「鉄、ちょっと来い。」
「なんだよ親父。そろそろ高校も決めなきゃなんねぇのに。」
「実はな……その事で話がある。」
「話?うっかり願書の提出場所でも間違えたのか?」
「お前は親をなんだと思っているんだ、願書はちゃんと出した。それでな……武偵ってかっこいいって思わないか?」
「武偵?そうだな、銃持って戦ったりナイフ使ったりとかしててかっこいいよな。でも俺には出来ないだろうなぁ。」
「ああ、そうだな。という事だ。今週末に東京武偵高校の強襲科の入試に行ってもらう。鉄の思い描いている武偵になって来い!」
「は?」
「なって来い!」
「……仮に受けるとして、銃は?」
「金が無い!」
「ナイフは?」
「物騒だな。包丁とかで良いだろう。と言うか喧嘩とか強かっただろ?大丈夫大丈夫……行ってこい
!」
「ふざけんなァァァ!!?」
「ここが東京……。うるさいし、酔いそうだ…。」
早く武偵高に行こう…。
「ここが武偵高か。広いなぁぁぁ……。」
島1つを学校にしてるんだっけ?えーと、受付ってどこなんだろ。
鉄が周りを見ていると女性が近付いて来た。
「なんやお前、受験かい?」
「あ、はい。そうですけど、会場ってどこっすか?」
「なんや武器も持って無さそうやけど、まあええ。着いて来いや。」
「はい。」
なんだ、変な噂とか聞いたりするけど良い人もいるじゃねぇか。
案内されるとでかい廃ビルみたいな所に着いた。
「よっしゃ、揃ったな。全員武器持ってこん中入れ、そしたら適当に散れ。あ、支給品の防弾服は着とけや。」
武器かぁ、バットと木刀しか持って来てねぇ!
とりあえず、バットは持って木刀はベルトに差す。
「おい、見ろよあいつ。」「バットと木刀とか舐めてんのかよ。」「命知らずの馬鹿だな。」「あいつはダメだな。」
鉄以外の人は各々拳銃やアサルトライフル、支給品の木のナイフを装備していて、バットと木刀だけの鉄はその中で浮いていた。
「せんせー!」
「あ?なんや?って、お前そんな装備でやるつもりか?」
「いいじゃないっすか。この試験ってつまり、勝てばいいんすよね?」
「……そうや、どんな手ぇ使っても勝てばええで?」
「了解っす。」
どんな手でもいいんだよな。
「よっしゃ、散れや!3分経ったら開始じゃ!存分に殺せェ!」
女性が空に向けて発砲すると全員散って行った。
試験が始まって数十分。鉄は1人寂しく最上階でぼーっとしていた。時計を忘れたせいでどのくらい時間が経ったかも分かっていない。
「高い所って武偵としてはありえない場所なのか…?」
そう言っていると鉄には誰かが階段を上がるのが匂いで分かった。
「……あー、階段を上がってるやつに聞きたいんだけどさ……。武偵としての考えなら俺みたいに高い所に居るのっておかしいのか?」
「……おかしくはないよ。でも、乱戦だったからね、その乱戦に乗じて策を仕掛けようとでもしてたら全員が下に集まったんじゃないかな?」
なるほど、その手があったのか。
「こっちも1つ聞きたい事があるけど、いいかい?」
「ん?ああ、答えてもらったからな。こっちも答えるぜ。」
「どうして階段を上がるのが分かったんだ?」
「そりゃお前、匂いで気付いたたんだよ。
結構匂いとか音には敏感なんだ、目も良いし。」
味覚の方は…なんとも言えないな。
「匂いか……。」
「あ、それとこれが終わったら銃とか売ってる所教えてくれよ。持ってなくてさ、皆すげぇよ、新入生なのに銃持ってるし。」
「……君は一般中学から来たのか?」
「そうだよ、親父が勝手に送りやがってよ。元々行こうとしてた所には結局届いてねぇし…。」
あ、イライラして来た。帰ったら親父ぶっ飛ばす。
「非常に言いにくいけど……ここは武偵中学から上がる人の入試だよ?」
「は?じゃ、じゃあ一般中学は……?」
「確か……あっちの校舎だったはずだ。」
うっそだろ、マジかよ試験会場すら間違えてんじゃん。
「せ、せんせー!?ここって武偵中学上がりの試験会場だったんすか!?」
「あ?なんや知らんかったんか。」
「知りませんよ!会場とかパンフとか何か親父がどっかやりましたからねぇ!?」
「あー、うるさいわ。つべこべ言わずに殺し合って死ね!」
キレて銃撃ってきたんだけどなんだアレ!?やっぱり武偵校は怖い所じゃねぇか!?
「そこの隠れとるのもコソコソしとらんでとっととやれや!」
「おっと、このままだと俺達が先生にやられるからやろうか。」
「わかったよ…やりゃ良いんだろ……。」
家に帰りたい……。
「っしゃあ!行くぞ!」
鉄が声を出して飛び出すと同時に男も飛び出して撃ってきた。
鉄の頭の中には昔読んだ視線や銃口で撃たれる場所を察知すると言う一般人にはまず無理な方法が思い浮かび、意識を集中させた。
ズガギィィィン………
「なっ!?」
「くっそ、衝撃すげぇ…つーか、早過ぎて見えねぇしラッキーか。ってバットがちょっと凹んでんじゃねぇかぁぁぁ!?」
この野郎、このバット自腹で買ったばっかなんだぞ……!
「オラァ!」
まあ、そこまで未練も無いし、いいか。
鉄はバットを全力で投げる。
バットをしゃがんで避けた男は低姿勢のまま走って来るのを見てから足を振り上げて蹴り飛ばそうとする。
「それは読んでいたよ!」
男は足を掴むとそのまま鉄を押し倒して足に関節技を極めようとする。
「こ…の…やらせねぇ……。」
鉄は全力で足に力を入れるが男は唐突に手を放して今度は首を絞めた。
「ぐっ!?ん…ぐぐっ………………。」
鉄も最初は抵抗していたが徐々に息が出来なくなり最後は気絶してしまった。
「……っは!?」
ここは…病室か?試験は…そうか、負けたのか。
ため息を吐くとドアがノックされる。
「あ、どうぞ。」
「元気か?」
さっきまで戦っていた男が女を連れて入って来た。
「おう、さっき振りだな。リア充め。」
鉄は後ろの大和撫子風の女性を見て言う。
「何言ってんだよ…。こっちは星伽 白雪、俺の幼馴染みだ。」
「は、初めまして…。」
「こっちはって、俺達互いの名前も知らないだろ。」
「あー、そうだったな。俺は遠山 キンジだ。よろしくな。」
「おうよろしく、キンジと白雪…んー、白雪さんな。」
「なんで白雪だけさん付けなんだ?」
「決まってんだろ、女性と関わる事が少なかったし初対面なのに最初から呼び捨てとか、なぁ?」
「俺は?」
「殴り合ったからセーフ。」
正確には違うけど。
「って、そっちの名前は?」
「おお、忘れてた。俺は源 鉄だ。鉄って書いて手をって読む。鉄でいいぞ、よろしく。」
「変わった名前だな。」
「自覚はしてる。」
それから3人は1時間程度会話して別れ、鉄もそのまま病室から出て地元の広島に帰った。
「親父ィ!帰ったぞ、どこにいやがる!」
玄関を開け、いつも父親の居る場所に向かうと1枚の紙が落ちていた。
『これを読んでいるということはお前は帰って来たんだな。
俺と母さんは海外旅行に行ってくる。半年くらい帰って来ないから家の事よろしく。』
「あのジジィィィィィ!!!」
逃げられたぁぁ!!!
それから鉄が学校が始まるまでにイライラをぶつけるように家事をマスターしたのはご愛嬌である。
アレ?レキが出てないじゃないか……次、次で出ますよ!
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