2年になれば何か変わるんだとそう思っていた。
退屈な学校と家の往復と喧嘩だけの毎日が変わるんじゃないかって本気で思っていた。
実際にはそんなことはなく、今日もオレ――
しかし今日は運が悪く先客がいた。それは1組の男女で一人は暗そうなデブで眼鏡の男。まだ春だというのに顔からは大量の汗が吹き出ている。容姿で人を判断したくはないが、こいつのような奴をオタクと言うだろう。
女子の方は男とは真逆で、清潔といった印象が強い。今オレのいる場所的に、後ろ姿しか見えないが、腰まである長い黒髪にすらりと伸びた足。制服越しにもわかる細い体の線。背筋をピンと張っている立ち姿から育ちの良さがうかがえる。そんな人。
二人の間というかそのデブ男から何やら緊張した雰囲気がただよっている。オレは少し様子を見守ることにした。めしはここで食うと決めているからだ。
「あの? 話というのは一体?」
「あのっ。えーとその」
男は覚悟を決めたように目を見開いて思いを告げた。
「黒澤さん。ずっと前から好きでしたっ。僕と付き合ってください。」
「ごめんなさい。あなたのことはよく存じていませんので」
この場にいることを後悔した。まさか昼休みに告白するとは思わなかった。オレはばれたらまずいと思いその場を離れようとしたができなかった。
「どうしてだよ!! 僕はこんなに君を愛しているのにどうして? そうかほかに男がいるのか。そんな男のこと僕が忘れさせて上げるよ」
「いやっ。来ないでください」
少女の今にも泣き出しそうな声が耳に届いてしまったから。考えることなく階段を上がっていく。さすがに聞いていたとばれるのはよろしくないので少し演技をしながら。
「いちゃ付くなら別の場所でやってくれない? そこオレの場所なんだけど?」
「なんだい君は? 下級生のくせに生意気なんだよ」
男はオレを見てもひるむ様子はなく突っかかっていくる。ネクタイの色から下級生であることがわかりうまくやれば立ち去らせることが可能だとでも思っているのだろう。
「だから邪魔なの? わかる」
残念ながら先輩ごときにビビるオレじゃない。ましてこんな贅肉の塊なんて中学の時の喧嘩した筋肉の塊より大したことないだろう。
「あーもう。僕とダイヤの愛を邪魔するな」
男は突然殴りかかってきた。喧嘩に慣れているオレは避けることなく頬にパンチを受ける。まともに受けたら痛いので、勢いを殺して受ける。
もちろんこれは、正当防衛を主張するためだ。
「弱いのに調子乗るなよ下級生」
一撃入ったことで調子に乗るデブ男。腹の脂肪を揺らしながら二撃目を放ってくる。オレはそれをあっさり受け止め。おもいっきり手首をひねる。
「くぎぇっ」
デブ男からカエルのような音が出る。痛みに耐えてるためか、全身汗まみれ。さすがにこれ以上触りたくなかったので、もう一度だけチャンスをあたえる。
「もう一回いうぞ? 邪魔」
デブ男は逃げるように去っていった。
それを確認すると、オレは何事もなかったように左手に持っていたコンビニ袋を漁り出す。
「さーて飯だ飯」
そこに女の嗚咽がき聞こえた。
「ひっく。うぇっく。ぅぅ」
「あんた大丈夫か?」
「うっ。ひっく」
顔を守るように腕で覆い体育座りで、嗚咽をもらす。正直そんな状態ではせっかくのコンビニをおいしいパンがおいしく味わえない。かといってあんな目にあった女にさっさと立ち去れというの酷な話だろう。
「あのデブ男ならもういないから顔上げろよ」
数秒の沈黙ののち、ゆっくり彼女は顔を上げた。その顔を見てオレは思わず息をのんだ。学校で噂の美人がそこにいたのだから。
これが