ラウラ(あれ…、ここはどこなんだ…。)
ラウラが目を覚ますと、そこには見覚えのある天井が見えていた。
転校してから毎日幸太郎のお見舞いに参っていた、保健室の天井である。
ラウラ(そうか、私はあのまま気を失ってしまったのか…。)
そうしてラウラは体を起こそうとしたが、体に激痛が走った。
千冬「あまり無理はするなラウラ。一応治療は施したが、まだダメージが残ってる。」
右側を見てみると、千冬が座っていた。
ラウラ「教官、そうですか教官がわざわざ治療をしてくださったのですか…。」
千冬「治療の礼なら、そっちの阿呆に言ってやれ。全く、病み上がりで動くなと忠告したのに!」
千冬に言われた方を見ると、そこには椅子に座りながら眠っている幸太郎がいた。
幸太郎「…あれ?目が覚めたんだねラウラ。大丈夫?痛い所は無いか?気分は大丈夫か?」
明らかに顔色が戻っていない幸太郎に心配され、ラウラは涙を流した。
ラウラ「こ、幸太郎!お前こそ大丈夫なのか!どれ程に私が心配したと思っているんだ!」
ラウラは、体の痛みなどお構い無しに起き上がり幸太郎に抱きついた。
そして今までの寂しさと愛しさを込めて、強く抱き締めた。
幸太郎「そんなに強く抱き締められると、凄く痛いよ。それより、千冬にある程度の話は聞いたよ。
そのVTシステムって言う物のせいで、大変な目に合ったんだね。」
マイルナ「貴方達、病み上がりなんだからこれでもノンで、大人しくしてなさい!」
そう言ってマイルナは、ラウラと幸太郎に紅茶を差し出した。
その紅茶を一口飲み、ラウラはVTシステムに侵食されていた時の事を思い出していた。
力に憧れ、力に溺れていた愚かな自分。そんな自分のせいで、あの様な惨劇が起きてしまったと、ラウラは心から悔いていた。
千冬「あまり気にする事は無いぞ。VTシステム自体が、お前には内緒で搭載されていたんだ。
お前は全く悪くはない。お前が責任を感じる事は無い。」
千冬がそう励ましても、ラウラの心が晴れる事は無かった。
理由や経緯はどうあれ、自分起こした事である。
そんな落ち込んでいるラウラの頭を、幸太郎は優しく撫でた。
ラウラ「な!いきなり何をするんだ幸太郎!」
幸太郎「ラウラ、君が過去に強い力、圧倒的な強さに憧れたのは聞いたよ。
確かに、人をただ傷つけるだけの強さはいけない。」
ラウラ「そんな事は十分わかっている!やはり、私の様な出来損ないが誰かの様になりたいと思う事が、間違いだったんだ!」
幸太郎「そんな事は無いよ。現にラウラは、それが悪い事だって知ってて、正しい事が何かも知ってる。
誰かになりたいって憧れるのは、悪い事じゃ無いよ。」
幸太郎「俺だって、千冬みたいに強くなりたいし、束みたいに賢くなりたい。でも、いくら憧れてたって他人は他人だ。
どう頑張ってもその人にはなれない。」
幸太郎「だからそんなに深く考える必要は無いよ。だってラウラはラウラだもん。誰も君にはなれない。
まぁ、十人十色って言う奴だね。」
幸太郎の言葉を聞いて、ラウラの中で何かが変わった。
今までは、憧れた他人の強さに少しでも近づこうと必死だった。
だが幸太郎の言う通り、どう頑張ってもラウラはその人にはなれない。
その言葉だけで、ラウラの心にあった大きなつっかえが消えた。
ラウラ「そうだな…、確かに幸太郎の言う通りだな。
良し決めたぞ!私はこれからは私らしく生きていく!」
幸太郎「うん、それでこそラウラだよ。」
こうして学年別トーナメントは、中止になってしまったが、無事に終幕した。
久しぶりに幸太郎の復活です!
本当に久しぶりですね。
これでいよいよ、本格的にラウラと幸太郎の絡みが増えるかな?