VTシステムに操られながらも、ラウラの意識はハッキリとしていた。
そんなラウラが目の当たりにしていたのは、自分の攻撃で破壊されていく会場、そして傷ついていく箒達の姿だった。
ラウラ(違う!私が望んでいた力じゃ無い!こんな強さは欲しくないんだ!
なのに…なのにどうして私は動けないんだ!)
必死にISを操ろうともがいて見るが、まるで体を拘束されたかの様に、ピクリとも動く気配がない。
そして皮肉にも、VTシステムの破壊と圧倒的な力は、幸太郎に会う前に望んでいた、誰よりもただ強く全てを力のみで越えたいと願っていた、あの頃の理想その物だった。
ラウラ(誰か助けて…、誰か私を止めてくれ!教官、箒、マイルナさん、こうた…。)
この瞬間ラウラは、冷たくまるで底無しの泥沼に沈んでいく様な異様な感覚が襲ってきた。
この感覚を、ラウラは本能的に危険な物だと理解した。
この感覚に飲み込まれれば、二度と元には戻れない。
二度と幸太郎達には会えないと、何故だか理解できた。
必死にその感覚から逃れようとするが、そんなラウラを嘲笑うかの様にその感覚はラウラを少しずつ飲み込んでいった。
飲み込まれるにつれ、ラウラの心の中にある暖かいモノが消え、逆に憎しみや怒りそして虚しさが込み上げて来ていた。
ラウラ(嫌だ…怖い!寒い、凄く寒い。これは、幸太郎の優しさとは真逆、私の望みとは逆。
このままだと、私が私じゃ無くなってしまう!)
だがそんなラウラの考えも、少しずつだが憎しみや怒りと共に薄まっていた。
感情の無い、目に映る物全てを破壊する兵器に近づいていた。
ラウラ(何だろうこの感覚は…。頭の中が静かだ…、何も考える事が出来ない…。
でもなぜだ?この感覚は気持ちが良い…、このまま私は無になるのか…。)
ラウラはもう何も考える事すら出来ない程にまで、VTシステムの侵食が進んでしまっていた。
そしてVTシステムがラウラの全てを侵食しようとしたその瞬間、ラウラの胸の当たりから暖かな何かが来ていた。
ラウラ(何だこの暖かさは…、優しくて気持ち良い…。)
ラウラが胸の方を見てみると、そこにはマイルナから渡されたペンダントが首から下がっていた。
幸太郎の想いが詰まっているペンダントが、ラウラをVTシステムから護るためにラウラの心を暖めていた。
ラウラ(そうだ、私は知っていたでは無いか!真の強さと力を!
私には、幸太郎の優しさと想いがついているでは無いか!そんな私が、こんな事で自分を失う訳には行かない!)
自分を取り戻したラウラに、VTシステムの侵食が収まり始めていた。
そして、ラウラは自分が抱いていた幸太郎への想いに気がついた。
ラウラ(そうか、私は幸太郎の事を愛しているんだ、今の私の心を支えているのは、幸太郎だったんだ。
なら、私は無事に戻りトーナメントに優勝して、幸太郎に私の想いを伝えなければならないんだ!)
少しずつ体の自由が効いてきたラウラは、目の前に見えてる明るい光に手を伸ばそうとしていた。
そしてその光に手が届いた瞬間、ラウラのISが解除されVTシステムからラウラは解放された。
ラウラ(やった!これで私はまた戦える!これで私は、幸太郎に会える…。)
ラウラはあふれでる幸福を噛み締めながら、その場で気を失った。
どうも皆様、明けましておめでとうございます!
原作との大きく話しが異なりますが、深く気にせず楽しんで頂けたら本当に幸いでございます。
これからも、アナザーラバーを宜しくお願いいたします。