屋上から戻ってきた千冬は、職員室の自分の机に座り、頬杖をついていた。
アルベルト及び、亡国機業の一夏誘拐に関しては、自分の中で決着をつけた。
だが、次の問題に頭を悩ませていた。
千冬(ふぅ…、確かに狙うとしたらISを動かせずアルベルトさんに関係のある幸太郎しかいないか…。
今日一日で、亡国機業について色々な事を聞いて頭がパンクしそうだ。)
千冬が大きく溜め息を吐くと、その様子を見ていた山田先生が心配そうに駆け寄ってきた。
山田「どうかしたんですか織斑先生?アルベルトさんのお手伝いから帰ってきたと思ったら、そんな浮かない顔をして。
なにか悩み事ですか?」
千冬「いや、別に大した事じゃないさ。ただ、最近疲れたなぁ…と思っただけだ。」
アルベルトから聞いた話を、無関係な山田先生には教えられないと考えた千冬は、なんとかごまかした。
千冬(一夏には口止めしてあるが、亡国機業の事を生徒に教える訳にはいかないか…。
それに幸太郎にも、余計な不安はかけたくない。)
千冬「山田先生、少し用事を思い出した。」
そう言って千冬は、勢い良く席を立った。
~~~幸太郎の部屋~~~
千冬が幸太郎の部屋に入ると、中に幸太郎はいなく、束とラウラとリアネールしかいなかった。
リネ「そんなに慌てて、何かあったのですか千冬様?幸太郎様でしたら、マイルナ様の所にいますが。」
千冬「幸太郎がいないなら、都合が良い。それよりラウラ、今から大切な話がある。
少しの間だけ、席を外してくれないか?」
千冬の頼みに、穏やかではない事をラウラは察した。
ラウラ「嫁がいない方が良い、そして私を除いた大人のみでの話。
それは、嫁に関する…、嫁の身に善からぬ事が起きるって事ですよね。」
ラウラの鋭い洞察力と推理力に、千冬は何も答えなかった。
それは、肯定を意味している。
ラウラ「お言葉ですが教官、私はまだ学生で社会的にも強い何かを持っている訳ではありません。
ですが、それでも嫁を護りたいと想う気持ちは、誰にも負けません!譲れません!
ですから、私もその話を聞きます!例え教官がなんと言おうとも、この部屋から一歩も動きません!」
ラウラの覚悟と、幸太郎を想うその気持ちを聞いて、千冬は観念した。
千冬「どうやら、私はお前の事を見くびっていた様だな。いつのまに、そんな立派な女になっていたんだ。
これも、幸太郎のお陰か。」
そして、千冬は亡国機業に幸太郎が狙われるかも知れない、という事を説明した。
束「なるほどね、亡国機業ってテロ組織みたいなもんだから、可能性は大だね。」
リネ「そうですね。しかも、今回は仕事を断られたと言う建前があります。
下手をしたら、このIS学園自体に攻撃してくるかも知れませんね。」
ラウラ「あぁ、だがそいつらはとても重要な事を知らんみたいだな。」
束「そうだね。私達がいる限り、幸太郎に手を出したらどうなるか…。」
リネ「骨の髄まで教え込む必要があるみたいですね。」
怪しく笑う三人を見て、当分の間は幸太郎に危機が迫る事が無い事を、千冬は感じた。
束「それに、義姉さんがいるんだから…。」
束の言葉に、千冬達は納得した。
そして、もし幸太郎が誘拐されマイルナが怒ったらと考え、恐怖に震えていた。
例え亡国機業が相手だろうと、幸太郎を守護するいわば、親衛隊がいる限りは大丈夫ですね。
それにあのマイルナがいるんですから、心配は無さそうですかね?