しかも、内容が少しだけ重いかもしれません。
ご了承ください。
アル「さっきも話したと思うが、俺の故郷は内戦で酷い有り様だった。
しかも、俺の親父は軍人だったが部下に反乱をおこされ、処刑されちまった。母親は、そんな軍人相手に体を売る仕事をしてたのさ。」
アルベルトの話に、一夏と千冬は戦慄していた。
一夏「体を売るってことは…そう言う事ですよね?」
アル「一夏の考え通りさ。おかげで、俺の遺伝子上の父親は処刑された親父じゃ無いかもな。」
笑いを交えながらアルベルトは話したが、とてもでは無いが嗤える内容ではない。
アル「話を続けるぞ?それでまだ赤ん坊だった俺を、仕事の邪魔だって事で、母親は暗い路地裏に捨てようとしたんだ。
そこで現れたのが、松陽さんと奈々さんだ。」
アル「自分と同じ子供を増やしたく無い松陽さんは、想像できない位烈火のごとく怒ったらしいが、それでも母は俺を手放した。
そして俺は、松陽さん達の孤児院に引き取られたんだ。」
千冬「母に捨てられたですか。それは随分と悲しい事ですね。
私達も両親がどこかに行ってしまったので、お気持ちは察します。」
アル「思い出があるお前らには負けるよ。で、俺が松陽さん達に初めて思ったのが、偽善者だ。
孤児院だって金持ちの道楽、孤児達を集めて優越感に浸ってるんだと、本気で思ってたんだ。」
アル「もしかしたら、政府から援助金を貰ってるなんて、最低な考えばかりが、たまっていったんだ。
だがな、そうやって一方的に敵意剥き出しだったアルベルト少年は、ある日その愚かな考えを悔いる事になるんだよ。」
アル「その日松陽さんと奈々さんが、二人で出掛けてくのを見た俺は、後を追ってみたんだ。
そしてふたりは、りっぱに作られた一つの墓の前に来てたんだ。」
千冬「そのお墓って、誰のだったんですか…まさか!?」
アル「あぁ、その墓は俺の親父のだったんだ。その日は親父の命日だったらしく、二人でわざわざ参りに来たらしい。
しかもその墓は、松陽さんが作ってくれたんだってな。」
アル「墓に手を合わした後、親父に向かって俺の成長や孤児院での生活ぶりを、楽しそうに報告する二人を見て俺は、はじめて心から涙を流したよ。
後々聞いたんだが、世界中にある孤児院にいる、両親を失った孤児全員の親の墓をたててくれて、しかも命日に必ずお参りに今も行ってるらしい。」
一夏「全員って事は、相当な数ですよね!?それを自腹で墓をたてて、しかも命日に墓参りまで行くなんて、本当に凄いですね。」
アル「凄いなんてものじゃねぇ。あの人は…あの人達は本当に優しい人なんだよ。
だからよ、そうやって沢山愛してもらった恩返しとして、今度は俺達が幸太郎を護ってやるのさ。」
そう言ったアルベルトは、松陽と楽しそうに話している幸太郎を見た。
その目には、強い意志が感じられる。
アル「まっ、俺の過去はこんなかんじだな。母親とは今でも連絡は取れないし、正直生きてるかどうかも知らない。
でも、俺は二人に拾われてとっても幸せさ。松陽さんと奈々さんに、会えたし、愛する妻とも出会えたしな。」
そう言ってアルベルトは、マイルナの頬にキスをした。
マイルナ「い、いきなり何するのよ!もう、みんなが見てるじゃない。恥ずかしい//」
乙女の様に赤面するマイルナを見て、一夏達はこの夫婦は本当に相性が良いんだと、改めて実感した。
アルベルトの過去話です。
そ、壮絶な幼少期ですね…。
中々ハードですね。