異世界のカード使い   作:りるぱ

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第05話 顎ドラゴン

 傷が治った。

 

 初日にここまで移動した際、木の枝などで体のあちこちに擦り傷を作ったのだが、それらが今、跡形もない。

 

「……さすがブルー・ポーション。ライフ400回復は伊達じゃない……か」

 

 さて、喉も潤ったことだし、そろそろ寝ようと思う。

 

「フレムベル・ベビー、野生動物が近づいて来たらすぐに起してくれ」

 

 了解さー! 主は安心して寝るさ!

 体の炎をゆらゆらさせるフレムベル・ベビー。

 

「頼むよ」

 

 地面に体を横たわせる。…………羊毛の抱き枕が恋しい。

 緊急時の為のモンスターカードを何種類か頭の横に置き、俺は目を閉じる。

 

 これで二日目も終了だ。

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

「う……ん。朝……」

 

 上半身を起し、大きく伸びを一つ。

 

「はぁーーぁ…………トイレ……」

 

 排泄欲求が脳を満たす。……外に出て小用を足そう。

 おはようさ、主。

 

「うん、おはよう」

 

 フレムベル・ベビーは今朝も元気にエアコンの代わりをしてくれている。

 手で目を擦りながら立ち上がる。

 …………よしっ。大分頭がすっきりしてきた。

 まずは護衛モンスターを召喚しよう。用を足すにも護衛がいないと心許ない。

 

「レベル3でなるべく強いの……。ついでに空も飛べればいいかな」

 

 ……うん、それならこいつが最適だろう。

 昨晩用意した緊急時用カード群の中から目当ての一枚を取り出す。

 カードに書かれたステータスはこうだ。

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲

ハウンド・ドラゴン     -闇ー

              ☆☆☆

【ドラゴン族】

鋭い牙で獲物を仕留めるドラゴン。

鋭く素早い動きで攻撃を繰り出すが、

守備能力は持ち合わせていない。

      ATK/1700 DEF/100

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲

 

 

 レベル3で攻撃力1700もあるドラゴン種である。レベル3通常モンスターデッキで大分世話になった一枚だ。

 

「フレムベル・ベビー、ついて来て」

 

 外に向かうことにする。

 何しろハウンド・ドラゴンの大きさがよく分からない。ここで召喚して外に出られないなんてことになったら、流石に間抜けすぎる。

 

「うっ、さむっ」

 

 寒波が身を襲う。

 洞窟の中があまりにも快適なおかげで、外が極寒だったのを忘れていた。

 実際のところ、気温何度くらいあるんだろう? 氷点下までは行かないと思うけど……2、3℃程度かな?

 

「速いとこ済ませちゃおう……。ハウンド・ドラゴン、召喚」

 

 バサッ、バサッ、バサッ!

 二回、三回と小ぶりの翼をはためかせ、ハウンド・ドラゴンは入り口を隠す八つ岩の、その一つの上に降り立つ。自然と俺を見下ろす形になる。

 

 

「ギャオオォォォン!」

 

 あんたが俺のマスターか。俺は何をすりゃいい?

 ハウンド・ドラゴンは曲刀のように大きく尖った(あご)を突き出し、俺に問いかける。

 予想よりも小さなドラゴンだった。

 全身は黒い鎧のような鱗に覆われ、手足の爪はまるで刃物のごとく鋭く銀色に光っている。その尾の先端には戦斧の刃が生えており、鈍い光を反射していた。

 全体的に細いが、とても攻撃的なデザインをしている。

 

「この洞窟の天辺(てっぺん)で辺りの監視を頼みたい。そして何か脅威に相当するものが近づいて来たら、俺に報告してほしい。場合によっては排除も頼むつもりだ」

 

 彼らモンスターが俺に語りかける声は何と言うか、言わばテレパシーみたいなものである。それは屋根を経たてたくらいでも十分伝わる。

 

 オッケー! へへ、はやくなんか来ねぇかなー。ぶっ殺すのが楽しみだぜ!

 尖った顎をぐいぐい持ち上げ、尻尾の戦斧でバンッ! と岩の表面を叩く。

 見た感じ、随分と好戦的な奴っぽい。

 

「後当たり前だけど、俺を守ることを優先してね」

 

 ハハッ、了解、了解ー。

 お前、ちゃんと分かってるさ? 主の命令を守るっさ!

 はっ、うっせぇよ、火のカス如きが! 俺様に指図すんじゃねぇ!

 お前! 喧嘩売ってるさ!?

 

「おい、お前ら」

 

 ……ヘッ、マスターの命令は守るよ。

 そう言いながら、(あご)ドラゴンはバッサバッサと洞窟の頂上へと飛んでいった。

 う~ん、DQNタイプか……。

 

 うぅ~~、寒い。さっさと用を足して戻ろ。

 

 

 

 

 帰りに、トラップ処理班Aチームのカードが洞窟内の端っこに落ちてるのを見つけた。

 

 …………。…………。…………そう言えば……。

 

 

 

◇◇◇◇

 

 主! 主!

 

「ん? んん~~。……どうした?」

 

 目を擦る。

 あの後洞窟に戻り、俺はすぐに二度寝を始めた。勿論惰眠を貪るのが目的じゃない。

 今日は非常食を出す分の魔力を鑑定に使おうと予定している。そして昨日出した非常食はすでに魔力切れで消滅していた。

 そう、俺は省エネの為に眠っていたのだ。

 ……腹ペコをごまかす為に寝たとも言う。

 

 もうすぐオレが消える時間さ。再召喚をお願いするっさ。

 

「ああ、そういうことね。OK、分かったよ」

 

 ヒャッハー! 俺の爪の餌食になりな!

 外からハウンド・ドラゴンのテレパシー的音声が聞こえる。やけに声のでかい思考が全て駄々漏れである。

 あいつ、近くに寄ってくる小動物を殺しまくってるさ。本当にあいつに任せて大丈夫さ?

 苦言を呈する炎の子供。

 お前ぇも中々美味ぇじゃねぇか! ハハッ、血の味は甘露の味!

 

「う~ん…………。一応狩った獲物はちゃんと喰ってるみたいだし……まぁ、あれくらいならいいんじゃないの?」

 

 主は甘いさ! あれはいつかや――

 

 あ、時間切れだ。

 フレムベル・ベビーはカードに戻り、ひらひらと舞い落ちる。

 目の前に落ちてきたところで、パシッと掴み取る。

 

「フレムベル・ベビー、召喚」

 

 ――らかすさ!

 

「えっと……うん、お帰り。

 まぁ、とりあえず様子を見よう。どうせ今日はもう新しいモンスターを召喚する魔力がないし」

 

 フレムベル・ベビーを再召喚して、ただ今の魔力、残り2である。

 

 とりあえず主が叱っておくさ。アイツは主の言うことなら聞くさ。

 

「そう……だね」

 

 ここは忠言を聞いておくとしよう。洞窟入り口に向かう。

 頭を外に出し、灰色の小動物を解体するハウンド・ドラゴンに呼びかける。

 

「お~い! 狩りも程々にしといてくれ! あんまり無駄に暴れるなよ~!」

 

 ヘ~~イ。

 詰まらなさそうにそう言いながら片爪で獲物を掴み、洞窟の天辺へバッサバサと飛び戻る顎ドラゴン。

 とりあえずこれでいいかな。う~~寒い寒い。

 

 洞窟内に戻り、ブルー・ポーションを一杯。……プハー!

 壺で召喚されたのがありがたいね。一日分以上の量があるよ。

 さてさて、ランクアップ条件の消化に勤しみますか。

 

 今回のランクアップ条件は森の生き物に対し、合計四回鑑定することだ。簡易鑑定でなく魔力を消費する鑑定なので、今日と明日で二回に分けて行おうと思う。

 

 目を瞑り、集中。生き物の気配を探知する。

 細かい小さな気配は数多くあるが、これは多分虫とかだろう。せっかく魔力を消費して鑑定するんだ。ここはできれば、脅威になりうる中型動物以上の気配が望ましい。まぁ、もちろんここは異世界なので、アニメみたくやたら強い小動物が存在することを完全に否定できないが……。

 

「でも常識的に考えて、大きいのからだな」

 

 ――――

 ――

 半径80メートル内に目標とする動物の気配はない。

 因みにこの半径80メートル――正確に測ったわけじゃないので推測でだが――と言うのが、俺がとっさの状況でも使える気配探知の効果範囲だったりする。

 あくまでとっさの状況で80メートルなので、落ち着いた場所で集中すれば、もっと探知範囲を広げることも可能だ。

 そんな訳で、さらに意識を集中し、前方にレーダー範囲を広げていく。

 薄い粘土を一つの方向に向けて、更に薄く、長く伸ばしていく感覚。

 ――100メートル、120、140、160………………さっそくいた。

 探知した気配は中々大きい。

 

「鑑定、開始」

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲

川辺に潜む大蜘蛛      -水-

              ☆☆

【昆虫族】

川辺に巣を張る大蜘蛛。川魚を狙う

鳥や熊を罠にかけ、捕食する。

       ATK/650 DEF/300

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲

 

 

 うわぁ……蜘蛛か……。いやだな……。

 そしてあっちには川があると。これはいい情報を手に入れた。まさに棚から牡丹餅。

 

「次はこっちにしよう」

 

 右に向けて座りなおし、再び目を閉じて前方に気配探知。

 80メートル、90……っと、すぐにいたな。

 

「――ステータス鑑定」

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲

ヤクト・ウルフ       -地-

               ☆

【獣族】

       ATK/300  DEF/80

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲ 

 

 

 あれ? ヤクト・ウルフだ。しかも魔力を消費しない簡易鑑定になってる。

 ふむ、なるほどなるほど。

 ヤクト・ウルフは初日に一度鑑定したことのある動物だ。つまり、一度鑑定した動物は簡易鑑定ができるようになると。

 

「ならこいつはパスして、また別のを探そう」

 

 そのまま鑑定範囲を更に先に延ばす。すぐ近くに同じような気配を二つ見つけるが、多分これもヤクト・ウルフだろう。

 …………140メートル、160、180、200、210…………これだ。

 

「鑑定」

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲

陰影の虎          -闇ー

              ☆☆☆

【獣族】

森に潜む大虎。体の色を周囲に同化

させ、影から獲物に痛恨の一撃を与

える。

       ATK/900 DEF/700

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲

 

 

 これは……結構強いんじゃないのか? フレムベル・ベビーじゃステータスが負けてるし。

 しかも周囲に同化って……出会わないことを祈る。

 ……でも……俺なら近くに寄れば、気配探知で分かりそうだな……。

 

「ふぅ……こんなもんかな。ステータス、オン」

 

 最後に自身のステータスを開く。

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

未熟なカード使い      -闇ー

               ☆

 

【上位世界人族】

異世界に迷い込んだカード使い。魔力を

消費してカードに秘められた力を解放す

ることが出来る。しかし、その力はまだ

未熟だ。

 

ランクアップ条件

森の生き物を鑑定せよ 2/4

 

魔力 0/7    ATK/80 DEF/50 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

 見事に魔力が0となっていた。

 今日はもうできることがない。また省エネ睡眠を再開するとしよう。

 

「それにしても、半径200メートル内に大型動物がこんなにいるとは……」

 

 ヒャッハー! 狼ごときがマスターの寝座(ねぐら)に近づくたぁいい度胸だな! なます切りにしてやるぜ!!

 

「ま、あいつが居れば安全か……」

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 時間は無為に流れ、四日目の朝が始まる。

 目を覚ますと、目の前に(あご)ドラゴンがいた。

 

 へへっ。もうそろそろ魔力が切れるからよぉ。再召喚してくれよ。

 だからお前はもう少し口の利き方に注意するさ! 主に無礼さ!

 うっせぇな! 俺はマスターに話しかけてんだ!

 

「……はいはい、再召喚ね。

 とりあえず喧嘩をやめなさい……」

 

 へへへへ、頼むぜぇマスターよぉ。まだ暴れたりな――

 

 ……あ、カードに戻った。

 ひらりと地面に舞い落ちるカードを拾い、機械的に召喚呪文的なものを唱える。

 

「ハウンド・ドラゴン、召喚」

 

 まぁ、別に唱えなくても召喚はできるけどね。

 おおっ! 再召喚してくれたのか! ありがとよ、マスター!

 

「ほいほい……外の見張りに行って来なさい」

 

 おう! 行って来るぜ!

 

 さて、今日も一日が始まる……って当たり前だ。何言ってんだ、俺?

 うぅ……頭が痛い。これは間違いなく寝過ぎたせいだ。いくらやることがないからって、昼も夜も寝るもんじゃないな。

 主、おはようさー!

 

「ああ、おはよう。

 ――非常食、召喚」

 

 朝食の為に非常食を召喚する。深夜0時を跨ぎ、すでに魔力は全回復している。

 ……あっ、さっき顎ドラゴンを再召喚したから3減ったか……。そんで今1減って魔力は残り3。

 昼にフレムベル・ベビーの再召喚も必要だからさらに1減る予定だ。

 しかし、後鑑定二回でランクアップして最大魔力が1増える。その際に魔力が1ポイント回復するので、このまま行けば夜にはブルー・ポーションが出せそうだ。

 

「まずは朝食だな。

 さ! 30時間ぶりの食事だ! 今日の缶詰は何が出るかな?」

 

 だから狼ごときがマスターの寝座(ねぐら)に近づくんじゃねぇよ! ヒャッハー!!

 

 

 

◇◇◇◇

 

 食事が終わり、洞窟内で(くつろ)ぐ。

 暇なので、壁一面の彫刻を鑑賞する。初めは一角だけを掘っていたドリルロイドだったが、そのうち興が乗ってきたみたいで、結局壁の7割方に彫刻を施していた。何がすごいかと言うと、あの掘り込む速さがすごい。たった一日で壁一面とか、プロの彫刻家でもできないだろう。

 

「まぁ、見る人は俺しかいないけどね……」

 

 おやびん第一のドリルロイドにとって、それこそ望むところだったかもしれないが……。

 

 テメェ! 俺の頭上を飛ぶたぁいい度胸だな! ぶっ殺すっ!

 外から聞こえるチンピラ風の思念。何かもう慣れてきた。

 顎ドラゴンは近づく全ての動物に因縁をつけ、マスターへ害を及ぼす可能性があることを口実に喧嘩を吹っ掛けている。……と言うか、一方的に襲い掛かっている。

 声を聞く限りにおいて、どうやら狼が一番多いらしい。

 

「そろそろもう一度説教しとくか……」

 

 うおっ! 避けやがったな! だが俺にはまだ尻尾のぐっ

 

「…………。…………ん?」

 

 沈黙。

 

「…………。

 …………。…………え?」

 

 ハウンド・ドラゴンの声が……途切れた?

 身震いを一つ。

 嫌な予感がする。これは……多分ないとは思うが、ひょっとして――

 

 主、気をつけるさ! 不良がやられたさ!

 いつもよりさらにメラメラと燃え上がるフレムベル・ベビー。

 攻撃力1700が負けた!? マジで!?

 

 慌ててスーツケースの上に乗せてあるカードの元へ。

 使えそうなカードはすでにまとめてあり、その内の何枚かを手に取る。

 俺の残り魔力は3。レベル3までのモンスターなら、もう一度召喚できる。

 気配探知に集中しながら身構える。相手は空を飛んでいるようで、この大岩を中心にぐるぐると旋回している。

 

「………………」

 

 どうやら探し物をしているようだ。……いったい何を?

 

「フレムベル・ベビー、お前らはやられたら、どうなる?」

 

 どうにもならないさ。ただ何も残らず、消えるだけさ。

 顔を敵がいるはずの宙に向けたまま、そう答えるフレムベル・ベビー。

 

「……なるほど。仕留めたハウンド・ドラゴンが消えたから探してるのか」

 

 多分……それが正解だと思うさ。

 

「ふぅ……」

 

 張り詰めていた緊張の糸を緩める。向こうは空を飛ぶ生き物だ。きっとここまで入って来ないだろう。

 そして、そのまま二分程経過した。

 さすがに諦めたのか、空にいる気配が徐々に遠ざかって行くのを感じ取れた。

 あ、そうだ。射程範囲外に飛ばれる前に――

 

「鑑定!」

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲

猛襲する大鷲        -風ー

              ☆☆☆

【鳥獣族】

一里先から敵を見つけ、正確無比な攻

撃で命を刈り取る。その眼球は薬の材

料として高額で取引されている。

       ATK/1000 DEF/400

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲

 

 

 えっ――

 

「ええーーーー!?」

 

 主、どうしたさ?

 フレムベル・ベビーはいつもの調子に戻り、定位置でふわふわと浮かんでいた。

 

「だって、あれ、攻撃力が1000しかなかったよ!

 何でハウンド・ドラゴンが負ける訳!? 攻撃力1700もあるんだよ!?」

 

 あいつ、装甲が紙くず並みさ。オレでも当てれば簡単に倒せるさ。

 え? ええっと……確かハウンド・ドラゴンの防御力は――

 

「そう言えば……防御力100だったような……」

 

 ええー……。

 

 大方攻撃を避けられて、カウンターを喰らったさ。調子に乗るからさ。

 まじですか……。

 真面目にやれば大抵の攻撃が避けられるのに、馬鹿さー。

 呆れた風に言うフレムベル・ベビー。

 

「護衛がいなくなったよ……。不安なんだけど……」

 

 大丈夫さ。この洞窟の入り口はあそこだけさ。入りこむ奴にオレが炎を浴びせるさ。それで大抵なんとかなるさ。

 やる気満々に燃える炎の子供。

 

 まぁ、後悔しても仕方ない。今回のことで色々反省すべき点も見つかった。

 とりあえず、今日の護衛はフレムベル・ベビーに任せるしかない。

 

「はぁ……」

 

 地面に座り込む。

 

「疲れた……」

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 フレムベル・ベビーの再召喚を果たしたお昼頃。

 これで俺の残り魔力は1。だが猛襲する大鷲を鑑定したおかげで、ランクアップまでに必要な鑑定回数も後一回だ。

 

「よし! さっさとランクアップを果たしちゃおう」

 

 今回はついでに実験を一つ兼ねたいと思う。俺の探知能力がどこまで行けるかの実験だ。

 

「昨日、200メートル超えたしな……よし」

 

 胡坐(あぐら)をかく。

 特に意味はない。この方が集中できる気がしたからである。

 まぁ、ようするに気分だ。

 

「行くか……」

 

 目を瞑り、探知の触手を伸ばす。

 100メートル……120、140、160、180、200――

 

 ここから少し難しくなる。更に神経を集中させる。

 210、220、230、240、250、260、270、280、290――

 

 まだまだ、行けそうだ。

 300、310、315、320、325、330、340、350、355、360――

 

 く、段々ときつくなる。伸びしろが短くなっていく。

 400、402、405、408、412、413、418、430、432、438、445――

 

 ふんならばっ!!

 501、503、504、506、507、508、510、511、513、514、515、516――

 

 根性ぉー!

 601、602、603、604、605、606、607、608、609、610、611、613、614――

 

◇◇◇◇

 

 997、998、999、1000――

 もうこれを始めてから二時間は経つ。そしてついに1000メートル。1キロメートルの大台に乗ったのである。

 

「ふ……うっ」

 

 喋る余裕もない。よし、次に見つけた動物を鑑定して終了しよう。

 1022、1023、1024、1025、1026、1027――

 

 ……くそ……こんな時に限って見つからなかったりするし……。

 1059、1060、1061、1062、106…………よし、いたー! お前に決めた!

 

「ぁ、こ、かん、定」

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲

ミオ族の狩人 アリア    -地ー

               ☆

【戦士族】

多彩な毒を使い分ける。矢に塗り、

獲物を狙い打つ。

       ATK/300 DEF/100

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲

 

 

「は…………はぁ、はぁ、はぁ――」

 

 お、終わった。は……はは。

 

「ははははは……。

 はははははは――」

 

 多分だが、多分これは……これはきっと――

 

「人間キターーーーーーーー!!!!」

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

未熟なカード使い      -闇ー

               ☆

 

【上位世界人族】

異世界に迷い込んだカード使い。魔力を

消費してカードに秘められた力を解放す

ることが出来る。しかし、その力はまだ

未熟だ。

 

ランクアップ条件

森の生き物を鑑定せよ  Clear

魔力の最大値が1アップしました。

 

知的生命体と接触せよ 0/1 

 

魔力 1/8    ATK/80 DEF/50 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼


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