授業が終わり、幸太郎は更衣室に来ていた。
幸太郎「ふぅ、今日は見学だけだったけども楽しかったな。まだ一限目なのに、凄く満足してるよ。」
一夏「全く、呑気な事を言ってますね。それよりも、用務員としての仕事をしなくても良いんですか?」
一夏と幸太郎は、着替えをしながら他愛もない会話をしていた。
幸太郎「ふふっ、心配はご無用だよ。こう見えても、ちゃんと仕事はしているよ。
最近、廊下や教室が綺麗になってるでょ?それ全部、俺が頑張って掃除したんだ。」
確かに幸太郎の言う通り、最近廊下や教室は今まで以上に清掃が行き届いている。
一夏「そうだったんですか!やっぱり、幸太郎さんは凄いですね。」
幸太郎「ありがとうね。何か、褒められると照れるね…、ゴホッ、ゴホッ!」
するといきなり、幸太郎は辛そうに咳をした。
そしてその手には、血が付いていた。
一夏「こ、幸太郎さん!大丈夫ですか!」
幸太郎「ハァ…ハァ、だ、大丈夫だ…よ。心配…しな…ゴホッ!ゴホッ!」
明らかに大丈夫では無い事は、一夏にも直ぐにわかった。
顔色がいつもよりも悪く、目の焦点も合っていないからだ。
一夏「全然大丈夫じゃ、無いですよ!今すぐに、千冬姉やマイルナさんを読んできます!」
一夏がそう言って更衣室から出ようとすると、幸太郎が一夏の服を掴んで止めた。
一夏「どうして止めるんですか!」
一夏が幸太郎の腕を振りほどくと、幸太郎はフラフラと後退りをしてそのまま座り込んでしまった。
一夏「すぐに誰かを呼ばなきゃ、ダメな事くらい俺でもわかりますよ!」
幸太郎「だ…ダメなんだ…よ…そ、それ…が。もう、誰に…もし…心配をかけな…いって、誓ったん…だよ。だか…ら、一夏はなにもみ…見てない…んだ。」
そう言って幸太郎は、無理やり立ち上がった。
一夏「そんなのって、間違ってますよ!誓ったって、そんなの関係無いですよ!」
だが一夏は、幸太郎の真剣な、誠実な目を見て幸太郎の本気を感じた。
ゆえに、幸太郎の想いを踏みにじる事が出来ない。
それでも、幸太郎を助けたいと想っている一夏は、葛藤していた。
一夏「俺は…、俺はどうすれば良いんですか!幸太郎さん!」
幸太郎「だから言っただろ?何も見てないし、俺に何も起きてない。」
そう言う幸太郎だったが、未だに顔色が良くない。
それでも、一夏に心配をかけまいと笑う幸太郎の想いを、一夏は無駄に出来なかった。
一夏「わかりました。今回は、幸太郎の想いに負けました。
でも、次はこんな事はしません。貴方が何を言っても、必ず誰かを呼びます!」
幸太郎「そうか…。ありがとうな一夏、やっぱりお前は優しいな。さてと、速くしないと次の授業に間に合わなくなるぞ?」
幸太郎は更衣室から出ようとしたが、まだ足下が於保付いていた。
そんな幸太郎を見て、一夏は幸太郎に肩を貸した。
一夏「心配しなくても、千冬姉達の所まではこんな事はしません。
本当はしたいけれど…すみません。」
せめてもの看病に幸太郎は、少し涙ぐんでしまった。
幸太郎「ありがとう一夏。本当に君は優しい男だよ…。」
なんだか、幸太郎の体調が本格的にヤバイです!
このままで本当に大丈夫なのでしょうか?