アナザーラバー   作:なめらかプリン丸

98 / 143
第98話

一夏「アルさん!あの人って、総理大臣ですよね!どうして、そんな人と面会出来るんですか。」

 

一夏は、驚きを隠せないのか少し興奮ぎみにアルベルトに聞いた。

するとアルベルトが答えるよりも早く、総理大臣が立ち上がり近づいてきた。

 

総理「誰かと思いましたら、織斑一夏君ではありませんか。いや~あなたの御活躍は耳にしておりますよ。

ISが台頭する時代に、あなたの様な若者が活躍してくださり、私達も大変誇りに思っております。」

 

そう言って握手を求めようとしたが、すんでの所でアルベルトに止められた。

 

アル「下らん世間話が目的なら、俺達は帰らせて貰うぞ。一応、お前と会うのが今回の仕事の大まかな依頼だからな。」

 

総理「これは失礼しました。まぁ、立ち話も何ですので、まずはお食事でもしませんか?

話はそれからでも構いませんよね?」

 

総理は二人を席まで案内した。

 

そして三人が囲むテーブルに、料理が運ばれてきた。

 

総理「アルベルトさん、私の選挙では随分とお世話になりました。あなたのお力がなければ、私は総理大臣にはなれませんでしたよ。」

 

アル「あっそ・・・。それよりも、このボディーガード達を部屋の外に出せよ。

鬱陶しくてイライラするぞ。」

 

総理「そうはいきませんよ。仮にも私は、日本のトップです。万が一に備える必要がありますので。ささっ、堅苦しい話は一旦置いときまして、早く食べましょう。」

 

そして三人は、運ばれてきた料理を食べ出した。

その間、これと言った会話は無く総理が一方的に世間話をして、それに対しアルベルトは軽い相槌を射つこと無く無言だった。

 

この異様なムードに、一夏はどうすれば良いのか分からなかったが、不思議と不安は無かった。

これ程まで、一夏にとってアルベルトは頼れる存在だったからだ。

 

食事が終わると、アルベルトは総理に軽く睨みを効かせた。

 

総理「さて、本題なのですが・・・、その前に幸太郎様の当主就任おめでとうございます。私達共、心よりお祝い申し上げます。」

 

アル「心にもない事はどうでも良い。さっさと話を始めろ。」

 

総理「では単刀直入に言います。私達日本政府に、紅グループの権利全てを譲っては戴けませんか?

幸太郎様はまだ幼い。紅グループ会長と寿家当主の二足わらじは無理があります。ならば私達が紅グループを引き受けます。

こうして私達日本政府と寿家は、友好的な関係を築いていき、これからの日本を支えて行けると思っています。」

 

総理の言葉を聞いたアルベルトは、一夏が今まで見たこと無い程の相手を見下しまるで、ゴミを見るような目をしていた。

 

アル「ぐだらん。政府ってのは、ここまでアホなんだな。お前らに、紅グループをやると思ってんのか?

それに友好的な関係??勘違いすんな。お前らと幸太郎が同じ立場だとか、考えが浅はか過ぎるんだよ。

おい一夏、さっさと帰るぞ。」

 

そう言ってアルベルトは席を立った。

すると総理は、ボディーガード達にアイコンタクトを送った。

 

そしてボディーガード達は一斉に、アルベルトと一夏に銃口を向けた。

 

総理「あなたこそ浅はかですよ?私が何の対策を取っていないとお思いですか?これは頼みでは無く、命令です。」

 

アルベルトは深くため息を吐くと座り直し、ポケットから一錠の薬を取り出した。

そして一夏に手渡した。

 

渡された一夏は、何かはわからなかったがその薬を飲み込んだ。

それを確認したアルベルトは、別のポケットからカプセルを取り出した。

 

アル「駆け引きが下手すぎるぞ。このカプセルには、死亡確率100%のウイルスが入っている。俺と一夏には抗体があるがお前達が死ぬのは確実だろうな。」

 

アルベルトの言葉に総理の顔に緊張が走った。

 

総理「さっきのは、その為の薬だったのか・・・。」

 

そして少し沈黙が起きた。

 

総理はもう一度ボディーガードにアイコンタクトを送ると、ボディーガードは銃をおろした。

 

アル「物分かりが良いな。それじゃあ、今度こそ帰らせて貰うぞ。」

 

アルベルトと一夏は、そのまま部屋から出ていった。

 

~~~帰り道~~~

 

一夏「アルさん、いつのまにそんな危険な物を持ってたんですか?」

 

アル「こんなもんハッタリに決まってんだろ?あいつらは利益よりも、自分の命を優先する連中だからな。

言っただろ?駆け引きが下手くそだってな。」

 

そう言ってアルベルトは、イタズラをしたこどもの様に笑っていた。




総理があほなのか、アルベルトが強かなのかわかりませんが、駆け引きにすらなりませんでしたね。

それに政府の考えは、確実に幸太郎サイドの人間を敵に回しますね。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。