盛大に最終回詐欺をやらかした作者です。
さて、今回から番外編として、蹴翠雛兎様の作品、「蹴翠雛兎の艦隊戦録」とのコラボレーション企画として 新章「パラオ攻略戦」を投稿します。
また今回の章ですが 「超展開」 が多い可能性があります。ご注意ください。
それでは ドゾー
出向
日照時間が目に見えて増え、寒い日も少なくなってきていた季節の某日、第五横須賀鎮守府の執務室にて。
この、当初からは見違えるほどの、立派になった建物の顔である提督の秘書を勤めていた、資源再利用艦一番艦のウツギは、自分の上司の隣に来て、仲良く一台のパソコンの画面とにらめっこを繰り広げていた。
「視察任務の部隊......」
「に、抜擢された......か」
まるで周りに誰も居らず、独り言でも呟くように二人が言う。
別に、視察に行くこと事態は特に問題でもなんでも無いことだった。事実、ここ何ヵ月かに恐ろしい戦果を叩き出してしまったウツギ達は、本部からの待遇もぐんと良くなり、片手で数えるほどではあったが、近くの基地への視察に従事したこともあったからだ。
ならば、何故この二人が難しい顔をして、液晶画面と不毛な争いを繰り広げていたのか......それは送られてきた電子メールの内容が原因だった。
「必殺の霊的国防兵器......」
「別世界から召喚された人間が提督を務める......」
「艦娘に引けを取らない戦闘能力と擬態能力.........」
「「なんだこれ」」
大量に羅列された、今回視察に赴く鎮守府の提督を務めている......蹴翠雛兎と言うらしい、一風変わった名前のその男の情報を見て。二人は頭を抱えていた。
液状越しに並んでいる、まるで、ファンタジー小説の登場人物の紹介のような、男の情報を、もう何度目かわからない回数で眺めながら。ウツギが口を開く。
「提督。まさかだとは思うが」
「ん?」
「本部の粋な計らいか?季節外れの四月バカじゃないだろうな」
「.........頭の固いお偉いさんがそんなことすると思うか?」
「......思いたい」
「俺もだ」
まったく、なんでこう毎度毎度変な仕事ばかり回されるんだ......。二人が同じ思考を脳に巡らせながら、また頭を抱える。
頭を抱えていてもしようがない、一先ずこんがらがった頭を冷やそう。そう思いながら、ウツギはメールの内容を声に出さないで、心の中で朗読してみる。
『視察対象
階級 憲兵隊長(元帥に匹敵する、独自行動の特別免許を所持)
備考
現在、深海棲艦との和平に向け進んでいる海軍に
平行世界より召喚された人間の特徴として、高い身体能力と、それを利用し艦娘に匹敵する戦力として戦闘に介入することが可能。
また、非常に精巧に女体へと変装する能力も併せ持つ。』
「しかし読めば読むほど眉唾物だ。そう思わないか」
「ん~......それが、意外と納得してるんだよ。俺は」
「何?」。深尾から返ってきた、予想外の返事にウツギが怪しい顔になる。そしてすかさず次の質問をぶつけてみる。
「こんな、ファンタジーの住民に納得できるのか?」
「少し脱線するかもしれないけど。いいか?」
「......?...どうぞ」
「俺の学生時代に広まってた噂があってだな。なんでも、「元帥の正体は異世界からやって来た人間だ」とか、そういう類いのオカルトなんだが」
そりゃあ、まあ......でも、さすがにそれだけで信じる気になるのか?
理由として弱いと感じたウツギが、深尾に突っ込みを入れる。
「たったそれだけで?弱すぎないか」
「いや、それが意外とバカにできない話も出回っててな。その一つが「艦娘を作ったのは、科学者と奇術師があくせく創った魔方陣から召喚された異世界人だ」って、言うもんなんだが」
「また異世界人か」
「考えても見ろ、空母の艦載機はどーやって変形している?艦娘の砲はあの口径でなんであんなに破壊力がある?......他にも色々あるけど、お前たち艦娘も何だかんだでメルヘンな存在だからな。テクノロジーが発達した今でも、これだけ訳の解らないヘンなとこがある」
「.........あぁあぁあぁ、なるほどな」
確かに。それは盲点だった。
灯台もと暗しってやつか......少し違う気もするが。勝手に一人で納得していたところ、そんなウツギへ深尾がこう言ってくる。
「で、どうする。引き受けるか、蹴っ飛ばすか」
「引き受けるしかないだろう」
「そうか?お前さんほど、会社に貢献したなら無視してもバチは当たらないだろ?」
「おいおい、主任が休みを強制するのか?普通は逆だろう?」
お互いに冗談を飛ばし合い、二人は笑いながら、また書類を捌く仕事へと戻った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「なんだこれ」
「昔、私が
どうしろと。
視察に行けとのメールが上層部から届いた日から飛んで、氷川鎮守府があるという「
突然後ろからやって来た
「使い道が思い付かないんだが」
「何も言わないで羽織ってみろ」
「...............」
太陽が容赦なく照り付け、肉が焼けそうなほど熱くなっているコンクリート製の港の地面に突っ立っていたウツギは、なんだか途端に周りの視線が気になり初める。
囲むように立っていたツユクサや漣といった面々が、目を輝かせてこちらを見ているのを......心を無にして、気にしないようにしながら。ウツギは渡されたマントを羽織ってみた。
「おおぉぉぉすっげぇぇぇ!?かっこいい!!」
「......マジカッケー!」
「似合ってるぜ」
「ほう............?」
やっぱりこーなった。だから嫌だったんだ......。
周りの部隊員......主に漣やツユクサが、子供のような屈託のない笑顔で騒ぎ立てているのを見て、ウツギが多少うんざりして溜め息をつく。
胸元に「
「このマント、何に使えと」
「視察とやらに行くらしいな」
「あぁ。それに必要なのか?」
「そうだ。......あの人間に聞いたが、なんでも強い人間が相手らしいな?なら、それでも着てけば、ちょうどいい威圧になるだろう」
「そんなことをする必要が」
「ある。絶対にだ。視察とやらで、明確に上下を教えてやるんだ。特殊な能力とやらが本当なら、それを鼻にかけて調子に乗っているかもしれん。徹底的に叩いてつぶ」
「ストップだRD。そんな物騒なことしに行くわけじゃねーんだからさ.........」
RDの過激な発言に、天龍が割って入ってお喋りを阻害する。
まあでも......いいな、これは。防水性で丈夫、見てみたら内側に多少は収納があるし、意外と使い道があるかもしれない。
かっこつけのようで苦手だな、と思いながらも、戦袍の着心地の良さにウツギが評価を下していると。視線の奥の海から、島まで自分達を運んでくれる予定の船がやって来るのが見えた。
「ん、時間か。全員荷物は?」
「バッチしぃ!」
「問題ないぜ」
「そうか。じゃ、行くか」
「留守は任せておけ」。そう言ってきたRDにガッツポーズで返事をしながら、ウツギは港に着いた船に乗り込んでいった。
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視察任務の一日目。
非常に若い男の仕事の様子を見ながら、
ウツギは淡々とチェック項目を確認していたそんなとき。
上層部の依頼が舞い込み、異色の共同戦線が展開されることに......
次回「召喚された男」。 ゴングが鳴る。
軽めのお話でした。割りと全体を通して軽いお話にする予定です。(フラグ
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