正直少し面倒だな、と思いながらもウツギは椅子から立ち上がり、作業着のポケットからメモ帳とボールペンを取り出して「駆逐×3 軽巡×1 重巡×1 戦艦×1」と書いて相手に渡す。すると......

 

「............ふっ......」

 

「......?どうかしましt......」

 

 

「カス揃いですわ」

 

 

 わざとらしく手から紙を滑り落としながら、熊野がそう言う。

 .........こいつ......前の時雨と同じような......。ウツギが相手の発言にそう思ったとき、ツユクサと若葉が口を開く。

 

「......あ゙............?」

 

「ほう......?」

 

「空母が不在の艦隊だなんて......多分私たちとは勝負にならないと思いますわよ?」

 

「てめっ......」

 

「良いねぇ......そう言うの。悪くない。粋がるザコほど(なぶ)るといい声を出す.........♪」

 

 

「何をやってるんだ?」

 

 

 熊野の暴言に腹を立てたツユクサを手で制し、ずっと黙っていた若葉が待っていましたとばかりに逆に相手を挑発すると。熊野の後ろから声をかける者が来る。朝食に遅れてやってきたRDだ。

 自分よりも首一つ分ほど身長が高く、かつ威圧感がある相手に驚いたのか。熊野はしどろもどろになりながらその場を後にする。

 

「な、なんでもありませんわ!......それではごきげんよう」

 

 明らかに動揺しながらどこかへ行った熊野を漣が馬鹿にしてこんなことを言う。

 

「RDにビビって逃げてやんのw」

 

「当たり前だろ。姫級だし」

 

「......普通に接しただけなのだが............」

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝食を摂り終わったため、自分達の使う艤装の点検でもしようか、と、ひんやりした空気が充満している廊下をシエラ隊の6人が歩いていたとき。先程大胆に啖呵を切ってきた熊野に対する感想を天龍が溢す。因みにRDは港に着けていた自分の艤装が他の船などの邪魔にならないように動かしてくると言って外に出ていた。

 

「しっかしあんなイヤミなオジョーサマが相手、ね。嫌なこった」

 

「第一大湊(おおみなと)・ガングリフォン隊旗艦、重巡熊野。緒方提督の部下なんだな」

 

「緒方提督......?誰だっけ?」

 

「第三横須賀に行ったときがあっただろう?あの時の」

 

 「あぁ~......あの貫禄あるオッサンか」。今回の遠征に参加している艦娘の名簿を見ながらのウツギの発言に、彼のことを思い出した天龍が軽く相づちをうつ。

 程なくして、この場所の艤装保管室に着いたウツギ達は、シートが被せられた各々の艤装が置いてある場所に行き、点検を始める。

 

はずだったのだが......

 

 

「これは......」

 

「..................!?」

 

「さっさと終わらせ......え......?」

 

「.........ククク............」

 

 装備に被せてあった白い布を取り、整備と点検をやろうとしたウツギ、アザミ、ツユクサ、若葉の手が止まる。何事かと残りの二人が四人の艤装を観てみると......

 

 そこにはぐちゃぐちゃの鉄クズが置いてあるだけだった。いや、正確には「めちゃめちゃに壊された艤装」が転がっていたのだ。若葉の物だけは何故か武器類だけが壊されていたが。

 

「酷い......誰がこんな」

 

 

「あら?また会いましたわね?」

 

 

 こいつか。

 漣がそう言った途端に後ろから表れた女を冷たい目で見ながら、ウツギが心底軽蔑して内心呟く。横を向けば、ツユクサは目が赤く光り、アザミは少し怒っているような真顔に。若葉は目を細くして笑顔になっている。

 

「あら、そこのガラクタはなんですの?」

 

「よせよ熊野。貧乏人だからきっと装備がボロいんだ」

 

「えぇ~?エーユーなのにぃ~?かぁっこわるぅい~♪」

 

 あからさますぎる挑発をしてくる相手の部隊構成員を凄まじい表情で睨み付けながら、ツユクサが歯軋(はぎし)りしているのをウツギが目にする。

 数分後、自分達の装備を持って熊野達が出ていったため、部屋に居るのがシエラ隊のみに戻る。ずっと何も言わずに我慢していたそれぞれが口を開いた。

 

「流石にハラが立つねぇ......ウふふ...♪」

 

「絶対あのクソ女ッスよ.........ワザとやりやがったな.........ムカついたァ.........!」

 

「あぁ......にしてもよく殴りかかったりしなかったな」

 

「この後演習ッスから。そこでギタギタにしてやるッス」

 

「......絶対......許す......ものカ............」

 

 リサイクル艦二人のその言葉に、漣が突っ込みを入れる。

 

「ちょ、ちょっと!仕返ししたいのはわかるけどさ、こんなんじゃ演習参加できないっしょ?」

 

「......何で?」

 

「いや何でって......こんな壊されたらもう直せなくない?」

 

「あぁ、そのことッスか」

 

 「漣、天龍。あいつらは一つ重大なミス......と言うより大切なことを一つ忘れているじゃないか」。ウツギの発言に、アザミとツユクサが顔を見合わせてニヤリと笑う。そして疑問を口にした二人にウツギが口角を吊り上げながら、一言、こう言った。

 

「重大なミス?」

 

「そうだ。それは」

 

 

「自分達はリサイクル艦だと言うことさ」

 

 

 ウツギが、第二単冠湾泊地に所属している艦娘のリストの、「ある部分」に印をつけて漣に渡す。「あっ......!そういうこと......じゃ、いっちょあいつらにギャフンと言わせちゃう?」。名簿を見た漣が発言する。名簿にはこう書かれていた。

 

 

所属艦娘一覧

 

 

  Верный  不知火

  「青葉」    清霜

  千代田   「五月雨」

  「弥生」    卯月

  Pola    Zara

  長門    「若葉」

  初春    赤城

  隼鷹    「瑞鳳」

  鬼怒    阿武隈

  「比叡」   金剛...

.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

圧倒的、ひたすら圧倒的な火力で押すことを重視して、

編成された部隊、ガングリフォン。

相対するは元はただの寄せ集めであるシエラ隊。

どうにか他の艦娘から借りた艤装で戦う彼女たちを見くびる女たちに。「災厄」が降りかかる。

 

 次回「テイク・オフ」。 アザミが怒れば誰にも止められない。

 




次回、アザミ無双。
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