アナザーラバー   作:なめらかプリン丸

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第1話

この日も束は、授業中にも関わらず一人でパソコンをいじっていた。

 

その事に、周りの生徒はおろか、先生すらもちゅういをしようとはしなかった。

 

束(はぁ…やっぱり、学校なんてつまらない所に来るんじゃなかったよ。ちーちゃんとクラスも違うし、もう明日から来るの止めようかな。)

 

束は日頃から退屈していた。

小学生には似つかわしいその頭脳のせいで、千冬以外だれも自分に話し掛ける事すらしない。

 

そんな環境におかれたからなのか、千冬とその弟の一夏、そして妹の箒以外は人とすら思わない程だった。

 

ふと先生の方を見ると、その先生は束から目をそらした。

 

束(本当に下らない。なんでちーちゃん達以外の奴と同じ空間にいなきゃならないんだよ。)

 

だが今日のこの日に、束のこれまでを覆すある一人の男に出会ったのだ。

 

「遅刻してすみません。あまりにも久々過ぎて、教室を忘れてました。」

 

扉を開けて入ってきた男に、皆の注目が集まった。

 

「ねぇあれって、誰だっけ?」

「知らないのかよ。ほら先生が前に言ってた入院中の…。」

 

教室がざわつてきた。

 

束(誰だあいつ?初めて見る顔かも知れない…。一応、クラスの奴の顔は覚えてるから、わからない知らないはずは無いけど…。)

 

この男の事を、束が知らないのも無理はない。

 

この男が登校してきたのは、実に1年ぶりくらいだからだ。

 

先生「こ、幸太郎君。もう登校して良いんだね…。」

 

幸太郎「はい!今日は体調が良いんで来ました。」

 

先生のしゃべり方や顔色を見て、この男も自分と同じ様に歓迎されていない事を、束は感じた。

 

だが、それでも少し気になったくらいでそれ以上は関係無いと思っていた。

 

幸太郎「そう言えば先生、俺の席はどこですか?」

 

丁度同じタイミングで、授業の終了を告げるチャイムがなった。

 

先生「さ、さて皆さん授業はこれでおしまいです。帰りの会は良いので速く帰りましょう。」

 

そう言って足早に教室から出ていってしまった。

 

他の生徒も、唖然としてはいたがあまり気にする事なく帰りの支度をして下校を始めた。

 

皆が下校を始める中、束は未だにパソコンをいじっていた。 

千冬と一緒に帰るので、千冬が来るのを待っているのである。

 

幸太郎「ねぇ、君は帰らなくて良いの?もう教室に残ってるの俺達だけだよ?」

 

突然話し掛けられ束は驚いたが、幸太郎の方を見る事なくパソコンの画面を見続けていた。  

 

幸太郎「ねぇってば、俺の話聞いてるの?

どれどれ…、うぅ~ん、なんだか難しそうな画面だね。」

 

幸太郎は、パソコンの画面を覗きこんだ。

そしてパソコンの画面に写る、難しい数式や図形に驚いていた。

 

束「はぁ…、鬱陶しいなお前。束さんはお前の相手をしてる程暇じゃ無いんだよ。

お前こそさっさと帰れよ。」

 

幸太郎「ねぇねぇ、これってパソコンって言うやつだろ?凄いな…本物だ。」

 

束の話をお構い無しに、幸太郎は束のパソコンをジックリと見ていた。

 

束「本当に鬱陶しいよ!最新のやつだけど、そんなに珍しく無いだろ。」

 

幸太郎「だってパソコンなんて、話で聞いたくらいだから。

それよりも、君の名前は?」

 

幸太郎の言っている事がわからない束だったが、名前を聞かれたので答える事にした。

 

幸太郎「篠ノ之 束って言うんだ。いい名前だね。俺の名前は寿 幸太郎(ことぶき こうたろう)。よろしくね。」

 

幸太郎は笑顔で束に握手を求めた。

そんな幸太郎の笑顔を見て、束はなぜか幸太郎の事が気になりだしていた。

 

そして幸太郎の手をたどたどしながら、握った。

 

幸太郎「良し!これで俺と束は親友だ。これからよろしくね束。」

 

束「し、親友だと!いきなり何を言い出すんだお前は!」

 

幸太郎「だって、自己紹介をして握手を交わせば親友になれるって、本に書いてあったよ?」

 

無邪気に首を傾げる幸太郎を見て、束はなぜか恥ずかしくなり赤面してしまった。

 

束「いきなり親友って、お前はバカなのか!」

 

口では悪態をつきながらも、親友と言う単語が嬉しかった。

 

それにこの男となら、仲良くなれると束は感じ取っていた。

 

束「ま、まぁしょうがないから、お前の親友になってあげるよ。よ、よろしく…幸太郎//」




皆様、本当に末長く見守って下さい!

必ず皆様を満足させる作品にします!
そして完結させます!

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