創慈SIDE
???「・・・何か、いう事はあるかしら?」
創慈「・・・いえ、何もありません」
俺の前には一人の少女が立っていた。背は低く細いがその顔立ちと声、態度からは大人びた雰囲気を漂わせていた。彼女の氷よりも冷たく、刃物よりも鋭い視線が俺に突き刺さる。
???「じゃあ、今ここで私に懺悔しなさい。嘘はつかないこと」
創慈「はい~!なんでも白状します!干してあったタキさんの下着を盗んだのは俺です。この間、女子の更衣室に秘密ののぞき穴を10か所あけました。先日、園果と放課後まで試作した後部屋に持ち帰り朝までアダルトプロレスしていました。後悔はありません」
後悔はない!俺の本能の赴くままに行動して何が悪い!自制なんて言葉は俺の辞書にはない!・・・だけど、目の前の存在が俺のすべてを凍らせる。
???「本日のあなたの罰を与えます。一つはこれから3日間私以外の女子との接触を禁止します。もう一つは今日は朝まで私に付き合ってもらいます。上質のワインが手に入ったのよ。朝まで飲み明かしましょ♥」
創慈「ちょ、3日はないだろ!せめて接触禁止じゃなくてエロいことなしにしてくれ!?」
???「・・・次、反抗したらあなたの鍛え抜かれた分身を『斬り落とす』から♥」
絶対零度の微笑が俺の目の前に!!
俺は反射的に分身を抑えて前かがみになってしまった。
くそ~、怖え~!!それなのに俺の分身は逆に巨大化し始めた!!俺の意志は無視なのね!!
彼女は後ろに振り向いてボソボソと何かしゃべったが聞き取ることはできなかった。
もう一度こちらを向いた時の彼女の顔を見ると
???「じゃあ、帰りましょうか、創慈!」
先程の冷たい微笑ではなく、温かい満面の笑みだった。
・・・やっぱ、どんだけ女を抱いてもこいつにはかなわねぇ。笑顔だけで俺をときめかせることができるのはコイツだけだ。
創慈「帰るか、〇〇〇・・・」
コイツとなら歩んでいける今も、未来も。
創慈SIDE OUT
創慈「・・・夢かよ」
創慈はボーとしながらもベットから起き上がる。
あれから3週間創慈は遠月リゾートのとある場所で教員研修を行っていた。
座学による講義、授業を模様した実線演習などを毎日のように行った。それが終わると遠月リゾートの各ホテルの厨房で派遣シェフ。すでに中国、アメリカ、フランス、ドイツ、イタリアなどのホテルゾーンで仕事を行っている。創慈の加入により課題改善や新作メニューの開発が進み利益はここ最近の中では1番の利益を出した。余談ではあるが遠月時代の創慈の料理のファンである美食家達を堂島が招いていたためそれも利益につながったのである。
すると突然、部屋にあった電話が鳴った。
創慈「こちら、創慈。以上ありません。それでは私は二度寝に戻ります」
堂島『冗談は止せ。今すぐ、俺の執務室まで来い。重要な話がある』
創慈「ラジャー」
創慈は服を着替え自室を後にした。
創慈「失礼します。何でしょうか、堂島さん」
堂島「お前の教育研修だが本日をもって終了とする。お前の覚えが思っていた以上に早かったからか全ての教育研修過程を終了した。おめでとう!」
堂島はクラッカーを出し鳴らす。
創慈「て、ことは。俺に報酬としてVIPルーム招待と高級酒にアメリカ美女からの接待が待っているという事ですか!ありがとうございます!!」
笑顔で頭を下げる創慈。
だが、
堂島「何を勘違いしている。確かに研修は終了したがお前への褒美はまだだぞ」
創慈「は?」
堂島「お前には1週間後に行われる。遠月学園1年生の宿泊研修に卒業生として参加してもらう。それがお前の最終試験だ」
創慈「あの地獄の合宿に・・・」
この合宿は唯の合宿ではない。高等部1年が体験する最初のイベント。1年の全生徒がこの遠月リゾートのホテルで数々の料理の試練を行い、合格しなかった者は退学させられる高等部最初の難問である。その講師として卒業生が招かれる。遠月の卒業生は厳しい競争を勝ち抜いた100%中の1%、正に天才の中の天才である。
創慈「俺を苛めてるんですか?俺なんて自分の店も持ってない、未だにフリーターですよ」
堂島「料理の腕だけならばお前は歴代の卒業生の中でもトップクラスだ。何といっても、この俺に食戟で勝った男だからな」
創慈「・・・根に持ちやがって。分かりましたよ。その代り、こちらも条件を出します」
堂島「なんだ?」
創慈「色々とやりたいことがあるんで合宿前日まで俺に自由時間をくれ。予約してる客がいるんだったら教えてくれ。その日ぐらいなら派遣シェフの仕事やってやるから」
堂島「いいだろう。お客様には俺から説明して調整しておこう」
創慈「よし。荷物はこれぐらいあれば十分だな」
創慈はまず、自分の実家に戻った。
拉致られたため、服などの私物は無く、毎日浴衣とコックコートしか着ていなかった。
創慈「あ、創真も合宿に来るんだよな。なんて説明すればいいか?」
創真の遠月学園編入が決まったことは創慈の耳にも入っていた。
始業式で全1年生の前で頂点(てっぺん)を取ると宣言したと聞いた時は大声を出して笑った。その後も、最初の講義で最高評価を得たことや初食戟で圧勝したことなどを総帥から聞いていた。
創慈「今回の合宿はアイツにはいい経験になるだろうな。まぁ、退学したらそこまでの存在だっただけの話だし」
創真SIDE
創真「はぁ~、眠たい。」
俺は講義を終え、寮に帰ろうとしている。
隣には同級生の田所恵がいる。
編入してから講義一緒に受けたり、学園のこと色々教えてくれていいやつだ。
腕は確かなんだけど、緊張しすぎて実力出せないことがたまに痛いけど。
???「どうしよ~、研修まで後3日。心配で眠れないよ」
創真「落ち着けよ田所。大丈夫だって、お前の実力なら」
地獄の合宿か。合格しなければ退学。厳しいなこの学園。編入試験の後もいろいろ大変だったし、・・・あ、そうだ
俺は携帯を出し、ある番号に電話した。
でも、出なかった。
田所「創真君、誰に電話したの?」
創慈「ああ、俺の兄貴に」
田所「お、お兄さんがいたんだ。どんな人なの?」
創慈「まあ、一言で表すなら・・・クズだな」
田所「クズ?」
創慈「小さい頃から色々と無茶して親父を困らせてたし、高校卒業した後1年程いなくなって家に戻ったら店の仕事手伝う以外は家にいない。バイクでどこか行ったら、朝帰りがほとんどだったし。あ、2か月前に5000円貸したけど戻ってきてないな」
田所「そ、そうなんだ」
創真「・・・でも、料理の腕は凄いんだ」
偶に親父との料理勝負を行っていたが勝敗はほぼ互角だった。一度も親父に勝ったことがない俺からすれば兄貴はすごい料理人だ。
それから少し時間が過ぎ夜になった。
俺は入浴を済ませ、自室にいた。
すると、兄貴から電話がかかってきた!
創慈『おう、創真久しぶり』
創真「久しぶりじゃねえよ!1月も行方不明になりやがって!今どこにいるんだよ」
呑気な野郎め!!・・・あれ、なんかたくさんの声や演奏みたいな綺麗な歌も流れてる。
創真「マジでどこにいるんだ?」
創慈『ああ、今とあるホテルにいるんだ。そこで今、派遣シェフやってんだよ』
創真「・・・」
・・・あれ、この流れどこかで?
創慈『ちょっと待ってろ。切らないでいいぜ』
あ、スピーカーになった。
客A『最高のディナーだったよ、創慈君!!この2年間君の料理を食べられる日をどれだけ待ったことか!』
創慈「また、喰わせてやるよ。今度は家族と一緒に来な」
客B『It is a splendid dish! If Souji is going to open a shop, guide me anytime! Let's invest as many as one likes! (素晴らしい料理だ!創慈、店を出す予定ならいつでも相談に乗ってくれ!いくらでも出資しよう!)』
創慈『You're very kind. I ask then(ありがとう、その時は頼むぜ)』
すげえな、客全員が兄貴のことを知ってやがる。
創慈『待たせたな、創真』
創真「・・・状況についていけないんだけど」
創慈『ある知人の頼みでな、資格の取得も兼ねてここで働いてんだよ』
創真「はぁ?訳わかんねえ」
創慈『まぁ、もうすぐ会えるからな。その時ゆっくり話してやるよ』
創真「???」
創慈『・・・創真、学校は楽しいか?』
創真「え、ああ。極星寮てところに今住んでるんだけどよそこの連中が個性あふれていて。一つ上に一色先輩ていう凄い人がいるんだよ。この学園のことまだまだ分かんねえことだらけだけど面白いところだと思うけど」
創慈『そうか。腕上げろよ。その学園で1番にならなくちゃ俺や親父を超えるなんて永遠に来ないぜ』
創真「ッ!当たり前だ!!」
俺は反射的に電話切ってしまった。
親父にも同じこと言われたけど上等だ!!
地獄の合宿も乗り越えてやるよ!トップになって兄貴の鼻を明かしてやる!!
創慈「あんにゃろ~、切りやがって。優しいお兄様がアドバイスしてやろうと思ったのに・・・一人で舞い上がりやがって」
俺は近くにあったウイスキーをグラスに注ぎ飲み干す。
創慈「・・・親父は『自分の料理のすべてをささげたいと思えるような女と出会うこと』がいい料理人になるコツだと言っていたな。在学中に出会っておけよ、創真。お前も今までと見えてるものが違って見えるぜ。俺がそうだったように」
・・・仕事に戻るか。
今日はここまでです。
次から本格的に合宿編に入ります。