それから二人は、時間を潰すためにアルベルトの案内でやって来た喫茶店で休憩をしていた。
だが、この店の雰囲気やシステム、そして客達のオーラから一夏は変な勘が働いてしまっていた。
一夏「あの・・・アルさん、この喫茶店って一見様はお断りのお店何ですね。こんな喫茶店があるなんて、知らなかったですよ。」
苦笑いをしながら一夏が話すと、アルベルトは口に運ぼうとしていたショートケーキを皿に戻した。
そして嬉しそうに笑いだした。
アル「そうだろ?でも、お前が聞きたいのはそんな事じゃ無いだろ?ほら、周りを見渡してみろ。ここにいる輩がどんな連中かお前ならわかるとおもうがな。」
周りにいる客は、自分が関わってきた分類の人間ではなかった。
だが、一夏にはその分類がなんなのか嫌でも理解できた。
いや、直感として感じた程度だったが、ここにいる客全てはアルベルト、そして自分を誘拐した亡国機業の人間に近かった。
それを口に出して良いのかわからない一夏は、下を向きながらことばに詰まらせていた。
アル「全く・・・おい!このガキにチョコレートパフェ1つだ。後、コーヒーのおかわり。」
そう言ってアルベルトは、さっきの食べ掛けのショートケーキを食べた。
アル「お前の想像通り、ここの客全員が国際過激派組織や犯罪グループなんかの、裏社会を生業にしてる連中ばっかりだ。
だからよ、俺抜きでここにきたら最後、誘拐されるか殺されるぞ?」
一夏「ですが、ここは日本ですよ!?こんな堂々とした場所にこれだけの人数がいるのに、警察や政府は黙ったままなんですか・・・まさか!?」
アル「そっ、お前の推理通りさ。ここにいるのは、“日本政府公認”の人間だけだ。
だから最初に、この国の末路を見せてやると言っただろ?ここが世界の闇であり、日本の灰汁でもあるんだ。」
一夏は言葉が出てこなかった。
アルベルトの話にショックを受けただけではなく、客の中には自分と年が変わらない位の女子や、年増の行かぬ子供もいたからだ。
アル「受け入れろ。そして噛み締めろ。これが今の世界の現状であり、お前達が想像しきれない裏社会の実態だ。
社会が発展する程、裏社会は酷くなっていく。お前らがISに一喜一憂してる間にも、か弱いガキは銃を手に人を射って命を繋いでいるんだ。」
そう言ってアルベルトは、ショートケーキを全て食べ終わりコーヒーも飲み干した。
そしてため息を吐いて、一夏にデコピンをした。
アル「お前が思い詰めた所で、何も変わらん。こればかりは、例え世界各国のトップが動いても簡単に終わる話じゃない。
だが同情はするな。共感はするな。それは裕福な心がもたらす一つの侮辱だ。」
アル「だからお前は、気にする事はねぇ。けど、頭の片隅にだけはトドメテおけ。
それがせめてもの行動だ。」
アルベルトの言葉に何かを思ったのか、一夏の目には涙が浮かんでいた。
一夏「前々から気になった事があるんです。」
アル「気になった事ってなんだ?俺の年収か?それなら兆を簡単に越すから聞くだけ無駄だぞ。」
一夏「俺の誘拐に関する事は、前にも聞きました。ですが、他の時はどうなんですか!
今回みたいに政府に敵対する様な態度で、周りに敵ばかりを増やして、どう思ってるんですか!?」
一夏の真剣な表情に、アルベルトも真剣な表情になった。
アル「俺が思ってる事か・・・」
やはり、平和と破滅は表裏一体なのかも知れませんね。
なんだが、私の思考が片方によっていると思われる人もいるかも知れませんが、私は右でも左でも無いと思っています。