みたいな感じです
僕が演奏をしている時、まるで宮園さんと一緒にステージに立ち、演奏をしているように感じるという不思議な感覚に陥る。君は手術をしている最中のはずなのに……。君の姿が見えなくなっていったとき、とても怖かった。もう二度と会えないんじゃないかそう感じながらも最後まで演奏を続けた。
表彰式を終えた後、僕は急いで病院に向かった。でも、病室には君の姿はない。屋上にもどこにも……。
あの感覚は本当のことだったのかな。君は本当にもういないのかな?
僕は君に何をしてあげることが出来たかな? 色々してくれた君に何か返すことが出来たかな?
気付いたら僕は彼女と出会ったあの小さな公園にいた。あの時の君は何で泣いてたのかは分からない。
それから僕は思い出を繰り返すように彼女と出会った順に場所を回っていく。
君が渡を待っていた桜の木の下。そしてそこは病院を抜け出した君が待っていた場所でもある。
渡の代役に任命されて君に着いて行った時の公園。
まだ前に進めずにいた時母さんを言い訳にしてピアノと正面から向き合えず逃げていた時に彼女と来たことがある。
音が聞こえないことを理由にピアノを弾けないと言った時。
『うるさいなぁ、もう決めたの。おとなしく諦めろ。友人A君を私の伴奏者に任命します』
桜が舞い散る中、そう言った君の笑顔はとても輝いていてまぶしかった。
次に向かったのは通称、度胸橋。子供のころ僕と椿と渡がよく川に飛び込んで遊んでいた場所。あの時も君は突然現れる。いつもそうだった。
『ピアノのコンクールに出て』
そう言った君の声は寸前とは違って真面目なもの。
楽譜を投げ捨てた人間である僕は奏者として失格なはずなのに君は言う。
『それでもまた拾い上げて楽譜に向かう。そうやってもっとも美しい嘘が生まれる』
そのあと君は足をかけて川に飛び込む。病み上がりなのに無茶をして。また病院戻りになってたら目も当てられなかったよ。結局僕も飛び込んだからムチャクチャしたって意味なら同じ穴の狢だね。
毎報コンクールが迫ってきて練習に没頭しすぎて倒れた日の帰りで王二公園にいる時。
『君は君だよ』
『君の人生で、ありったけの君で真摯に弾けばいいんだよ』
君がそう言ってくれたことで幾らが楽になったような気がした。突然手を合わせてきた君にはびっくりしたけど、今思うとこの時にはもう僕は君のことが好きだったのかもしれない。
帰り道また度胸橋を通るわけだけどその脇の土手でも話をしたね。毎報コンが終わった後で君と初めてガラコンの音合わせをした時の帰り道に。
『君は心に何をもってたの?』
そう聞かれた僕はこう言った。
「君がいたんだ」
毎報コンの時にはもう君は僕の中にいたんだ。きっと君の演奏を初めて聞いたあの日からずっと……。
僕は誤魔化すように帰ろうって言った。ちょっと照れ臭かったんだ。それでもただその時は君と肩を並べられるようになりたい。その一心だった。
もう辺りは真っ暗で夜になっていた。夜でもたくさんのことを思い出す。二人きりで音楽室にいた時、学校の自転車をこっそり借りて帰ったとき、キラキラ星を一緒に歌いながら帰ったとき、そして病院であったたくさんのこと。
僕は臆病だから渡の代役でいい。そう思った。だって彼女は渡のことが好きなんだから。だから、僕は自分の気持ちに気付かないふりを続けていた。
椿に言われたときには分かって自覚して勝手に渡と比較して落ち込んでそれでも君の隣に居たいと思った。
僕が渡に宮園さんがとても好きよだと伝えた時、渡は笑いながら知ってると言ってくれた。その後、彼女が緊急処置を行っている時を目撃した時は息が止まるかと思った。また僕を置いていなくなってしまう。
僕が大切に思う人は皆いなくなってしまう。音楽は僕の大切な人を連れ去っていく。
家に着いた僕は自分の部屋に向かい、ピアノと向き合い愛の悲しみを一度弾いてから就寝した。
前に椿から私と恋をするしかない。そういわれた時は驚いた。それでもやっぱり僕は彼女への想いが変わることはなかった。僕にとって椿はやっぱり椿でそれ以外には何もない。少し酷い言い草ではある。
それから三か月が経過した。第一志望である奥津音大附属高校にも無事合格した。そして今日は市立墨谷中学の卒業式。
卒業式終了後――。
「公生! 奥津でも頑張れよ! 俺は今度こそ高校でスターデビューするから楽しみにしてろよ!」
「あぁ。渡ならきっと出来るさ。渡もサッカー頑張れ」
「おう! それじゃ、俺は最後に可愛い子のところに行ってくるわ!」
全く。渡は最後まで渡らしいな。椿はソフト部の皆のところにいるみたいだし今日は先に帰ろうかな。
そして帰り道で僕は桜の木の下でいるはずのない彼女に出会った。
「友人A」
「なんで君が?」
「どうだ、驚いたか!」
君はおどけたようにそう言うが、こっちは驚いたところではない。あまりの衝撃に声が思うように出ない。
「実は少し離れた病院に移ってそこでリハビリしてたんだ」
そっか。失敗したわけじゃなかったんだ。よかった。本当に良かった。
「ちょ!? なんで泣いてるの!?」
「君が、君が……」
その先は言葉にならなかった。
すると、君が口を開く。
「今まで黙っててごめんね。変に期待させたくなかったんだ」
「そう、だったんだ。でも、……ありがとう」
「え?」
「今更だけど、君のおかげでコンクールには優勝できたよ。僕の中に君がいたから、君のために演奏できたから優勝できたんだ。だから、ありがとう」
「うん。……進路はどうしたの?」
「奥津音大附属高校に進学することになったんだ。明日、高校の近くに借りたアパートに引っ越すんだ。あとね……」
この際だから言っておこう。自分の想いを。
「君は渡のことが好きかもしれないけど、君にとって僕は代理や荷物持ち、伴奏者かもしれないけど。僕は君のことが好きです。椿とか凪とかじゃなくて他の誰でもない君のことが好きです。だから、宮園かをりさん。僕の隣にいてくれませんか?」
伝えた、伝えてしまった。もう引き下がれない。今更誤魔化してなかったことにする気もない。だってダメ元なのは分かっているんだから。
「……やっぱり君でよかった。私も君のことが好きだよ! 有馬公生君。……私ね、君と同じ奧津音大附属高校に進学するんだよ」
それはそれで驚きで声が出ない。
「これからよろしくね、有馬君!」
「こちらこそよろしく、宮園さん」
君と出会った二度目の春。これから、どんな毎日が待ってるのかな?
君と過ごせる日々が楽しくなるといいな……
と、まぁ、これが初めて作った読み切りのSSです
あのEDだからあそこまで感動出来たのですが、やはりどうしても公生とかをりには幸せになって欲しいな。と思いまして、そんな願望、自己満足にまみれた作品になってます