アナザーラバー   作:なめらかプリン丸

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第81話

~~~車内~~~

 

寿家に向かう道中、車内は妙な静けさに包まれていた。

 

幸太郎の祖父母に会うのを、緊張している人。

世界一の有名人に会えると、楽しみにしている人。

 

そして、回りの空気に感化されている人。

 

ある意味、車内は期待通りの空気になっていた。

 

松陽「それにしても、わざわざそんな正装をしてこなくても良かったのですよ?

貴方達皆さんは、幸太郎の親しい関係。つまり、私達からすればお客様なのですから。」

 

一夏「ですよね?俺も普段着で行こうと思ったんですが、千冬姉がこれを着ろってうるさくて・・・」

 

一夏がそう言った瞬間、千冬は一夏の頭をおもいきりチョップした。

女性がするチョップとは思えない鈍い音がし、運転している松陽は心配そうに振り返った。

 

松陽「大丈夫ですか一夏くん!?明らかに、痛そうな音がしましたよ!」

 

束「そうだよちーちゃん。大きな音を出して、幸太郎が起きたらどうするつもりなんだよ。」

 

一夏「えっ!?心配するのそっち!?」

 

一夏は涙目になりながら、チョップされた場所を押さえていた。

 

千冬「心配はいらんぞ一夏。そんな簡単に人の頭は割れたりはせん。

それに、例え松陽さんが楽な服装でも良いといおうが、正装をしてくのが招待してもらった方の、最低限の礼儀だぞ。

それにな・・・」

 

涙目の一夏に千冬は、デコぴんをかました。

 

一夏「な、なにするんだよ千冬姉!まだ頭の方も痛いままなんだよ。」

 

千冬「先生がと呼べと、何度も言ってるだろ。今日は学校行事ではないが、私はお前達の責任者、教師として行くんだ。

公私をしっかりと弁えるのも、一社会人としての常識だぞ。

それにおまえは・・・」

 

ラウラ「教官、今日くらいはそれくらいで済ましても良いのでは無いですか?

嫁の誕生日パーティー前に、暗い気分になってしまいます。」

 

このままだと、一夏へのお説教が長引いていまうと感じたラウラは、すぐさま千冬をクールダウンさせた。

 

千冬「まぁ・・・そうだな。だが、学園に帰ったら、存分に言いたい事を言わせてもらうからな。」

 

松陽「フフッ、やはり貴方達姉弟は、仲がよろしいんですね。その掛け合いを、是非とも宗次郎さんの前でも見せて欲しいものですよ。」

 

と、松陽が楽しそうに笑うと、千冬は少し焦っていた。

 

千冬「そ、そんな無礼な事は出来ないです。人様に見せる様な、大層なものでも無いですし、相手があの宗次郎氏です。」

 

松陽「それなら、心配は無いです。宗次郎さんは、とても豪傑な御方です。逆に気を使いすぎると、それこそ機嫌を悪くされますよ。

ですので皆さん、宗次郎さんの前に立ったら、ちょっとした冗談話でもしてください。

それの方が、宗次郎さんも喜ばれます。」

 

一夏「なんだ。ちふ・・・、織斑先生や束さんが緊張するくらいだから、どんな人かと思ったけど、話だけ聞くと気さくそうな人なんですね。」

 

箒「こら一夏!さっき織斑先生が言った事を、もう忘れたのか!お前の想像してる気さくさと、社会人の常識の範囲の気さくは、訳が違うんだぞ!」

 

鈴音「そうよ!あんたの間違った態度で、宗次郎さんの怒りに触れでもしたら、私達全員消されるかもしれないのよ!」

 

一夏「さすがに、それは言い過ぎだろ?相手が誰であろうと、お前達は代表候補生だし俺達はIS学園の生徒だぞ?」

 

箒と鈴音の心配がわからないのか、一夏は呑気な返事をした。

 

セシリア「わかって無いのは、一夏さんの方です。鈴音さんが言った事を簡単に行えるのが、寿家の力なのです。」

 

事の重大さ、そして寿家の凄さを感じてきたのか、一夏は恐る恐る千冬の方を見た。

 

それは、三人が言っている事が本当か確かめる為でもある。

 

千冬「はぁ・・・、ここまで社会を知らんとは。まったく、呆れてモノも言えん。

三人が言ってる事は本当だ。それより、その程度で済めば良いんだがな。」

 

千冬の言葉に、一夏は顔面を真っ青にした。

 

松陽「皆さん、そんなに一夏くんを脅かしてはいけません。確かに宗次郎さんにかかれば、その程度の事は瞬時に出来ます。

ですが、それくらいでそんな事をしていては、寿家の当主は勤まりませんよ。

さぁ、ようやく目的地の寿家が見えてきましたよ。」

 

こうして一同は、無事?に寿家に到着することが出来たのだった。




一夏は無知と言いますか、フレンドリー過ぎてそれが仇にあるのかなぁ・・・って感じですね。

それが一夏の良いところであり、逆に悪すぎるところでもありますね。

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