資源再利用艦隊 フィフス・シエラ   作:オラクルMk-II

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お待たせしました。RD回です。


真顔の淑女

 

「索敵、終わりました。数はそれなりで散開しています」

 

「............指揮官殿、ご命令を」

 

 インカム?ヘッドセット?......名前を忘れた。にしても機械は慣れないな。

 敵の増援を見越して艦娘達に先立ち、弱い吹雪が発生していた海に部下と陣取ったRDが、隣に居たヲ級の報告を聞き。慣れない手付きで城島提督から借りてきた無線で彼と連絡を取る。周囲には少しずつ準備を整えて出撃してきた艦娘が集まっていたが、自分がよく知るシエラ隊の姿は見えなかった。

 

『Uh~~、なるべく奴さんをバラけさせないようにしてくれYo。港に被害が出たら漁業組合がうるさいからナ』

 

「了解」

 

 一ヶ所に集めて殲滅しろ、か。城島の命令をそういう意味で受け取って。降りしきる雪に顔をしかめながら、RDは背中に挿した12本の剣の内から細身のサーベルとエペを抜き、自分の両隣に居たリ級とヲ級に次に取る行動を指示する。

 

「散開しているといったな。どの程度だ」

 

「この視界いっぱいほどです。両端はそれほど遠くには居ませんでした」

 

「そうか。............ユウジは右。エイムは左から。艦娘たちと回り込んで相手を寄せてくれ。私が突っ込んで注意を引く。ただ、砲撃戦の音が聞こえてくるまでは待機してくれ」

 

「御意に」

 

「............」

 

「ユウジ聞いてたか」

 

「えっ?あっ!は、はい!!......姫様、御武運を」

 

 しっかりしてくれないと困るな。このクセさえ無ければいいやつなんだが。

 ぼうっとしていて話を聞いていなかったリ級を優しく注意し、「今は姫ではないよ」と返事をしてから。得意技である海面を蹴っての高速移動で、RDが敵に肉薄する。

 ごま粒ほどにしか見えなかった敵の姿が接近したことで段々と大きくなる......昔は仲間であった深海棲艦達へ。思うところがあったRDが名乗りを挙げて呼び掛ける。

 

「そこの深海棲艦。......私は装甲空母姫だ」

 

「全軍撤退するか降伏しろ。命は取らん」

 

「押し通るというならば斬る」

 

 どう出る。......そう簡単に引き下がるとは思えないがな。

 以前に戦ったことで、戦艦水鬼に着いている深海棲艦たちが、聞く耳を持たない、妄信的に彼女に付き従っているだけ、と言うことがわかっていたのを根拠にRDがそんなことを考える。

 その考えは正しかったようで、果たして彼女の眼前に居た深海棲艦隊達は、薄気味悪い微笑を浮かべながら砲や魚雷の類いをRDに向けてきた。

 

「衝突は......避けられないか。可哀想だがこちらも引き下がれない」

 

 一度は解いた構えを再度取り直し、RDが固い表情で片手の剣の切っ先を敵に向ける。すると、相手の方から話し掛けてくる者が居た。声の主の姿を見た途端にRDが弱く舌打ちをする。

 

「久し振りじゃないの~装甲空母姫~♪」

 

「やはり.........お前か。軽巡棲鬼」

 

 元々砲撃の腕前がからっきしだったため剣にこだわるようになり、ポクタル島での敗北で「番号持ち」になって、元来低かった立場に漬け込んで散々自分とその部下を虐めてきた深海棲艦.........目の前の軽巡棲鬼にいい思い出が一つもないRDが、相手を睨み付ける。

 「弱いものいじめと悪口が好き」と公に公言するような奴だ。戦艦水鬼に同調するのも当然か。

 前に出てきた女は、気に入らない部下はすぐに切り捨て、人の悲鳴をエサに生きているようなやつ、と、海に居たころによく知っていたRDが。特に意味はないが、ほんの仕返しの悪口を言ってみる。

 

「仕える主が死んでもまだ抵抗を続けていたか。殊勝な心掛けだな」

 

「使える主?そんなもの、また新しいのに着けばいいだけさ。いい人殺しスポットを教えてくれるお得意さんが出来てね......なかなか楽しい日々......」

 

「得意先、ね。誇りはないのか」

 

「ン~フフフフ♪ この軽巡棲鬼......雇われて仕事をする。それの、何が悪い?」

 

 いつまで喋っても平行線か。......そうだな、喋っていても始まらない。やるか。

 RDの瞳がぼんやりと光り、降る雪で白くなった空間を薄く赤色に照らす。

 

「そうか。解った............私も」

 

 

「仕事の時間だ。」

 

 

 言うと同時にRDは軍勢に切り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 は、始まった......!艦娘さん達の足手まといにだけはならないようにしないと......。

 RDから「ユウジ」、と呼ばれていたリ級が命令通り、砲戦が始まったと同時に艦娘達に追従して相手を囲い始める。

 

 味方の方が数が少ないとはいえ。統率もとれていない、練度も低い相手を作戦通りに包囲して一ヶ所に集める追い込み漁は上手くいっていた。 そんな中、それなりの練度と言っても、まだ実践経験が不足しがちな味方の艦娘をリ級が何度か隙を見計らって助ける。

 

「大丈夫ですか?」

 

「す、すいません......!」

 

 捌ききれなかった敵が撃ってきた砲弾を腕で弾き飛ばし。礼を言ってきた艦娘の一人に笑顔で答えて、またリ級が砲戦に意識を戻す。

 ......自分のほうが強いのか?......これは、前に出たほうがいいかもしれない。

 数分砲撃に参加して、戦闘に慣れているのは艦娘達よりも自分だと判断したリ級が、一人だけ前進して相手の注意を引き始めた。

 

「一人じゃ危ないですよ!?」

 

「問題ありません。敵を引き付けます、狙い撃ちしてください」

 

 

「.........姫樣、私が援護に参ります......!」

 

 

 

 

 

 

「旗色が悪くなったら、鞍替え、逃亡。節操がないことだ」

 

「節操がないねぇ......そっくり寝返った君たちのほうが節操がナいんじゃないの?」

 

「私欲を満たさんとするためエサで釣られて雇われた貴様に何が解る」

 

 リ級とヲ級がそれぞれ挟撃を開始した頃。RDも敵と交戦を始めていた。

 気に食わない相手。と思ってはいても、自他共に認める砲撃の名手である軽巡棲鬼の砲撃を、回避は無理だと悟って、ひたすら砲弾を切り払うことでRDがいなす。

 三十回ほど砲弾を切り飛ばした時。前にあったように、何人かの深海棲艦が水面から浮上して自分へ攻撃を仕掛けてきた。

 また伏兵か。芸のない奴等だ。全く驚く素振りすら見せずに、相手にRDが応対する。

 

「ひゃっはぁ!!し――」

 

「............」

 

 喋る暇すら与えずに、RDは、迂闊に自分の得意な間合いに突っ込んできた軽巡の胸にサーベルを貫通させ、素早く刺さった敵の体を蹴り飛ばして剣を引き抜くと同時に海面を跳ぶ。そしてそのまま、滴る血が尾を引いているサーベルで周囲に居た戦艦の肩に飛び乗って頭を串刺しにすると、そこから飛び降りて、場所がわかっていた潜水艦の体目掛けて水中にエペを突っ込む。哀れなことに、誰の目にも映らない場所で潜水艦は体の中心に突剣が通って絶命した。

 

「おぉっ!?」

 

「............ッ!!」

 

 僅か数秒で三人を葬ったRDへ。へらへら笑いながらも、どこか焦ったような表情を軽巡棲鬼が顔に浮かべる。

 

「フフフ、こりゃ凄い......死にたくないから逃げ」

 

「逃がさんぞ」

 

 敵前逃亡を宣言した女へ、RDが剣の切っ先を二つとも相手に向け、両手を交差させながら突っ込む。間一髪、軽巡棲鬼は頑丈な自分の腕で攻撃を防いだが、そんなことはお構い無しとばかりにRDが武器に込める力を強くしていく。

 

「そう易々と逃がすわけにはいかない」

 

「手厳しい......ね」

 

 鍔迫り合いに似た状態にもつれ込まれた相手が、至近距離から砲撃をしようと下半身の砲の向きを変えた事を察知し、一旦RDがその場から飛び退りながら先程と同じように弾を切り払う。そしてこれまた先にあったことと同じく、新手が水の中から這い出て妨害を行ってくる。

 (らち)があかないな......味方をもう何人かつけてくるべきだったか。抜かった......!

 何度か宿敵に肉薄することは出来ても、その度に外野から邪魔が入ってはなぎ倒しを繰り返すRDが考える。

 こう、雪とやらで視界の利かないまま戦ってもジリ貧になるだけだ......どうしたものか。努力して体に刻み込んだ戦闘技術で機械的に敵を相手取っていた時。突然一人の戦艦が、顔面が爆発して倒れる。

 味方が来てくれたか。自分の部下のリ級の姿を確認して、RDが強張った表情筋を緩めた。

 

「姫様、援護します」

 

「ユウジか。艦娘は?」

 

「敵は総崩れです。全滅も時間の問題と判断して来ました」

 

「助かった。頼めるか?」

 

「お任せください」

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「邪魔だァ!どけェ!!」

 

「させませんよ」

 

 姫様から頼まれた仕事......期待には答えなければ!

 ならず者のようなしゃべり方で激を飛ばしてきた相手へ、両手の砲を向けながらリ級が考えていたとき。こんな言葉が飛んできた。

 

「ふん、人間ごときに尻尾を振って寝返った(ごみ)が、我々に勝てるわけが......」

 

 この一言が、リ級の逆鱗に触れた。

 

 

「人間ごとき、だと?」

 

 

 リ級の体から、黄色みを帯びた光が発され、周囲が明るくなる。

 

「てめぇらに」

 

「一人でも人間らしいのが居たのか!!」

 

 たかが一人の重巡と完全に侮っていた戦艦の首が飛ぶ。そのまま敵に悲鳴すら挙げさせず、頭に血が昇ったリ級はがなりたてながら、砲撃と拳による殴打を繰り返して文字通り相手を血祭りに挙げ始めた。

 

「人はッ!行き場を失った我が主に、手を差し伸べた!!」

 

「――――――!!!?」

 

「それが貴様らはどうだ!?抵抗できないことに漬け込み、散々やりたいように掻き乱しやがって......!!」

 

「   」

 

 砲撃の動作などすっかり忘れて。死亡した相手を放り、次に手負いになっていた敵の空母の肩をリ級が引っ掴んで逃げられないようにする。

 

「血も、涙も、情も無い鮫共に説教される筋合いはねェ!!」

 

そしてそのまま空母の頭部艤装から生えている触手を引きちぎり、よろけた相手の鳩尾(みぞおち)に全力で拳を打ち込んで相手を倒す。

 

「はぁ、はぁ......手間かけさせやが」

 

 

「アツいねぇ君。惚れ惚れする」

 

 

「ッ!!」

 

 後ろ............!!

 完全に油断しきっていたところを、軽巡棲鬼に背後を取られて。リ級の全身から嫌な汗が吹き出る。

 

「油断はダメだよ?」

 

 死ぬ――――

 そう思ってリ級が振り向きながら目をつぶりそうになったとき。

 

自分の敬愛する上司の声が聞こえた。

 

 

「どこに行く気だ?」

 

 

 

 

 

 

「ひっ、姫様!」

 

「もう姫ではないと何度言ったら......怪我は?」

 

「何ともないです!!」

 

 目の前で、背中から腹部にかけてサーベルが突き刺さった軽巡棲鬼を他所に。RDとリ級が、粗方、周囲の敵を片付けたことを確認して、お互いに安否の確認をする。

 やっぱり......凄いな。姫様は......。この人に着いていって良かった。

 たった今......正確にはそれ以前にも何回かはあったが、命の恩人になった装甲空母姫へ。リ級が尊敬の眼差しを送っていたとき。まだ辛うじて息があった軽巡棲鬼が、何かを呟く。

 

「フフ.........」

 

「!?まだ息が!!」

 

「いやいい。どうせこいつはもう動けん」

 

「......随分...強くなったじゃないか.........私の仕事が台無しだ......」

 

「......お前には解るまい」

 

「お前も、戦艦水鬼も。自分以外を道具と見て切り捨てられる者には」

 

 淡々と......昔自分を(けな)した相手へ、自分自身にも言い聞かせるように。RDが口を開いて言う。

 

「非情な判断は時として必要だ......だが、それをいつでもやるのは、人心も、自分も、何もかも離れていく」

 

「背負うものがあるから。強くなれるんだ」

 

「部下の命も、自分の命も大事だ。等しく守り通して初めて、将を名乗る資格がある」

 

 RDの言葉を、仰向けで空を見て雪に打たれながら聞いていた軽巡棲鬼が、吐血し、掠れた声でこう返事をした。

 

「がはっ......はは......いつまでやれるかな......その生き方...」

 

「フフ......進むが...いいさ......その.........き......は...............」

 

 軽巡棲鬼の瞳から、光が消え失せる。その亡骸(なきがら)の上に汚れを包み隠すように雪が積もっていく様子を、無言でRDとリ級が見つめた。

 

「......ユウジ、艦娘たちの所に戻れ。残存部隊が居ないか確認だ」

 

「了解!姫!」

 

 命令を聞いて、リ級が身を翻して、まだ砲撃の音が止まない戦闘地域に向かって雪降る海上を滑っていく。

 

「..................」

 

「いつまで、か。」

 

 

 

「死ぬまでだ。」

 

 

 

 RDの答えは。軽巡棲鬼に届くことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

RDの露払いにより、戦況は艦娘側へ。

しかしそんなとき。遅れて出撃したシエラ隊とガングリフォン隊

そして泊地の警護部隊の前に強敵が現れる。

名を挙げようとしてミスを連発する熊野を庇い、響が危機に陥る。

 

 次回「銃師卯の花」。 壊れた景色に、お似合いの思い出。

 




もう少しだけ続くんじゃ
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