「あ、そんなのやってたの?参加したい!」という心優しい方はお急ぎください。
「ん......?」
「おっ、おい......なんだアレ...」
「「「...............」」」
富川から仕事の内容を聞き、今。磯風、嵐、加古の三人は、それぞれがバズーカ砲、軽機関銃、サブマシンガンと重火器を担いで廊下を歩いていたところだった。
そんな彼女らの異様に殺気を漲らせた様子をみて、思わず後ずさりして道を譲る艦娘たちを何とも思わず。三人はアザミの部屋の扉の前に到着する。
「......よし、いいぜ」
「解った」
部屋の入り口近くに立て掛けてあったシャベルで磯風がドアの窓を叩き割る。そしてすかさず加古がそこに手榴弾を投げ込み、部屋の中で大爆発。ドアが吹き飛び、独居房のような部屋内は黒焦げになる。しかし......
「......?......居ねぇな」
「どこ行きやがった」
部屋の中に誰もいなかったため、嵐が廊下を歩いていた艦娘一人を捕まえて質問する。
「オイ、アザミの野郎はどこいった」
「知るかよ。食堂か図書室じゃねーの?」
「......よし、その二つに行ってみるか」
「りょーかい。ボス」
「おい何するつもりだよ」「何だあいつら......」。アザミの部屋を襲撃したことへの周囲の感想を聞き流しながら、三人は駆け足で図書室へと向かう。
場所は変わって図書室。三人から命を狙われているなどとは勿論知るはずもなく、アザミは料理のレシピが載っている本を立ち読みしていた。
醤油で味付けする和風ロールキャベツか。使えそうだな。そんな、平和な事を彼女が考えていると。
彼女の背後から、突然、嵐の嬉しそうな怒号が飛んできた。
「居たぞ!!ぶっ殺せェ!!」
「.........!?」
いきなり何の用だ?そんな考えが起きる時間もなく。突然嵐が本棚を三つほど挟んだ場所から機関銃を構えて乱射してきたため、慌ててアザミがその場に
......とうとうバレたってことか。......逃げるしかないな。
棚と本が障害物となり、運よく精確な照準は付けられずに済んだアザミは、撃ち抜かれた家具や書物の破片が降り注ぐ中、同じ体勢のまま這って部屋の窓まで近づくと、素早く立ち上がってガラス戸に飛び込む。そして窓を突き破って廊下に出て、勢いを殺さずに駆け足で三人から逃走する。
「チッ、クソが!」
「追うぞ!」
「当たり前だ!」
新米が......逃げられると思うなよ。
嵐が、機関銃の銃身を交換するを待ってから、二人を引き連れてバズーカ砲を担いでアザミを追い掛ける磯風が、険しい顔でそんなことを考える。
アザミが突き破った場所から三人が廊下に出てすぐ。丁度通路の角を曲がるところだったアザミ目掛け、磯風がバズーカの狙いをつけ、躊躇いもなく引き金を引く。
「そこだぁ!!」
「なっ、何!?」
「危なイ!!」
アザミが廊下を走っていると、たまたま鉢合わせた......共食いで運よく逃げ切って生存した「山風」の肩を引っ掴んで一緒に倒れ込み、受け身をとって、飛んでくる壁の破片と爆風を凌ぐ。
あいつら......見境なしにやる気か......!
この子だけじゃ危ない。仲間などお構いなしに、ロケットをぶっ放して来た相手にそう思ったアザミは震える山風の手を握り、全速力で廊下を駆ける。
「な、何なの......!?ほっといて......!!」
「うるさい......死ぬ......嫌......来い......解っタ?」
「ちょ、ちょっと!」
一体何が起こっているのか状況が理解できていない山風を強引に説き伏せ、三人の無法者から二人が逃走する。
そんな様子を偶然見ていた人物がある。五十鈴に化けて潜入していたステラだ。
バレたみたいだ。助けなきゃ......!
二人を追い掛ける三人をさらに追う形で、ステラもまた廊下を駆けていった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「オラオラ、もっと飲めよw」
「うぉ~酒がうめぇなw」
相も変わらず、酒臭い......でも流石にここなら。廊下を駆け抜け、二人が食堂に入る。
ここまで人が多くて、それに被害があったら困るような場所なら流石に銃なんて撃ってくるはずが。アザミのそんな考えで選ばれた逃げ場所だったが......
「居た!あそこだ!!」
「危ねぇぞォ!!」
彼女の企みは呆気なく崩れ去る。
......ジョーダンでしょ。こんな場所で機関銃なんて撃つの......?
珍しく焦ったような表情を浮かべながら、アザミは大勢の艦娘たちにお構いなしに機関銃を撃ちまくる嵐から、山風を引き連れて、入ってきた方向とは反対側の廊下に出て壁を盾にする。
銃弾で粉砕されていくグラスや酒の缶が飛んでくる中で、唐突に弾の雨が止む。
しめた、ジャムか銃身の交換か。
今しかない。そう思ったアザミが入隊者全員に配られていたオートマチック拳銃を取り出し、壁から体を出したその瞬間。
ぞっとするほど冷たい目で笑っていた磯風が、自分目掛けてバズーカを発射してくるのが見えた。
「死ねぇ!!」
「.........!!」
最初からこれが狙いか。
隣で啜り泣いていた山風を強引に立たせ、またアザミが廊下を駆けていく。背後では大爆発が起き、破片が足元まで飛んできた。
もし今でもあそこに座っていたら......。冷や汗をかきながら、アザミは山風を励ましながら走る。
「はぁ、はァ.........!」
「いっ、行き止まり!」
やってしまった......どうやらうまく自分は追い込まれていたらしい。
山風と仲良く三人から逃げ回ること数分、使われなくなった格納庫に辿り着いてしまい、アザミは立ち往生をしていた。
どうにか進めないか......?
閉じていた巨大な扉を体重をかけて引っ張ってみる。すると、少しずつではあるが、開いていくのが確認できた。
「山風......そっチ......」
「うん」
「そこまでだ!!」
「............!」
追い付かれた......!どうすれば...。
アザミの顔から汗が流れ落ち、横の山風が青い顔をして絶望していたとき。
追い掛けてきた三人の頭上から銃弾が降り注ぎ、三人がその場に寝そべって上を向く。
アザミと山風の二人も上を向いて、誰が何をしたのかを確認する。見れば、どうやって昇ったのかまでは解らなかったが、二階からアサルトライフルで威嚇射撃を行うステラの姿があった。
「クソッタレがぁ!!」
「逃げル......」
「わ、わかった!」
ステラが時間稼ぎをしてくれていることを感謝しながら、二人が扉の隙間から奥に進む。追走を止められた三人はといえば、言わずもがな、全員が顔に青筋を浮かべながら、足止めをしてきたステラに殺す気で銃弾をお見舞いしていた。
「貴様も死にてぇかァ!!」
「食らえ!!」
「...............ッ」
仰向けに寝た体勢のまま加古がサブマシンガンを斉射、続けて磯風が立ち膝をついてバズーカを撃ち、たまらずステラがその場から逃げる。
チッ、邪魔が入った。まぁいい。どうせここならもう逃げられん。
中に入った瞬間、不意打ちなどさせるものかという意味合いで嵐が機関銃を乱射し、また銃身を交換する、そんなとき。二階からの五十鈴の声が三人の耳に入った。
「どうして、磯風!アザミになんの恨みがあるの!?」
「仕事さ!所長に殺せって言われたんでね!!」
「ザコは引っ込んでな!!」
質問に暴言で嵐が返答したあと、加古が手榴弾のピンを引き抜きながら、暗闇へ向かって口を開く。
「聞いてるかアザミ?今までは運良く生き残ったみてぇだがな、そうはいかねぇぞ!!」
あてずっぽうに投げられた手榴弾が爆発する。すると、積んであったスクラップの崩れる音に混じって、鉄板張りの床を走る足音も聞こえたことに、三人が薄気味悪い笑顔になる。
「......逃げたな」
「あぁ」
「よし、アタシが上から回る。注意引いて」
「任せろ」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
全く。なんてやつらだ。自分を殺すためならなんでもアリか?
怯える山風の背中を撫でながら、アザミがハンドガンを片手に、部屋に響く物音や足音に全神経を集中させて周囲を警戒する。
コン、と、自分のすぐ上から聞こえた音に敏感に反応してアザミが上に銃口を向ける......が、すぐに構えを解いた。居たのはステラだった。
「......私よ!」
「...............」
良かった。味方が増える。
相手の姿を確認したアザミがほんの少しだけ安心感を覚える。
「で、どうするの。狙われてるけど」
「......あの......動けない......やつ......出来ル?」
「「目を会わせる」ことさえできれば......」
アザミとステラがそんな会話を交わしている最中。三人が隠れていた場所を機関銃の弾とバズーカの弾が掠め、近くにあったスクラップの山が粉々に砕け散る。
「っと、ここにずっと隠れているのもまずい......」
ステラがそう呟いた途端に、アザミが彼女へ銃を向けて引き金を引く。
一体何を......!?
ステラが疑問を持つ間もなく、発射された銃弾は彼女の頬を掠める。そして外れた弾は、その背後の上にいた加古の肩に命中した。
気付かれるとは思っていなかった加古は、肩を撃ち抜かれた影響で持っていた武器を落とし、体勢を崩して三人が隠れていた場所に落ちる。
「っがぁ!!てっ、テメェ!!」
「.........危なイ」
「...ありがとうッ、来てるよ!」
「頼んダ」
「任せて」
二人分の足音がこちらに向かっていることを察知し、ステラが隠れていた積み廃材から身を乗り出す。はたしてそこには、火気類を構えて走ってきていた磯風と嵐の姿があった。
「わざわざ出てきたァ!?」
「手間ァとらせやがって!!」
銃声を味方の物だと間違ったらしく、ステラが物陰から出てきたのを加古のやったことだと結論付けて、元気よくこちらを撃ち殺そうと武器の銃口を向けてくる相手へ。
ステラが「目を会わせる」。
「「...............!?」」
「ふう。終わった」
「もう大丈夫」
「ほ、本当に?」
「うン」
アザミも島で一度掛けられた、ステラの「目を会わせた人間が、その場から動けなくなる」能力で微動だにできなくなった二人から、アザミが武器を奪い、それを並べて持っていた銃で撃ち抜いて壊す。
これで大丈夫か。もう相手が何も持っていない事を確認したアザミが、ステラに金縛りを解くように言う。
「もう......いイ......」
「わかった」
「............ッ!!??」
固定されて立っていた二人がその場に転び、すかさずアザミとステラが持っていた銃を向ける。
......ここからどうしようか。
アザミが今後の動きについて考えようとしたとき。部屋のどこかに付いていたスピーカーからこんな声が響いてきた。
『どうした。早く始末しろ』
「ご覧の通りです。逆に殺されそうですが?」
『命令に背くと言うならば、貴様らの命もないぞ!!』
「......!?何だと!!」
スピーカーを中継しての磯風と富川の会話が終わったあと。
部屋のガス管が大爆発を起こし、室内の壁や天井が崩落し始めた。
「............!!」
「えっえっ!?何なの!?」
「あの野郎......最初からこうするつもりだったのか!!」
............。取り合えず逃げるか。素早く結論付けたアザミは、肩を撃ち抜かれて倒れていた加古に肩を貸しながら急いで出口へと走る。
そんな彼女の様子を見て、ステラが変な顔をして走りながら質問をする。
「そいつ敵よ!?」
「逃げる......味方......多いほう......良イ。......手伝わせル」
「ケッ、誰がテメェなんかに」
「そうか?私は乗ったぞ」
「ハァ?」
崩落する天井や鉄パイプが降り注ぐなか、なぜか楽しそうな顔をしながら、走ってアザミを追う磯風に、嵐が意味がわからないとぼやく。
「ここの生活も飽きてきたところだ。所長も気にくわなかったしな」
「チッ......勝手にしやがれ」
「それで、どこにいくんだ?」
「格納庫」
「近道がある。ついてこい」
「............どうモ」
「構わんさ」
.........正直一緒に行動したくないが......仕方がないか。
先頭を走る磯風に着いて、廃棄格納庫を脱出しながら、アザミはそんな事を考えていた。
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ついに泊地から脱出を果たす二人とその付き添い四人。
爆発騒ぎと脱走騒ぎ、そして銃弾飛び交う暴動が発生し、
事態は意外な方向へと進んでいく。
次回、「血染めの青い肩」。 これがブルーショルダーだ。
というわけで鬼ごっこ(捕まったら死ぬ)回でした。