次の日、幸太郎とマイルナは二人で見回りを兼ねて、廊下を歩いていた。
幸太郎「そう言えばお姉ちゃん、一夏達のクラスに転校生が来てるんでしょ?」
マイルナ「あら?どこからその情報を入手したのかしら?」
廊下を歩く二人は、とても仲が良さそうで本当に姉弟の様だった。
幸太郎「どこからって、普通に職員室で話題になってたよ?なんでも、代表候補生がくるんだってね。
もうすぐ一夏達のクラスだから、ちょっと覗いて行こうよ。」
楽しそうに歩いている、幸太郎の後ろ姿を見ていると、とても病魔に犯されているとは想えなかった。
そして幸太郎が教室を覗いた時、それはとても間が悪いタイミングだった。
なぜなら、ラウラが一夏を叩いた瞬間だったからだ。
~~~教室~~~
一夏がラウラに叩かれ、教室の空気が凍っていた。
だが、そんな空気もハッとなった一夏によって壊された。
一夏「いきなり何をするんだよ!」
ラウラ「うるさい!お前みたいな軟弱な男が、教官の弟なばかりに!」
クラスのアイドル的存在の一夏が叩いた事により、クラス中の女子達がラウラに軽い敵意を向け始めていた。
一夏「俺が千冬姉の弟で、何が悪いんだよ!俺だって、少しでも千冬姉に近づける様に、毎日努力してるんだよ!」
ラウラ「そんな教官に甘えた考えが、教官の重荷になっている事に、どうして気がつかんのだ!」
千冬「お前達!いい加減にしておけ。今は、自己紹介の時間だ。ラウラ、元の位置に戻れ。そして一夏、お前も早く座れ。」
千冬の一喝で、ザワついていた教室が静かになった。
そして千冬は扉の方を見た。
千冬「コソコソ見てないで、入ってこれば良いだろ幸太郎。」
幸太郎「いやだって…、中々入れそうな雰囲気じゃ無かったし。」
千冬に呼ばれ、幸太郎は恐る恐る教室に入ってきた。
千冬「紹介しておこう。今日から転校してきた、シャルル・デュノアと、ラウラ・ボーデヴィッヒだ。」
幸太郎「へぇ、ラウラちゃんにシャルルちゃんか、俺の名前は寿 幸太郎。以後お見知りおきを。」
そう言って幸太郎は、お決まりの握手を求めた。
シャルル「シャ…シャルルちゃんって!僕は、男です。」
そう言いながらも、シャルルは幸太郎の手を握った。
幸太郎「そっかシャルルちゃんじゃ無くて、シャルルくんだったんだね。それは失礼だったね。
じゃあ改めてシャルルくん、俺達は今日から親友だ。よろしくね!」
幸太郎の独特のテンションに、シャルルはタジタジになっていた。
幸太郎「それで、そっちのラウラちゃん?で合ってるのかな?君も今日から親友になろうよ。」
改めて幸太郎は、ラウラに握手を求めた。
必ずこの子も、自分と親友になってくれると信じていた。
ラウラ「お前が、教官の言っていた男か…教官、この男のどこが強い男なんですか。
こんな顔色の悪くて、すぐに倒れそうな貧弱な男。こんな男のどこを見習えと言うんですか!」
ラウラは、幸太郎には一切目もくれる事無く千冬に責めよった。
ある種、初めての対応に幸太郎は頭がついていかなかった。
千冬「す、すまない幸太郎!お前の事は、ドイツ軍にいた時に皆に話していたんだ。
私の親友に、とても強くて見習うべき人がいると…。」
幸太郎「い、良いんだよそんなの…、確かにラウラちゃんの言う通り、顔色の悪い軟弱な男だよ…。
だから、気にしてな…ゴホッゴホッ!」
マイルナ「幸太郎、無理しなくても良いのよ?私がついているわ。」
マイルナは、幸太郎の涙と汗を拭いた。
マイルナ「さぁ幸太郎、あんまり長居はしちゃダメ。仕事に戻りましょ。」
マイルナは幸太郎に肩をかしながら、教室から出ようとしていた。
マイルナ「おいドイツの小娘、お前が一夏を叩こうが私は気にしない。
でも、幸太郎を困らせる事をするならそれなりの対応をするわ…。」
マイルナの強い気迫とオーラに、千冬すらもビビってしまっていたのだ。
マイルナさん、怖すぎです!
千冬をビビらずなんて、そうとうですよね。
なんかラウラが、あまりにもツンツンし過ぎですね。