資源再利用艦隊 フィフス・シエラ   作:オラクルMk-II

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活動報告にて、キャラ人気投票を開催中です。
参加してもらえると、作者は涙を流して喜びます。

ではコラボ3話です。ドゾ。


情報収集

 

 とある高層ビルのエレベーターが、上層階に向けて稼働していた。

 その中で、壁に寄っ掛かって腕を組んで立っていた......派手なデザインのTシャツの上から白い軍服を羽織った男、城島大智(66話 姉の面影 参照。)が、自分の隣に立っていた秘書艦のВерный(ヴェールヌイ)に話しかける。声ははきはきとしていて明るかったが、男の目は笑っていなかった。

 

「チャンビキ、こりゃ、なかなか(こじ)れそうなネタだYo。そうは思わないかい?」

 

「同感だよ。奴さんがどう出てくるか......」

 

「ブルーショルダーに割く予算の増加申請。キナくさいとはこのことだNa」

 

「まぁなんにせよ。とりあえずは相手の出方を見守る、でしょ?」

 

「ハハハ、解ってるジャンか。頼むぜ」

 

「勿論」

 

 ベルが鳴り、エレベーターが停止。アナウンスとともに開いたドアから城島と響が狭い室内から出る。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

「では、反対意見が無ければ。富川(とみかわ)大佐の予算案は、本総会において可決されるものとなります。他に、意見は」

 

 上映前の映画館を彷彿とさせる、大勢の軍人とその秘書艦がひしめく薄暗い大会議室に、司会を務めていた紺色スーツの長身の男、佐伯渉(34話 濁り水 参照。)の声が響き渡る。「他に意見は」の発言に呼応し、円上に並べられた机と椅子の一つに響と並んで座っていた城島が、待っていましたとばかりに挙手をしながらマイクを口に近づけて喋り始めた。

 

「私は反対です」

 

「城島中佐、どうぞ」

 

「ありがとう。では、失礼して反対意見をば......」

 

 にこにこと愛想のよさそうな顔で......しかし虎視眈々と一人の男に狙いを定めながら、書類が挟まったクリアファイルを片手にドレッドヘアの男が発言する。

 

「予算案の見直し、艦娘への訓練費用と増員申請の部分ですが。これ、かかりすぎだと思いました。今は深海棲艦とも和平に向かっている状態ですし、少し削っても良いのでは」

 

 いつものラップ調の少しふざけた言動から、真面目な態度に切り替えて話す城島の後に続いて、響が畳み掛ける。

 

「同感です。戦争も一段落がついて穏やかな状態が続く今、これは必要な事でしょうか」

 

「それに......失礼ですが、富川大佐のブルーショルダー隊の情報は余りにも少ない。申請を通すには、もう少し内情の開示について、説明して頂きたいのです」

 

「.........では、大佐。これについては?」

 

 城島と響が座っていた席の、ちょうど向かいに座っていた白髪が目立つ痩せた男に、佐伯が聞く。老け顔の男は机に置いていた自分の帽子を手で弄りながら、微笑を浮かべて口を開いた。

 

「特務部隊の機密保持については......発足時に、この議場において結論が出ていた筈です」

 

 

「事情は変わったんだYo」

 

 

 朗らかな雰囲気からは一転して、城島はいつもの口調に戻ると同時に痩せた男......富川謙太郎という名前のこの男を睨み付けながら、その場に立ち上がり、一枚の書類をファイルから取り出して続ける。

 

 

「アンタの部隊は毎年、とんでもねぇ額の費用を注ぎ込んで、隊の増員をやってる。それも、何故か、問題起こしまくった札付きの悪タレの艦娘ばっかりNa」

 

 

「そればかりじゃねぇヨ。そんだけ派手なことやっといて、こちとらだーれもアンタの組織の全貌を知らねぇ。査察も突っぱね返すもんだから、誰一人としてだ。コレ、おかしくないかナ?」

 

 

「中佐!貴方の言葉遣いは本議場に似つかわしく......」

 

 

 城島の、およそ目上の人間に話すような言葉遣いでは無かったのを佐伯が制止するのを遮って。富川が尚も余裕がありそうな顔で話す。

 

「過去の記録が物語る通り、私の自慢の艦娘たちは鎮守府の防衛、敵地の攻撃など。任務を問わずに完璧に機能致します」

 

「また失礼ながら、言わさせて頂きますが」

 

「前回発言してくださった、そちらのお方の言葉は本当に信用に足るものなのでしょうか?」

 

 富川はそう言って、穏やかな顔をしながらある人物へと視線と顔を向ける。先には、深海棲艦との橋渡し役として活動し、軍の会議にも度々呼ばれるようになっていた女。RDが居た。

 

「装甲空......失敬、今はRDと言いましたな。正直な話、私は彼女の言う和平について懐疑的です。というのも、あなたは......言い方は悪いが、スパイの可能性だって未だに拭えていない。信じろと言うほうが難しいでしょう。よって、危険に対する軍備の拡大を兼ねて、今年も我が隊の兵員の確保を提案しました」

 

「...............」

 

 目をつぶって、佐伯の隣で黙って富川の話を聞いていたRDが、相手に問いかける。

 

「なるほど。富川大佐の言うことはもっともでしょう」

 

「ご理解いただき、感謝します」

 

「では、何をすれば、ひとまずこの場は信用していただけるでしょうか?」

 

「.........では」

 

 

「自分の手を、こう、その腰に付けた剣で刺す、なんてどうでしょう。」

 

 

 富川が言い終わった瞬間。素早くその場から起立したRDは、ずかずかと歩いて富川の前に立つと

 

富川の席に自分の右手を叩きつけ、机ごとその腕を突剣で串刺しにした。

 

 腕から伝わってくる痛みのせいで、額から脂汗を垂らしながら。極力無表情で、RDは腕から剣を引き抜きながら、目の前に居た男に向けて口を開く。

 

「これで......っ、どうでしょうか」

 

「......なるほど。軽率な発言でした。そこまで覚悟してのお言葉だったとは」

 

「ええ......嘘はつけない性分なもので」

 

 「お目汚し、失礼しました」。机を血で汚したことを謝罪して、他の人間や艦娘たちが唖然として言葉を失っているなか、RDは自分の席へと戻っていく。

 我に返った艦娘の一人が、持ち合わせていた布でRDの傷の応急処置をし、もう一人の艦娘は富川の机を拭くという、妙な光景が広がるなか。富川が口を開く。

 

「話題が逸れましたな。では、私が部隊の情報を機密として伏せていることについてですが......」

 

 たまたま机の血で濡れなかった部分に置いていたファイルから一枚の紙を取り出して、富川が城島と響へ説明をし始める。

 

「去年は我が軍の深海棲艦への攻勢が活発だった年だと言うのは、皆様ご存じの通りだと思います。そしてまた一つ、大事な出来事が多数、起きましたよね?」

 

「大事な出来事?」

 

「おや、ご存じないですか。記憶に新しい事件があるじゃあないですか」

 

 

「そう。第五横須賀鎮守府が、場所を特定されて襲撃される、という案件です」

 

 

「これ以外にも、ポクタル島警備府、第二単冠湾泊地など。探せばまだあるでしょうが、基地の場所を正確に特定して相手が攻勢を仕掛けてくるなど、今までは珍しいことでした」

 

「これらの事態に対する調書を見て、私なりに考えたのですが、もしかすると、あの例の「田中恵」のような人間がまだ軍に居るかもしれない、と言った仮説が立てられます」

 

「結論からいいますと、そうした不確定要素がゼロとは言い切れない訳です。たとえ味方である軍内部においても、みだりに情報を提供すれば、弱点を敵に与えることになるのではないかと。よって、我がブルーショルダーの機密は厳重に守られるべきである、と信じる次第であります」

 

「......城島中佐、どうですか」

 

「......ッ。撤回します。先程の非礼、申し訳ありませんでした」

 

「いえいえ。この程度は気にしませんので」

 

 歯を食い縛り、謝罪をしながらも相手を睨み付けながら、城島が席につく。

 

「反対意見は......ありませんね。それでは、富川大佐の予算案は可決されたものとします」

 

「.........感謝します」

 

 ニヤリ、と笑いながら。会議が終わったと同時に、誰よりも早く、上着と帽子を着て富川は会議室から出ていく。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

「.........うまく逃げられましたね」

 

「Ah~......こりゃ、ボロが出るのは当分先かもNa」

 

 本当は予算の話し合いなどではなく。艦娘を、条約を無視した使い方をする......一般の言葉で言えば、ブラック企業に似た制度が敷かれていると噂される、富川の鎮守府についての内情を吐かせるための会議が終わって数分。話しかけてきた佐伯へ、ため息をつきながら城島が言う。

 

「諜報員も潜り込ませる隙がなく、普段の行動も不透明......それに口も達者ときたものです」

 

「これ以上、軍の持ち物の筈の部隊を私物化されちゃ、困るん・だ・が・Na~......」

 

「.........アレを使ってみればいいんじゃないか」

 

「......?何をだい?」

 

 刺し傷に包帯が巻かれたRDが口を開く。

 

「必殺の霊的国防兵器、とか言う人間だ。こういうときのために呼び出したんだろう」

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

「羨ましいよなぁ......いや、ほんと」

 

「何がデスか?」

 

「この建物だよ。露天風呂を模した妙に洒落っ気のある入渠ドックに、自前の資源採掘場......そしてこのでっけぇ建物」

 

「温泉は確かに魅力的ッスよねぇ」

 

 深海棲艦染みた容姿のツユクサを特に敵視することもなく。彼女の、氷川鎮守府を羨ましがる発言に、金剛が表情を緩める。

 

 シエラ隊が幻島に到着し、蹴翠提督の部隊とのいざこざがあった日の翌日。お互いの親睦と交流を兼ねて、と言うことで、シエラ隊と蹴翠提督傘下の艦娘が食堂で雑談を楽しんでいた。因みに蹴翠提督と叢雲、ウツギ、アザミは厨房で朝食の準備をしていたので世間話の席には居ない。

 氷川鎮守府の、なんとも風情のあるお洒落な設備の数々を、天龍とツユクサがしきりに誉め、それを聞いた金剛や叢雲が得意気に笑うという流れができはじめていたとき。若葉がこんなことを言い出す。

 

「利点に、羨むことばかり、でも無いだろうさ。ここはねぇ.........んふフ♪」

 

「......?どういうことですか?」

 

「体育館だか、運動場とか言ったか。あれが無いのが退屈でしようがないね......」

 

「お前しょっちゅうツユクサとバスケやってるもんな」

 

 ここには無いが、自分達の鎮守府には室内運動場があるんだぞ、等と今度は若葉が負けじと第五の良さを話し始めた時。料理が盛られた皿を両手に持った四人が食堂の奥から現れる。

 

「何の話だ?ずいぶん楽しそーだったけど」

 

「皆さんの鎮守府の特色デース。結構違いがあるらしいデス」

 

「へー。まぁ、俺たち島から出たこと無いしなぁ」

 

 机に料理を並べながら、蹴翠提督が金剛と何気ない会話をかわす。そこへ、自分の携帯を覗き込んでなにかを見ていたウツギが割り込んでくる。

 

「蹴翠提督、来客が来るみたいです」

 

「え、また?」

 

「はい。しかもなかなかの大御所ですよ?」

 

 蹴翠提督が、ウツギが差し出してきたスマートフォンの画面を見てみる。そこには、「依頼主 第一横須賀鎮守府・元帥補佐 佐伯 渉」の文字が並んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

本部から直々に島へと赴き、

佐伯はとある鎮守府について、蹴翠提督とウツギに話す。

パラオ泊地、富川という男、ブルーショルダー。

そして肝心の「仕事」の内容とは。

 

 次回「疑惑」。 狙いを定めて、引き金を引く。

 




ドンパチ合戦はもう少し先になります。
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