資源再利用艦隊 フィフス・シエラ   作:オラクルMk-II

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お 待 た せ 。(迫真) ちょっと長いです(警告)


テイク・オフ

 

 

「ど......どうして......?」

 

「どうして?何がですか?」

 

「とぼけないでくださいましっ!!貴女達の艤装はわたっ.........」

 

「「私」がどうかしたッスか?」

 

「っ......なんでもありませんわ」

 

 艤装保管室での出来事から数分後。他の艦娘に頼み込んで借りてきた装備で足並みを揃えて港にやって来たウツギ達を見た熊野が、何やら言ってくる。

 せっかくの完全犯罪を自分からバラそうとするなんて相当な阿呆だな、と、ウツギが正面から見た能面のような無表情で熊野を見つめながら、事前に知らされていた集合場所に五人を整列させて待機する。

 それから何分かが経ち、続々と演習に来た艦娘達が集まり、最後に教官のヴェールヌイがやって来て全員が居ることを確認してから口を開いた。

 

「全員いるね。じゃあ、演習を始めるよ。ルールは特に変わった事は無しの殲滅戦で、残った子が多いほうが勝ち。普通に弾はペイント弾で、当たり判定が轟沈か大破の人は行動不可能。.........質問がある人は挙手」

 

「失礼しますわ!」

 

「どうぞ」

 

「あの方達、借りた装備で参加するそうですが」

 

 またなにか言いがかりでもつけてくる気か。

 思い切り嫌味なあの女に指を指されたウツギが、指を指してきた熊野に冷ややかな視線を送る。そんなことは微塵も気にせずに熊野が発言する。

 

「自前の物ではないのはルール違反ではなくて?」

 

「持ち主から承諾を取ってるから大丈夫だよ。自分のが壊れてるならしょうがないし。これでいいかい?」

 

「......っ、解りましたわ」

 

 ざまぁみやがれってんだ。そう聞こえてきそうな表情で、親指を下に向けて熊野を挑発するツユクサの足を、ウツギが靴で踏んづけて止めるように伝える。

 納得がいかないような表情ですごすごと引き下がる熊野を気にせず、ヴェールヌイが続けて演習に出る艦隊の組み合わせを読み上げる。

 

「最後の連絡ね。事前に言ってたけど確認するよ。第一試合は」

 

 

「第五横須賀鎮守府、フィフス・シエラ隊と、第一大湊警備府、ガングリフォン隊。どっちも頑張ってね」

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

『フン!!借り物の装備で、(わたくし)たちに勝てるわけがありませんわ!!』

 

『あんなオンボロ部隊でイケると思っているのか?』

 

『英雄だか何だか知らないけど。名が知れてるのなんてたかが知れてるのよ実際は!』

 

 

 全く好き勝手言ってくれるな。というよりもあの根拠のない自信は一体何処から沸いているんだ?

 激しく動いてもずり落ちないように、と、テープで頭に固定したヘッドセットから流れてくる相手からの悪口を聞き流しながら、ウツギは背中に背負った軽空母「瑞鳳」の艤装の矢筒から矢を数本取り出して、艦載機の種類を確認しておく。

 飛ばせるのは......全部流星改だと......?また随分上等なのを使っているな、等とウツギが思っていたとき。前にいたツユクサが無線で相手に暴言を吐いていた。

 

「そんだけ好き勝手言ってよォ、負けたら赤っ恥だよなァ?あ゙ぁ゙!?」

 

『おいおい、駆逐艦が何か言ってるぜ?』

 

『無視してくださいまし』

 

「ふふっ......ふフふ......♪よせ、ゴミに何を言ったところで人の言葉はわからん......」

 

『何だと......?』

 

『長門さん、その辺にしたほうが......』

 

 売り言葉に買い言葉。ツユクサ、若葉の二人と相手との(ののし)り合いがエスカレートしていくのを遮り、ヴェールヌイからの警告が無線に割り込んでくる。

 

『試合開始のカウントを始めるよ。位置についてね』

 

『ちっ......せいぜい悪あがきするんだな』

 

「ンだとォ!?っ......あいつら切りやがったッス!」

 

「ホント腹立つぜ......どう思うウツギ?」

 

「天龍、しゃがんでくれるか」

 

「......?いいけど......?」

 

 ツユクサ程ではないにせよ、散々悪口を言われていい気分では無かった天龍が、着ていたMA1ジャケットを弄りながらウツギに今の心境を訪ねる。すると、唐突にそう返され、意図は理解できなかったが取り合えず言われた通りにその場に方膝をついて、彼女の次の行動を待つ。

 「ありがとう」。そう言ってウツギが天龍の肩に何かを乗せる。何だろう?、と、視線を自分の肩に向けた天龍が目にしたのは、ウツギがよく使っているスナイパーライフルだった。完全に偶然だったが、装甲空母姫の艤装の中に置きっぱなしにしていたので壊されずに済んだのだ。

 

「あぁ......なるほどね......試合前から狙いをつけとくのか」

 

「卑怯な手は心が痛むけど......いや全く痛まないがな。この際致し方ない」

 

「ウッチー、二つ目貸して?」

 

「漣、相手に空母が二人居る。飛行甲板を狙ってくれ」

 

「りょ!あっちゃんゴメンね?」

 

「別に......良イ............」

 

 さて、狙撃はあまり得意じゃないが......上手くいくかどうか。こればかりは運か。

 ウツギは首から紐をつけてぶら下げていたもう一挺のライフルを漣に渡し、受け取った漣も銃身がブレないようにアザミを銃架の替わりにしてスコープを覗く。

 

『カウント始めます。3......』

 

 ニィ、イチ......と、続く、審判を務める艦娘の声を聞きながら、ウツギと漣はスコープ越しに呑気に世間話でもやっているような素振りを見せる相手の空母の飛行甲板に狙いを定める。

 

 

『Go!』

 

 

ビーッ、と、試合開始のブザーが鳴ると同時に二人がライフルの引き金を引く。二人合わせて七発ほど放たれた銃弾は吸い込まれるように相手の飛行甲板状の艤装に着弾し、空母の艦娘の服と艤装は緑の蛍光塗料で染まった。

 

 

『ぐ、グリッド2、飛龍中破、瑞鶴中破!!』

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「キタコレッ!!?」

 

「当たった......!」

 

 第一関門突破か。次は......。

 スコープを覗いた先で、かなり慌てている相手に改心の笑みを浮かべながら、ウツギは素早くライフルを天龍に手渡して自分の背中から弓を取り出すと、慣れない手つきで弓に矢をつがえて相手に向かって射る。

 

「妖精さん......頼んだ。」

 

「―――――!」

 

 弓の経験がある人物や空母の艦娘が見れば、悲鳴を挙げそうな滅茶苦茶な構えで適当に放たれた矢は、空中で一瞬火を散らして飛行機の形に変形するとそのまま相手に向かって飛んでいく。

 自分は艦載機なぞ上手く使えないから......ただの気休めにしかならないだろうな。ウツギが片っ端から矢を弓につがえて発射しながらそう考えていると、アザミが声を掛けてきた。

 

「ウツギ......突っ込む......いイ?」

 

「気を付けてな。若葉とツユクサも連れてけ」

 

「ありがとウ.........」

 

「うおっしゃー!ぶっ潰す!!」

 

「ふふ、ふふふクく......お供するよ......」

 

 気合い充分といった様子で絶賛混乱中の相手に向かって三人が突撃していくのを眺めながら、漣は砲とライフル、天龍も同じく二つを構えてウツギから指示を待つ。

 

「大将、次は?」

 

「演習エリアぎりぎりまで後退だ」

 

「三人だけで大丈夫か?」

 

「いや、逆にあの三人に勝てるくさいやつ相手にいねぇっしょ?」

 

「......確かに」

 

「そう言うことだ。こっちはもう見てるだけでいい。......一応三人がやられそうになったら援護に入る。いい?」

 

「「了解」」

 

 

 散々こちらを馬鹿にしたツケは払ってもらう。覚悟しておけ熊野。

 悪役のような笑顔を顔面に貼り付けたウツギは、内心そんなことを考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オラオラオラ!!しみったれた攻撃なんかしてんじゃねェぞォ!!」

 

 なんで......なんで......なんで......!?

 

「何で当たらないんですのぉぉぉ!!?」

 

 熊野は今とても焦っていた。

 

 名家の生まれと言うこともあり、金を詰んで入手した艦娘用の最新鋭装備のリニアレールガンによる砲撃が一発も相手に当たらなかったのである。

 バヂン!バヂン!と静電気の放電現象を数倍大きくしたような独特の発射音を出しながら、持っていた武器から高速で射出される弾丸を苦もなく回避しながら、ツユクサが相手とは対称的に、駆逐艦五月雨の砲を連射して熊野に当てていく。

 先程ウツギと漣に狙撃された空母の二人は既にツユクサとアザミの雷撃をまともに受けて撃沈判定、勝負は3対4の変則的な......3の方に時たまウツギの艦載機による援護射撃が飛んでくるというものへと移行していた。

 

 そんな中。まともに照準すら合わせずにレール砲を乱射する熊野を無視して、若葉は刃の部分に演習用にとゴムが被せてある薙刀で、熊野の周りに居た戦艦にちょっかいをかけていた。

 

「ふっ......フフフ......」

 

「うおっ!?......チィッ、ちょこまかとっ!」

 

 片足を軸にして半回転、その場にしゃがみながら前進、真横に側転と、変則的に動いて相手の攻撃を交わしながら、時たま隙を見つけては薙刀で突きを放って敵を怯ませる、という戦法......と言うよりは若葉には遊びでしかない行動で戦艦の艦娘を煙に巻く。

 

「見える見える......遅すぎてアクビが出るねぇ......♪」

 

「舐めるなぁ......!」

 

 怒っているな......。短気な馬鹿ほど頭に血が昇るのは早い、か......うふふ♪。

 口から漏れる吐息が白くなる、ここが零下五度の場所であることなどすっかり忘れて、若葉が尚も海面を変則的に動いて水を被りながら、余裕たっぷり、言葉巧みに相手を挑発する。

 彼女が狙っていたもの。それは......

 

「伊勢!挟んで狙い撃ちだ!」

 

「オッケー!」

 

 

 くくく。馬鹿が雁首揃えて乗って来たか。

 

 白い厚化粧を施した口を愉悦で歪めながら、若葉が相手の言葉が聞こえなかったフリをして、そのまま相手の戦艦の艦娘......長門と伊勢の間に 割って入る。

 そんな事をすればどうなるか。解ってはいたが当たり前のように相手が若葉に向かって砲撃をかましてきたのを

 

 若葉はあえて薙刀で弾を切り払わずに、イナバウアーでもするように腰を背中に折って回避した。するとどうなるか。

 

 

相手が勝手に自爆して終わりである。

 

 

「「あ」」

 

 

 底抜けの間抜けだな。若葉がそう思ったときにはもう相手は特大のペイント弾で上半身をピンク色に染めていた。

 

 

『グリッド2、長門、伊勢、誤射により大破!!』

 

 

 

 

 

 

 

 形勢逆転。でも手は抜かない。絶対許さない。

 五分としないうちに2対6(実際は2対3だが)に追い込まれ、顔を白くしながら当てずっぽうに砲撃を繰り返す相手に冷ややかな視線を送り、アザミが海面を跳び跳ねながら考える。

 ウツギの艦載機とツユクサの砲撃や機銃をまともに受けて、体に塗料がない所を探すほうが難しいほど全身緑色に染まった熊野が震えた声で叫ぶ。

 

「ゆ、夢でも見てるんですの......?」

 

「こ、こんな......これは何かの間違いですわ.........」

 

「.........!」

 

 知るか。

 心のなかで棘のある突っ込みを返しながら、そろそろ相手の攻撃を避けることが面倒になってきたアザミは、何を思ったか、熊野の隣に居た最後の戦艦の艦娘へと突撃し始める。

 

「Oh!?飛んで火に入る夏のバグネー!!」

 

「......五月蝿イ.........」

 

 妙な言葉遣いの艦娘がアザミに砲の照準を合わせ、轟沈判定を取ろうと射撃を行う。飛んできた砲弾を、

 

アザミは手に握っていたコインを(はじ)き当てて、弾の軌道を反らした。

 

「ホワッ......!?」

 

「............」

 

 信じられないことが起こったと目を見開いて狼狽する戦艦の前でアザミが海面を蹴って跳躍。そして、空中で一回転して勢いをつけながら、自分を見上げていた相手の顔に強烈な踵落(かかとお)としを叩き込んだ。

 

「あ゙ッ.........!?」

 

「っ.........!」

 

 そのまま白目を剥いて背中から倒れていく相手を容赦なく蹴飛ばしてまた水面に着地(着水?)したアザミは、

 

「ひっ......!?」

 

「............」

 

「く、来るなああぁぁぁぁ!!!??」

 

 泣きながら、砲身をもつ手が震えるせいで掠りもしないレール砲を撃ってくる熊野に歩きながら近付く、

 

「............」

 

「み、見えなっ......!?」

 

ように見せ掛け、急に速度を上げて相手の背後に回ると

 

 

 

「恐れるナ」

 

 

死ぬ(負ける)時間が来ただけダ」

 

 

 

 熊野の後頭部に単装砲を密着させて三回ほど引き金を引く。哀れなことに......アザミは一ミリ足りともそうは思っていなかったが、恐怖で気が狂った熊野はその場に気絶して海面に突っ伏し、動かなくなってしまった。

 

 

『ぐ、グリッド2、熊野、金剛、戦闘続行不可につき、大破判定!』

 

『勝者、グリッド1、フィフス・シエラ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

演習が終わり、一息つこうか、等と思っていたとき。

ウツギへとヴェールヌイが接近してくる。

彼女のルーツとも言える暁という艦娘。

その妹である彼女の想いとは、何。

 

 次回「勿忘草(わすれなぐさ)」。 背伸びして溢した、大人びたセリフを思い出す。

 




無双って書くのムズいですね(白目
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